保健・化学物質対策

東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議 | 第9回議事録

日時:

平成26年8月5日(火)

場所:

イイノカンファレンスセンター RoomB(4階)

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)被ばく線量評価について
    2. (2)被ばく線量評価を踏まえた健康リスク評価について
    3. (3)健康リスク評価を踏まえた健康管理のあり方について
    <ヒアリング>
    宮内昭先生(小児甲状腺がんの臨床について)
    津金昌一郎先生(疫学調査の方法論について)
  3. 閉会

午後5時00分 開会

  • 得津参事官 本日は、お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまから第9回東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議を開催いたします。
     まず、本日は、中村委員におかれましては、少し遅れるとのご連絡をいただいております。また、荒井先生、春日委員、鈴木委員、伴委員よりご欠席とのご連絡をいただいております。
     また、本日は、2名の方からヒアリングを行う予定にしておりますけども、津金先生におかれましては、途中の18時30分ごろからの出席になると、その旨、ご連絡いただいております。
     次に、議事開始に先立ちまして、本会議傍聴者の皆様へ留意事項を申し上げます。
     まず、1点目、円滑に議事を進行させるため、事務局の指示に従ってください。
     2点目、傍聴中は、静粛を旨とし、発言、拍手などの賛否の表明や、これらに類することによる議事の進行を妨げる行為はご遠慮ください。また、ご質問やご意見がある方は、お配りした用紙にお書きいただき、事務局に提出してください。
     3点目、携帯電話、アラームつきの時計等は音が出ないようにしてください。
     4点目、その他、事前にお配りした内容について、ご注意をいただきたいと思います。これらをお守りいただけない場合には、退場していただくこともありますので、よろしくご理解をお願いしたいと思います。
     それでは、会議に先立ちまして、浮島政務官より開会の挨拶を申し上げます。
  • 浮島政務官 皆様、こんばんは。環境大臣政務官の浮島でございます。
     委員の先生におかれましては、本当に夕刻のお忙しい貴重な時間帯、また本日は大変暑くなっておりますけども、暑い中にも関わりませずお集まりいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。
     また、これまでも8回にわたり、精力的にご議論を賜りましたこと、心から御礼を申し上げさせていただきたいと思います。本当にありがとうございます。
     また、本日は、これまでの議論を踏まえまして、被ばく線量の評価のまとめ、そして、それを踏まえました健康リスクの評価についてご議論をいただきたいと考えているところでございます。
     特にWHOやUNSCEARなど、国際機関での評価も踏まえまして、本専門会議としての科学的な評価をお願いしたく存じます。
     また、本日は、大変お忙しい中、宮内先生、そして後ほど津金先生にもご出席を賜りまして、2名の有識者の先生から、いろいろまたご意見をお伺いさせていただきたいと思いますので、本日はどうかよろしくお願いいたします。
     本日は、この両先生にもご指導を賜りながら、今後のしっかりとした議論を深めていくためにも、皆さんとともに力を合わせてやっていきたいと思いますので、どうかまた長時間になりますけれども、また本日1日、よろしくお願い申し上げます。本当にいつもありがとうございます。
  • 得津参事官 浮島政務官におかれましては、公務により途中で退席いただくことになりますので、あらかじめお伝えをさせていただきます。
     続きまして、本日お配りした資料について確認をいたします。
     議事次第の下のほうに配付資料一覧として載せておりますけども、資料1につきましては、中間とりまとめに向けた線量評価部分の要点(案)。資料2につきましては、健康リスク評価の各論点に関するこれまでの議論。資料3につきましては、健康管理のあり方に係る各論点に関するこれまで意見(概要)となっています。
     それから、ヒアリングでお越しいただく宮内先生の提出資料、それから津金先生の提出資料を配付してございます。
     それから、参考資料につきましては、何点か配付しておりますけども、参考資料1として、福島県内における大規模な内部被ばく調査の結果。参考資料2-1として、WHOの専門家報告書の概要。それから、これは8回目の参考資料としてお配りしたものを再掲しております。参考資料2-2として、WHO健康影響報告書概要です。それから、参考資料3-1としてUNSCEAR報告書の概要。3-2としてWHOリスク評価に関するUNSCEARのコメント。それから、参考資料4として、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議開催要綱を配付しております。
     このほか、委員の先生方には、机上の配付資料として2点お配りしております。
     まず、1点目でございますけども、前回の第8回の会議にて、ヒアリングでお越しいただいた森口先生から提供していただいた資料でございますけども、事務局の不手際がございまして、配付する際に、差し替え前のものを配付してしまった状況であります。該当ページのみ、今回机上配付をさせていただきました。また、ウェブ中に公開、公表している資料につきましても、既に新しいものに差し替えておりますことを申し添えます。
     また、2点目でございますけども、昨日、子ども・被災者支援議員連盟の荒井会長から送付されました申し入れにつきまして、こちらのほうも机上にお配りしております。
     資料がそろっておりますことをご確認いただき、過不足などございましたら、事務局までお申し出いただきますようお願い申し上げます。
     それでは、これより議事に入りますので、以降の進行につきましては、座長にお願いいたします。
  • 長瀧座長 それでは、第9回の専門家会議の議事を開始いたします。
     本日は、お暑いところ、お忙しいところをお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
     議事でありますが、第1番目が、被ばく線量評価について。これは今までの議論のまとめを、何度も議論しましたが、さらに、まとめの最終案に近いもの、皆さんにもご覧いただいてご意見をいただいたものであり、まだ最終ではありません。直す余裕はありますので、ここで議論していただきます。
     それから、2番目は、被ばく線量評価を踏まえた健康リスクの評価について、これは今まで何度も議論してまいりましたが、これもまだ、これはまとめというよりは、今日、積極的に委員の方からご議論、ご意見をいただいて、この次にまとめの文章ができるように、皆様からご意見をいただきたいと思っております。
     それから、3番目は、これから入っていく、この委員会としては一番大きな責任のある健康リスク評価を踏まえた健康管理のあり方、という具合に進めるつもりでございます。
     まず、被ばく線量評価につきまして、事務局からご説明いただきます。
  • 佐藤補佐 では、資料1についてご説明させていただきます。お手元にご用意いただければと思います。
     この資料1、中間とりまとめに向けた線量評価部分の要点(案)としておりますが、これまでの線量評価に関する議論を踏まえまして、長瀧座長の指示で、事務局のほうで簡潔に整理をさせていただいたものです。
     事前に委員の先生方には送付をいたしまして、あらかじめご覧をいただいております。また、事前にいただきましたご意見、あるいは修正のご提案は、資料準備に間に合う範囲で加筆をしてございます。
     なお、中間とりまとめとしてお示しする際には、これまでの会議資料を活用しまして、詳しい注釈、あるいはそれに類したものを付して、丁寧な記載に努める所存でございます。例えば、調査の概要でありますとか、用語の解説といったものもそこにつけたいと思っておりますので、そういったものを省いた要点の部分を今回資料1としてご用意しているということでご理解いただければと思います。
     大枠のところを順番に、ポイントになりますところを申し上げていきたいと思います。
     まず、1の基本的な考え方です。
     一つ目の○のところ、少し事前に配付したものから一部修正が加わっておりますので、ご確認いただければと思います。
     読み上げます。「国として、住民の健康管理のあり方を検討するために、東電福島第一原発事故による放射線の健康影響が見込まれる集団における被ばく線量を把握・評価することとした。その際、事故後3年超が経過する中で集積されつつある個人の被ばく線量を把握することに努めた」としてございます。
     続きまして、2ポツの被ばく線量の検討のところです。
     (1)事故初期の甲状腺被ばく、福島県内についての概要でございます。
     まず一つ目の○で、1,080人に対する小児甲状腺簡易測定調査の概要をまとめておりまして、二つ目の○をご覧いただきたいと思います。
     本調査結果には、評価上、バックグラウンド値の取扱い等の不確実性が存在するが、以下の推計値、下のaからcのところ、これと合わせて考慮すると、旧警戒区域であっても甲状腺被ばく線量が100mSvを超える被ばくを受けた住民がいたとは考えられず、50mSvを超える被ばくを受けた住民も少ないと考えられるとまとめてございます。
     そして、三つ目の○をご覧いただきたいのですが、ただし、測定を実施していない者もおり、その中に100mSv以上の被ばくを受けた者がいる可能性を否定するものではない。しかしながら、健康リスクを捉える上で、最も保守的と考えられる摂取シナリオを前提としても、それが上記の評価を上回るものとは評価されないとしてございます。
     おめくりいただきまして、2ページ目です。
     福島県外につきましての甲状腺被ばくの評価でございますが、構成としては、先ほどと同様、まず実測値について記載をしておりまして、二つ目の○ですが、上記の実測値及び以下の推計値を考慮すると、福島県外の住民の甲状腺被ばく線量は50mSvを下回るものと考えられるとまとめております。
     続きまして、(2)外部被ばくについてです。
     その一つ目の○で福島県内の調査について述べておりまして、二つ目の○で福島近隣県について述べております。三つ目の○ですが、まとめとして、したがって、住民の外部被ばく線量は、福島県内で5mSv未満、福島県外でもそれを上回るものではないと考えられるとまとめております。
     続きまして、(3)内部被ばく((1)を除く)となっております。
     事故初期の甲状腺被ばくを除いた内部被ばくという趣旨です。こちらも同様に、一つ目の○で、福島県内での調査も説明しておりまして、二つ目の○で、福島近隣県でどうであったかと、三つ目の○で、したがって、まとめとして、一般に流通している食材を用いた食生活を送る限り、食品中の放射性セシウムによる内部被ばくは、ホールボディカウンターの検出限界以下と考えられるというふうにまとめてございます。
     これが資料1の概要ですけれども、幾つか補足でご説明をさせていただきます。
     まず、今の見ていただきました2ページ目のところでございますが、これまでの議論の会議の中で、あまり触れられてこなかった点で加筆している部分について、まず述べたいと思います。
     2ページ目の(2)のところの一つ目の○の、そのうちというところでございます。先行調査に関するものも加筆したほうがよいという座長の指示で加筆をしてございます。
     それから、2点目ですが、(3)内部被ばく((1)を除く)というところの一つ目の○の2文目でございます。読み上げますが、また、対象者の抽出過程にバイアスがないと考えられる集団で、2012年夏以降は内部被ばくが検出限界値未満であったとの調査報告がある。こちらの調査報告につきまして、第1回の会議での資料2-1でホールボディカウンターによる調査の一つとして掲載だけしておったのですけれども、これについても改めて言及したほうがよいということで、ここで加筆してございます。この内容は、お配りしております参考資料1の早野龍五先生その他の皆様の論文、それを日本語でまとめたものを参考資料1としておつけしてございますが、この内容に相当いたします。
     まず、ここまでが補足でございます。
     最後に、本日ご欠席なのですが、春日委員から事前にご意見をいただいておりますので、それについて申し上げたいと思います。  春日委員からのコメントは3点ございます。
     まず、1点目です。1ページ目にお戻りいただけますでしょうか。
     1ページ目の2.被ばく線量の検討というところですけれども、福島県内の記述の二つ目の○のところです。先ほど読み上げましたように、下線部の2行目のところ、甲状腺被ばく線量が100mSvを超える被ばくを受けた住民がいたとは考えられずという表現につきまして、春日委員から、ここは考えにくくというふうにとどめたほうがいいのではないかというご指摘をいただいております。  その理由といたしましては、三つ目の○のところで、ただしということで、測定を実施していない者もいるということに言及しておりますので、この部分、全体としての論理的な整合性をとるべきではないかというご指摘です。
     2点目、2ページ目にもう一度お戻りいただけますでしょうか。
     (2)外部被ばくの一つ目の○として、三つ目のまとめの○の部分です。ここでは、先生からは、福島県県民健康調査の部分で、いずれの調査でも、こちらでは99.8%が5mSv未満であった云々というまとめを事実関係として記載をしておるのですが、それに加えて、いずれの調査でも放射線業務従事経験者を除くと、実効線量は最大25mSvであって、それを上回る者はいなかったということを加筆したほうがいいのではないかというふうにコメントをいただいております。
