保健・化学物質対策

情報提供とリスクコミュニケーションの今後

主婦連合会
環境部長 有田 芳子
(2010年4月7日 掲載)

 2005年3月に化学物質の内分泌かく乱作用に関する環境省の今後の対応方針として、「-環境ホルモン戦略計画SPEED'98-」の改訂版「ExTEND 2005」で、(1)野生生物の観察、(2)環境中濃度の実態把握及び暴露の測定、(3)基盤的研究の推進、(4)影響評価、(5)リスク評価、(6)リスク管理、(7)情報提供とリスクコミュニケーション等の推進が出されました。

 当時、私は、「内分泌かく乱作用問題の今後の課題-リスクコミュニケーションの必要性-」として、「あれほど騒がれた化学物質の内分泌かく乱(いわゆる環境ホルモン)作用に、消費者、市民団体の関心はなくなったかに見える。平成10年(1998年)、化学物質の内分泌かく乱(いわゆる環境ホルモン)作用を、マスコミが大きく取り上げたこともあり、身近な化学物質の新しい毒性問題として消費者や市民団体の関心は高まった。省庁による調査研究が始まり評価を待つこととなったが、内分泌かく乱作用の、その時々の科学的知見などは報道されず、いわゆる環境ホルモンに関心の高かった消費者ほど内分泌かく乱作用情報は当時のままである。」とし、「消費者が騒がなくなったのは、省庁で調査研究が行われていることもその理由のひとつで、研究結果が「安全」か「安全でない」のどちらかの結果のみが知りたいのではなく、まだ試験方法の開発途中なのであれば、そのような状況なども知りたいと思うけれど、そのような情報が分かりやすく提供されているとは言いがたい。今後は、リスト廃止の経過や研究の状況などもコミュニケーションの対象として欲しい。」と、ある専門誌に書いています。

 リスト廃止後の、この5年間に、新たな問題が出てきています。

 日本科学飼料協会第394回月例研究会(2008年5月22日)で、農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所宮崎茂先生が、「ゼアラレノンは、F.graminearumなどが産生するカビ毒で、エストロジェン(女性ホルモン)様作用を示す。家畜のなかでは特に豚の感受性が高く、外陰部の腫大や流産を起こす。」と講演しています。

 2009年3月10日、「ハザードが注目されるようになった経緯」を「海外においてゼアラレノンに汚染されたとうもろこし飼料により豚の過エストロゲン症による死亡事故の発生。また、関連化合物である家畜の生育増進ホルモン剤として使用されているゼラノール等とともにゼアラレノンは内分泌かく乱物質(環境ホルモン)として危惧されている。」として、農林水産省は、とうもろこし等の穀物につくカビが産出するカビ毒「ゼアラレノン」のリスクプロファイルシートを作成しました。そのプロファイルシートによると、「一般にゼアラレノンに対する消費者の関心は低い」と記載しています。「ゼアラレノン」の情報は殆ど無く知らない人のほうが多いのですから、関心が低いと言うより情報不足です。

 2008年10月に韓国(社)消費者の会、2009年2月ドイツの女性団体WECF(Women in Europe for a Common Future)と、玩具の化学的安全性に対する取り組みについて交流を行いました。

 韓国(社)消費者の会は環境ホルモン問題について取り組んでいました。韓国の環境ホルモンの規制は3物質で、2006年には、プーさんの風船に使われていた可塑剤が青少年保護法で使用禁止になったそうで、2008年に韓国(社)消費者の会が購入検査したプール用具類に禁止されているフタル酸エステルの含有があったので、問題にしているとのことでした。

 ドイツのWECFは、玩具の化学的安全性に対して運動を行っているという事で、玩具に関する法律の緩和・改定に対して声を上げ、助言の手引きなどを作成し、市民に関心を持つよう運動をしていました。

 WECF作成の手引きには、「近年、環境総局の依頼により行われたDHIの研究は、内分泌かく乱化学物質の証拠を持つ優先物質リストを66物質から194物質へと拡大した。(DHI:内分泌かく乱化学物質の優先物質リストを低生産量の化学薬品に焦点を当てて強化する研究、2007年)」と書いてありました。単純に騒ぎたてるつもりは無いけれど、私たちは情報不足に陥っているのではと、考えこんでしまいました。

 「いわゆる環境ホルモン」は、未だ研究中であること、科学的に解明されていない事があること、国際的な研究・状況などを知ることは、私たちの権利でもあり責任でもあると思います。

 現状と真実が伝わってくる、恣意的でない、難しい専門用語には解説がある等、伝えようとする気持ちが伝わってくるコミュニケーションツールとして、このホームページの活用が望まれます。

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