保健・化学物質対策

東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議 第7回議事概要

日時

平成26年6月26日(木)17:00~19:30

場所

東京都内(STANDARD会議室 神谷町会議室 6階ホール)

出席者

(専門家)
阿部委員、石川委員、遠藤委員、大久保委員、春日委員、佐々木委員、清水委員、鈴木委員、祖父江委員、長瀧委員(座長)、中村委員、丹羽委員、伴委員
(環境省)
浮島政務官、塚原部長、桐生参事官 他

被ばく線量に係る評価について

(1)参考資料1-2について
委員の主なコメントは以下のとおり。

  • 参考資料1-2では、体表面汚染について、身体のどの部位を測定したか明らかでないデータを基に議論しているが、一般には汚染した土や建物を触った手や足等が高くなり、個人の汚染としてそれらは外れ値となるため、全身の汚染箇所のデータがあるものを基に汚染の分布を見なければ正確な評価はできないと思われる。
  • 沈着速度(放射性物質が身体に沈着していくスピード)について、スクリーニングレベルを決めるとき、0.1cm/sと仮定している。これは、文献によると乾性沈着で一番遅い速度である。実際に福島では平成23年3月15日、16日は雪や雨が降っていたため、湿性沈着となり速度は乾性沈着に比べずっと速くなる。このため、状況に応じて汚染を評価していかなければならない。
  • これらがこの論文での大きな不確実性をもったデータの扱いである。
  • 論文で示されているデータから、内部被ばくのレベルや分布を推定することは、科学的に無理があると思われる。

(2)資料1-1、1-2について
事務局より、資料1-1、1-2について説明。委員の主なコメントは以下のとおり。

  • 資料1-1について、簡単な文書でまとめを作ること。また、将来十分役に立つよう参考資料がすぐに分かるような資料作りをお願いしたい。
  • 小児甲状腺簡易測定調査の1,080人の結果について、甲状腺の測定値、肩口の測定値、空間のバックグラウンド値を記録として数値を残しておくようお願いしたい。

 座長より、線量評価については、短いまとめを作成した際に再び議論いただくこと、途中でいつでも意見出し可能である旨補足した上で、これをもって会議として線量評価に関してはあるレベルまで評価したとするとの説明がなされた。

委員からのヒアリングについて

(1) 石川委員より、同氏提出資料(「日本医師会が考える重要施策」)について説明。委員の主なコメントは以下のとおり。

  • 発表において福島県外も含め不安の払拭のために検診と補償を行うことについて提案があったのを受けて、委員より福島県外での健康調査の検査方法が統一されているのか教えて欲しいとの発言があった。上記について、石川委員より、福島県外での健康調査の検査方法については、次回あたりに事務局より資料を出して欲しいと回答。
  • 被ばくによる健康不安を感じている住民に対する対応は、線量に応じて考える必要がある。検診をすることが最善の回答か十分な検討が必要。リスクリテラシーをどう醸成していくのかということを総合的に考えていく必要性があり、個人的には検診が最善の回答とは思わない。
  • 住民の不安の要因のひとつは、どれくらい被ばくしているのか状況がわからないこと。まず個々の住民の方に放射線被ばくの状況を理解いただくことが重要。個人線量計を使い、自分で測ってみることを提案している。被ばく線量からリスクが想像できる。現状を把握すれば、住民がリスクについて自分の物差しを持って判断できる。低線量被ばくによる健康影響は誰も分からないから検診が必要という議論があるが、何も分からないのではなく、観察しようにもできないほど小さいということは分かっていること。