     それに伴いまして、三つ目の○のまとめの部分でも、福島県内で大多数は5mSv未満であったと考えられ、また福島県外でもこれを上回るものではないと考えられるといったような修正をしてはどうかというご意見です。
     3点目です。続きまして、(3)の内部被ばく((1)を除く)という部分、こちらにつきまして、三つ目の○のところになりますけれども、したがって、一般に流通している食材を用いた食生活を送る限りとありますが、ここの部分は、あくまで食品摂取による今後の話、平成24年夏以降の話であろうということで、県内のホールボディカウンターの結果を踏まえていないので、この三つ目の○のまとめは、記載として不十分なのではないかというご指摘をいただいておりまして、修正案として、事務局のほうで、例えばですけれども、最後の、ホールボディカウンターの検出限界以下と考えられるという部分を、例えば、預託実効線量1mSvを上回るものではないと考えられるといったような修正をしなければ、この部分が論理的に不十分であろうということで考えております。
     資料1のご説明は以上でございます。
  • 長瀧座長 今、それぞれ欠席の委員からの伝言も含めて、ご意見のご紹介をいただきました。今15分でございまして、30分まではこの議論を続けて、この次はまとめを、確実なものにしていきたいと思います。十数ページのものから3ページ、また2ページと、いろんな取捨選択をしながら進めてきて、多少お気持ちと合わないところがあるかもしれませんので、むしろここで積極的にご意見をいただきまして、訂正したいと思います。どなたでもご意見をどうぞ。15分として、順番に項目別に伺っていくということにしましょう。
     では、どうぞ。
  • 阿部委員 2ページの(2)の外部被ばくのところの三つ目の○のところの下線部のところの文章で「したがって、住民の外部被ばく線量は、福島県内で5mSv未満」というふうに切られていますね。確かに99.8%は5mSv未満ですが、それ以外の高い線量の方もいらっしゃいます。この文章ですと、いかにも回答された対象者が全員5mSv未満というふうに誤解を与えるのではないかと思います。だから、春日委員と私も同じような意見で、そこは少し修正されたほうがいいと考えます。大多数とか、ほとんどがというような、何かそういう文言を入れないと少し誤解を招くのではないかなという印象を持っています。
  • 長瀧座長 よろしいですか。
     ほかに、どんどんご意見を。では、本間先生どうぞ。
  • 本間委員 このペーパーのさっき事務局がかなり要点を記載されて、詳細を省かれたというご説明があったのですけども、これを読むと、極めてミスリーディングな結果を、印象を与える部分というのが、今、春日先生のコメントもありましたし、阿部先生もありましたけども、僕もそういう感じが若干するわけです。
     それで、これをいただいたとき、ちょっと外国出張へ行っていたものですから、コメントを控えさせていただいたのですけども、まず、前回出た資料に概要案があるんですけれども、これは事実関係というか、ここの会合で出た今までの実測データの資料、あるいはUNSCEAR、国際機関における評価について、この場で一応議論し検討したと。それが多分ここに言うところの被ばく線量の把握という部分に相当するかと思うのですね。
     ポツ評価というところで、それがこの会議の一つの1番目の目的だったのですが、その評価という部分が、この全体の会議の目的にとって線量の評価がどこまでできるのか、あるいはするものなのかというところが、ちょっと私にはよく見えないというところが1点あります。
     この基本的考え方のところに、前回の資料2の基本方針のところには、集団を検討する評価であって、個々の被ばく線量を網羅的に評価するものではないという文章があったわけですけれども、趣旨は多分そのとおりをとっておられるのだと思うんです。個人の線量評価というのは、前ここで唯一というか、甲状腺のスクリーニングの結果と、それからホールボディの結果が、個々人についてはあるわけですけれども、通常こういう線量再構成、実測データを重視するとか、モデルでそれを補うという議論がありましたけれども、UNSCEARがやっているように、線量再構成の基本的なものというのは、やっぱり実測データが全ての個々人にあるわけではないですから、集団について行うことしかある意味できないわけですね。
     そういう観点から言うと、今幾つかコメントがあったように、この下線部で書かれているところの評価というものが、ここまで踏み込んで果たしてできるのかというところが、私はすごい疑問ですね。
     というのは、「100mSvを超える被ばくを受けた住民がいたとは考えられず」と書いて、下には、一方で、「100mSv以上の被ばくを受けた者がいる可能性を否定するものではない」というのは、これは科学的にあり得ない文章ですよね。
     ですから、ここら辺の評価が、この会議の目的にとって、100mSv以上被ばくを受けた集団がいないということは、僕は決して言えないと思うのですね。不確実さの大きい中で、甲状腺の個人線量を実測データのこれこれの事実はというところの検証はある程度この場で、検証というか、把握はしましたというのが精一杯でありまして、というのは、UNSCEARが評価している部分というのは、もちろんコンサーバティブな部分もありますし、過小評価をしている部分もあると。私はまだ依然としてUNSCEARの不確実さの項を読みますと、ファクター幾つと書いてあるのですが、それの科学的根拠というのは、UNSCEARの報告書全体からは見えないわけですね。ファクター3あるいはファクター4の不確実さがあるというところは見えないわけで、まだ全部信用しているわけではないのですけれども、例えば、一例を出しますと、UNSCEARの報告書のCのセクションに回避可能な線量と、予想される線量と、そして、今回評価された線量というのが、その18グループに近いような各市町村別に載っているわけですね、それは実効線量と甲状腺線量について。あれはあくまでも集団に対する平均値、UNSCEARは集団に対する平均値を出していますから、その平均値、その集団には、当然分布が存在するわけで、かつその分布に不確実さが存在するわけですね。
     あそこの回避された線量の最大のものは、多分ご覧になればわかると思いますけれども、サイト近傍のところの甲状腺線量で700mSvぐらいの線量というのがあるわけですね。つまり、そこにずっといれば、予想される線量が770mSvですから、そこにずっと存在していれば、そういう可能性があったと。だけれども、12日に回避、ほとんどの方が避難できて、集団平均としては、多分近傍の警戒区域の方のほうが、計画的避難の区域の方よりも小さい結果にはなっていると思うのですね。
     そういう不確実さを考慮すると、ここまで断定的なことが言えるかどうかというのは、私にとっては自信がないというのが、私の一つの意見です。
     それから、もう一つは、こういうふうに短くわかりやすいというか、短く文章をまとめてしまうと、ミスリーディングが起こると私が最初に言ったのは、例えば、外部被ばくについて、県民調査は事故後4カ月のデータなのですね。結論のところには、期間がほとんど明示されていない。この線量は一体いつの期間の線量なのかということが、この文章からは全然わからないのですね。1年の線量なのか、その年の線量なのか。
     だから、こういうまとめ案をつくること自身が、僕は果たしていいのかどうかというのが、ちょっと自信がないですね。少なくとも前のほうがまだ、前のやつもまだ十分じゃないのですけども、前回の資料2もですね、その前にもう少し詳しいのがあるのですけれども、そういうのが私の今の現在の意見です。
  • 長瀧座長 決して無理するつもりはありませんし、先ほどの事務局としては、それぞれの発言、皆さんの発言の言葉をもってして、今まとめをつくっているという作業のプロセスから言いまして、こういうものになったのだと思うのですね。
     ですから、今後もそうですけども、委員の方がここの時間限られていますので、本当にこれはこうしたほうがいいんだということをもう事務局に文章ででもいただいて、書き入れるようにできるように、今後もしたいと思います。ですので、この文章を今日の時間、今の線量のことをまた繰り返しますと、すごく時間が長くなりますので、それから皆さんがもう問題が起こらないように、むしろ前の3ページ以上の論文、あるいは10ページ以上のまとめのほうが抜けているところがないというのであれは、報告書もそういう格好、ただ、見方を変えると、まとめと議論と結果とかが何か一緒になったようなたくさんのまとめなので、もう少し上手なまとめ方がないかということをここで皆さんに諮って、短いものにしようということになったわけです。今後、むしろ前向きに、これはこの次までに、この間も一回お願いしたと思うのですが、何か本間先生、全体として問題があるということで、細かい字句の大勢ではなくて、大きなお話で、今いただいたとおりのことだと思うのですが、いかがしましょうか。
     本間先生、これは、むしろ3ページのほうに書き、かえって、それぐらいの量で問題がないようなまとめ方をしたほうがいいのか。それとも、ぱっと見たときにわかるようなものが、まとまりができるのではないのか。もしそれが不可能であるというお考えなら、もう長いままでも結構であると考えますが、そこのあたりをどうしましょうか。どうしなさいと言っているわけではありませんけれど。
  • 本間委員 私の一つの意見は、前の概要案3ページぐらいのやつというのは、ここで議論したものの、ある意味、把握のまとめ的なものだったわけですね。この1枚は、そこに評価が加わっているわけです。まさしく下線部分のところの評価が加わる。それについて、皆さんで、要するに、この場でこの三つの課題がある、この専門家会議の中の1番目の線量把握評価というものが、どういう性質のというか、どういうまとめである必要があるのかと、そういう議論を後の健康管理とか、そういうものにとって線量評価、非常に不確実さが多い線量評価のまとめとしてどういうまとめが必要なのかということを議論すべきではないかというふうに思います。
  • 長瀧座長 まとめをつくる前にどうしましょうか。今全体としては、ここで議論すると、どうしても時間がなくなってしまうので、今後はできるだけ前もって委員の方から文章として、いただいて、それを配る、あるいはこの場で議論するというほうが能率的ではないかと思います。今回のものが、ちょっと見て整合性がない理由は、別々の委員からいただいた議論をそのまま加えたというようなところもございます。どうしましょう、時間との関係で、どうしたらいいかという積極的なご意見をいただきたいと思います。あるいは事務局から何かありますでしょうか。
     または、もう一度どこかで議論をする時間があったほうがよろしいですか。あるいは、先生方にご意見を書いていただいて、皆さんに読んでいただいて、それを反映するということにするかどうか。
  • 本間委員 僕の今の発言は、ここでどういう、ここの線量評価部分の方針というか、その前の資料から概要案からここまで短縮したものの、いわば、下線部分の書き方というか、そこら辺の評価の仕方について、全体のこの専門家会議の目的からいって、どこまでの方針で書くべきなのかという、そこの部分ですね、その記述の内容について言っているのではなくて、そういうご意見をほかの先生からお聞きしたいなというのが。
  • 長瀧座長 そうすると、3ページにまとめたところは、具体的に何かご意見、反対はなかったと思っていいでしょうか。
  • 丹羽委員 多分、私は線量は素人ですが、このようなセル、実測がない推計しかないわけですね。それでやるときは、必ず不確実性の議論というのをつけておかなければならないというのが基本であって、今の本間先生のご指摘は、まさにそういう問題であろうということで、それほど大きく変える必要はなく、ここの書き方がどれぐらいの不確実性の中でこれが言えるかということになろうかと思います。
     そうすると、ここのところで考えられずというような表現は、そもそも不確実性をもう捨て去ることであるから、これはやはりおかしいんじゃないかというふうな問題であろうかと。そういうふうなことをご指摘されていると思いますので、やはりとんでもない、早野先生なんかはロングテールと言っておられる、非常に高いのが時々ぽこっとあると、それの可能性は否定できないということは、やはり否定できないと思います。
  • 長瀧座長 ちょっとその理解が違っているかもしれませんけど、短くするときに、十分に言葉遣いを前のものを十分に反映させたまとめであればいいけれども、今できているものは、必ずしもそうじゃないと、そういう印象ですね。
  • 丹羽委員 もともと国内でのこの議論というのは、不確実性の議論というのをそれほどきっちりやった評価があまりないのですね。特に、少なくとも国連の科学委員会なんかとか、NCRPでもどこでもいいのですが、そこの辺り線量評価に関する議論というのは、常にそのデータがどれぐらいの不確実性を含んでおるかというところを常につけて出しているというのが慣例であります。だから、そこのところが、文言の上で表現されておればということではないかと思っております。
  • 長瀧座長 不確実性を結論にというのは、ほかの委員からもご指摘がございましたので、そうすると、この次までに、今日の議論は、十分伺っておきまして、ほかにございますでしょうか。ほかになければ、後は事務局とご相談した上で文章をもう一度書き換えて、それを皆さんに前もってお配りする。そしてご意見を前もっていただいて、というふうなプロセスを入れてまとめるということでよろしいでしょうか。
     では、本間先生、事務局から後でお伺いしてよろしいですか。
     十分に不確実性の点は、ここに入っていません、というのは、おっしゃるとおりだと思います。ただ、事務局がつくるわけにはいかない、つくるというよりは、今までの皆様のご意見をまとめるつもりでいますので、足りないところがあれば、十分に専門家の目で直していただいたほうがいいと思います。それでは、ほかの議題もありますので、今回のこのまとめは、事務局から委員に伺って、訂正の部分をきちっと直す、そういうことで直させていただきます。
