環境省保健・化学物質対策国際的動向と我が国の取組諸外国の新規化学物質審査規制制度の概要

諸外国の新規化学物質審査規制制度の概要

TOP REACH関連情報 諸外国の新規化学物質審査規制制度の概要
アメリカ カナダ 欧州連合(EU) スイス 中国 韓国

カナダ

【はじめに】
 この資料は、平成19(2007)年12月時点の情報を基に作成しました。分かりやすく説明するために、手続の一部を省略したり、条文に厳密に沿っていない場合がありますので、制度の詳細については原典等で御確認ください。環境省は利用者がこのサイトに掲載されている情報を用いて行う一切の行為について、何らの責任を負うものではありません。


  1. 制度の経緯、背景等
  2. 法規等
  3. 所管当局
  4. 既存化学物質リスト
  5. 届出者
  6. 届出を要する物質
  7. 届出の種類
  8. 届出時期
  9. 要求される情報
  10. 届出の提出方法
  11. 届出の審査及び製造・輸入の開始
  12. その他
0.  制度の経緯、背景等
カナダ環境保護法(CEPA)は1988年6月に制定され、その後国内物質リストを整備して1994年7月から新規物質届出制度が施行された。1999年4月にこの法律を大幅に改定し、「1999年カナダ環境保護法(CEPA1999)」とし、2000年3月から施行された。改定新法の一般原則は、持続可能な開発、汚染防止、予防原則、生物多様性への脅威の除去に重点が置かれている。また、有害化学物質の管理では、カナダ国内に流通する2万強の既存化学物質の有害性評価及び内分泌かく乱物質の調査研究を政府が実施すること、大気・水質汚染防止対策の強化等についての改正が行われた。
このページの先頭へ
1.  法規等:  1999年カナダ環境保護法、新規物質届出規則(化学物質及びポリマー)、新規物質の届出及び試験に関するガイドライン(化学物質及びポリマー)
このページの先頭へ
2.  所管当局:  カナダ環境省、カナダ保健省
このページの先頭へ
3.  既存化学物質リスト: 
3-1  国内物質リスト(DSL):最初のリストが1991年1月26日に官報に公表
1984年1月1日から1986年12月31日の間に、1暦年に100kg以上カナダで製造、輸入、流通又は商業的製造目的に使用された物質のリスト。
DSLは、その後の新規物質の届出等により追加・削除されている。
CAS番号、物質名等記載の非秘密部分と物質名が総称名で公表される秘密部分がある。
天然に産出する化学物質はDSLに収載されているとみなされる。
3-2  非国内物質リスト(NDSL):最初のリストが1991年1月26日に官報に公表
DSLに未収載だが、国際的に上市されていると考えられる物質を明示するもので、米国TSCAインベントリーを基礎としている。NDSLは、TSCAインベントリーの1985年版からDSL収載物質等を除外したもので構成された。TSCAインベントリーに1年以上前に追加された物質を追加する年1回の修正の他に、製造業者からの指名によっても追加される。DSL同様、非秘密部分と秘密部分がある。
このページの先頭へ
4.  届出者: カナダ国内の製造事業者又は輸入事業者
このページの先頭へ
5.  届出を要する物質: DSLに収載されていない化学物質
5-1  DSLへの収載の有無の調査方法
(1)  
公開情報調査:オンライン、CD-ROM(NCI等)、インターネット(環境省web)
(2)  
善意の意図による書面での問合せ(秘密の部に収載の物質)
秘密部分に収載されていると考える物質の製造/輸入を意図する場合、製造/輸入の善意の意図を立証する情報(その物質のアイデンティティ、用途、製造/輸入を意図する署名付き陳述書等)を含む文書を環境省に提出し、問い合わせが可能。
5-2  届出が要求されないもの(免除届出等は不要)
1 物質の定義に含まれないもの(混合物、成形品(article)、廃棄物等に含まれるもの)(非水和物がDSLに存在する水和物、均質及び不均質合金は混合物とみなされる。)
2 他の法令に基づいて規制される物質
3 単離されず環境内に放出される可能性が小さい過渡的反応中間体
4 不純物、混入物、部分的未反応物質
5 用途に付随の化学反応、貯蔵/環境的要因から起こる化学反応から生成される物質
6 免除される最大量*を超えない量で製造、使用又は輸入される物質
7 カナダ国外で運搬装置に積まれ、カナダを経由してカナダ国外に移動される物質
8 いずれの成分もポリマー重量の2%を超えない反応成分を付加して、DSL収載ポリマーを修飾することによって製造されるポリマー
なお、免除される最大漁は、以下のように物質の種類、カテゴリー等で相違
対象 規定される
最大量

