環境省保健・化学物質対策国際的動向と我が国の取組諸外国の新規化学物質審査規制制度の概要

諸外国の新規化学物質審査規制制度の概要

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アメリカ

【はじめに】
 この資料は、平成19(2007)年12月時点の情報を基に作成しました。分かりやすく説明するために、手続の一部を省略したり、条文に厳密に沿っていない場合がありますので、制度の詳細については原典等で御確認ください。環境省は利用者がこのサイトに掲載されている情報を用いて行う一切の行為について、何らの責任を負うものではありません。


  1. 制度の経緯、背景等
  2. 法規等
  3. 所管当局
  4. 既存化学物質リスト
  5. 届出者
  6. 届出を要する物質
  7. 届出・報告の種類及び時期
  8. 届出・報告の種類及び時期
  9. 要求される情報
  10. 届出の提出方法
  11. 届出の審査及び製造・輸入の開始
  12. その他
0.  制度の経緯、背景等
有害物質規制法(TSCA)は、人の健康又は環境を損なう不当なリスクをもたらす化学物質及び混合物を規制することを目的として連邦議会で5年間の審議を経て1976年10月11日に承認され、1977年1月1日に発効した法律である。
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1.  法規等:  有害物質規制法(TSCA)、連邦規則40 CFR Part700(総則)、720(製造前届出)、723(製造前届出免除)他
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2.  所管当局:  環境保護庁(EPA)
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3.  既存化学物質リスト:  TSCAインベントリー
1975年1月1日以降、製造、輸入又は加工された物質を収載したもの
天然に産出する物質はインベントリーに収載されているとみなされる。
そのアイデンティティが秘密でない場合、特定の化学名とCAS登録番号がインベントリーの公開部分に記載される。そのアイデンティティが秘密である場合、その物質の総称名がインベントリーの公開の部に記載され、特定の化学名はインベントリーの秘密部分にのみ記載される。
製造前届出(PMN)の審査が完了した物質はインベントリー収載に適格となる。製造事業者又は輸入事業者が製造又は輸入の開始届出(NOC)を提出すると、EPAは当該物質をインベントリーに収載し、その物質は既存化学物質となる。
PMN及びNOCはEPAにより連邦広報(FR)に告示される。
インベントリーは、半期ごとに国立技術情報サービス(NTIS)から検索可能なCD-ROMとして公表される。
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4.  届出者: 米国内で商業目的のために新規化学物質を製造*1することを意図する米国内の製造事業者
*1 TSCAでは「製造」の定義には輸入も含まれる(ただし、法律を補完する規則類では製造と輸入が記載されており、その場合はそのまま記載した。以下、単に「製造」と表記されている場合には輸入を含むと解釈する。)。
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5.  届出を要する物質: TSCAインベントリーに収載されていない新規化学物質
5-1  SCAインベントリーへの収載の有無の調査方法
(1)  
公開情報調査
オンラインデータベース:DIALOG、STNのCHEMLIST又はRegistryなどCD-ROM: CASのNational Chemical Inventories(NCI)又はNTISのCD-ROM
インターネットによる調査:EPAのSRSデータベースなど
(2)  
EPAへ善意の意図による問い合わせ
総称名のTSCAインベントリー収載物質の製造を意図する場合、その物質のアイデンティティ、用途、製造プロセス、製造を意図する署名付き陳述書等の情報を提出し、その物質がTSCAインベントリーの秘密の部に収載されているかをEPAへ問い合わせることができる。
5-2  届出の対象外または免除
(1)  
事前申請等が不要なもの
1 TSCAの「化学物質」定義から除外されているもの:農薬、たばこ、食品、医薬品等
2 混合物(水和物又は水和イオンも混合物)
(注)混合物中の新規化学物質は届出が必要
3 少量の研究開発用化学物質
(注)一定の要件(リスクの周知等)を満たすことが必要
4 輸出のためにのみ製造される化学物質
(注)一定の要件(表示等)を満たすことが必要
5 不純物、商業目的に使用されない副生物、単離されない中間体等
6 アーティクル(特定の形状/デザインに形成され、その形状/デザインの一部/全部に依存する最終使用機能を有し、その最終使用において化学的組成が変化しない、又はそのような組成の変化が別の商業目的を持たない製造された品物。ただし液体及び粒子はアーティクルとはみなさない。)
(2)  
事前申請等が必要なもの
1 試験販売に関する免除(TME):免除申請必要
2 少量免除(LVE)(年間10トン以下で製造される化学物質):免除届出必要
3 LoREX免除(低い環境放出及び低い人ばく露を有する化学物質):免除届出必要
4 ポリマー免除(新規ポリマー):免除報告書(製造事業者の名称・製造された物質の数)が必要。対象は以下の3条件をすべて満たすもの
a ポリマー定義(OECDの定義)に合致する
b 以下のポリマー(免除対象から除外されるもの)のいずれにも該当しない
 