     それでは、今度は順番にここである程度まとめをやりまして、議題の2では、被ばく線量評価を踏まえた健康リスクということで、リスクの線量評価に関して頭に浮かべながら、次に入っていきたいと思います。
     まず事務局にご相談の説明をしていただきます。
  • 佐藤補佐 では、資料2をお手元にご用意いただきたいと思います。
     健康リスク評価の各論点に関するこれまでの議論をまとめたものです。
     これまでの会議資料を参考資料の2-1、2-2、3-1、3-2という形でおつけしてございますが、これらの資料をもとに事務局にて作成したものになります。こちらも先ほどの議論と同様、過不足や誤表記など、まだ多々あるかと思いますので、その点につきましては、ぜひご指導いただきたいと思います。
     まず、1としまして、国際機関による健康リスク評価についてということで、(1)WHOの報告書の概要をまとめてございます。  おめくりいただきまして、2ページ目ですが、こちらにはUNSCEARの報告書についてまとめてございます。UNSCEAR、2014年報告書となっておりますが、2013年の間違いでございますので、恐れ入りますが、訂正をお願いいたします。
     こうした二つの国際的な機関の報告書、これらを踏まえまして、本専門家会議としてそれをどう受け止めるのかというのが、3ページ目になります。
     これにつきまして、これまでの会議でもう幾つかご発言をいただいておりますが、本会議での見解としておまとめいただきたいと思っております。
     続きまして、最後の4ページ目ですけれども、本専門家会議における健康リスク評価についてとしてございます。
     論点のところですが、本専門家会議では、これまで議論してきた線量の評価結果と、前述の国際的機関による健康リスク評価等に対する見解を踏まえて、今回の原発事故による健康リスクをどう考えるか。
     [1]本専門家会議による線量の評価結果はどうであったか。これは先ほどの資料1に関連する部分です。
     [2]上記[1]は、WHOやUNSCEARの報告書に比してどうか。
     [3]上記[2]を踏まえると、健康リスクをどの程度と考えるか。
     [4]全体的に不確実性があるなか、健康リスクをどう捉えるのか。
     こうした論点があるかと思います。また、これまでの会議でこれに関連した発言を以下にご紹介をしてございます。
     資料2の3ページから4ページにかけましては、非常に関連している部分ですので、まとめてご議論いただければと思っております。  事務局からは、以上です。
  • 長瀧座長 最初に、WHOとUNSCEARのまとめがございますけども、これも全体を正確にというよりは、今まで議論になったことをここに事務局が書き出したと、そういうまとめでございまして、そのもとは、参考資料の1と、参考資料の2がWHOになっていますね。2-1、2-2はWHOで、それから、その次にUNSCEARの分があったかと思います。こういうものの中から、今までこの委員会で議論になったところをここにまとめたというふうになって、決して、これはWHO、UNSCEARの報告全体を客観的に1ページにというものではありません。
     ですから、これはもう委員の方々は十分ご存じなものとして次に進めていきたいと思います。時間の関係もありますので、まず、中間報告といいますか、この委員会の報告、ご議論をまとめていく方向で、事務局として望んでいますのは、委員の先生方からWHO、UNSCEARというような国際的な機関に対しての評価、ご意見をいただくこと。それに基づいて、日本の専門家として、本委員会で議論になった線量評価をもとに、どんな健康リスクが考えられるか、ということについてご意見をいただきたいと思います。
     これは6時半までです。十分にご意見をいただき、そのご意見をまとめ、この次のときに出したいと思います。ご自由に、それこそ委員の先生全員にお話しいただくぐらいのつもりでご意見いただければと思っております。
     皆さまから、ご自由にご意見をいただくということでいきたいと思いますが、いかがでしょうか。
     それぞれの評価だけでも構いませんし、この委員会としてのリスクに関する考え方、そして、それをまとめていくための必要な意見、ということでお話しいただければと思います。
     今までいただきましたご意見をここで事務局がピックアップして、例えば、これらの報告書に対する本専門家の見解、3ページでございますけども、ここで第5回の伴委員のご発言、7回のご発言、7回、鈴木委員のご発言、7回の丹羽委員のご発言もここにピックアップさせて書かせていただいております。
     それから、この議論に関しましても、いろんなところで出てきましたので、その中から、4ページでありますけども、それぞれの方からのご意見、石川委員、鈴木委員、鈴木委員、それから丹羽委員、清水委員のご意見もこの議事録の中からピックアップして、ここに書いてございます。どうぞ、これにつけ足して皆様のご意見を。
     さきほど本間先生からいただいた、基本的なご質問やご意見も、むしろ今のうちにいただいたほうがいいと思いますので、よろしくお願いいたします。
      どうぞ、佐々木先生。
  • 佐々木委員 4ページの真ん中辺に、第5回の鈴木委員のご発言ということで、最初に書いてある中で、健康リスクについては、ある集団の平均被ばく線量と集団の人数から罹患者数が計算されるというところがございますが、今日鈴木委員おられないところで、ならないかもしれませんけど、これは集団実効線量のことを言っているのだと思いますが、集団実効線量は、ある時期、ICRPでは1977年勧告辺りでかなり重視したわけですけれども、多くの場で非常に誤用されたという反省があります。2007年勧告では、実効線量の使い方、集団実効線量の使い方について、かなり細かくこういうふうに使いましょうということを記載していますので、この一言だけで見ますと、こうやって計算するものなんだというふうに理解されると、本来の集団実効線量というものの意義が必ずしもうまく伝わらないのではないかと思います。
     さっきの議論で短くすればいいという議論と相通ずるものがありますが、やはり説明すべきところはきちっと説明する必要があると思います。
     最もICRPとして反省をしてきたのは、チェルノブイリフォーラムで、一つのプロジェクションとして集団実効線量から4,000人のがん死亡が起こる可能性があるという記載例のことが言われました。これに対しては、線量の幅、あるいは人の数、そういうものが増えれば、どんどん増えていくということが起こりました。我が国では、今でもその報道に基づいて、チェルノブイリでは、放射線の影響で4,000人の方ががんで亡くなったんだということを言う方があります。それはあくまでもプロジェクションであって、実際とは違いますので、そういう反省を含めて、実はICRP2007年勧告をつくる中では、集団線量というのはやめにしようかという議論もあったのですけれども、集団実効線量だけは、それなりの使い方があるので、これを残してあります。
     しかし、それを述べる場合には、どういう線量範囲の、どういう地域の、どういう期間ということを明記した上で、その集団実効線量あるいはその集団実効線量からの予想、プロジェクションというものをしようということが、かなり細かく記載されて、繰り返し記載されておりますので、その辺のところも誤解のないように記載する必要があるのではないかと思います。
     以上です。
  • 長瀧座長 先生、具体的に今のお話のことですが、今の議論は、要するに、二つの報告書の内容をどう考えるかということ。それから、それを踏まえて、健康リスクをこの委員会としてどう評価するかということに関してのご意見として、どこか今のお話を具体的に使ってという提案のようなものはございますか。
  • 佐々木委員 私は、その前のまとめでも、基本的事項のところの何を実測値でないのだけど、実測値とみなすという、ああいう書き方、あれは非常に大事だと思っております。ここでも集団実効線量というものは、どういうもので、どういうふうに使うのかということをきちんと記載する、何らかの形で記載する必要があると思います。
     そういう意味で、先ほど申し上げませんでしたけれども、線量のまとめのところでも、最初の一般的事項でしたか、そこが基本的な考え方が著しく省略されてしまっている。特に私が気にしているのは、[2]のところでありますけども、もう少しやはり説明すべきところはしっかり説明すべきであるというのが私の考えであります。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
     先生の今、線量評価のところを、もう少し最初の基本的立場もということですね。
  • 佐々木委員 何度も申し上げますが、これは鈴木委員の発言ということですので、それにどうこう言うべきものではないけれども、こういうことが、鈴木委員がこう言われたということをここに記載されて、それがまた次のまとめの中に残っていくのであると、それはいろんな意味で誤解を招くので、きちんと集団実効線量というものがどういうものなのかという説明が必要だと思います。同じように線量評価についても、基本的な考え方の[2]は以前にはかなりきちんと書いてありましたので、それはできれば残していただきたい、そういうことです。
  • 長瀧座長 今のお話をフォローするのは、もう少し考えますので、ほかにご意見ございますでしょうか。
     どうぞ。
  • 石川委員 資料1、資料2と来まして、今までの議論の中でも、いろいろなUNSCEARの報告でもそうですけれども、不確実性についても言及があるわけですね。それで、資料1、資料2と見ていますと、資料2でリスクなんかについても、要するに、いろんな自然のばらつきと比べるとはるかに小さいとしているとか、いろいろなリスクについては、あまりないんだというふうなことで書かれているというふうな色合いが非常に強いんですよね。資料1のところでは、大変小さい線量のことであって、今までの例えばチェルノブイリに比べると、はるかに線量は低いというふうなことでもうずっと書かれていると思います。これは実測値であり、ご指摘があったように、非常に限られたところの測定にすぎないと思うのですよね。
     私たちは、やはりそういう不確実性のことも指摘しているわけですから、そういうことも踏まえて、この健康リスクというのは、やはり考えるべきだというふうに思うのです。
     私、何回も言っていますように、そういう幾つか意見を挙げさせていただいておりますけれども、今回のこの資料2で言えば、3ページの伴委員の言われた、二つ目の○のところに、この述べてある、これに私同調するわけなのですけれども、UNSCEARの評価についてはというくだりで、最後の2行を言えば、「UNSCEARが評価しているのはあくまで代表値であり、個人差や高い被ばくを受けた人の存在について配慮し、然るべきサポートが提供されるべき」というふうなこと、これは私も同じような意見でありますし、やはりこのUNSCEARの32番目だと思いますが、そういうところでも、基本的には不確実性に言及していて、そういう人たちをどうやって健康支援できるかということを書いてあるわけです。そこのところが僕はリスクのところでは、十分に書くべきだというふうに思っております。
     それで、次の健康支援のほうにつながるべきだというふうに思っております。
  • 長瀧座長 わかりました。もう他に、ご意見としてありませんか。今のような。
     どうぞ。
  • 清水委員 清水ですけれども、資料の2の4ページの一番下の、ちょっと私の意見のところなのですけれども、「チェルノブイリの事故後のように大幅に増加することは予想されないと評価されている」、ディスカウントをどう訳すかということだと思うのですけれども、そこで、その後の、「現時点では増加の可能性は否定できないと表現すべきではないか」、つまり「予想されない」を、「可能性は否定できない」という、いずれにしても増加のニュアンスは含まれているので、もう少し私は、消極的な意見を言ったかなと思っているのですけど、例えば、結論を出すには時期尚早であるとか、そのように申し上げたかったというふうに記憶しているのですけども、確認していただいて、もしあれだったら直していただければと思います。
  • 長瀧座長 そうすると、どうでしょう。ご意見をここでいただいて取りまとめるとし、今の話をもう少し続けても結構なのですが、まとめということを考えて、この委員会の意見を、あるところに集約する、あるいは、まとめをつくるということから言うと、むしろ最初のWHOの意見に賛成とか、UNSCEARはどうだというご意見のほうがまとまるでしょうか。それとも、この委員会としてのことを、もうWHOや、UNSCEARについてはただ参考とする、そして委員会として十分に匹敵するぐらいのものを出していく、という気構えで時間をかけてやるかですね。
  • 丹羽委員 コメントですが、WHOもUNSCEARも線量に関してまず一生懸命やったのですね。それでUNSCEARに関しては、リスクの評価は当初するつもりはなかった。なぜかと言えば、証明のしようがないから。プロジェクションしてもリスクは出てくるのは随分先であると。しかも線量が低ければ、ましてや証明は難しい。でも途中で、たしかリスク評価が突如入ったという経緯がございます。
     WHOのほうは、線量が決まれば、当然計算で出しちゃうという立場で、これは最初から線量とリスクというものをカップルさせて動かそうとしておったというところがあります。
