ホールボディ・カウンタでは、測定日当日の体内放射能量を測ることが可能ですが、他の測定機器同様、機械の性能や測定時間によって検出限界が決まっています。
放射性セシウムの生物学的半減期(上巻P11「半減期と放射能の減衰」)は成人で70~100日のため、初期被ばく量の推定は原発事故後1年程度が限界です。図に示されているように、体内に取り込まれたセシウムの放射能は、実効半減期により1年程度を過ぎると0ベクレルに近づいていくため、体内の放射能は以前の数値に戻っていきます。それ以降のホールボディ・カウンタ測定は、主に食品からの慢性被ばくを推定する目的で行われます(上巻P61「内部被ばく量の体外計測のデータ」)。
一方、子供では(成人に比べて)代謝が早く、生物学的半減期が短いことから、初期被ばくの推定は半年程度で限界となり、慢性的内部被ばくの推定も微量な日々の摂取では全身残留量が少ないため検出限界以下となることが多くなります。このような場合、預託実効線量係数が代謝の早い子供と遅い大人ではあまり変わらないことを踏まえ、大人を検査して被ばく量推定を行う方が、内部被ばく状況の詳細を把握するには合理的と考えられています。
体内放射能の測定結果から預託実効線量(上巻P56「預託実効線量」)を予測するためには、急性か慢性か、吸入か経口か、いつ摂取したのか等を踏まえて、適切な仮定とモデルを選ぶことが必要となります。
なお、ヨウ素131のように実効半減期が短い放射性核種は、体内の放射能が急速に減少するため、時間が経過すると検出が困難になります。また、ストロンチウム90はβ(ベータ)線のみを放出し、γ(ガンマ)線は放出しないため、ホールボディ・カウンタでは測ることができません。
本資料への収録日:2013年3月31日
改訂日:2025年3月31日
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