i カチオンポリマー
ii 組成の必須部分としてC、H、N、O、Si、Sの少なくとも2種を含有する条件を満たしていない、または容認された元素以外の元素を組成の必須部分として含有するポリマー
iii 変質、分解、または解重合するポリマー
iv 新規のモノマー・反応成分(2重量%を超えるレベルで)から構成されるポリマー
v 数平均分子量(NAMW)≧10,000ダルトン(以下、単位のダルトンは省略)の吸水性ポリマー
c 以下の免除クライテリアのいずれかに適合する
i 1,000≦NAMW<10,000、分子量(MW)が500未満のオリゴマー含有率<10%、かつMWが1,000未満のオリゴマー含有率<25%(反応性官能基に関する要件にも注意すること)
ii 10,000≦NAMW、MWが500未満のオリゴマー含有率<2%、かつMWが1,000未満のオリゴマー含有率<5%
iii 指定された反応成分(約100種の物質)のみから製造されるポリエステルポリマー
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6. 7.  届出・報告の種類及び届出時期
届出等の種類 届出等の時期
製造前届出(PMN) 製造・輸入開始の少なくとも90日前
試験販売免除(TME)申請 同45日前
少量免除(LVE)届出 同30日前
放出/低ばく露 (LoREX)免除届出
ポリマー免除の免除報告書 最初の製造の翌年1月31日まで
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8.  要求される情報
8-1   PMN
(1) 届出書式に含められなければならない主な情報
1 届出者のアイデンティティ
2 物質の化学的アイデンティティ(CAS名やCAS登録番号等)
ポリマーでは、モノマー及び反応成分名、その重量%及び最大残留量等
3 不純物(名称、CAS登録番号、及び重量%)
4 別名又は商品名
5 副生物に関する記述
6 最初の1年間に製造又は輸入される推定最大量等
7 用途情報(用途カテゴリー、カテゴリーごとの生産量の推定%等)
8 ハザード情報(ハザード警告陳述、ラベル、MSDS、保護具等)
9 提出者により管理される場所に関する情報(製造場所、プロセス、作業者のばく露及び環境への排出)
10 提出者により管理されない場所に関しての加工及び使用操作の記述(加工・使用場所の推定数、作業者のばく露・環境排出の状況、ばく露される労働者数と期間等)
(2) 健康・環境への影響に関するデータの提出
a 届出者の所有または管理下にある下記タイプのすべての試験データ
1.健康影響データ;  2.生態学的影響データ;  3.物理化学的性質に関するデータ;  4.環境運命特性;  5.人ばく露又は環境排出関連のモニタリングデータ/他の試験データ
b 届出者により知られ、又は当然確認され得る他のデータ
1.試験データ以外のデータ;  2.管理下にはない他のデータ
8-2   PMN免除届出
(1) TIME申請に含められなければならない情報
1.健康・環境への影響に関するあらゆる既存データ;  2.試験販売のために製造・輸入する最大量;  3.化学物質を提供される可能性のある者の最大数;  4.化学物質にばく露されるおそれのある者の最大数;[5]試験販売活動の記述(期間を含む)
(2) LVE届出及びLoREX免除届出に含められなければならない情報
PMNの(1)  1.~5.、9.、(2)(a)の他、生産量、用途カテゴリー、届出の種類(TSCA第5条(h)項(4)号免除届出であること)、カテゴリー(LVEかLoREXか)及び審査期間満了後1年以内に製造開始を意図していることの証明
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9.  届出の提出方法
9-1   届出書式等
  内容 備考
提出書類 原本1部 すべての試験データ及び届出書式に付帯される他のすべての情報を含む