     だから、ここの委員会として、まず、先ほど佐々木先生のおっしゃった集団実効線量の意味合いで、それの意味から単純計算でリスクは出そうと思ったら出せる。それ多分、線量が低かったら証明できない程度であるということになると。集団実効線量に関しては、歴史的には、1960年代の原爆の大気圏核実験から始まって、全世界の人々が放射線にさらされたと。そのときに、遺伝的影響はどんな小さい線量でもあるでしょうということから始まって、それならば掛け算できるということで、集団実効線量的なコンセプトができました。そのコンセプトは、そのまま遺伝子に対する線量と影響というカテゴリーから、ソマティックなその細胞に対する線量にシフトして、だから、がんも直線でありましょうと。だから同じように、平行移動して、がんに関しての集団実効線量ができると。これは実は、割と簡単にシフトしまして、それが本当に正しいですかという議論はどこもありませんでした。私の知る限り。
     だから、そういうふうなところで、横滑りしたコンセプトで始まって、それでチェルノブイリのときに、先ほど、佐々木先生がおっしゃったように、あまりにも低い線量で、10億単位の人口を掛けたら死者が出るということになってきて、果たして、これは本当だろうかという反省のもとに、あまり軽々しく使えないねと。
     だから、これは、あくまでも推定であって、それが現実の数字となって現れるか、現れないかということは、判定のしようがない。これは多分、疫学の先生に聞いたほうがいいと思います。しかも、これ数の問題じゃなくて、数が増えたら統計的な不確実性は小さくはなりますけど、人間はヘテロの集団なので、ヘテロの大きさは物すごく大きくなるのですね、食事から遺伝的な違いから何から。そうすると、統計学者が言うような、数さえ稼げば有意に出るだろうということには単純にはならないと私理解しておりますので、そうすると、その辺りで一応計算はするというのは、リスクプロジェクションとして、これは防護のために必要であろうということは言える。
     だから、問題は、そこの数字がどれほど確実性を持っているのか、不確実性なのかという議論をして、それをつけてしかるべき数字が出てきた場合に、これをプレゼンテーションする、それは別にそれでいいのではないかというふうに思います。
     基本的には、私はそのように考えております。だから、WHOに関しても、そこの何がよくて、私はWHOの場合は、線量評価はよくないと言っていましたので、なぜかと言えば、WHO側のこれは過剰推定であると言ったので、既に、事故が起こってしまった場合に過剰推定するのというのは、現場の方に対して無用の不安を与えるから、それはやめてほしいというようなことを言ったのですけど、そういう議論があったんですが、やはり過剰評価になって出ておるんです。
     それに関しては、私はいまだにWHOに対しては文句を言っているのですけど、そういう状況があって、その個々のやつについては、いいところ悪いところいろいろあると思います。基本的には、不確実性の問題と直線使って評価するというものの限界というものをきちっと我々は理解して作業を進めればいいかと思います。
  • 石川委員 もうちょっと1時間たっちゃったので、あとスケジュール的に2回しかないというふうにお聞きしているので、早く私たち、この専門家会議の基本的な健康管理に関することだとか、医療に関する施策のあり方というところにもう早く歩を進めないと、とても要するに任務が達成できないと思うのですよね。もうこれ線量の話と健康リスクのことについては、後からまた意見を事務局が集約していただくということで、早くこの先に進めたほうがいいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  • 長瀧座長 おっしゃるとおりですね、やっぱり全く議論だけで時間を過ごすわけにはいかない。やっぱりある程度に集約して、委員会としての議論をまとめなきゃならないということがございますけども。
     どうぞ。
  • 得津参事官 事務局でございますけども、あと2回というちょっとご発言ありましたけども、事務局としては、きちっと議論はしなきゃいけないということで、2回というふうなことには、全然こだわっておりませんので、一応この場で申し上げさせていただきます。
  • 長瀧座長 私もこの前、あるところまでは、ある期間までにまとめなければいけないというようなタスクがあるのだと思って始めたわけですけども、どうもその議論が簡単に集約できるような方向ではないという感じもしてきまして、今はむしろ、委員の先生方がお話しになりたいことがあれば、十分にご議論いただいてという方向に、私自身はもう事務局とそうなるんではないかというふうなお話をしているところです。ただ、無限に時間があるわけではありませんから、やはりどこかで集約ということを考えなければならない。  どうぞ。
  • 石川委員 先生方の意見を聞いておりますと、今までの意見を反芻しているようなところがあるのですよね、私の中でもそうですし。ですから、この議論は先ほど言いましたように、事務局に後の意見があれば集約していただいて、もう少し先に進む、健康管理の問題だとか、医療施策の問題はもっともっと議論があるんですよ。もっと長い時間が必要なので、ぜひそっちのほうに進んでいただかないと、今年中だとか、もっともっと先になっちゃうと思います。実際には、今悩んでいる方たちがいっぱいいるので、早くやっぱり一定の議論を進めていかないと、私たちの役目というのは、終わらないのではないかと思うので、よろしくお願いしたいと思います。
  • 長瀧座長 私もそこが一番、健康管理をどうするかということが、一番この委員会の大きな責任のある問題、義務だと、責任だと思っているのですけども、ただ、そこに行くまでにやはり、線量あるいはリスクの評価で、ある程度、委員の間の合意がないと進まないのではないかなという気持ちがあって最初にやってきたと。
     どうぞ、本間先生。
  • 本間委員 私が、最初申し上げた、線量評価のまとめは、今この事務局が用意した資料1、2、3という、こういうボトムアップ的なアプローチで、最終的なこの会議の、今、石川先生がおっしゃったような健康管理のあり方、私はそこが専門じゃございませんけれども、健康管理のあり方について議論するのが最終目的であるのに、それを線量評価はこうであって、健康リスクがこうである。長瀧先生おっしゃるように、そういうものの把握は重要だと思うのですね。全体的な把握は、僕は重要だと思うんですけれども、それが厳密になされないと、健康管理のあり方の議論ができないわけではないわけで、そこから出発して、そのためにはどの程度の現状の健康リスクがあるのか、あるいは線量評価の不確実さというのは、どういうものなのかという、いわばボトムアップというよりは、そちらからの議論のほうが必要なんじゃないかというふうに私は思います。
  • 長瀧座長 そうすると、今、本間先生のお考えは、あるいは石川先生も入れて、健康管理のお話に議論を進めて、その中で、リスク評価の話が出てきたときに、その場で、リスクの話もするし、線量評価の話もすると、そういう格好で、健康調査、健康管理の問題に進んだほうがいい、そういうことで大体皆さん、賛成でよろしいでしょうか。
     特に、反対がございましたら、健康管理に進むということ、線量リスクの評価は、今の議論はまとめますが、ただ、まだちょっと時間はあるのかな。6時半までリスクの時間はありますね。リスクの予定としては、まだ時間が15分、20分はございますので続けてもいいのですけど、方向としてもう健康管理のほうへ進んだ方がいいのではないかと。あまり線量リスクをきちっとしたまとめがなくてもよろしいということで、その議論の中で、線量あるいはリスクに関しての議論もすると、そういう方向であるということで。今日もちろん健康管理の話に入る予定でおりまして、資料も準備してありますし、今日お話しいただく先生にも、むしろ健康管理を頭に入れてお話しいただくということですので、どっちかというと、今日急いでリスクまでまとめをつくろうとしたんですが、まとめは並行してでもいいということですね。
     最終的に、中間報告のときにまとめるというぐらいのつもりで、健康管理をディスカッションしながら、という方向でよろしいでしょうか。
     それでは、そういうお話でございますので、どういうふうにいたしましょうか。今日お話をいただく先生はお二人おります。健康管理の前にお話しいただこうと思っていたんですが、むしろここでもう、健康管理について準備してきたことを先にお話しいただきたいと思います。ただ、ここの主な大きな目的は健康管理でありますし、線量評価、それからリスクに関して十分なまとめはありませんけれども、今までの討論の中で、平均というか、マジョリティーに関しては、線量はそんなに高くない、リスクは低いんだということの了解もあります。
     ただ、測定できていない人に高い人がいるかもしれないとか、あるいは線量の評価として何か評価の結果として、何か起こるかもしれないということを持った上で、どう線量、健康管理を行うか。これは一つの方向として、リスクはゼロではないから何でも検査をしたほうがいいと、可能な限り検査をする。そして、その検査に従って出てきた以上は、できるだけ治療をする。生涯を補償すると。そういうのも一つの方向として、当然存在するわけですね、健康管理としては。
     だけど、ここにいる先生方は、それぞれがご自分の専門の中で、ずっと今まで意見を持って十分な経験はある先生ですから、本当にそれでいいのかと、リスクあるいは線量が、現在我々が議論してきたようなものを前提として、何が本当に住民の方のためになるのかと。
     これは私自身、先生方全員に物すごく重い責任を持ってお話しいただかなければならないというふうに思っております。これは将来、この結論がどうなるか、もちろんそこに社会と、あるいは政治的な問題もございまして、必ずしも専門家の議論のとおりにはならないかもしれないけど、専門家として責任を持ってこう考えるというところは、やはりこの委員会の責任だろうと思います。そういう意味で、今から今まで議論してまいりました線量、あるいはリスクの評価を漠然と踏まえてではありますけれども、その状況でどういう健康の管理ができるかということの議論に入りたいと思います。
     ちょっと早いものですから、宮内先生、先にお話しいただこうと思ったんですけれども、今の議論の様子で、最初に、むしろ先生には、こんなお話だということをお話しするために、健康評価のことについて、事務局が準備したところをお話しいただけますでしょうか。
     どうぞ。
  • 佐藤補佐 では、資料3をお手元にご用意ください。
     健康管理のあり方に係る各論点に関するこれまでの意見の概要というものです。
     こちらにつきましては、第7回の会議で資料2-3として論点をお示ししたものと、それに個々の論点について、これまで先生方のこの会議の中でご意見をいただいたものを記載したものになります。
     前回の会議の際にも、これとほぼ近い資料でご提示をさせていただいたのですが、前回の会議では、これについて議論をする時間がとれませんで、今回は表現のところを少し見直して、ほぼ同じ形のものをお示ししてございます。
     項目と論点について、確認をいただければと思います。
     まず、1ページ目の1からですが、長期的なフォローアップの在り方について、WHOは健康影響報告書の中で住民の健康の長期的なフォローアップの在り方を示しているが、本専門家会議でその考え方を用いることについてどう考えるか。
     そして2ポツですが、スクリーニングの在り方について、健康リスクに対する具体的なスクリーニング手法及びその利益、不利益についてどう考えるか。
     おめくりいただきまして、2ページ目、3ポツとありますが、疫学的調査について、被ばくと健康リスクに係る新たな知見を得るための疫学的追跡調査や、その具体的な手法についてどう考えるか。この点につきましては、後ほどヒアリングということでお越しいただくことになっております津金先生のほうから、これに関連したお話をいただくことになっております。
     続きまして、3ページ目ですが、4、福島県の「県民健康調査」及び現在までの結果の評価について。健康リスク評価を踏まえ、福島県における県民健康調査の調査設計について、長期的な調査・評価を行う観点からどう考えるか。
     (1)甲状腺検査について。事故時18歳以下の者を対象に、平成25年度までを「先行調査」、平成26年度以降を「本格調査」とする甲状腺調査について、適切な調査設計がなされているかどうか。また、これまでの調査結果に対する評価、その評価結果を踏まえた調査の見直しの必要性についてどう考えるか。
     下のほうに、(2)とありますが、その他の調査についても、ご議論いただいているところです。
     おめくりいただきまして、4ページです。
     4ポツ、医療に関する施策のあり方について。放射線被ばくによる健康リスク評価の結果や、事故による健康への影響を踏まえ、支援が必要と考えられる範囲をどう考えるか。特に、対象とすべき年齢や疾病等についてどう考えるかという論点がございます。
     それから、5ポツですが、健康不安への対応を含めた健康管理全般に関する支援の在り方について。(1)福島県の健康支援について、(2)健康不安対策について、そして5ページ目になりますが、(3)個別的補償についてどう考えるかと、それぞれご意見をいただいているところでございます。
     資料3は以上です。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
     この議論を始める前に、大体こういう方向で、宮内先生、具体的に、健康管理、甲状腺がんの問題が非常に大きなことでありますので、最初にお話しいただいてよろしいでしょうか。
     宮内先生、本当にご足労いただきまして、ありがとうございます。
     甲状腺の専門家として、本当にもう十分に長い経験と治療をお持ちでございますので、その一端を今日お示しいただいて、我々の参考にしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  • 宮内氏 隈病院の宮内でございます。
     まず最初に、議事次第に私の話のタイトルとして「小児甲状腺がんの臨床について」となっておりますが、私、電話で、ここで話をするということにつきまして依頼を受けたときには、福島県で行われている甲状腺に対する検診に関連して、隈病院での経験をわかる範囲で述べてほしいということでございますので、当院では、甲状腺の小さながんに対しては手術をしないで、経過観察をするということを21年前からやっておりますが、それについてご説明させていただきます。
