保健・化学物質対策
用語集─さ行
サイロキシン、チロキシン/thyroxine, T4
通常、L-異性体は甲状腺に存在する活性ヨウ素化合物で、治療用に結晶型で甲状腺から抽出され、合成もできる
ジエチルスチルベストロール/DES: diethylstilbestrol
エストロゲン活性を有する非ステロイド性の合成化合物。受精卵の着床を避ける作用がある、性交後の避妊薬として使用されたことがある。この化合物が流産を防ぐと誤認された頃に服用した妊婦より生まれた女児において、遅発性の膣明細胞癌の発現があったころから、初めて胎盤通過制の発癌性物質が見出された。
子宮内膜/endometrium
子宮壁内層からなる粘膜、単層円柱上皮および単一管状の子宮腺をもつ固有層で構成される。内膜の構造、厚さ、状態は月経周期に伴って大きく変化する。
試験管内試験/in vitro 試験
人工的な器具内で行われる生物学的な反応に関して使われる言葉で、「試験管内」を意味する。多くの場合、生物体機能の一部を試験管内において行わせることを指す。
視床下部/hypothalamus
脳の腹側と内側の領域で、第3脳室のおよそ腹側半分の壁を形成しており、視床下溝により視床と区別され、内包と視床腹側部の内側に位置し、前方では前交連中隔と後方では中脳被蓋および中心灰白質と続いている。自律神経系の内臓運動性機能に深く関与しており、下垂体前葉との血管連絡を通じて内分泌機構に関与している。情緒や動機付けの基礎である神経機構にも役割を演じているように思われる。
視床下部ホルモン/hypothalamus hormone
視床下部から分泌されるホルモンで、下垂体からのホルモン分泌を調節する。
受容体/receptor
細胞表面あるいは細胞質内部でホルモン、抗原、神経伝達物質などの特定の因子と結合する構造蛋白分子。
松果体/pineal body, corpus pineale
松かさ様の、対をなしていない卵形小器官。脳の付属機関であるが、末梢神経系からの神経線維だけを受ける。メラトニンとセロトニンがつくられる。
植物エストロゲン、植物エストロジェン/phytoestrogen
エストロゲンと類似した構造を有する植物成分。
神経下垂体ホルモン/neurohypophysial hormones
視床下部で産生されるホルモン。例えば、オキシトシン、バソプレッシン。
神経系/nervous system
中枢部(脳、脊髄)と末梢部(脳神経、脊髄神経、自律神経節、叢、末梢神経)からなる神経の全器官。
神経伝達物質/neurotransmitter
興奮時にシナプス前の細胞から放出され、シナプスを横切ってシナプス後の細胞を刺激または抑制する特異的化学物質。
神経分泌細胞/neurosecretory cells
視床下部神経細胞のように、下垂体前葉などに影響を及ぼす化学物質(例えば放出因子、神経ペプチド、ごくまれに真性のホルモン)を分泌する神経細胞。
神経ペプチド/neuropeptide
神経が分泌するホルモンなどの総称。
神経ホルモン/neurohormone
神経分泌細胞によってつくられ、神経インパルスから放出されるホルモン。例えばノルエピネフリン。
スクリーニング/screening
一般的に、ランダムな集合から特定の条件に合致した部分集合を取り出す操作。
ステロイドホルモン/steroid hormones
ステロイド環系をもつホルモン。例えば、アンドロゲン、エストロゲン、副腎皮質ホルモン。
生殖器/genital organs, genitalia, genitals
生殖のための器官で、内と外に区別される。
生殖腺/gonad
→性腺
生殖・発生毒性/reproductive and developmental toxicity
化学物質等の環境要因が生殖・発生の過程に有害な反応を引き起こす性質。親世代からみれば生殖毒性(reproductive toxicity)、次世代を中心にみると発生毒性(developmental toxicity)である。両者については研究者によってそれぞれ概念がことなるが、一般には生殖毒性は受胎能の障害、発生毒性は生殖細胞の形成から受精、出生を経て、個体の死に至る発生の何れかの時期に作用して、発生障害(早期死亡、発育遅滞、形態異常、機能異常)を引き起こす性質と定義される。
性腺/gonad
性細胞を形成する器官。精巣、または卵巣。
性腺(生殖腺)刺激ホルモン/GTH: gonadotropin
性腺の成長および機能を促進するホルモン。個々のホルモンが及ぼす効果は卵胞の成長やアンドロゲンの生成を刺激するなど、特有の性腺機能または組織に限定されているのが普通である。
性腺(生殖腺)刺激ホルモン放出ホルモン/GnRH: gonadotropin-releasing hormone
視床下部より分泌されるペプチドホルモンで、下垂体前葉を刺激して卵胞刺激ホルモンと黄体刺激ホルモンを分泌する。
精巣/ testis
卵形をした男性の性腺で陰嚢内に位置する。精巣内の精巣管は精子形成の場で、間質にあるLeydig細胞はテストステロンのみならずエスロトゲンや他の男性ホルモンを分泌する。
生体を用いる生物試験法/ in vivo 試験
生きている細胞あるいは生体内に置かれている状態を指す語で、「生体内」を意味し、対象とする生体の機能や反応が生体内で発現される状態を示す。
成長ホルモン/ GH: growth hormone, somatotropin
好酸性細胞によりつくられる下垂体前葉の蛋白ホルモン。身体の成長、脂肪動員、グルコース利用の抑制を促進する。
成長ホルモン(分泌)抑制ホルモン/ GIH: growth hormone inhibiting hormone, somatostatin
成長ホルモンの放出を抑制する作用を持つテトラデカペプチド。
性ホルモン/ sex hormones
精巣、卵巣、副腎皮質でつくられるステロイドホルモンの総称名。アンドロゲン、エストロゲンやプロゲスチンをさす。
セルトリ細胞/ Sertoli cells
精子細胞を収納し精子形成を支える微細環境を提供する。アンドロゲン結合蛋白を分泌し、近接したSertoli 細胞を強固に結合することによって血液精巣隔壁(バリア)を確立する。
参考資料:
※1:環境省環境保健部環境リスク評価室(2011)化学物質の環境リスク評価 第9巻
※2:環境省 化学物質の生態影響試験について http://www.env.go.jp/chemi/sesaku/01.html
※3:化学物質の内分泌かく乱作用に関する今後の対応 -EXTEND 2016-
※4:平成22年度第1回ExTEND2005 作用・影響評価検討部会 資料3
引用文献:
※5:ステッドマン医学大辞典編集委員会(2009)ステッドマン医学大辞典 改訂第6版 メジカルビュー社
※6:日本語バイオポータルサイト Jabion 用語解説