完全なコピー2部
秘密事項削除コピー1部 情報が秘密と主張される場合のみ
9-2   他者による情報の提出:製造/輸入事業者は、届出提出の代理人を指名できる。
海外の製造事業者が輸入事業者に届出に必要な情報を明かさない場合、その情報を直接提出することが可能。審査期間はすべての情報が提出されてから開始する。
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10.  届出の審査及び製造・輸入の開始
10-1   審査期間
届出の種類 審査期間
PMN EPAが延長しない限り、完全な届出の受領日又は届出が完全であると決定する日から90日間で完了する。
EPAは、PMNの提出者に、届出審査期間の満了又はEPAがその届出の審査の完了を通知する。その法定届出審査期間の90日を過ぎた後は、EPAによるTSCA第5条(e)項等*2基づく規制措置がないときには、その提出者は満了の通知を受領しない場合でも、その化学物質を製造又は輸入できる。
TME申請 45日間。試験販売により、健康または環境に不当なリスクをもたらさないことをEPAが認めれば承認される。
LVE/LoREX
免除届出
30日間の審査期間満了後、EPAが何の措置も取らなかった場合には、製造事業者はその新規化学物質を製造することができる。
*2 不当なリスクを呈するおそれがある場合、第5条(e)項の同意指令が発令され、利用制限やリスク管理措置の実施等が課される。同意指令はPMN提出者に対してのみ拘束力があり、それ以外の者にも同様な制限を課すために、重要新規利用規則(SNUR)が公布されることもある。
10-2   製造又は輸入の開始届出(NOC)
商業目的のために新規化学物質を製造した者は、製造開始後30日以内に、EPAにNOC(下記情報)を提出しなければならない。権限を有する役員の署名が必要。
1 PMN物質の特定の化学的アイデンティティ(秘密と扱われる場合には総称名)
2 PMN番号
3 製造の開始の日付(輸入の場合、通関日)
4 NOC提出者の名称及び所在地
5 権限を有する役員の氏名
6 合衆国における技術的連絡者の氏名及び電話番号
7 製造の開始が行われた場所の所在地
8 化学的アイデンティティ等の情報が秘密のものと主張されるかどうかの明確な指示
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11.  その他
11-1   秘密保持
  PMN、TME及びLVE/LoREXについて、下記の届出情報に関して秘密保持の請求ができる。
(1)   化学的アイデンティティ
 
・   PMN届出の提出時に総称名を提出し、かつNOC提出時に再請求が必要。
(2) 新規化学物質の用途のカテゴリーまたは提案カテゴリー
・   秘密企業情報を保護のために必要な限りにおいて総称的な用途の記述の提供が必要。
11-2 記録保持の義務
届出の種類 保持すべき記録 保持期間
PMN
・   PMN中の情報に関する証拠文書
(最初の3年間の生産量の記録等を含む)
製造開始後5年間
研究開発免除
・   リスク評価に使用した情報
・   リスクの通知の種類と方法に関する証拠
・   物質を提供した相手に関する情報等
書類作成日から5年間
TME申請
・   申請書中の情報に関する証拠文書
・   EPAより課された制限の遵守に関する証拠文書
免除に基づく製造の最終日から5年間
LVE/LoREX
免除届出
・   年間の生産量又は輸入量の記録
・   本規則の要件に適合すること及び制限の遵守を立証する記録を含む本規則に述べられた記録
書類作成日から5年間
ポリマー免除
・   物質の化学的アイデンティティ
・   製造開始日・最初の3年間の生産量/輸入量
・   免除クライテリアに適合するための立証情報等
製造開始後5年間
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