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環境省保健・化学物質対策科学的知見の充実及び環境リスク評価の推進化学物質の内分泌かく乱作用に関するホームページ取組紹介 >環境省の取組:国際協力関連事業・日英共同研究

取組紹介

取組紹介
環境省の取組

「国際協力関連事業」

化学物質の内分泌かく乱作用に関する日英共同研究

H21 第2回 ExTEND2005 作用・影響評価検討部会
(資料2-1より抜粋) 10.02.25

化学物質の内分泌かく乱作用に関する日英共同研究

平成11年3月に開催されたG8環境大臣会合において、内分泌かく乱化学物質について日英両国間で共同研究を実施することが合意され、5カ年の日英共同研究事業が開始された。また、5年目となる平成16年度(2004年)に、日英両国間の協議により、さらに5年間の延長が決定された(第2期)。第2期(2004~2009年)の日英共同研究では、4つのテーマを設定し、日英両国の研究者によって、それぞれ研究を推進している。研究成果の概要を以下に示した。

(1)排水由来エストロゲン様作用の評価に関する研究

エストロゲン作用が高い河川でのエストロゲンの環境中運命を予測する方法及びエストロゲン作用の削減効果の評価方法を開発することを目的とした。

遊離体及び抱合体エストロゲンの分析法の開発を行い、エストロゲン及びその抱合体に対し、これまで開発されたLC/MS/MSによる分析方法を改善し、遊離体及び抱合体エストロゲンについて高い回収率を得る有効な方法を開発した。

下水処理でのエストロゲン(E1及びE2)の挙動に関し、実態調査(窒素除去プロセスにおける挙動調査、小規模処理場対応の処理プロセスにおける挙動調査、追加的高度処理プロセスにおける挙動調査)を実施した。下水処理での挙動について、我国における下水のエストロゲン様活性はE1の寄与が大きいことが確認でき、好気条件の維持が水中からエストロゲン除去に大きく影響すること、二次処理した後に接触酸化法で高度処理を行うと、エストロゲン濃度が減少することが明らかとなった。

エストロゲンの環境中運命を予測する方法として、淀川水系における河川のエストロゲン類濃度のモデル化を行い、実測データと比較した結果、モデ ルの予測値と適合性が見られた。

(2)イトヨを用いたアンドロゲン様作用の評価手法の研究

OECDに向けた化学物質のアンドロゲン作用を評価するための試験法開発に貢献するため、イトヨ雌を用いたアンドロゲン様物質の影響評価手法の確立を目的とした。

スピギン及びアンドロゲン受容体(AR)mRNA の定量RT-PCR 測定系を構築し、高感度測定を可能とした。また、イトヨのばく露に際しては、水温は15℃が好適であり、またスピギンmRNA をエンドポイントとした場合、1 週間程度のばく露で影響を評価できることを示唆した。さらに、飼育環境下でのイトヨの育成にも取り組み、人工授精及び稚仔魚の育成に成功した。

イトヨアンドロゲン受容体α及びβの腎臓並びに精巣での発現解析を遺伝子及びタンパク質の両面から行い(精巣、成熟雄腎臓及びアンドロゲン処理雌 腎臓での発現パターンを明らかにする)、その機能性を評価した。また、イトヨアンドロゲン受容体のレポータージーンアッセイを確立した。

(3)魚類精巣卵の誘導機構に関する研究及び魚類エストロゲン受容体の種特異性の調査

OECD に向けた国際貢献に資するため、ステロイドホルモン及び化学物質による転写活性能を指標としたホルモン受容体の種差を評価すること及びメダカで見られるエストロゲン誘導性精巣卵を遺伝子発現の観点から解析し、ローチ精巣卵解析の足がかりとすることを目的とした。

ローチ、メダカ、ファットヘッドミノー、ゼブラフィッシュ、イトヨ、コイ等のエストロゲン受容体アルファとベータを培養細胞で発現させ、レポータージーンアッセイ系を確立した。これにより、エストロゲン作用を発揮すると推測される化学物質(ビスフェノールA(BPA)、ノニルフェノール(NP)、オクチルフェノール(OP))の転写活性の強さを調べた。

メダカで見られるエストロゲン誘導性精巣卵を遺伝子発現の観点から解析し、ローチ精巣卵解析の足がかりが得られた。遺伝子発現解析により、精巣卵誘起時に発現する遺伝子群を見出し、ZPA、ZPB、ZPC1、ZPC2、ZPC3及びZPC5については、精巣卵誘起のためのバイオマーカーとして活用できる可能性を示した。

(4)両生類の生態影響評価手法の研究

OECDにおいて必要性が議論されている両生類のための生殖影響試験について、陽性対象物質(エチニルエストラジオール:EE2)に対する影響を整理・評価し、試験法の必要性について検討すると共に、その運用を検討することを目的とした。

ニシツメガエル(Xenopus (Silurana) tropicalis)に陽性対象物質(EE2)をばく露し、定期的に全長、後肢長、発生段階、生殖腺、甲状腺について、形態学的な測定、観察、記録を行い、これらのデータをOECD等で広く活用できるよう、標準データベースを作成した。さらに、各種ホルモンレセプター・ビテロジェニンの発現等について測定、観察、記録を行い、遺伝子発現に関する標準データベースを作成した。

ニシツメガエルを使い、各種ホルモン受容体遺伝子(エストロゲン受容体α及びβ並びに甲状腺ホルモン受容体α及びβ)の単離、発生過程におけるホルモン受容体遺伝子の発現解析、エストロゲン応答遺伝子の探索及びエストロゲン受容体を用いたレポータージーンアッセイ系の構築を行った。

ニシツメガエルの全雄集団を得るための性転換個体の作製を行った。

今年度の実務者会議

平成20年10月に英国で開催された第10回日英共同ワークショップにおいて、日英共同研究を2010年から引き続き5年間、延長することが合意されている。

平成21年11月の第11回ワークショップにおいて、今後の研究テーマについて行政官及び研究者により議論し、日英共同研究の延長に関する調印を行った。

第11回ワークショップの成果について別添に記載した。

別添:第11回 化学物質の内分泌かく乱作用に関する日英共同研究ワークショップの結果について