環境省保健・化学物質対策国際的動向と我が国の取組諸外国の新規化学物質審査規制制度の概要

諸外国の新規化学物質審査規制制度の概要

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欧州連合(EU)

【はじめに】
 この資料は、平成19(2007)年12月時点の情報を基に作成しました。分かりやすく説明するために、手続の一部を省略したり、条文に厳密に沿っていない場合がありますので、制度の詳細については原典等で御確認ください。環境省は利用者がこのサイトに掲載されている情報を用いて行う一切の行為について、何らの責任を負うものではありません。


  1. 制度の経緯、背景等
  2. 法規等
  3. 所管当局
  4. 既存化学物質リスト
  5. 登録者、届出者
  6. 登録、届出を要する物質
  7. 登録、届出の種類
  8. 登録、届出時期
  9. 要求される情報
  10. 登録、届出の提出方法
  11. 登録、届出の審査及び製造・輸入の開始
  12. その他
0.  制度の経緯、背景等
EUの化学物質規制法規は、多くの異なる規則、指令から成っている。指令67/548/EECでは新規化学物質は上市前に試験が必要なのに対し、既存化学物質にはその必要がなく、人健康・環境影響についての十分な情報を作り出してこなかった。また、新規物質の研究、発明の意欲を阻害し、技術革新への障害ともなってきた。これを踏まえ欧州委員会は、2001年2月に新しい化学物質政策を導入するための白書「今後の化学物質政策のための戦略」を発表し、2003年10月にこれを施行するための規則案を公表した。欧州閣僚理事会及び欧州議会がこの規則案をもとに最終化への審議を進め、2006年12月18日に新たな化学物質規制である「化学物質の登録、評価、認可及び制限(REACH)に関する規則(REACH規則)」が成立し、2007年6月1日から施行された。この規則は、現行の大部分の化学物質規制法規を置き換え、さらには既存、新規の区別をなくして同一の管理制度を導入し、試験とアセスメントの責任を当局から産業界に移行する等、画期的で包括的な基本法規とも言うべきものである。
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1.  法規等:  化学物質の登録、評価、認可及び制限(REACH)に関する規則(EC)No 1907/2006
(注)   2008年5月31日までは、指令67/548/EECに基づく新規化学物質届出が実施される。(REACH規則の登録等主要部分の適用は、2008年6月1日以降になる。)
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2.  所管当局:  欧州化学物質庁(庁)、EU加盟各国の所管当局
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3.  既存化学物質リスト:  なし(新規、既存の区別なし)
・   段階的導入物質 :  欧州既存商業化学物質インベントリー(EINECS*1)収載物質、規則発効前15年にEU内で一度は生産されたが上市されなかった物質、発効前に上市された「もはやポリマーとはみなされない物質」*2
・   非段階的導入物質
*1  EINECS:1981年9月18日にEU市場にあるとみなされた化学物質を収載
*2  「もはやポリマーとはみなされない物質(No Longer Polymer;NLP)」 :指令67/548/EEC第7次修正指令によってポリマーが定義された結果、修正指令の下ではもはやポリマーとはみなされなくなったオリゴマー等のリスト
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4.  登録者、届出者*3:  製造事業者、成形品(article)の生産者、輸入事業者、唯一の代理人*4
*3  REACH規則では、「登録」及び「届出」の制度があり、指令67/548/EECの「届出」に相当する制度はREACHでは「登録」である。「届出」には「登録」で必要な安全性試験データの提出等は不要である。
*4  唯一の代理人は、EU内に輸入される物質それ自身、調剤中/成形品中の物質を製造し、調剤を配合し、成形品を生産するEU外の事業者によって任命されるEU内の事業者。輸入事業者の義務の遵守、物質の実務的取扱いの背景・情報、輸入量、顧客情報及び最新の安全性データーシート(SDS)の情報の保持が必要。EU外の事業者は、その任命を輸入事業者に通知し、輸入事業者は川下ユーザー(製造/輸入事業者以外のEU内の事業者)とみなされる。