     ただ、最初にお断りいたしますが、これは全て成人のデータでありまして、小児、二十歳以下の者については、全く直接的なデータはないし、また、いろんなところから推測するデータも極めて乏しいのが現状であります。
     まず最初に、私のところに出してあります資料の1、これはアメリカのですが、ここにありますように、甲状腺のがんが急速に増えてきている。ただ、増えているうちの大部分は甲状腺のがんの中でも乳頭がんというタイプのがんで、ほかのがんは増えていない。そして、乳頭がんの中でも見ましても、次のページ、2ページにありますように、1cm以下あるいは2cm以下のものが増えているのであって、大きいがんは増えていない。
     それから、もっと大事なことは、がんは増えているのですけど、死亡率は全く横ばいであると。彼らは、最近、もっと新しくデータを出しまして、3ページの上に書いてありますように、最近では、以前に比べて2.9倍にがんが増えているのだけど、甲状腺がんによる死亡率は一定であると。
     実は、アメリカでこうなのですが、日本では、アメリカよりも、もっと早く甲状腺がんの増加が始まりました。これは我が国では、甲状腺の腫瘤の発見と診断に、超音波検査と穿刺吸引細胞診をアメリカよりもずっと前に採用したためだと考えています。そこにありますように、日本でも甲状腺がんの増加が1975年以降ぐらいから増えてきておりますね。しかしながら、死亡率を見ますと、大ざっぱに言って、そんなに大きな変化はないということであります。
     ちなみに、甲状腺微小がんの定義ですが、これはWHOでも、あるいは我が国での甲状腺がん取扱規約でも、最大径が1cm以下の甲状腺がんでありまして、その転移とか浸潤の有無、症状の有無、発見の契機を問わないというのが基準です。
     最近、とくに問題になっているのは、画像検査で偶然発見されたがんということになります。ここで、皆さん、小さながんというのについて論文を読まれるときに注意していただきたいのですが、注意すべき例として、6ページの上に二つの論文を紹介していますが、小さながんでも調べると予後が悪い。だから、積極的に大きな手術をすべきだと書いています。例えば、甲状腺全摘、頸部郭清、放射線ヨードの治療等をやるべきだというふうな論文がありますが、内容をよく見ると、その中にはリンパ節転移を伴っていたり、遠隔転移のあるものを含めて論じているのです。今、問題になっているのは、画像検査でたまたま見つかったような小さながんであるということですね。
     その下の6ページの下が当院でのデータですが、微小がんであっても、リンパ節転移があるものは手術しても再発率が高い。ただ、転移のないものは、全く、再発率が極めて低いということですね。
     7ページになりますが、剖検で甲状腺を調べると、甲状腺とは関係のない病気で亡くなられた患者さんの甲状腺を調べると、甲状腺のがんが見つかる。これを「ラテントがん」といいますが、その頻度が非常に高い臓器であるということが昔から知られておりまして、その7ページの下のところにありますが、カラムの3mm~9mmというところ、大きさですね。そこのところを見ていただきますと、2.3%~5.2%ぐらいの患者さんに小さながんが見つかると。なぜ3mmからといいますと、これは実は超音波検査で発見できて、穿刺吸引細胞診で診断できる大きさであるからです。
     実は、その次のページ、8ページの上にありますが、香川県がん検診センターの武部先生が、乳がん検診、だから、成人女性を対象に乳がん検診のときに一緒に甲状腺を調べて、見つかった結節に対して細胞診を積極的に行いますと、初期には3mm以上を対象としたところ、何と対象者の3.5%に甲状腺がんが見つかったと報告しています。彼は、その後、これはあまりにも見つけ過ぎだということで、対象を絞って、あと後期では1cm以上というふうに絞っております。
     あと、検診のバイアスについては、リードタイム・バイアス、レングス・バイアス、オーバーダイアグノーシス・バイアスというのがありますが、これは多分、次の津金先生がお話しになることですので、割愛させていただきますが、10ページに、上のところにありますように、剖検の研究では、3mm以上の小さながんは3ないし5.2%ぐらい見つかる。超音波と穿刺吸引細胞診を行って、甲状腺がんの集団検診を行うと、成人女性の3.5%に小さな甲状腺がんが見つかる。当時の臨床的甲状腺がんの罹患率が10万人に3.1ですので、これは1,000倍以上高い頻度ということになります。
     その後、超音波、CTスキャン、MRI、PETなどで、いろんな機会で小さな甲状腺腫瘍が見つかる機会が増えてきました。小さな乳頭がんが増える、これは世界的な現象であります。非常に大きな問題となっているのですが、実は甲状腺の小さながんのナチュラルヒストリー、自然経過はよくわかっていません。一つの考えは、全ての小さながんは臨床がんの早期であって、そのがんは、放っておくと、やがてその患者さんを死に至らしめる。もう一つの考えは、ほとんどの微小がんは成長せずに害をもたらさない。これらは無害ながんであろうと。どちらが本当だろうかということですが、私どもは、下の2のほうが、より真実であろうと考えました。
     しかしながら、どんな大きな進行がんも、かつては小さながんであったわけで、その害を及ぼすかもしれないがんをどのようにして知るか、現在のところ、いい方法はありません。私は、直ちに手術をしないで、経過を見て、少し大きくなったら、その時点で手術を行っても遅過ぎることはないであろうというふうに考えました。
     そこで、13ページの上にありますように、1993年、21年前に低リスクの微小乳頭がんに対しては、手術をしないで、経過観察するということを隈病院の医局会で提案して、皆さんの賛同を得て、こういう方針をやっております。
     高リスクの微小がんというのは、1cm以下であってもリンパ節転移や遠隔転移があるものと、周囲に浸潤している等の所見がある場合などです。低リスクの微小癌は、そういうような所見が一つもないものです。低リスクの甲状腺微小がんの患者さんには、患者さんにこういう説明をいたしまして、患者さんが経過観察をするか、あるいは手術をするかを決めていただくというふうにいたしました。
     我々がやり始めてから2年後に、がん研病院の杉谷先生も同様のトライアルを始められまして、その結果が非常によく似たデータでして、ほとんどあまり大きくならない。リンパ節転移も出現率が少ないということで、甲状腺腫瘍診療ガイドライン、これは日本甲状腺外科学会と日本内分泌外科学会が出したものですが、手術しないで経過観察するというのも選択肢の一つ、経過観察しなさいというわけじゃないのですが、選択肢の一つとして採用しました。
     それで、私ども、今年の1月ですが、"THYROID"という雑誌に我々のデータを報告しています。それは1,235名の患者さんに経過観察をしたものです。内訳は、14ページの上に書いてあるとおりであります。それで、3mm以上大きくなったものが10年で8%、それで、新たなリンパ節転移が出現したのは10年で3.8%です。リンパ節転移が出てきたものは、経過観察したための失敗であるかというふうにお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、リンパ節転移のある甲状腺がんの患者さんには、甲状腺全摘と頸部の郭清を行います。最初の時点で手術をしていたとすると、甲状腺の片葉切除と気管傍の郭清しかしないのが日本の常識ですので、その場合には、外側のリンパ節転移の出現を防止することはできません。そうすると、そのような患者さんは2回目の手術が必要ということになります。いずれにしても、予後は非常に良好でございますので、私どもは、手術は1回のほうがいいと考えています。
     実は、甲状腺の乳頭がんは、高齢者の予後が悪いということが知られております。高齢者を手術しないで経過観察をするということについて、若干の懸念がありました。ところが、実際のデータを見ますと、40歳以下と40歳~59歳、60歳以上の三つの群に分けています。その分けた理由は、そこに書いてありますが、時間の関係で割愛させていただきますが、分けてみますと、最初の予測とは違って、60歳以上は非常に大きくなりにくい。40歳以下の若い人のほうが大きくなりやすい。20ページの下のグラフにありますように、リンパ節転移の出現率を見ましても、40歳以上の中年、高齢の人はリンパ節転移が出現しにくい。若い人は出現しやすい。ただ、若いといっても、これ、全部、成人でございますので、小児のデータはございません。
     以上のことから、低リスクの甲状腺微小がんに対して、非手術で経過観察もいい方法ではないかと思います。若年者では若干進行する症例が多いようですが、いずれにしても、最終的な予後はいいから、経過観察でもいいのじゃないかと思います。
     ただし、現在、問題となっている福島県の検診関係で、小児での非手術、経過観察のデータは全くありません。我々もそういう経験がありません。
     ただ、ちょっと推測をしてみますと、甲状腺の乳頭がんの中で小児の者は1.4%、小児の剖検でのラテントがんについての報告はほとんどありません。武部先生のデータから、この下に書いてあるような推測を行うと、小児30万人に対して、同様の手技で検診を行うと、100人弱の甲状腺がんの患者さんが見つかるのじゃないかというふうな計算になりますが、これは単に計算です。
     そういうことで、最後のところに書いてありますように、小児の甲状腺がんが小さいのが見つかった場合に、経過観察ということも、今後、あるかもしれないとは思うんですが、ただし、やはり患者さんのご両親と患者さんの心理状態を考えて対応する必要があります。
     それから、福島の原発事故以降、3年半たちまして、やっぱり時間の経過とともに、住民あるいは周りの人たちも、いろいろ受け取り方、考え方が変わってきている。その受け取り方の変化ということも考える必要があると思います。
     以上でございます。
  • 長瀧座長 どうも先生、ありがとうございました。
     非常に甲状腺の専門家として、被ばくと関係なしに、超音波検査あるいはバイオプシー、世界の動きはどうであるというお話をいただきました。それから、ご自身の経験で、皆様の質問を受けますけど、先に座長の特権で伺いますが、小児の結果というのは、先生のところだけでなくて、あれですか、世界中でどこにも結果はないのですか。
  • 宮内氏 小児について、積極的に検診を行ったというのはありませんし、まだ子どもさんは一般的に健康ですから、例えば超音波検査とか、CTとか、MRIとか、そういう画像検査を受けるチャンスもないですよね。ですから、小さな腫瘤がたまたま見つかるということもない。ですから、小児についてはデータが全くありません。また、ラテントがん、剖検でのスタディもごくごく少数ありますけど、信頼できるほどの数の報告はございません。今日お話ししましたのは、私どもの症例、患者さんは、基本的に成人でございまして、小児は含まれていません。
  • 長瀧座長 どうぞ、どなたでもご質問を。
  • 遠藤委員 宮内先生、本当に手術件数も日本で有数というか、世界でも有数の甲状腺の先生でございまして、僕も昔からよく存じているのですけど、手術が本当に上手です。甲状腺がんの経過観察ですけども、そう容易じゃないといいますか、患者さんからがん細胞が出ました。しかし、手術しないで様子を見ましょうというのは、なかなか選択肢として、患者さんがどのぐらいの割合いるかなというのが気になるのですね。多くの方が、もう手術してしまいますという方のほうが多いんじゃないかと思うのですけども、先生の病院では、どのぐらいの割合の方が手術されて、どのぐらいの割合の方が経過観察で、先生がフォローアップされるのかというのが、まず最初のご質問なのですけど。
  • 宮内氏 がんがあるのに手術しないで、経過観察をするというのは、医者のほうも、患者さんのほうも、確かにまごつくところだと思います。おっしゃるとおりです。ただし、大きなところを把握すれば、大部分の甲状腺の微小がんは大きくならない、大きくなりにくいだろうと、そう考えるのが妥当だと考えて、隈病院の医局会に提案したわけですが、最初は7割、8割の患者さんは手術を選ばれました、最初のころ。誰が説明するかによって、違いました。実は、私が説明するか、隈寛二前院長が説明した場合、これは患者さんの多くが手術をしないで、経過観察を選択されました。内心、手術しちゃったほうが簡単だと思っている医師が説明すると、そっちのほうになりました。ところが、最近は、最近も医局で当院医師の皆さんに聞きましたけど、大体8割、9割の患者さんは手術をしないで、経過観察を選んでおられます。
  • 遠藤委員 実は二つ目の質問は、清水先生にもお聞きしたいのですけど、実は、僕はヨウ素-131をするほうで、外科の先生が手術されたのを、ヨウ素-131を使って、甲状腺がんの肺転移の治療をするんですね。僕、今まで、4人ほど肺転移のヨウ素-131を、治療をしたのですけど、子どもさんでしたんですけど、いずれもお元気になられて、結婚されて、子どもまで生まれているのですね。皆さん、大喜びで、喜んでられるのですけど、お二人の外科の先生、経験は深いのですけど、子どもの甲状腺がんで亡くなった方、経験あるかどうかお聞きします。
  • 宮内氏 残念ながら、ございます。ただ、遠藤先生がご指摘のように、一般的に小児の甲状腺がん、乳頭がんにつきましては、結構成人に比べて腫瘤が大きい。そして、リンパ節転移の頻度が高い。それから、遠隔転移、特に肺転移の頻度が高い、成人に比べてですね。であるのにもかかわらず、多少再発はしても、生命予後が非常にいい。非常に不思議ながんであります。
     それから、小児といいましても、実のところ、10歳未満は非常に少なくて、15歳以上ぐらい、だんだん二十歳に近いほうが、頻度が高くなってきております。
  • 遠藤委員 清水先生、よろしいですかね。
  • 清水委員 私は、自分の大学では1例も経験しておりません。ただ、以前、東京の伊藤病院に勤務していたことがあるのですけども、そこで1例経験しております。それは、かなり前に手術したお子さんで、26年フォローしていて、1例だったと思います、肺転移が。
