保健・化学物質対策

化学物質の生態影響試験について

1.概要

 環境省では、平成7年度より、化学物質の生態影響試験事業として、化学物質の生態影響に関する知識の集積、生態系に対するリスクの評価、OECDにおける高生産量(High Production Volume: HPV)化学物質の有害性評価プログラム(HPVプログラム、現在の「化学物質協同評価プログラム」)や定量的構造活性相関(QSAR)の開発に貢献すること等を目的として、化学物質の生態影響試験を実施してきた。その成果を国際的に利用可能なものとするため、OECDの定めたテストガイドラインに準拠した方法により、環境省の優良試験所基準(Good Laboratory Practice: GLP)に適合している試験施設において実施してきている。

2.試験の概要

 OECDの定めたテストガイドライン又は化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和48年法律第117号。以下「化審法」という。)に定めるテストガイドラインに基づき、水生生物(藻類、甲殻類、魚類及び底生生物)を対象とした生態毒性に関する試験を実施している。
※ 新規化学物質等に係る試験の方法について(平成15年11月21日薬食発第1121002号、平成15・11・13製局第2号、環保企発第031121002号通知)の別添の方法

(1) 藻類

[1]試験対象生物
 水系食物連鎖における生産者として、単細胞緑藻類の一種であるPseudokirchneriella subcapitata(旧名 Selenastrum capricornutum)を使用している。
[2]試験項目
  • 藻類生長阻害試験(OECDテストガイドライン201又は化審法テストガイドラインに準拠)
    化学物質に72時間ばく露した際の藻類の生長・増殖に及ぼす影響を、50%生長阻害濃度(EC50)及びその無影響濃度(NOEC)として把握している。

(2) 甲殻類

[1]試験対象生物
 水系食物連鎖における一次消費者として、オオミジンコ(Daphnia magna)を使用している。
[2]試験項目
  • ミジンコ急性遊泳阻害試験(OECDテストガイドライン202又は化審法テストガイドラインに準拠)
     化学物質に48時間ばく露した際のミジンコの遊泳に及ぼす影響を、半数遊泳阻害濃度(EC50)として把握している。ミジンコ繁殖阻害試験の予備試験の役割も担っている。
  • ミジンコ繁殖試験(OECDテストガイドライン211に準拠)
     化学物質に21日間ばく露した際のミジンコの繁殖に及ぼす影響を繁殖の50%阻害濃度(EC50)及びその無影響濃度(NOEC)として把握している。本試験は、慢性毒性に関する試験として位置付けられている。

(3) 魚類

[1]試験対象生物
 水系食物連鎖における高次消費者として、ヒメダカ(Oryzias latipes )を使用している。
[2]試験項目
  • 魚類急性毒性試験(OECDテストガイドライン203又は化審法テストガイドラインに準拠)
     化学物質に96時間ばく露した際の魚類に及ぼす影響を、半数致死濃度(LC50)として把握している。
  • 魚類延長毒性試験(OECDテストガイドライン204に準拠)
     化学物質に14日間ばく露した際の魚類に及ぼす影響を、半数致死濃度(LC50)及び致死に係る無影響濃度(NOEC)として把握している。慢性影響を示唆する試験として平成9年度まで実施した。
  • 魚類初期生活段階毒性試験(OECDテストガイドライン210に準拠)
     化学物質に卵の段階からふ化後約30日までばく露した際に試験魚の成長や行動に及ぼす影響を、その最小影響濃度(LOEC)及び無影響濃度(NOEC)として把握している。慢性毒性に関する試験として位置づけ、平成12年度より実施している。

(4) 底生生物

[1]試験対象生物
 底質添加によるユスリカ毒性試験として、セスジユスリカ(Chironomus yoshimatsui)を使用している。
[2]試験項目
  • 底質添加によるユスリカ毒性試験(OECDテストガイドライン218に準拠)
     底質に被験物質を添加することにより、ユスリカをふ化後一齢幼虫から羽化まで(20~28日間)被験物質にばく露した際に成長に及ぼす影響を、羽化率等を測定することにより把握している。慢性毒性に関する試験として位置づけ、平成16年度より実施している。

(5) 試験の実施体制

 本試験は、3.に記述する優良試験所基準に適合した試験施設において実施してきた。

3.優良試験所基準(GLP)

 平成15年度までは、化審法GLP(分解度試験、濃縮度等試験及び人毒性に関するもの)を参考として、生態影響試験に適用するためのGLPとして「生態影響試験実施に関する基準」(生態影響GLP)を定め、これを満たす試験施設において環境省の生態影響試験が実施されてきた。

 平成16年度からは、化審法に基づき、化審法GLPの適用範囲について、動植物毒性試験を含むよう拡大し、化審法GLP(動植物毒性試験)の適合確認を受けた試験施設において生態毒性試験を行っている。化学物質GLP及び化審法に基づく生態毒性試験についての詳細はこちら。)

4.試験の実績

(1) 試験実施状況

 生産量、環境残留性等の情報に基づき、水生生物に対するばく露の可能性が高く、生態リスクが懸念される化学物質を選定して試験を実施している。

(2) 成果の活用状況

① 国際的に認定されている試験法及び優良試験所基準に基づいた、わが国唯一の化学物質の生態影響試験に関する体系的な試験として知見を蓄積するとともに、その結果を公開している(生態影響試験結果一覧参照)。

② 信頼できる試験データとして、化審法の下でのリスク評価、定量的構造活性相関(QSAR)の開発、環境リスク初期評価、水生生物保全に係る水質目標の検討等に活用している。

③ OECDのHPVプログラムにおいて、我が国が担当する物質の生態影響評価の際にこの成果を活用するとともに、外国政府や産業界に対しても成果を広く提供している。

5.生態影響試験データの取り扱い等について

(1)試験法の改訂等に伴う試験結果の訂正等

 生態影響試験を実施するに当たって準拠している試験法は、国際的な合意に基づいて改定されることがあり、緩急省では公表している毒性値が大きく異なる場合において、新たな算出方法を用いて毒性値を再計算し、改訂している。

 なお、公表データの変更については、専門家の確認を経る、精度を確保する等の適切な対応に努めている。

(2)難水溶性物質の試験結果

[1]背景

 OECDでは、試験困難物質の水生生物に対する生態影響試験法に関するガイダンス文書23(2000)において、難水溶性物質の扱い等についてまとめており、分散剤の使用を控えるべきと主張している。
 環境省が平成12年度までに292物質について生態影響試験を実施しているが、そのうち約半数の物質で、従来のOECDテストガイドラインに従い、分散剤を使用した試験も行われてきた。

[2]環境省における対応について

 環境省の生態影響試験実施事業では平成13年度よりこの考え方を取り入れており、化審法の下での生態影響試験では、特に界面活性作用のある分散剤を使用しないことが明記された。
 化学物質の環境リスク初期評価においては、第3次とりまとめより、分散剤の使用等により明らかに水溶解度以上の毒性値が算定されている試験結果については、信頼性が低いものと判断し、生態リスク初期評価における予測無影響濃度(PNEC)の導出には用いないこととしている。
 環境省では、このような状況を受け、現時点では信頼性ある試験データとして評価することが困難とされた物質については、物質の特性に応じて開発された試験方法で再試験を行う必要性についても検討することとしている。


問い合わせ先
環境保健部環境リスク評価室・化学物質審査室
chem@env.go.jp
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