保健・化学物質対策

第9回東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議 議事概要(未定稿版)

日時:

平成26年8月5日(火)17:00~19:30

場所:

東京都内(イイノカンファレンスセンター Room B(4階))

出席者:

(専門家)
明石委員、阿部委員、石川委員、遠藤委員、大久保委員、佐々木委員、宍戸委員、清水委員、祖父江委員、長瀧座長、中村委員、丹羽委員、本間委員
宮内講師、津金講師
(環境省)
浮島政務官、北島部長、得津参事官 他

1.被ばく線量に係る評価について

事務局より、資料1について説明。主な委員からのコメントは以下の通り。

  • 2.(1)事故初期の甲状腺被ばく【福島県内】の下線部について、「100mSvを超える被ばくを受けた住民がいたとは考えられず、」としているが、その次の段落で100mSvを超える者がいたとの可能性について言及しており、矛盾している。
  • 2.(2)外部被ばくの下線部について、「県内で5mSv未満」との記述は言い切ってしまっていいか。実際には25mSvの方もいたはずではないか。
  • 2.(3)内部被ばく((1)を除く)の下線部について、この記述は、食品摂取による今後(平成24年夏以降)の話である。県内のWBCの結果などは踏まえていないので記載としては不十分。
  • 2.(2)外部被ばくの下線部について、「県内で5mSv未満」との記述は、「大多数は」等の言葉を付けなければ誤解を招く。
  • この資料は極めて誤解を与える印象である。
  • 我々は、前回資料の概要案の内容について、議論し把握はした。
    今回の資料では、それを短くしたものに評価(下線部)が加わっている。この部分が本当に言えるのか。また、この部分は会議の目的から言って、どこまで書くべきなのか。
  • 1.の基本的な考え方で、以前は「集団を検討するためであり、個々の被ばく線量を網羅的に評価するものではない」とあったが、その通りである。UNSCEAR等、シミュレーションに基づくものは集団の評価しか出来ない。UNSCEAR等の集団の評価では、分布があり、不確実さについての記載が必ずある。例えば、避難区域の場合、集団としては避難しているので問題はないが、もし事故初期に避難区域内に居続けた場合、甲状腺等価線量がこれだけの値になる、という記載が併記されている。
  • 短くまとめるとミスリーディングが起こる。今回の資料では、期間に関する記述がないため、被ばく線量がどの期間のものか分からない。前回資料の概要案の方が、事実をただ書いていたという意味で、今回の資料より良かった。
  • 推計での議論では、不確実性に言及しなければならない。この会議では、不確実性についての議論はしていない。