  • 遠藤委員 どうもありがとうございました。
  • 長瀧座長 ほかにございませんか。せっかくのチャンスですので、どうぞ。
  • 大久保委員 これ、仮定の話なのですけど、もし小児で3mm~9mmの間のがんが見つかって、それを手術した場合、最も重要な合併症というのはどのぐらいの頻度であるんでしょうか。
  • 宮内氏 甲状腺のがんの手術で、一番大きな合併症は二つ、一つは反回神経麻痺(声帯麻痺)ですよね。それからもう一つは、甲状腺の全摘した場合の副甲状腺機能低下症、この二つが一番大きな問題になります。
     その頻度ですが、これは慣れた施設で経験のある外科医がするか、さほどでないかによって、大分変わってくると思いますが、私ども、専門的にやっている、あるいは福島医大でも鈴木先生中心に専門的にやって、十分経験のある人がやっておられますので、その合併症の頻度は十分低いものと思います。
  • 長瀧座長 ほかにございませんか。
     どうぞ。
  • 明石委員 放医研の明石でございます。
     1点お聞かせ願いたいのは、大きさがどれぐらいのスピードで大きくなるか、大きさってサイズが。それは先生の統計の中で、例えば5mm大きくなるとか、そういう何か大きさと時間との関係というデータがもしありましたら、お教え願いたいと思います。
  • 宮内氏 ここに出してありますように、3mm以上大きくなったものを大きくなったというふうに判断した場合の変化ですね。中には逆に小さくなるものもあるのです。それから、ちょっとフラクチュエーションというか、大きくなったり小さくなったりするものもある。ですが、オブザーバーバリエーションも考えて、3mm以上大きくなったものを大きくなったと捉えて、出したデータがここの数値です。
     それから、例えば1cmぎりぎりのものが、1.5cmまで、なるまで待つとかいうことはしませんので、ある程度大きくなったら手術させていただきますから、その先生の質問に直接お答えはできないかもしれません。
  • 清水委員 同じ外科で、いつも宮内先生にお世話になっているのですけど、その1cm以下の微小がんをフォローしている患者さんが私のほうにも何人かいるのですけども、医学的なことじゃなくて、例えば社会的な問題で、がんがあって、胆がんの状態で結婚の問題とか、あるいはがんがあるのにがん保険に入れないと思うんですよね。そういう患者さんに対して、もしいた場合にどういうふうに対処されているのでしょうか。
  • 宮内氏 これはソーシャルなものとエモーショナルな問題ということで、ご指摘のとおり、難しい点を含んでいるかもしれませんが、一応当院での穿刺吸引細胞診での診断率は98%ぐらい。100%ではないということを踏まえて、がんの可能性が極めて高いという立場で患者さんに説明しています。ですから、具体的に申し上げますと、がん保険については、あくまでも、がんの疑いとしか書けませんよということですね。新しくがん保険に入るかどうかについては、具体的にそういう事例で問題になったことはないのですが、やはり保険に入るときに、保険会社には告知というか、申告しておいたほうがいいのではないですかというふうには言っております。それがどう取り扱われたかについては、ちょっと把握しておりません。
  • 長瀧座長 それから、やっぱり早く見つければ、半分だけ取って、もうそこで、あと薬を飲まなくてもいい、そのまま普通の生活が続けられるという手術が大部分ですか。
  • 宮内氏 詳しくお話ししませんでしたが、実は、甲状腺乳頭がんというのは、結構多発もあるのですよね。ですから、小さくても手術をするという立場で、多発であれば甲状腺全摘ということになりますと、全摘の症例も相当増えると思います。そうしますと、正直申しまして、合併症の率は低いといっても、たくさんすれば、どうしても永続性の副甲状腺機能低下症なんかを起こしますので、何でも手術するのがいいとは思いません。
     それから、多変量解析をしていますと、説明しませんでしたが、家族歴があるとか、あるいは多発病巣があるということと、進行するかどうかということとは、特別な関連性がございません。
  • 長瀧座長 ほかにございませんでしょうか。
     どうぞ。
  • 阿部委員 福島医大の阿部と申します。
     うちのほうで、甲状腺の健康管理の調査、検査をやっております。今まで悪性ないし悪性の疑いというのは、センターのデータから言うと、90例の方がいらっしゃって、そのうち、51例手術をして、50例ががんだったということで、その中には10mm以下の微小乳頭がんがございました。その手術は、先生おっしゃったとおり、私どものセンターとしては、高リスクの条件にあったものにだけ手術を適用しているということで、今、やっているところです。
  • 宮内氏 ちょっと補足させていただきますが、実は、私、福島県の甲状腺検査専門委員会の診断基準等検討部会の委員も仰せつかっておりまして、一昨日、その検討会に出たんですが、福島県医大で手術された症例について説明を受けましたが、少なくとも7割以上の症例は、大きさが1cm以上とか、リンパ節転移があるとか、中には遠隔転移のある症例も含まれておりまして、現在、我々が、普通、常識的に手術の適用としている患者さんです。3割程度が1cm以下ですけど、鈴木先生のご説明では、反回神経に近い、我々が高リスク、ハイリスクとしているような症例ですね。あるいは気管に接していると、そういうふうな患者さんに手術をしているという説明をいただきました。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
     まだまだ伺いたいことがいっぱいあるのですけども、お時間が参りまして、また何かあれば、また先生、後で伺わせていただきますが、どうも本当に、先生、ありがとうございました。
     それでは、次に、津金先生、どうも今日はありがとうございます。続いて、講演いただけますでしょうか。
  • 津金氏 国立がん研究センターの津金と申します。疫学の研究者です。
     本日は、疫学研究の方法論的な話をするようにというふうに仰せつかりました。ほかにもそういう話をする方、適任の方は幾らでもいらっしゃるとは思うのですけれども、私自身が20年以上にわたって、10万人のコホート研究というようなことを日本でやってきた経験を踏まえながら、いろんな問題点などについてお話しできればというふうに考えています。
     最初は、因果関係を肯定するために否定しなければならない3要素という話なのですけれども、コホート研究に基づいて、放射線の発がん影響などを検証する際の留意点です。
     3枚目のスライドは、疫学研究における関連ということで、疫学研究においては、要因について、コホート研究においては前向きに調査します。これは放射線ばく露の有無とか、量とかも、今回の場合は一つの重要な要因だと思いますけれども、その人たちを、要因について把握した後、追跡していって、病気の発生を見ていくと。今回の場合は、例えば甲状腺がんなどと。ただ、一般的には、数年~十数年、発がん要因という意味においては十数年の経過が必要なので、その間をいかに把握していくかというようなことが重要な問題になります。
     あとは疾病の側から、症例対照研究とか、あるいは、そのときの放射線量と、そのときの疾病の有病率みたいなものを見る断面研究などもありますけれども、ここで、例えば関連が見られた、放射線ばく露が多いと甲状腺がんが多いという関係、例えばですね。それから、ばく露量が多いほど頻度が多いというような用量反応関係、こういうことがやられた場合に、これが、要するに、放射線の影響であるという因果関係であるということを証明するためには、教科書的には三つの要素を否定しなければいけない。偶然、バイアス、交絡であると。偶然というのは、たまたまそういう結果があったという、非常にランダムなエラーですね。ランダムな誤差で、それから、あとは系統的に起こるものとしてはバイアス、それから、交絡というものがあります。バイアスというのは、いろんな例えば放射線量の把握をするときに、ある系統的な誤差、何となく非常に自分がたくさん、ばく露していると思う人は、たくさん多く申告するとか、そういうふうな系統的な誤差があった場合がこういう問題が起こって、それから、交絡というのは、要因にも関係するし、それから病気の発生にも関係する隠れた要因というものがあると、それとの、本当は原因はそちらにあるんだけれども、見かけ上、関連が見えてしまうというような関係です。
     偶然を否定するために、4枚目ですけれども、これは一般的には統計的検定って行われていて、p<0.05というのは、これがたまたま起こった確率は5%未満であるというようなことですね。それを事前には検出力を上げるということですね。いわゆるそれはサンプルサイズを増やすということになります。
     それから、最近では、なかなかある程度、調査というのは繰り返せないので、事後的にメタ解析とか、プール解析というような形でパワーを上げるというようなことが行われています。
     それから、5枚目は、たまたまちょっと我々が、10万人のコホートの中で、サブコホートというものをつくりながら、いろんなエンドポイントというか、いろんな病気に関しての関連を見ようという研究デザインをつくっているときのサンプルサイズの計算で使ったもので、必ずしもいいスライドがなくて、これをちょっと持ってきたのですけれども、この四角で囲っている一番右側のやつが、実際のコホートで検出するパワーということになります。ハザード比が1.25倍で、その要因を持っている割合が20%で、10万人のコホートで1.25倍を検出するためには、少なくとも約750例のイベントが出る必要があると。
     それから、今度はハザード比が1.10とか、そういうものを検出すると、もう30万とか100万人のコホートで、5,000人とか、何千人というイベントを得ないと検出ができないということになります。
     下は、実際はあくまで大人の話なのですけれども、14万人の40歳~69歳の男女を約20年追跡すると、どのぐらいのがんが発生するかというと、2万人、がんが発生します。内訳は、そこに書いているとおりなのですけれども、例えば甲状腺に関しては249例が罹患しているという状況です。
     それで、10万人のコホートであれば、食道より頻度の多いがんで、大体1.25倍のリスクを検出できます。甲状腺がんは、当然検出はできません。ただ、30万規模にすれば可能であろうということになります。1.1倍のリスクというのは、意外と放射線の発がん影響というところで、ある程度、線量が低い場合に問題にしなければいけないリスクの大きさなんですけども、これは100万人コホートを20年間ぐらい――あくまでも大人ですけども――追跡すると、食道より頻度が多いがんで検出ができるけれども、それでも甲状腺は検出ができないというようなことになります。まして子どもとなると、もっと頻度が少ないので、もっとたくさんの対象者数が必要ということになるかと思います。
     それから、7ページ目は、バイアスを否定するためにということで、情報バイアスとしては、検査のほう、検査をするかしないかで、甲状腺のがんの発見率というのは違うということは、もう明確なんですけれども、そのために、やはり皆、同じ検査をしないといけない。それから、やはりブラインドしていないと、検査者に対する、どうしても、もしかしたら、この人は甲状腺、例えば放射線量被ばくが多いので、甲状腺があるかもしれないというような、そういうバイアスが入ってくるという問題がある。それから、追跡調査や何かにおいて、何か、要するに、症状があると回答しないとか、あるいは回答するということがあるので、精度の高い追跡が必要になるということになります。
     それから、因果の逆転ですね。症状があるとばく露を過大報告するなどというようなことが起こって、それから、そういう意味で、要因と疾病把握の時間的関係、これも非常に因果の逆転を否定するためには重要で、要因ばく露から数年以内に発生したものは除外するとか、そういうようなことによって、因果の逆転というものが起こることを防止するというようなことがとられています。  それから、選択バイアス、コホート研究ではケースコントロールスタディや何かで起こりやすいんですけど、コホート研究では問題になりにくいのですが、得られた結果を外的に当てはめるときに、なるべく母集団の代表性を確保するということが重要で、これは参加率を上げると。
     それから、9枚目は、交絡を否定するためにということで、事前に想定される交絡要因を把握しておくということです。甲状腺がんのリスク要因というのは、あまり実はそんな多くはわかっていないのですけども、確実なリスク要因としては放射線ばく露ですね。特に乳頭がんに関して。それから、恐らく可能性が高いのは、ヨードの過剰摂取が乳頭がんのリスクを高めること。それから、ヨード不足だと濾胞がんのリスクが高まるというようなことが言われています。そのほか、野菜不足とか肥満、ですので、放射線と例えば甲状腺がんの関係を見るには、こういう要因の例えばどれだけ医療で被ばくしているかとか、それから、ヨードの摂取量はどのぐらいかというようなことも把握しておく必要があるということになります。そして、解析時に、層別解析や統計的補正を行うということになります。ただし、もちろん完全には補正できないので、ある意味では、バイアスとか交絡を否定する唯一の方法論はランダム化であるというふうに言われているゆえんです。
     それから、追跡の重要性と、特に日本において疫学研究をしていることにおいて、とてもやはり不幸な状況というのが実はありまして、我々のコホート研究の一つのシェーマですけれども、14万人の人たちを5年ごとにアンケートとか、あるいは、いろいろ血液を提供してもらったり、というようなこと、調査をしながらやると。例えばアンケート調査を郵送でやると、もうほとんど返ってこないとか、やはり対面で配付・回収すると、80%か90%は20年前では返ってきましたけど、今やると、それが60%か70%ぐらいになるというようなことが起こります。