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5.  登録、届出を要する物質
・   登録 :  規則で規定されている場合を除き、1トン/年*5以上の物質それ自身又は調剤(2以上の物質から成る混合物又は溶液))中の物質
   放出が意図され1トン/年/事業者を超える量で存在する成形品中の物質*6
*5  1年当たり:1暦年当たりの意味。連続する3年間製造/輸入された段階的導入物質では、その量を直前の3暦年の平均に基づいて計算。
・   届出 :  認可対象物質の候補リストに収載の物質を1トン/年/事業者を超える量で、かつ0.1重量%を超える濃度で存在する成形品中の物質*6(ただし、通常の又は当然予想される使用条件下で人/環境のばく露が排除可能な場合、届出は不要であるが、適切な使用説明書の提供は必要)
   製品・プロセス指向研究開発(PPORD)の目的で製造/輸入される物質
*6  その使用のために既に登録された成形品中の物質の登録、届出は不要
5-1  SCAインベントリーへの収載の有無の調査方法
・ 公開情報調査:  オンライン、CD-ROM(NCI等)、インターネット(ECBweb)
5-2  登録が要求されないもの
(1) 規則からの適用除外、免除
1 放射性物質(指令96/29/Euratomの範囲内)
2 税関の監督下にある通過中の物質(いかなる処理又は加工も受けないもの)
3 単離されない中間体
4 鉄道、道路、内陸水路、海路又は空路による輸送中の危険な物質
5 廃棄物(指令2006/12/ECによって定義)
6 防衛上必要な物質
(2) 規則からの部分的(タイトルII:物質の登録)適用除外、免除
1 人及び動物に使用する医薬品に使用される物質並びに天然に産出する物質
2 食品添加物、食品中の香味剤、飼料添加物及び動物栄養剤に使用する物質
3 付属書IV包含物質(でんぷん、植物油、脂肪酸、水、窒素等の68物質)
4 付属書V包含物質(安定剤等の添加剤が意図した機能を果たす時に生じる化学反応の結果として生成する物質、輸入/上市されない副生物、天然に産出する物質等)
5 供給連鎖中の行為者によって輸出され、同一の供給連鎖中の行為者によって再輸入される登録物質それ自身/調剤中の物質
6 EU内で回収された登録物質それ自身又は調剤中/成形品中の物質
7 ポリマー*7
8 PPORD目的の物質:5年間免除、さらに5年(医薬品、未上市品は10年)延長可能
*7  ポリマーが2重量%以上のモノマー等で構成され、モノマー等が1トン/年以上となる場合、サプライチェーンの川上の行為者によって登録されていないモノマー等は登録が必要
(3) 登録されているとみなされる物質
1 植物保護製品のみへの使用のための活性物質及び共配合剤
2 殺生物性製品のみへの使用のための活性物質
3 指令67/548/EECに従う届出物質(ELINCS収載物質):届出者のみに有効
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6.  登録、届出の種類
6-1  段階的導入物質の予備登録
(注)   予備登録を行うと物質交換情報フォーラム(SIEF)への参加を義務付けられ、SIEFの中で脊椎動物試験データ・その他の情報の共有化及び物質の分類・表示の合意を求められ、特に脊椎動物試験データについては費用と交換で共有することが義務付けられている。
6-2  予備登録した段階的導入物質の登録
(注)   複数の予備登録を行った者がいた場合、共同提出の要件が適用される。
6-3   非段階的導入物質及び予備登録をしなかった段階的導入物質の登録
データの共有のために、まず庁に同一物質の登録の有無を照会する必要があり、その際、潜在的登録者・その物質のアイデンティティ及びどの情報要件が脊椎動物を含む新しい調査を要求しているかの情報を提供することが必要になる。
・   12年前以前に登録の枠内で提出された調査の要約書等は登録の目的で利用可能。
・   12年前以内に同一物質が登録されている場合、特に脊椎動物試験データについては費用と交換で共有することが義務付けられている。
6-4  単離中間体における軽減された登録
(a)   厳格に管理された条件でのみ製造/使用される場合のサイト内単離中間体
(b)   他の物質の合成が他のサイトで特定の厳格な条件下で行われることを製造/輸入事業者が確認等をする場合の輸送を伴う単離中間体の登録 なお、モノマーはポリマー向けの単離中間体であるが、軽減された登録ではなく通常の登録が必要。
6-5  成形品中の物質の届出(詳細略)
6-6  PPORD届出(詳細略)