(2) 祖父江委員より、同氏提出資料(「がん検診の利益と不利益」)について説明。委員の主なコメントは以下のとおり。

  • 検診の利益、不利益の評価は、実際に検診をせずとも推計から行えるのかとの質問に対して、祖父江委員より、利益、不利益の評価は、推計ではなく、実測データを集めるもの。不利益は、国によってかなり違うものであり、できるだけ集める必要がある。利益と不利益のバランスを考える際には質が違うものを比べるため、客観的に数値化することは難しく、多くの人で議論し、コンセンサスを得るしかないと回答。
  • 利益、不利益でそれぞれ重みが違うため比較が難しい。甲状腺がんの場合、甲状腺乳頭がんは予後が良いこともあり、過剰診断かどうか議論がある。甲状腺未分化がんは、甲状腺がんに占める割合は、2~3%と低いが、乳頭がんから移行する。個々のがんについて、将来移行する可能性の有無は判断できない。
  • 検診をすれば多くがんが見つかるということは想像された結果だが、検診をすると判断した以上は、見つかったがんに対しては適切に対応していく必要がある。子どもに見つかったがんに対してどうすべきか語れる人は少ないが、患者さんが理解し、納得した上で診断治療を進めていくべき。経過観察をする場合は、綿密に行い、少しでも大きくなったら対応できるようにしておく。いずれにしても、きちんと記録していくことが大切。
  • 韓国では甲状腺がんの発見率は経年増加しているが、死亡率、死亡数はどうかとの委員の質問に対して、祖父江委員より、死亡率に大きな増減はないと回答。
  • 検診の不利益については、コストではなく、個人に対する不利益を考えるべきとの委員の意見に対して、祖父江委員より、米国PSTFのガイドラインでは、不利益の評価では、利益不利益のバランスを検討する際にはコストは含まれておらず、コストは次の段階で考えることになっていると回答。
  • 多くの日本人は、前立腺がんのPSA検査をやってほしいと希望しており、PSA検査を奨励しないとする米国のガイドラインは、日本人の心情と格差があるがどう考えるかとの質問に対して、祖父江委員より、米国泌尿器科学会のガイドラインでも、集団としてはPSA検査を勧めないが、個人レベルで判断すると変わってきている。ガイドラインの役割は、科学的根拠に基づいて判断し、それが一般の人が考えていることとギャップがあれば、そのことをきちんと提示し、説明することであると回答。
  • 検診の利益不利益の大きさの比較は、がんの種類により異なるのではないかとの委員の意見に対して、祖父江委員より、過剰検診の不利益が大きいことの例として前立腺がんを取り上げた。甲状腺がんも同様にゆっくり成長するがんであるが、前立腺がんの議論を異なる種類のがんに直接適用はできないと回答。
  • 検診の頻度を上げるほど、偽陽性(本来は陰性であるのに、誤って陽性と判定されるもの。)の数が増えるため、検診の不利益が大きくなる。感度(陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率)が高いと利益が増える。特異度(陰性のものを正しく陰性と判定する確率)が低いと不利益が増える。感度と特異度はトレードオフの関係になっており、検診の頻度を上げると不利益が増える。検査方法によって感度と特異度は異なるため、検診の技術革新により、利益不利益のバランスが変わることもある。
  • 検診は、利益があれば行うべき。検診をして安心したいという患者の方の希望には答えるべき。偽陽性が多くなってしまうのは、偽陰性を少なくするためには、やむを得ない部分があるが、患者の希望に応えて検診を行うことで安心につながるとの意見に対して、検診の利益不利益のバランスについては、定性的ではなく定量的な判断をするべきとの意見が出た。

被ばくと健康影響について

事務局より、資料2-1福島県「県民健康調査」の概要、資料2-2及び資料2-3健康リスク評価に係る論点メモ(たたき第)について説明。この論点メモにより、今後の議論が縛られるものではなく、他に論点があれば追加いただきたい旨説明。
座長より、健康リスクをどう考えるか、リスクに基づいて対策をどう考えるか議論いただきたい旨発言があり、委員の主なコメントは以下のとおり。

  • どういった健康リスクを念頭に置き、そのリスク評価のためにどのような項目が必要かはっきりさせたうえで、目的をもってデータ収集を行うべき。
  • 避難に伴い生活習慣病やこころの問題が生じている。放射線被ばくに伴う直接的な健康影響だけではなく、生活環境、社会環境の変化から生じる影響についても調査すべきと考える。
  • 健康調査の地域や項目について、リスクの議論の後でかまわないが、議論すべき。
  • UNSCEARによる健康リスクの評価は、チェルノブイリ原発事故での被ばく線量と比べ福島では桁違いに小さいため、疫学調査を全体に対して行ったとしても観察されるような増加はないだろうという結論であり、個人的には同意する。しかし代表値についての議論に限られているため、個人単位では幅があり、そのことも考慮して線量の構築が行われるべき。また医療面でもしかるべき支援が用意されるべき。
  • UNSCEARの報告書において、もしあるとしてどういう疾患のリスクが高まるか、これは絶対にないという区分けができている。甲状腺がんは、仮に線量があっても総体的に見たときは疫学的に識別できるか、ぎりぎりのところ。その次にリスクを考えるのは、乳がんと白血病。それ以外、例えば遺伝的影響、胎児影響(流産など)はありえないとしている。
  • JCO事故後、住民にがん検診などの健診を行っているが、住民の中には自分は事故の影響でがんになると信じている人がいる。なぜその医療サービスがあるのか住民に正しく伝わる必要がある。甲状腺超音波検査は、約50%の人に所見が出るため、その結果に不安を感じ、次の検査を求めることになる。どういう検査のあり方が良いのか、サポート体制のあり方が良いのか議論していく必要がある。
  • 放射線被ばくに伴う健康リスクはWHOもUNSCEARも低いと評価しているが、被ばくと直接関係ない健康因子が悪化している。事故による影響を受けた方は福島県内にも県外にもいるため、どういう手段が提供できるか考え、提案することを(委員に)お願いしたい。

その他

最後に事務局より、次回7月16日にヒアリングを多数予定していること。9月の日程調整を行うことについて連絡。

座長より、今日は本質に近い議論ができたが、結論はまだ出ていないこと、引き続き、委員として責任ある発言をお願いしたい旨、述べられた。

以上

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