放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料
(令和5年度版、 HTML形式)

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第3章 放射線による健康影響
3.2 人体影響の発生機構

DNA→細胞→人体

DNA→細胞→人体
DNA→細胞→人体
DNA→細胞→人体
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放射線の当たる箇所を細かく見てみると、放射線は細胞に当たり、細胞の中にある遺伝子の本体であるDNAに傷をつけることがあります。このついた傷は、体の中に備わっているシステムで修復されます。
少しの傷であれば修復が成功し、元に戻ります。傷が多ければ修復できずに細胞自体が死んでしまいます。少しの細胞が死んでも、他の細胞が代わりをすれば、その臓器や組織の機能障害は生じません。多くの細胞が死んだり変性したりした場合、脱毛・白内障・皮膚障害といった急性障害や胎児発生障害等の確定的影響(組織反応)が生じる可能性があります(上巻P90「被ばく後の時間経過と影響」上巻P91「細胞死と確定的影響(組織反応)」)。
また、DNAの修復が不完全な細胞が生き長らえた場合には、突然変異を起こし、がんや遺伝性影響等の確率的影響が生じる可能性があります。
DNAを傷つける原因は、放射線以外にも、食物の中の発がん物質、喫煙、環境中の化学物質、活性酸素等があり、1日1細胞当たり、1万から100万箇所の頻度でDNAが損傷を受けているといわれています。低線量放射線によるDNA損傷は、代謝に伴う損傷に比べて圧倒的に少ないのですが、放射線は局所にエネルギーを与えるために、複数のDNA損傷が複合した複雑な損傷を作ります。また、放射線による影響の約85%は放射線により生じる活性酸素等の影響であり、約15%が放射線による直接の損傷によるものです。

本資料への収録日:2013年3月31日

改訂日:2021年3月31日

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