物質の種類

NDSL収載の有無
化学物質
(ポリマー以外)
研究開発用、封じ込められた*1場所限定中間物質*2又は封じ込められた輸出専用物質 1トン/年
上記以外の化学物質 100kg/年
1トン/年
ポリマー 研究開発用、封じ込められた場所限定中間物質又は封じ込められた輸出専用物質 10トン/年
上記以外のポリマー 1トン/年
*1  
「封じ込められた」とは、場所限定中間物質又は輸出専用物質に関して、排水処理後における水生環境への絶対放出限度が、1kg/日/サイトであることをいう。
*2  
「場所限定中間物質」とは、下記の他の物質を製造する化学反応の際に消費される物質
(a)  製造場所で製造及び消費される;
(b)  1つの場所で製造され、第二の場所へ輸送されて消費される;又は
(c)  輸入され、かつ、消費場所に直接輸送される。
このページの先頭へ
6. 7.  届出の種類及び時期: 新規物質のカテゴリー、製造/輸入量、NDSL収載の有無で要件が相違
化学物質
物質の種類 NDSL収載の有無 年間(暦年)
製造/輸入量
提出時期
研究開発用、封じ込められた場所限定中間物質又は封じ込められた輸出専用物質 - 1トン< 30日前
10トン< 30日前
上記以外の化学品 100kg< 5日前
1トン< 60日前
10トン< 75日前
1トン< 30日前
10トン< 60日前
50トン< 75日前
ポリマー
物質の種類 NDSL収載の有無 年間製造/輸入量 提出時期
研究開発用、封じ込められた場所限定中間物質又は封じ込められた輸出専用物質 10トン< 30日前
規制要件軽減ポリマー*3 1トン< 30日前
上記以外のポリマー     無(反応成分がDSL・NDSLになし)  1トン< 30日前
10トン< 60日前
有(反応成分すべてがDSL/NDSLにあり)   1トン< 30日前
10トン< 60日前
50トン< 60日前
*3  
規制要件軽減ポリマー
  カチオンポリマー、分解・解重合するポリマー、特定の元素又はイオン以外を含有するポリマー、特定の反応性官能基を含有するポリマー等に該当せず、(a)又は(b)を満たすポリマー、及び(c)のポリマー。
 