2.被ばく線量評価を踏まえた健康リスク評価について

事務局より、資料2について説明。委員の主なコメントは以下のとおり。

  • 資料1の1.の基本的な考え方で、以前は「実測値」について、実効線量等は実測できないが、WBCによる線量測定等を実測値として扱うという記載があった。この記載は大事であった。同様に、集団実効線量についても、まとめを作る際は意味が正しく伝わるようにしっかり説明を加えて欲しい。具体的には4ページの3ポツ目については、集団実効線量についての話だと思うが、チェルノブイリ原発事故の際、集団実効線量が誤用された経緯があることから、ICRPは、使用する際には線量範囲、地域、期間等を明記するよう求めているので、そのことに留意すべき。
  • 資料1,2においては、UNSCEAR福島原発事故報告書で言及されている不確実性の記載が不足している。不確実性があることが、健康支援につながると考える。3ページの2ポツ目の発言に同調する。
  • 4ページ目の一番下のポツについて、UNSCEAR福島原発事故報告書における甲状腺がんのリスク評価に関する発言の記載が正確ではない。「現時点では増加の可能性は否定できないと表現すべきではないか。」とされているが、結論を出すには時期尚早であるという趣旨の発言をしたと思うので、確認して訂正して欲しい。
  • がんについては、被ばく線量があれば、健康リスクは計算できる。線量が低ければリスクは、証明できないほど小さくなる。低線量被ばくにおいても線量とリスクの間に直線関係を仮定して計算するようになったのは、遺伝的影響の評価で用いた仮定をがんにも適用したからであるが、あくまで推定であることに留意が必要。現実的には、他の様々な要因(食事、生活、遺伝など)にばらつきがあるため、対象人数を増やしても、統計的に検出できるとはかぎらない。直線閾値なし仮説を使うことの限界を理解して作業を進めればよいと思う。
  • 資料1,2の議論は、今までの意見を反芻しているところがあるので、事務局に集約してもらい、健康管理、医療施策の議論に進めて欲しい。
  • 線量評価、健康リスクの全体的な把握は重要だが、厳密になされないと健康管理のあり方が議論できないわけではないので、健康管理についての議論から始め、その上で健康リスクの程度や線量評価の不確実さについてに戻って検討するような議論が必要ではないか。
  • 会議の進め方に関する委員の発言を受けて、座長より、[1]健康管理から議論を進めて、その場で線量評価や健康リスクの議論があれば、そちらも議論すること、[2]中間とりまとめのときに線量もリスクもまとめることについて異論がないか委員に確認が行われ、承認された。

3.ヒアリングについて

(1)宮内講師より、提出資料「小児甲状腺がんの臨床について」説明。主なコメントは以下の通り。(提出資料のタイトルに〝小児甲状腺がん〟となってるが子どもの甲状腺がんに限定するものではないと説明あり。)

  • がん疑いと診断された患者さんの多くは、手術を希望すると思うが、どれくらいの割合で経過観察を希望するか。
    → 医者も患者も経過観察は勇気がいるところ。病院側から経過観察を提案したが、最初は7~8割の患者さんが手術を選んだ。最近は、8~9割が経過観察を選択する(※成人のデータであることに留意)。また一般的に小児の甲状腺がん、乳頭がんについては、生命予後が非常にいい。発生頻度は、10歳未満は非常に少なく、15歳以上ぐらいから頻度が高くなる。
  • もし小児で3mm~9mmの間の大きさのがんが見つかって、それを手術した場合、最も重要な合併症はどのぐらいの頻度で起きるか。
    → 甲状腺がんの手術で、一番大きな合併症は二つある。一つは反回神経麻痺(声帯麻痺)、もう一つは、甲状腺を全摘した場合の副甲状腺機能低下症。その頻度は、外科医の経験や医療施設の実績によっても異なる。十分経験のある専門医の場合、合併症の頻度は十分低いと思われる。
  • 甲状腺がんが大きくなるスピードはどの程度か、また大きさとスピードの関係についてデータはあるか。
    → 3mm以上の大きさになったものを「大きくなった」と捉えて、まとめたデータを資料として提示した。中には、小さくなるものや、大きくなったり小さくなったりするものもある。ある程度大きくなったら手術するので、例えば1cm程度の大きさのものについてのデータはない。
  • 微小がんの患者さんはがん保険に入れないのではないか。そういう患者さんがいた際には、どう対応しているか。
    → 穿刺吸引細胞診での診断率が、100%ではないことを踏まえて、がんの可能性が極めて高いという立場で患者さんに説明している。がん保険については、あくまでも、がんの疑いとしか書けないと伝えている。(患者さんには)保険会社には申告しておいたほうがいいのではないかと伝えているが、どう取り扱われたかについては、把握していない。
  • 甲状腺がんは、早期に発見すれば、半分切除のみで済み、その後薬を飲まずに、普通の生活に戻る例が大半か。
    → 甲状腺乳頭がんは、多発する割合が高く、小さくても多発であれば全摘手術をするため、全摘の症例も相当増えると思われる。多発病巣があることあるいは家族歴があることと、がんが進行するかどうかということとの間に、特別な関連性は今のところ見つかっていない。