     こういう形で追跡をするのですが、欧米でコホート研究をやるとすれば、もう最初の調査をすれば、あとは追跡はあまり苦労する必要はないんですけども、日本の場合はそうじゃなくて、コホート対象者が――12枚目ですけれども――その市町村に住んでいれば、絶えず住民票を照合しながら除票があるかどうかということを照らし合わせます。亡くなっているということがわかれば、保健所での死亡小票を使って死因がわかるということになります。ただ、転出する場合は、転出先をひたすら、5年ごとですので、4年以内に住民票照会を永遠にし続けなければいけないと。それによって亡くなったということがわかって、厚生労働省のいろんな統計情報での死亡票と照合するというようなことが行われます。
     13枚目ですけども、ところが、アメリカとかほかの先進国でこういうことをやろうとすると、"National Death Index"というのがあって、死亡者のデータベースがあるので、研究対象者が亡くなっているかどうか、何で亡くなっているかどうかが一発でわかるので、こういう手間をかけなくてもいいと。ただ、日本はそういうことになっていないです。
     住民票照会を、だんだん異動が増えてきて物すごく数が増えるのですけども、我々、昔、国立だったときは、ある程度、公用で無料発行してもらったんですけど、独法化したら民間人扱いされるので、有料で物すごくやはり、本当は国の研究をやっているんですけども、有料扱いされてしまうという、とてもお金がかかるという問題が。それから、照合するときに、いろいろ実際、生年月日とか、名前をちゃんと見に行かないと、厚生労働省に行って、ちゃんと死亡票を見て照合しなければいけないという問題があります。
     次は、がんとか循環器疾患の罹患把握の流れなのですけども、今はいろいろがん登録がまだ十分整備されていないので、対象地域において研究ベースの登録、がん登録をつくったり、循環器疾患登録をつくります。あと、村や何かを地域がん登録とか、死亡小票やなんかで照合して補捉しています。
     次のページですけれども、幸いなことに、全国がん登録という法律ができましたので、今までは、転出をした人はもうがんが、その後なったかどうかはわからない。もう転出したが最後、わからなかったのですけど、これからはちゃんと全国がん登録と照合することによってわかるというような、がんに関しては、そういう状況が整ってきたということです。ただ、当然、甲状腺がんなどの罹患把握というのは検査に極めて依存しますので、そこをいかにバイアスがなく把握していくかということが重要です。
     最後のスライドは、既に前のスライドでありましたけども、やはり検査がどれだけ精度が上がるかによって、甲状腺がんの検出率というのは大きく違ってくるのだということです。
     以上です。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
     ご質問ありましたら、どうぞ。概論的なものでも結構ですし、実際に具体的なものでもお答えいただけると思いますので、どうぞ。いかがでしょうか。
     今、先生、具体的に福島の甲状腺がんの頻度が出てきて、本当に増えたのかという、もちろん、今、結論は何も出ませんけども、コントロールの場所で同じような検査をやってという報告がございますね、その三つぐらいの場所で。4,000人ぐらいだということで、それのメリットとデメリットみたいなものを、先生の感覚からいって、お話しいただけますでしょうか。
  • 津金氏 やはり福島において、特に甲状腺がんが増えるかどうかをわかる一番唯一のコントロールに関しては、当然同じやり方で、同じように調査するというところがないと、それと頻度と比べない限りはできないというふうに思います。
     ただ、そういう意味で、環境省がやっている三つの地域での調査、データというのは、極めて参考になって、比較という意味においては、極めて唯一の参照できるデータだとは思うのですけれども、問題点はやっぱりサンプルサイズが小さいので、今後、やはり甲状腺がんとか、そういうものに関しては、偶然の影響、それこそ、1例出ただけで大きく変わってきますので、本当はパワーを上げなければいけないのですけれども、ただ、同じことをたくさん広げちゃうと、逆にいろいろ不利益というか、本当にある程度、要するに、たくさんの人たちが診断されるということが起こるので、その何も関係ない人たちがそれで診断されていいのかというような、倫理的な問題とかそういうようなことがあるので、必ずしもそういうことは、調査対象、コントロール地域を拡大していくということは、あまり私たちは適当ではないとは思います。やはりなるべく、今やっている福島の中で、やはりきちっと線量を把握して、ただ、本当に差が出るかどうかという問題とか、それから、当然線量の5分類というか、系統的なエラーもあるかもしれないし、ランダムなエラー、当然起こりますので、ランダムなエラーが起これば、関連というのは薄まってきますので、それから、今、30万人とか50万人のパワーで子どもたちなので、検出できるリスクというのは、かなり物すごいハザード比が高くない限りは、なかなか検出しにくいかなというふうには考えますけど。
     以上です。
  • 長瀧座長 ほかにございませんでしょうか。
     どうぞ。
  • 宮内氏 先生のご指摘のように、一定のやり方でやるということは非常に大事だと思うのですが、この福島県では、超音波の所見のとり方、それから穿刺吸引細胞診を行うかどうかの適用、これを一定の基準でやっておられます。今後も多分同じやり方で続けられるのだと思います。
     一昨日のディスカッションで問題になったのは、今から2年たつ、3年たつ――今現在やっているのは、あくまでもベースラインの頻度という理解でやっていると思うのですが、2年、3年たつと、年が2年、3年、全体として年齢が上がるわけですね。そうすると、子どもの年齢においては、若いほど甲状腺がんの頻度は低い。臨床がんでもそうですね。多くは15歳以上、二十歳近くの人で増えてくる。そうすると、年が2年、3年、5年とたてばたつほど、甲状腺がんの率は増えてくるかのように見える。そこで、大事な提案がありましたが、やっぱり同じ年齢層同士で比べる。検診時に例えば15歳なら15歳同士で比べるということが要るのじゃないかというふうなディスカッションになりました。
  • 津金氏 性別とか年齢というのは、極めて重要な頻度に関わる、いわゆる交絡要因なので、当然それは完全に合わせる必要はあると思います。
  • 長瀧座長 ほかにございませんか。
     どうぞ。
  • 清水委員 同じジェネレーションで被ばく者と非被ばく者を比較する。しかも、環境省で行った4,000人のレベルでやったもの、同じぐらいのポジションなのですね。という意見が随分県民健康調査委員会でも出たんですね。それに対してモラルの問題、一つは。例えばA2といいますか、小さな嚢胞上の変化があります。ある患者さん、50%近くいるのですね。そういう子どもさんに対して、あるいは親御さんに、そういう病変がありますと言わざるを得ないですよね、病変といいますか、変化があると。そうすると、親御さんは非常に心配されるし、子どもさんも、いろんなことがわかるぐらいの年齢のお子さんだったら、恐らく心配すると。そういうプレッシャーがかかるので。あともう一つは、36万人なら36万人の人数を、被災者の人数を調べる施設、場所、あるいは、それをするだけの機械や器具、それから、検査する側の人数、そういう問題をいろいろ考え合わせると、ちょっと不可能ではないかという意見が非常に大半を占めたということをちょっと申し上げておきたいと思います。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
     どうぞ、どなたか。
  • 丹羽委員 少し本質的ではないのですけど、県ごとの罹患率なんかの違いというのは、当然ばらつきとして出てくると思うのですけれど、甲状腺なんかでも、やはり県ごとに、少し高い県、低い県、過去において見えていた。そういうようなことに直面した場合、これは単なるランダムエラーなのか、その下に何か理由があるのかとか、そういうふうなことに関しては、どういうふうに検定できるのですか。
  • 津金氏 そうですね、県別で比較すると、やはりどうしても統計的な偶然のばらつきというのはまず当然起こり得ることですね。それから、こういう甲状腺がんみたいな検査をすると、たくさん見つかってしまうというようなことがあると、たまたまその県のある学校が、熱心な先生が、そこで甲状腺の検診をやったら、ぽんとはね上がると思うので、そこはいわゆる系統的なエラーというか、バイアスということが当然起こり得て、その影響が、やはり甲状腺がんに関しては物すごく影響を受けると思います。もう、やっぱり例えば致死的ながんの頻度とか、そういうのはなかなかそう簡単には影響は受けませんけれども、いろいろ甲状腺がんみたいなものとか、例えば前立腺がんもそうですけども、そういうがんに関しては、どれだけ検査をするかによって頻度はもう大きく違ってきちゃうというのが、もう今までの世界のデータの常識ですね。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
     ほかにありましたら、どうぞ。
  • 阿部委員 津金先生にちょっとお聞きいたします。例えば甲状腺がんの発生と、例えば放射線の関係、因果関係があるかどうか、あるいは対象をどうとるかという問題の中で、会津地区というのは、比較的放射線の、空間線量の比較的低い地域、それから中通り、比較的空間線量の高い避難された地域、そういう地域ごとに分けて、甲状腺のがんの発生との関係について疫学的な分析をした場合に、かなり信用できるようなデータが得られるのか、あるいは、かなり難しい問題なのか、その辺、ちょっとコメントをいただければありがたいと思います。
  • 津金氏 それは、全員、もうほとんど100%近い人たちを同じ検査方法でやれば、ある程度、そこら辺の比較はできるかもしれません。ただ、ほかの当然性別とか、年齢とか、それからヨードの摂取量とか、そういうようなものとかも十分きちっと把握した上で、そこら辺を調整しながら、線量との関係を見る必要がもちろんあると思います。
     例えば本当にそういう近い地域の人たちの場合は、非常にやっぱり一生懸命検査して、一生懸命見つけようとするとか、もちろん善意で、ちゃんとそういうことがないように標準化してやっているとは思うんですけども、そういうバイアスがないとは言えないわけですね。そうじゃない地域に関しては、あまり例えば検査、逆に検査の受診率が低くなって、それは何か心配な人たちだけが検査を受けるということになって、そこもまたバイアスが入ったりとか、そういう可能性があるので、いろんな意味でなかなか難しいと思います。緻密なやり方をすれば、それは当然、そういうことの評価はできると思います。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
     時間になりましたので、どうも津金先生、ありがとうございました。また後の討論にもぜひ、あるいは質問もあると思いますので、よろしくお願いいたします。
     それでは、今から残りの時間の大部分を健康管理のあり方について使いたいと思います。本当に今まで、折に触れて議論した、それぞれの委員の方のご意見はまとめてありますけれども、具体的に、これ、トピックにしているのは今日からでありますので、今日は、残りの時間、なるべく基本的なことでも、基本方針あるいはご自分のお考えのことをできるだけ述べていただいて、それをまた事務局がこの次までにまとめて、議論の方向を探していこうというつもりでおります。今日は、もうご自由に健康管理についてお話しいただければと思います。
     結局は、本当に被災者のために何がいい管理の方法かということの議論をこの専門家が真剣に考えるということであろうと思います。
     あるいは、宮内先生、さっきのお話で、例えばスクリーニングをすれば見つかるわけですね、がんが。それを続けて、もうそう危険なものでもない。取ってしまえば心配もなくなる。だから、全部取って、もう最終的には福島県の10人に1人、あるいは100人に1人は、全部、甲状腺の手術をしたということであっても、安心であれば、それでもいいのじゃないかという考えがあったとしたら、先生、どうお考えになりますか。
  • 宮内氏 ちょっと今の数字は、極端な数字かと思いますが、先ほどお話ししましたように、私、福島県のこの甲状腺検診の診断基準等検討部会の委員でもございますので、若干のことは知っておりますが、そもそも福島県で、この甲状腺の検診をやられているのは、チェルノブイリでとにかく目立って増えた甲状腺のがんとしては、小児の甲状腺がんであると。そういうことは一般の住民もあらかたの方が知っておられるという状況で、福島で甲状腺がんが増えるのではないかという懸念を持っておられるのに対して、本当に増えるのかどうかについて、やはり科学的に評価せざるを得ないということから、行われた。そして、もう一つは、実際、県民の皆さんの健康を考えると。その2点があると。ちょっとどちらも結構難しい問題だと思うのですけど、そういうことからいきますと、先ほど言いましたように、一定の基準で検査をして、一定の基準で、例えば具体的には超音波ですね。一定の基準で超音波を読んで、一定の基準で細胞診をするかしないかを決めて、それを一定の基準で判断すると。そういうことをやるべきだということで、福島県では、実際、そうやっておられます。例えば具体的には、関西のほうに転居してこられている住民さん達は隈病院でも検査しているのですけど、福島県からの依頼で検診もしているんです。当院で超音波の検査を行っても、そのデータは当院では判断しなくて、福島県に送って、福島県のドクターが一定の基準で判断するということ。それで、必要があれば、細胞診も、福島県のほうからの指示に従って細胞診をして、それはまた福島県にお送りするというふうなことで、考えられる範囲では、一定の基準でやるように努力をしておると私は理解しております。
  • 長瀧座長 だから、結局、ガイドラインというか、一定の基準ということをどこかで決めることが大事だと。
  • 宮内氏 いや、もう既に決めております。
