保健・化学物質対策

化学物質対策の動向


 私たちの身のまわりには、プラスチック、塗料、合成洗剤、殺虫剤、医薬品、化粧品、農薬、ハイテク材料等数多くの製品があふれていますが、これらはすべて様々な化学物質を利用して作られており、化学物質は私たちの生活になくてはならないものになっています。
 このように有用である化学物質も、その製造、流通、使用、廃棄の各段階で適切な管理が行われなかったり、事故が起きれば、深刻な環境汚染を引き起こし、人の健康や生態系に有害な影響をもたらすおそれがあります。
 日本では、高度経済成長期に、メチル水銀による環境汚染が原因の水俣病などの深刻な公害問題が発生し、このような過去の悲惨な経験を繰り返さないために、国や自治体、産業界も含めて、様々な対策がなされてきました。しかし、現在でも、化学物質による有害な影響のおそれが全く無くなったとは言えません。例えば、 ダイオキシン類による環境汚染の問題、 環境ホルモンなどによる問題などの様々なタイプの環境問題が人々の関心を集めています。また、長期間にわたって保管されている PCBの処理の推進も緊急な課題となっています。
 環境庁では、様々な化学物質対策を進めていますが、このホームページでは、特に以下の4つを御紹介します。

「PRTR(環境汚染物質排出移動登録)について」は、平成9年6月よりパイロット事業を行い、平成10年5月にその中間報告が、平成10年9月にその評価報告書を公表しました。また、平成10年11月に我が国におけるPRTR制度の導入についての中央環境審議会の答申が出されました。環境庁では、これらを踏まえ、PRTRを我が国へ導入するため、通商産業省と共同で「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」をとりまとめました。同法律案は、平成11年3月16日に閣議決定され国会に提出されましたが、衆議院で一部修正の後、平成11年7月7日に参議院で可決され、成立し、7月13日付けで公布されました。

ホームページ「環境汚染物質排出移動登録(PRTR)について」へ

環境庁では、平成10年5月に、現時点での外因性内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)問題についての基本的な考え方や、今後進めていくべき具体的な対応方針をまとめた「環境ホルモン戦略計画SPEED'98」を発表しました。環境庁ではこれに基づき各種の調査・研究を進め、行政的な措置のあり方について検討していきます。

ホームページ「環境ホルモン戦略計画SPEED'98」へ

ホームページ「内分泌攪乱化学物質問題について」へ

「ダイオキシン対策について」は、平成9年8月に「ダイオキシン対策に関する5カ年計画」の策定、12月には大気汚染防止法の施行令の一部改正による規制的措置の実施を行うなど、いろいろな観点から幅広く調査、研究等を進めています。

ホームページ「ダイオキシン対策について」へ

「化学物質と環境」は、環境庁が昭和49年度より実施している化学物質に関する環境モニタリング結果をとりまとめたものです。平成10年1月7日には、平成8年度の調査結果をとりまとめた「化学物質と環境」概要版を公表しました。

ホームページ「化学物質と環境」へ



 化学物質対策についての御質問がありましたら、環境省環境保健部環境安全課のメールボックス ehs@env.go.jp までお寄せください。

 

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・ダイオキシン類

 ダイオキシン類は意図して製造・使用される化学物質ではありませんが、他の化学物質の製造や燃焼などに伴って生成されます。
 ごみ焼却炉の焼却灰の中からダイオキシン類が検出され、社会問題になっています。また、製紙・パルプ工場で紙を漂白するときに塩素を用いると、紙の原料中の有機物と反応してダイオキシン類が発生するといわれています。これまで、ごみ焼却場や製紙・パルプ工場に対して、ダイオキシン発生防止のための指導が行われています。
 平成9年の5月にはダイオキシン類のリスク評価と排出抑制対策について環境庁に設置された検討会から報告書が出され、ダイオキシン対策の方針が示されています。
 ダイオキシン類による環境汚染は世界的な問題であり、ダイオキシン類の危険性や対策の方法について科学的な議論が国際的に続けられています。

 

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・環境ホルモンとは?

 ホルモン類似作用をもち、人及び生物の生殖と発育という基本的な生物の生存条件に影響を与える可能性が懸念されている化学物質。
 平成8年1月に米国で出版された「奪われし未来」という本にも取り上げられており、その序文においてゴア米国副大統領が、かなりの数のホルモン類似の人工化学物質がデリケートな生物のホルモンシステムに影響を与えている可能性を指摘し、これらの化学物質がどの程度の影響を与え、また、このようなホルモン類似の作用を持つ化学物質がどれほど存在するか、我々や子供たちがどれだけこのような物質に暴露されているか研究努力を拡大しなければならないと指摘しています。

 

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・PCB(ポリ塩化ビフェニル)

 PCBは環境中で分解しにくく、生物の脂肪組織に蓄積しやすい性質をもっています。昭和43年に発生したカネミ油症事件の原因がPCBであることがわかり、PCBによる人の皮膚や肝臓への障害が知られるようになり、きわめて深刻な問題となりました。その後、全国的な環境調査の結果、琵琶湖や東京湾などでPCB汚染が明らかになったほか、母乳からもPCBが検出されました。このため、PCBは昭和47年にその製造が中止されています。
 その後、PCBを使った電気製品などは回収されることになりました。しかし、それらの多くは廃棄処分できずに、保管されたままになっています。現在、これらのPCBを安全に処理していくことが課題となっており、環境庁では環境安全性の高い処理方法により処理を進める方策について検討しています。