(a)  
数平均分子量(NAMW)>10,000ダルトン(以下、単位のダルトンは省略)であり、分子量(MW)が500未満の成分<2%、かつMWが1,000未満の成分<5%
(b)   1,000<NAMW≦10,000であり、MWが500未満の成分<10%、かつMWが1,000未満の成分<25%
(c)   規則付属書8記載の反応成分(約100物質)又はその無水物だけから製造されたポリエステル
このページの先頭へ
8.  要求される情報: 化学物質、ポリマーのカテゴリー、量等ごとに必要な情報が規定
8-1   NDSL非収載(10トン/年超)の化学物質に対して要求される情報
1 化学物質がNDSLに収載かどうか、及びアイデンティティ/MSDS
2 物理的化学的データ(9項目)、生分解性データ
3 急性毒性データ(魚類/ミジンコ/藻類、哺乳類)
4 皮膚刺激性、感作性データ
5 28日間の哺乳類反復投与毒性データ
6 遺伝子突然変異(in vitro)試験、哺乳類細胞染色体異常(in vitro)試験、染色体異常/遺伝子突然変異(in vivo)哺乳類試験
7 化学物質に対するばく露情報I(年間の予想製造及び輸入量、用途等)
8 化学物質に対するばく露情報II(輸送と貯蔵の形態・容器、放出量関連データ、処分方法等)
9 健康・環境危険性、ばく露情報関連のその他のすべての情報及び試験データの要約
10 カナダ国内外を問わず、製造/輸入を届け出た他の政府機関のアイデンティティ、その機関の評価結果、課されたリスク管理措置
11 実績ある、可能性あるその他用途、環境ばく露を限定する可能性あるすべての要因
(注)  その他のカテゴリー及び量の化学物質で必要な情報(上記番号で記載)
(a)  
研究開発用物質、場所限定中間物質、輸出専用物質:1、7、8、9、10
(b)   NDSL非収載(100kg/年超)、NDSL収載(1トン/年超):1、7、9、10
(c)   NDSL非収載(1トン/年超)、NDSL収載(10トン/年超):1、7、9、10 + 2、3の一部、8、(NDSL収載の場合:+11、放出量実証データ、他)
8-2   NDSL非収載(10トン/年超)のポリマーに対して要求される情報
1 ポリマーの種類(軽減ポリマー、NDSL収載等)及びアイデンティティ/MSDS
2 物理的化学的データ(7項目)
3 不純物及び重量濃度
4 組成(モノマー、その他反応成分、添加剤、安定剤等)、重量濃度、他
5 (pH7での水抽出性が2%以下でない場合)ポリマーの水溶性部分の生分解性データ、ポリマーの急性毒性データ(魚類/ミジンコ/藻類)
6 哺乳類急性経口毒性データ、皮膚刺激性を評価可能な情報、皮膚感作性データ
7 28日間の哺乳類反復投与毒性データ、変異原性データ
8 化学物質に対するばく露情報I(年間の予想製造及び輸入量、用途、直接的なヒトばく露の程度、子供の使用が意図されるか、使用/加工が多い3つの場所等)
9 化学物質に対するばく露情報II(輸送及び貯蔵の形態・容器、放出量関連データ、処分方法、実績/可能性あるその他用途、環境ばく露を限定する可能性あるすべての要因)
10 健康・環境危険性、ばく露情報関連のその他のすべての情報及び試験データの要約
11 カナダ国内外を問わず、製造/輸入を届け出た他の政府機関のアイデンティティ、その機関の評価結果、課されたリスク管理措置
(注)  他のカテゴリー、量のポリマーで必要な情報(上記番号で記載)
(a)  
研究開発用物質、場所限定中間物、輸出専用物質であるポリマー:1、2の一部、3、4、8・9の一部、10、11
(b)   軽減ポリマー、その他ポリマー(1トン/年超):1、2、3、4、8、10、11
(c)   NDSL収載ポリマー、反応成分すべてがDSL/NDSL収載ポリマー(10トン/年超):1、2、3、4、5、6の哺乳類急性毒性データ、8、9、10、11
このページの先頭へ
9.  届出の提出方法
9-1   届出書式:特定のNSN書式(NSN Form)
特定のNSN書式(NSN Form)
9-2   外国の供給業者による情報提出:秘密情報を直接環境省へ提出が可能
このページの先頭へ
10.  届出の審査及び製造・輸入の開始
10-1   審査期間
(a)  
7に記載の情報提出時期(製造・輸入開始前の最低限の日数)と同じ日数。
(b)   審査完了に追加時間が必要な場合、審査期間の終了前に期間の延長が通知される。
10-2   審査後に講じられる措置
(a)  
有害性の疑いがない場合:届出者は審査期間終了後、製造/輸入の開始可能
(b)   有害性の疑いがある場合:条件付で製造/輸入開始の許可、最大2年間の製造/輸入の禁止(必要な規則作成)、審査継続のための追加情報提供要請
このページの先頭へ
11.  その他
11-1   秘密保持
(a)   環境省へ提出されるいかなる情報も、秘密のものと主張できる。
(b)   秘密保持を要請する場合、以下を行わなければならない:
1   NSN書式を用いて、どの情報が秘密とみなされるかを示す。
2 補足情報の添付。物質のアイデンティティを秘密にする場合のマスク名の付帯等
11-2 超過量の届出
物質の届出者は、製造・輸入量が下記の規定量を超過後30日以内に超過量の届出(NOEQ)を提出しなければならない。NOEQを提出する代わりに、製造/輸入の開始後で規定量に達する前に製造又は輸入の届出(NOMI)を提出することもできる。NOEQ又はNOMIにより当該物質がDSLに収載される。
対象 量/暦年
化学品 NDSLに非収載 10トン
NDSLに収載
(a)   1日当たり、1サイト当たり、各月平均して、排水処理後に、水生環境に3kg超の量で放出される、又は
(b)   公衆が製品中のその化学物質に著しくばく露される可能性がある
50トン
上記以外 10トン
規制要件軽減ポリマー 1トン
規制要件軽減ポリマー以外のポリマー
NDSLに収載、又はNDSLに非収載だがその反応成分のすべてがDSL/NDSLに収載され、かつ、次のいずれかに該当する場合:
(a)   1日当たり、1サイト当たり、各月平均して、排水処理後に、水生環境に3kgを超える量で放出される
(b)   公衆が製品中のそのポリマーに著しくばく露される可能性がある
50トン
上記以外 10トン
(注)  研究開発用、封じ込められた場所限定中間物質及び輸出専用物質にはNOEQの規定は 適用されない。
このページの先頭へ