6-7  指令67/548/EECに基づく届出(2008年5月31日まで)
REACH規則の下では、指令67/548/EECに基づく新規物質の届出は登録とみなされる。届け出られた物質は欧州届出化学物質リスト(ELINCS)に収載されている。
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7.  登録、届出時期 :  2008年6月1日から適用
物質の種類 年間(暦年)製造/輸入量、他 登録期限
予備登録 1トン/年以上(想定) 2008年6月1日~2008年12月1日
非段階的導入物質の登録 1トン/年以上 製造・輸入開始/継続の3週間前*8
段階的導入物質の登録 予備登録無
予備登録有 CMR物質(カテゴリー1,2)で1トン/年以上 2010年11月30日
水生生物に猛毒性/水生環境で長期影響のおそれあり(R50/53)の物質で100トン/年以上
1,000トン/年以上
100トン/年以上 2013年5月31日
1トン/年以上 2018年5月31日
成形品中の物質の届出 認可候補物質が1トン/年を超える量で0.1重量%を超える濃度で存在 2011年6月1日以降、認可候補物質特定の6ヵ月後
PPORD届出   PPORDの開始の2週間前
(注)   単離中間体の軽減された登録は、(非)段階的導入物質の該当箇所に含まれる。
*8   データを共有する以前の登録者がいて、その登録者が要求すれば、4ヵ月まで延長の可能性あり
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8.  要求される情報
8-1  通常の登録
複数の登録者がいる場合、ある種の情報については、他の登録者の同意をもって1登録者(先導登録者)が提出する共同提出*9が求められる。
(a) 技術一式文書*10(書式はIUCLID) <資料提出>
 
 1   製造・輸入事業者のアイデンティティ(附属書VI、section1)
個別提出
 2   物質のアイデンティティ(附属書VI、section2)
個別提出
 3   製造・使用に関する情報(登録者が特定するすべての使用を記述。該当する使用・ばく露カテゴリーを含んでよい。)(附属書VI、section3)
個別提出
 4   物質の分類及び表示(附属書VI、section4)
共同提出
 5   物質の安全な使用に関する指針(附属書VI、section5)
個別/共同提出
 6   附属書VII~XIの適用からの試験結果の調査要約書
共同提出
 7   附属書VII~XIの適用からの試験情報のローバスト調査要約書
共同提出
 8   3、4、6、7又は(b)の情報のどれが適切な経験を持つ査定人(assessor)によって審査されたかに関する示唆
個別/共同提出
 9   附属書IX及びXの試験の提案
共同提出
10   ばく露情報(1~10トン/年の物質)(附属書VI、section6)
個別提出
11   インターネットによる公的利用情報のどれをインターネット利用にしてはならないとする要求(商業的利益に有害との根拠を含む)
 
(b) 化学物質安全性報告書(CSR)*11(10トン/年以上で必要) 個別/共同提出
*9   共同提出すべき情報でも、費用がかかり過ぎる、商業的損害を起こす又は情報選択で先導登録者に不同意のいずれかの根拠がある場合、その根拠を添付して個別提出が可能
*10   技術一式文書で要求される試験結果の情報(附属書VII~X)は、条件により相違
(a)   1~10トン/年の段階的導入物質(以下の1及び2を除く):附属書VIIの物化性状のみ
1   カテゴリ-1,2のCMR(発がん性・変異原性・生殖毒性)、PBT(難分解性・生物蓄積性・毒性)、vPvB(極めて難分解性で高い生物蓄積性)が予見される物質
2   消費者用調剤/成形品向けの分散的・拡散的な使用で危険性が予見される物質
(b)   1トン/年以上の非段階的導入物質、1~10トン/年の段階的導入物質((a)1及び2)、10トン/年以上の段階的導入物質:附属書VIIの情報
(c)   10トン/年以上の(非)段階的導入物質:附属書VIIIの情報を追加
(d)   100トン/年以上の(非)段階的導入物質:(c)の情報+附属書IXの試験提案
(e)   1,000トン/年以上の(非)段階的導入物質:(d)の情報+附属書Xの試験提案
*11   化学物質安全性報告書(CSR)は、物質/物質グループの化学物質安全性アセスメント(CSA)を文書化したもので、10トン/年以上で要求(ただし、調剤中の物質で、その濃度が危険と分類する濃度(PBT/vPvBのクライテリアを満たす場合0.1重量%)未満の場合、不要)。CSAとは、物質のハザード(物理化学的、人健康、環境)アセスメント、その物質がPBT・vPvBであるかどうかのアセスメント、ばく露アセスメント・リスク特性化(危険と分類、PBT/vPvBの場合)を実施すること。
