保健・化学物質対策

東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議 第4回議事概要

日時

平成26年3月26日(水)17:00~19:40

場所

東京都内(イイノカンファレンスセンター Room B)

出席者

(専門家)
明石委員(座長代理)、阿部委員、石川委員、遠藤委員、大久保委員、春日委員、佐々木委員、宍戸委員、清水委員、鈴木委員、祖父江委員、長瀧委員(座長)、中村委員、丹羽委員、伴委員、崎山氏(高木学校)、秋葉氏(鹿児島大学)
(環境省)
井上副大臣、浮島大臣政務官、塚原部長、桐生参事官 他

1.今後の議論のスケジュールについて

事務局(環境省)より資料1をもとに、これまでの議論の整理、及び、今後の方向性・スケジュールについて、説明。具体的には、次回の第5回会議で、4月に公表予定とされているUNSCEAR報告書を検討すること、被ばく線量把握・評価に関する意見集約を引き続き行いながら、被ばくと健康影響、健康管理のあり方等を含む検討・議論を1~2ヶ月に1回行い、なるべく早い時期に、中間とりまとめを行うこと等が伝えられた。

2.被ばく線量に係る評価について

事務局より資料2-1をもとに、福島県内外の甲状腺被ばく、外部被ばく(甲状腺除く)、内部被ばく(甲状腺除く)について、現状・事実の整理と、これまでの委員等による評価などを説明。続いて、資料2-2をもとに、今後の線量把握・評価について、事故初期の短半減期核種による甲状腺被ばく線量の推計、線量データの管理、今後の個人線量計測定・WBC測定について説明。委員の主なコメントは以下のとおり。

  • 小児甲状腺スクリーニング検査の対象地域以外の自治体については、実測値がないため、県民健康調査の行動記録や、シミュレーション結果との照合等が必要。
  • 栃木県では、事故直後から複数の大学が外部被ばく線量を計測した連続データがあったため、途中から計測し始めたモニタリングデータと突き合わせて、外部被ばく線量を推計し、評価を行ってきたという経緯があるが、それは、あくまで栃木県内に関してであって、茨城県や宮城県に関して、必ずしも同様であるとは言えないということを付け加えたい。
  • 福島県の南側が、土壌沈着に関して、セシウム・ヨウ素(Cs/I)比が高いというデータがあるため、茨城県の特に北部の実態がどうであったかについて、研究機関(東海村)の実測データから、丁寧に見ていく必要があるのではないか。
  • 母乳・水道水に関する調査データがあればそれを活用できるだろう。
  • 放射性ヨウ素(I)129から131を推計する研究データ等が参考になる。
  • 県民健康調査の外部被ばく線量推計と、今中氏の飯舘村における外部被ばく線量推計は、屋外での滞在時間等の捉え方等、条件の違いはあるものの、概ね結果は近似しているとの評価が可能。
  • 県民健康調査の回収率が必ずしも高くない現状であることから、現在の集計結果が全てと捉えるべきではない。簡易調査票の普及も含めて、回収率のさらなる向上を促進していくべき。
  • 一般標準とは顕著に異なる習慣や行動を持つ人々の存在を認識しつつ、今後、福島県内外の方々の健康支援をどう行っていくかについて議論が必要。

3.ヒアリングについて

(1)崎山氏より提出資料(資料3-1)について説明。委員の主なコメントは以下のとおり。

  • 崎山氏が、「放射線が安全なのは線量がゼロの時のみと結論づけられている」とする根拠として挙げている原爆生存者の疫学調査の論文(※1)においては、がんの増加が統計的に有意とされているのは200ミリグレイ以上のときとされている。崎山氏が、「低線量被ばくでは、線量あたりのリスクが高くなる」ことの根拠として挙げている線量あたりの全固形がんに対する過剰相対リスクの図(図5)では、200ミリグレイ以下の線量域については、解析条件の設定の仕方によって、過剰相対リスクの値がいかようにも変動しうるため、慎重に精査する必要がある。事実、その後出された原爆生存者の研究論文では、低線量域で過剰相対リスクが特異的に高くなっていない。
    ※1 Ozasa K. et al., Radiation Res., 177, 229-243, 2012.
  • 低線量被ばくによる健康リスクがゼロか否かという議論には終わりがないものである。元々がんで死亡するリスクが30%あり、生活習慣で10%ぐらいは変動するものと考えられている。そのようなリスクがある中で、現在の被ばく環境下で、どう健康的に生活していくべきかという見地からの、前向きな議論が不可欠。

(2)秋葉氏より資料3-2(「ヒトでの疫学データより低線量放射線の健康リスクを考える」)について説明。委員の主なコメントは以下のとおり。

  • 死亡診断書の原死因の捉え方には難しさがあるほか、がん登録制度に代表されるような医療環境の差もあるため、放射線による過剰リスク評価には、不確実さが伴う。 上記について、秋葉氏より、調査対象地域(インド・ケララ州)のがん登録は、日本の平均的ながん登録よりも精度が高いと回答。

4.被ばくと健康影響について

事務局より資料4(「WHO健康リスク評価報告書におけるリスク評価の概要」)に沿って、主に、WHOが準拠する計算式について説明。

5.その他

  • 長期にわたる住民の健康に係るフォローのためには、検査の結果等を記録しておく必要があるのではないか。
    座長より、被ばくの健康影響に関する考察は、今後具体的に健康管理のあり方を議論するうえでも、引き続き継続していきたい旨、述べられた。

以上

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