大臣談話・大臣記者会見要旨

IPCCによる第六次評価報告書(AR6)に関する山口環境大臣談話

令和4年2月28日(月)

本日、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)による第六次評価報告書(AR6)第2作業部会報告書の政策決定者向け要約(SPM)が公表されました。

IPCCの評価報告書の歴史は古く、第一次評価報告書が執筆されたのは1990年に遡ります。この第一次・第三次評価報告書の執筆においては、気候変動を予測する数値モデルの研究によって2021年のノーベル物理学賞を受賞された眞鍋淑郎先生も執筆陣の1名としてご尽力いただいており、世界の第一線の研究者の方々の英知が結集したものとなっています。

今回の第2作業部会報告書は「気候変動への適応と社会への影響」の分野について、日本からの推薦者9名を含む科学者の皆さんにより、最新の科学的知見をまとめたものです。

本報告書では、「人為起源の」気候変動により、自然の気候変動の範囲を超えて、自然や人間に対して「広範囲にわたる悪影響とそれに関連した損失と損害」を引き起こしている、と今回初めて明記されました。そして、地球温暖化が進行すると、多くの自然・社会システムが「適応の限界」に達することも示されました。加えて、気温上昇が1.5℃を超えた場合、1.5℃以下に留まる場合と比べて、多くの自然・社会システムが更に深刻なリスクに直面するとの予測が再確認されるとともに、1.5℃付近に抑えることで影響の大幅な低減につながること等が記載されました。

これは、気温上昇を1.5℃に抑える、すなわち2050年カーボンニュートラルの達成が極めて重要であると改めて示されたものと受け止めています。このため、より一層の緩和策の取組及び高い水準の適応策の推進が、人類文明の更なる持続的な発展や豊かな自然環境との共生のために必要不可欠であります。

昨年開催された気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、冒頭の首脳級会合において、岸田総理から、全ての締約国に野心的な気候変動対策を呼びかけたほか、今後5年間での100億ドルの資金支援の追加や、途上国への適応支援を2025年までの5年間で約148億ドルに倍増することを表明しました。

また、同会議では、適応に関する世界全体の目標(GGA: Global Goal on Adaptation)の実施に向けて、継続的に議論していくため、2年間の作業計画「GGA に関するグラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画」の開始が決定されました。

我が国としても、科学的知見や国内外の施策のインプットを通じ、COP27を始めとした国際的議論に貢献するとともに、「アジア・ゼロエミッション共同体」の実現に向けて、脱炭素や気候変動適応技術を我が国から途上国に輸出・展開し、気候変動の適応と緩和の取組を一体的に推進してまいります。

加えて、我が国自身が、気候変動への影響に対していかに適応するかについては、最新の科学的知見に基づき、昨年10月に気候変動適応計画を閣議決定し、政府一丸となり各種施策を進めています。

同計画においては、防災、農業、健康等の幅広い分野において適応策を拡充し、各施策の進捗を把握するKPI(重要な指標)の設定・進捗管理を環境省が中心になって取り組んでおります。この目標の達成のため、地域における地方自治体や民間事業者の取組を支援し、持続可能でレジリエントな日本社会の構築のために全力を尽くしていきます。