8-2  予備登録
1 物質の名称(EINECS、CAS番号等)、潜在的登録者の名称等
2 登録に想定される期限/トン数
3 定性/定量的構造活性相関、物質のグループ化/読み取り法で特定できる物質の名称
8-3  単離中間体における軽減された登録
1 製造/輸入事業者のアイデンティティ、中間体のアイデンティティ・分類
2 物理化学的性質、健康/環境上の性質に関連した利用可能な情報
3 使用の簡潔な一般的記述
4 適用される/推奨されるリスク管理措置情報
5 1,000トン/年以上の輸送を伴う単離中間体の場合、追加として付属書VIIの情報
8-4  成形品中の物質の届出
1 成形品の生産/輸入事業者のアイデンティティ、連絡先詳細
2 物質の登録番号(利用可能な場合)
3 その物質のアイデンティティ・分類、トン数範囲
4 成形品中のその物質の使用・成形品中の使用の簡単な記述
8-5  PPORD届出
1 製造/輸入事業者、成形品の生産者のアイデンティティ
2 その物質のアイデンティティ・分類、予定数量
3 顧客の名称、宛先を含む顧客リスト
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9.  登録、届出の提出方法
登録及び届出は庁に提出する。通常の登録及び中間体の軽減された登録には、データの共同提出が要求される。通常の登録の場合の共同提出データは項目8-1で既に述べた。軽減された登録の共同提出データは、中間体の分類と利用可能な既存情報である。共同提出データを個別提出可能にできるのは、項目8-1で述べた条件で両登録の場合とも同一である。
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10.  登録、届出の審査及び製造・輸入の開始
・   登録 :  一式文書の提出日から3週間以内に庁から反対の指示がない場合、物質の製造/輸入、成形品の生産/輸入の開始、継続が可能*12
・   PPORD届出 :  庁から反対の指示がない限り、2週間後に物質の製造/輸入可
*12  登録更新及び追加情報提出も同様(更新日又は追加情報受理日から3週間以内)。また、予備登録した物質について、登録期限前の2ヵ月内に一式文書が提出された場合、登録期限から3ヵ月以内に庁からの反対の指示がなければ継続可能。
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11.  その他
11-1  秘密保持
秘密にできない情報、庁に根拠を提出して認められた場合に秘密にできる情報及び緊急時以外利用できない商業秘密情報は規定されている。
・秘密不可情報:   物質のEINECS名(危険な物質の場合IUPAC名を追加)、物質の分類・表示、物理化学的データ、経路、環境運命、物質の毒性学、安全な使用指針、環境中の危険な物質の検知・ばく露定量の分析法
・秘密可能情報:   分類・表示に必須の物質純度と危険な不純物・添加物、トン数帯、調査要約書等、秘密不可以外のSDS情報、商品名、危険な非段階的導入物質のIUPAC名(6年)、中間体/科学的R&D・PPORDにのみに使用の危険な物質のIUPAC名
・商業秘密情報:   調剤の完全な組成、物質/調剤の正確な使用・機能・適用・トン数、製造/輸入事業者と流通事業者/川下ユーザーとのつながり
11-2   登録後の登録情報更新義務:下記の場合、遅滞なく庁への届出が必要
1   製造/輸入事業者、成形品の生産者のアイデンティティの変化
2   物質組成の変化、分類・表示の変化
3   トン数帯の変化となる場合の、製造/輸入される物質又は製造/輸入される成形品中の物質の年間量/総量変化(トン数に依存する追加情報に関しても直ちに連絡が必要)
(注)   登録されているとみなされる届出物質の量がより高いトン数閾値に達するとき、対応する情報を提出していない場合はトン数に応じた情報の提出が必要
4   新しい特定された使用及び附属書IV section 3.7の反対が助言される新しい使用
5   SDS又はCSRの変更になる、健康/環境に対する物質のリスクの新知識
6   CSR又は安全使用指針の更新及び修正
7   附属書IX、Xの試験(100トン/年以上の場合の追加試験)を行う必要性の特定
8   利用を許可された登録情報の変更
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