(2)津金講師より、提出資料「疫学調査の方法論について」説明。主なコメントは以下の通り。

  • 福島県との比較のために環境省が、コントロールと考えられる3つの地域で行った4,000人レベルの甲状腺検査についてのメリット・デメリットについてどう思うか。
    → 環境省が行った3つの地域での調査データは、極めて参考になり、比較という意味 においては、唯一の参照できるデータだと思うが、問題点はサンプルサイズが小さいこと。ただ、調査規模を拡大すると、対象者となる多くの方が診断され、様々な不利益が生じるため、何も関係ない人たちが診断されていいのかという倫理的な問題がある。そのため、コントロール地域の調査を拡大することは、専門家の立場としては必ずしも適切ではないと思っている。今、福島で行っている甲状腺検査について、しっかり線量を把握して、なるべくその調査の中で見ていくことが望ましい。ただ約30万人を対象とした福島での調査では、ハザード比がかなり高くない限りは、変化を検出するのはなかなか難しいと考える。
  • 一般に甲状腺がんの発生頻度は、年齢が上がると上昇する。福島県の甲状腺検査においては、検査ごとに年齢が2~3年上がるため、比較するときは年齢をそろえて比較することが重要と思われるが、どうか。
    → 性別・年齢は極めて重要な交絡因子であり、比較の際には合わせる必要がある。
  • 甲状腺がんは、県ごとに罹患率の違いはあるか。またそのばらつきについては、ランダムエラーか、あるいはそれ以外の理由があるか、どのように検定するか。
    (津金氏回答)甲状腺の検診では、熱心に調べれば、甲状腺がんが多く見つかるというバイアスが起こりうる。甲状腺がんや前立腺がんについては、どれだけ熱心に検査をするかにより発見の頻度が大きく異なることが、世界の常識である。

4.健康リスク評価を踏まえた健康管理のあり方について

事務局より、資料3について説明。ヒアリング後に行われた健康管理についての議論は以下の通り。

  • 甲状腺がんは、スクリーニング検査で見つかったものは取ってしまえば心配がなくなるから、すべて取ってしまった方がいいという考え方があったとしたら、どう考えるか
    → チェルノブイリ事故後に小児甲状腺がんが増えたことため、福島で甲状腺がんが増えるのではないかと懸念を持っている方がいる中で、本当に増えるかどうか科学的に評価せざるを得ないこと、また福島県民の皆さんの健康を考えることの2点が大きな課題である。そのためには一定の基準で検査をし、診断をすることが重要であり、福島県でもそのように実施されている。
  • 子ども被災者支援法第13条2項には健康診断の実施について記載されているが、福島県内外でどのように実施していくか検討が必要と考えている。一定の健康不安がある方に対して、具体的にどう進めるか議論すべき。
  • 甲状腺がんの患者さんのフォローアップは、どのくらいの間隔で行っているか。
    → 成人の甲状腺微小がんで手術しない場合のフォローアップでは、最初は半年後、その後変化がなければ1年に1回、超音波検査と甲状腺機能を調べる血液検査を実施している。
  • 福島県の甲状腺検査の一次検査の頻度は、20歳までは2年に1度、それ以降は5年に1度の頻度で検査をする計画になっている。福島の甲状腺検査のあり方については、甲状腺の専門家、疫学等の専門家の先生方も入れて、3年間で実施した1巡目の先行検査の検証を行い、県民にとって一番良いのはどういう形か、十分議論いただきたいと思っている。
  • 放射線災害の影響として住民の健康に影響を与える問題は2つある。[1]線量に応じた健康リスクと、[2]こころの健康や生活習慣病に関する健康だが、後者についても極めて重要であり十分議論していただきたい。
  • ※事務局より、資料3についての意見の提出を委員に依頼した。いただいた意見について事務局でとりまとめ、後日会議に提出することとした。
    <文責 環境省放射線健康管理担当参事官室 速報のため事後修正の可能性あり>

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