  • 長瀧座長 もう決まっている。今、決めてあるものを守っていくということ。
     どうぞ。
  • 清水委員 先ほどの対照群――対照群という言い方はどうかわかりませんけど――の話ですけれども、環境省で4,300人ぐらい、3県でやっている。母集団の人数は全然違いましたね。これから、さらに環境省では、非被災者で同じぐらいの対照群に対して検査をこれからもさらにやっていくのかどうか、ちょっとそういう計画があるのかどうか、わかったら教えていただきたいんです。ぜひ、これ、3県、4,000人でなくて、もっともっと増やして比較するべきだというふうに思うんですけども、いかがでしょう。
  • 長瀧座長 これは環境省がというよりも、先生方がここでどう議論するかということが、非常に大きな、環境省に対しては影響があると思いますので。
  • 得津参事官 今のところは、そういったことは考えてはおりませんけども、こういう専門家の会議の中で、またそういう一定の方向性というか、そういったものがもしあれば、そのフィージビリティがあるのかどうかとか、そういうことも含めて、また判断は要るかと思います。
  • 長瀧座長 私自身は、ここの先生方は、環境省に対して報告するという立場にあると思いますので、今から我々が議論をしていくことが非常に大事だろうと思うのですけれども、私自身はチェルノブイリのときに、コントロールの集団をどうしても決めなきゃならない、もう議論がいっぱいある、線量評価も十分ではないしという時期に、甲状腺が増えたかどうかということは、もうまさに一番の決め手になりましたのは、対照の方法等を決めて、そして、その同じ年齢で比較して、明らかに事故の後の子どもたちに増えているということを証明したのが、一番最初のきっかけだったろうと思うのですね。そういう意味で、今回の国際的な報告の中でも、コントロールのコホートを決めなさいと。あるいは、線量評価の、放射線によるかどうかというためには、そういうコホートを決めた調査が必要だということが書いてありますけども、具体的にコントロールのコホートをどこに決めたらいいかということは、まだ十分に議論されていないように思うんですが、津金先生の感覚で、どこら辺の可能性があるかというようなことがございますか。
  • 津金氏 コホートという場合、別にコントロールの別の地域のコホートというようなことではなくて、やはり一つの集団がコホートですよね。そこに、要するに、線量が多い人もいれば、少ない人もいるという場合に、ばく露と、その後の要するに病気との関係が成り立つので、あくまで断面的なデータで多いとか少ないとかいう意味において、今、例えば頻度が、福島で見つかっている例えば結節の頻度が多いか少ないかというときは、同じようなことをやっているほかの地域を比較するということは意味あるのですけども、今後、やっぱり追跡して、病気との関連を見ようという場合は、何もほかの地域でつくる必要は必ずしもなくて、やはり今やっている福島県の既にやった人たちを、今回の人たちをコホートとして、その人たちをずっと経年的に同じ、要するに手法で追跡していくと。全く違う地域で同じ手法で追跡していくというのは、なかなかやはり困難だと思うので、やはり私は、あくまでもそういう福島県の中で、今やっている、もう今やった人たちをちゃんと追っていくということが重要だと思うんですけども、ただ、今、私も福島県の健康管理委員会とか、それから甲状腺評価部会というのに入っていますので、いろいろ情報を得る限りにおいては、やはり非常に線量のばらつきが、なかなか低いところにたくさん固まっているので、なかなか本当にそういう評価が、差が出るかどうかということはもちろん懸念されますけれども、一応コホートとして、もしやっていくのだったら、やはり福島県内の、今、既にやった人たちをコホートとして追跡していくということが現実的じゃないかなというふうに私は考えます。
  • 長瀧座長 そうすると、例えば福島県全体を一つのコホートとして、会津地方と、浜通りで有意の差があったというときに、confounding factorをどう考えたらいいか。
  • 津金氏 ですから、やはりいろんなそういう、confounding、今、現状において予想される交絡要因に関しては、やはり漏れなく調査してとっておく必要がやっぱりはありますね。もちろん性、年齢を初めとして、いろんな甲状腺とか、あるいはそのほかの健康影響に影響を与えそうな要因について、なるべくやはりきちっと把握していくということが、コホートとして、今後、例えば用量反応関係を見るとか、ばく露が非常に多い人が、リスクが高いかどうかというときに見る上においては、やはりそこをきちっと調査しておくことが重要だと思います。
  • 長瀧座長 どうぞ、皆さん、ご自由に今日は何でも結構でございますので。
     どうぞ。
  • 丹羽委員 これ、自由にとおっしゃっていただいたので、問題はやはり二つあって、これまで議論してきた線量とリスクの関係で、例えばずっと健康管理に注意して、同時に、これは放射線というものがあって、それは線量が高い低い以前に、それがあるということ自体で生活のクオリティが物すごく悪くなって、これは単に避難して仮設におられる方々のみの問題でもないし、福島のさまざまな部分でそういうようなものがあると。そうすると、それはどうしても健康にはね返ってきますので、そうすると、従来のその健康管理の枠をさらに超えたようなもの、医大のほうでは、心とか、それからいわゆるメタボリックなマーカーとか、そういうようなものを鋭意やっておられますけど、極めて重要なことではないかと思っておりますので、単に線量と健康リスクという観点のみならず、放射線の災害というのはこういうものなのだと。生活の中にさまざまなところに侵入しますから、そういうことを十分ここでも議論していただきたいと思います。
  • 長瀧座長 もうおっしゃるとおりで、UNSCEARがいいというわけではありませんが、UNSCEARの中でも二つ書いてございますね。もう自分たちの任務ではないけれども、避難、その他の急性の影響でもう既になくなっていると。それから、もう一つは、もともとある病気が、そのために、条件のために悪くなっているというふうな言い方で、生活習慣病みたいなことと、もう一つは、精神的な影響で、あとどんな影響があるだろうかと。今でも既にいろんな精神的な影響が出ているのに、将来、この人たちはどうなるだろうかというようなことが、もうちゃんとそのUNSCEARの中にも書いてありますし、先生おっしゃるとおり、我々、放射線だけのことに問題じゃなくて、県民全体の健康を考えたときにどうかという視野も当然必要だというふうに思いますので、UNSCEARの言うとおり、また、丹羽先生のおっしゃるとおり、この委員会の最初の議論の話題になるかと思っておりますけども。
     ほかにどなたか、どうぞ。
  • 石川委員 今日の宮内先生のお話で、非常に安心した方もいるのじゃないかと思うんですけれども、きちんとやはり把握して追跡すれば、あんまり恐れることはないというふうなお話もあったんだと思うんですね。
     今日の参考資料の4に、この専門家会議の開催要綱と、その後ろのところに、子ども被災者支援法における基本方針についてというのがあるのですけれども、私は、以前、この会議で日本医師会の考え方、健康支援の考え方については述べさせていただいたということなんですけども、この参考資料4の一番最後のページのところの第13条のところの2と3というのは大変重要で、特に2は、「国は、被災者の定期的な健康診断の実施その他」云々というくだりがありますけれども、このことが、やはり私は、一番今後、どういうふうな方法で、あるいは、どういう、私たちは福島県内外というふうな形で考えているわけなのですけれども、それをどうやって実施していくのかということをやはり検討しなきゃいけないというふうに考えております。
     ここに、「少なくとも、子どもである間に一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住したことがある者」というふうに書いてありますけど、それ以外の方についても、一定の健康不安があって、この原子力発電所事故によっての一定の不安がある方については、例えば甲状腺の宮内先生が今日述べられたような、そういう検査をやはり1回はやっていただいて、それで、要するに、チェックしていくということは、僕は大事だというふうに思います。ですから、この13条の2のところについて、もう少し細かく、どういうふうな実施、それから福島県にいる先生方にどういうことを進めていただきたいかということについて、もう少し話すべきだなというふうに思っております。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
     ご発言は記録しまして、この次にと思っています。祖父江先生、どうぞ。
  • 祖父江委員 宮内先生にちょっとお伺いしたいのですけども、スクリーニングをするというのは、1回はしたわけですけども、これを今後、どんな間隔でやっていくかというのが結構重要だと思うんですけど、ちょっと一般住民の方のスクリーニングと、患者さんのフォローアップとはちょっと違うとは思いますけれども、どんな間隔で患者さんをフォローアップするのか、一定の間隔でするのか、あるいは所見に応じて間隔を変えていくのか、あるいは、退縮するような例もあるのかどうか、そういったことを患者さんのフォローアップの中でどんな所見が得られているのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  • 宮内氏 私が言えるのは、当院でやっているやり方で、成人の甲状腺微小がんで手術しない場合の話ですね。それは具体的に言いますと、一番最初は半年後です。半年後に見て変化がなかったら、それからあとは1年に1回ということをやっております。超音波検査と少しの甲状腺機能の血液検査です。福島県での検診の後につきましては阿部先生のほうが詳しい。
  • 阿部委員 これは先行検査の場合は、一応3年間でやるという形に決めて実施し、3年の先行検査を終えたところです。その後、どうするかという話では、当初は、先行検査の後、本格検査は二十歳までは2年間に1回やりましょう。それから、二十歳過ぎたら、5年に1回やりましょうということで、決めていたんです。この問題も、果たして、先行検査を終えて、これで二十歳まで、2年に1回でいいのか。あるいは、二十歳過ぎたら5年に1回でいいのかというのは、やはりもう一度、検証した上で、その間隔等もやっぱり決めなくちゃいけないんじゃないかなと思っております。
     当初は、本格検査は3年間でこれをやらなくちゃいけないという最初の計画は、その当時の18歳以下の子どもたちが、大体36万数千人おりましたと。そういう状況の中で、これを検査する実施体制側の人数の問題等を考えると、やはり3年は必要だろうという、そういう計算もあったのですね。それも踏まえて、きちんと正確な診断、精度管理をしながらやっていくためには、やはり3年間は必要であると一応決めて、それで実行してやったということです。その後については、やはりもう一度、先ほど言ったものの繰り返しになりますけども、3年間やった検証をして、それで今後、二十歳までどうするか、あるいは、この二十歳以降、5年でいいのかどうか。それは、むしろ甲状腺の専門家、疫学等の専門家の先生方も入れて、議論をしていただいて、福島のこの甲状腺の検査のあり方が、どういうことでやれば県民にとって一番いいのかと。そこは十分に議論していただければいいと思います。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
     あまり時間も残りはありませんけども、今日、頭出しで、何かお話をぜひ、指名はいたしませんが、何でもここで議論して、この次の議論に続けたいと思いますので、お話がございましたら、どうぞ。
     今日は、もうお二人の先生に来ていただきましたので、疫学あるいは甲状腺に関しての質問がかなりございましたけども、それと離れてでも結構でございますが、最後に、まだ1分、2分ありますので、どうぞ。
     結局、今日はあまり具体的には出ませんでしたけども、その線量評価あるいはリスクに基づいてどうするかという議論は、この次にまた続けてすることにいたしますが、今日はこれでよろしゅうございますでしょうか。
     では、一応今日のお話も、また事務局でまとめて、この次の議論のプラスになるように、まとめて持ってまいります。
     事務局から何かありませんか。
  • 佐藤補佐 ありがとうございました。
     では、本日、健康管理のあり方に関する資料3につきましては、ぜひ先生方からご自身のご意見、お考えを後日いただければと思っております。また、その具体的な方法につきましては、近日中に改めてご連絡させていただきます。そして、先生方、それぞれのご意見を取りまとめた形で、また次の会議に資料として提出させていただきたいと思います。また、資料1、2につきましても、もしご指摘、ご意見ありましたら、ぜひ事務局のほうまでお寄せください。よろしくお願いいたします。
     続きまして、次回、第10回目の専門家会議の開催につきましてですが、8月27日、水曜日、17時からを予定しております。会場につきましては、イイノホールのRoom Aになります。
     また、本日の議事概要及び議事録につきましても、後日、公開とさせていただきますので、事務局からお送りいたします。後日、ご確認をお願いいたします。
     事務局からは以上です。
  • 長瀧座長 少し資料、皆様のお手元に届く時間が早くなったかと思いますけども、随分事務局、努力をしていただきまして、それからスピーカーの先生からも早め、早めに資料をいただきまして、委員の方に前もって今回は届けることができました。できるだけお互いの意思がどこかではっきりと表せられるように、事務局としてもこれから努力してまいりますので、どうも今日は、先生お二人ともわざわざおいでいただきまして、ありがとうございました。また改めてお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。

午後7時31分 閉会

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