大臣談話・大臣記者会見要旨

山口大臣閣議後記者会見録(令和4年1月18日(火)10:30~10:56於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

今日、私から発言させていただくのは2点です。北海道での国立公園視察及び車座会議について。そして2つ目は、「クリーンエネルギー戦略」に関する有識者懇談会についてです。初めの北海道での視察あるいは車座会議については、1月14日(金)及び15日(土)に北海道の阿寒摩周国立公園、釧路湿原国立公園などを訪問させていただきました。世界に誇る大自然を拝見し、また、川湯温泉の中の廃屋の撤去あるいは阿寒湖におけるワーケーションの推進など、国立公園満喫プロジェクトの取組が地域あるいは民間と連携しながら着実に進められている現場を見させていただきました。今回の視察で伺った地域からの御意見も踏まえ、引き続き満喫プロジェクトをしっかりと進めていきたいと思います。また、弟子屈町と阿寒湖において、それぞれ車座会議を開催させていただきました。弟子屈町では地熱あるいは温泉熱の活用、阿寒湖ではホテルで使用するワンウェイプラスチックの削減など、脱炭素や国立公園との相乗効果によるまちづくりに向けた積極的な意見を聞かせていただくことができました。地域の皆様からいただいた現場の声をしっかりと受け止めて、地域脱炭素や観光地再生などの、施策の検討にいかしてまいりたいと思います。2つ目の「「クリーンエネルギー戦略」に関する有識者懇談会」については、本日午後、官邸において「「クリーンエネルギー戦略」に関する有識者懇談会」が開催され、私も参加する予定です。総理が年頭の会見で既におっしゃられているように、炭素中立型に経済社会全体を変革していくため、政府全体で総力を挙げて取り組むとともに、その実施に向け、地域における脱炭素化など様々な論点の検討結果を「新しい資本主義実現会議」での議論にインプットしていきます。本日の懇談会は、そのキックオフの場になります。COP26でパリ協定の実施ルールが完成し、世界の脱炭素市場の獲得競争が激化しています。3,800兆円あるいはそれ以上とも考えられる世界のESG資金を呼び込み、脱炭素社会の実現とともに、新しい成長を生み出していく必要があると考えています。岸田総理も、こうしたお考えの下、気候変動というピンチをチャンスに変えていく、グランド・ストラテジーを作ろうとされている、と認識しています。2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、また、2030年までが人類の正念場、勝負の時と認識しています。環境省としても、脱炭素型の地域づくり、ライフスタイルの転換、我が国技術等の海外展開の推進といった観点から、積極的にこの議論に貢献してまいる所存です。以上です。

2.質疑応答

(記者)テレビ朝日の川﨑です。まず、冒頭に発言があった北海道での車座対談なんですけれども、今回、自治体の首長さんだけではなくて、民間の方もいらっしゃったということなんですが、感じた課題などあれば教えていただきたいんですけど。
(大臣)特に、観光の関係者の方々については、新型コロナウイルスの影響で大変厳しい状況が続いていると思います。車座会議でもそういう状況についてのお話をお聞きしました。一方で、温泉の関係の方々も含めて、国立公園満喫プロジェクトと連携しながら、今後の反転攻勢に向けた受入環境の整備が地域関係者の皆さんによって進められていると、そういう前向きな姿勢には大変勇気づけられる思いがした次第です。この満喫プロジェクトについて、非常に前向きな、あるいは励まされる発言をいただいたものですから、やっぱり大事なんだなと、もう少し更に進めて行こうかなという感想を持ちました。また、ホテル事業者の方からは、プラスチック新法施行を見据えたワンウェイプラスチック削減の取組が紹介されたほか、川湯温泉では「ゼロカーボン温泉」に向けたワークショップを検討されているという話もありました。国立公園にとどまらず、「脱炭素」、「脱プラスチック」という流れを事業者の皆さんが真摯に受け止めて、チャンスとして活用されようとしていることについては、非常に心強く感じた次第です。地方事務所の事務方の方々とも、引き続きしっかりと地域の声を聞いていただくようにお話しました。
(記者)全国のホテルでですね、4月1日のプラスチック新法の施行に向けて、ワンウェィプラスチックの削減などいろいろ進んでいるところあると思うんですが、現場としては、かなり大変なところもあると思うんですけれども、実際にその事業者の方に会って、苦労など、その点感じられたりとかはありましたか。
(大臣)いろいろな意味で、意識の転換というものが起こっているとは思うんです。いろいろな意見もありますけどね。レジ袋の有料化、これも意識の変革には非常に大事な意義があると思うんです。そういうことも踏まえた上で、今回4月からの新しいプラスチック新法の施行。大変だなということはみんな分かっておられるんですけど、他方、意識の点でも、大分変化が、いい意味での変化がついてきていただいているなという気もしますのでね、そういう意味では、大変だなということは分かっているけれども、何とかしていこうという気持ちを感じさせてもらいました。
(記者)あともう1点ですね、今日の夕方の会議なんですけれども、総理も出られると思うんですが、年頭の会見で、カーボンプライシングなどの発言も総理からあったと思うんですが、大臣としては、今回の会議、どのようなことを期待されていますでしょうか。
(大臣)カーボンプライシングについては、この弟子屈町あるいは阿寒湖で私からも触れさせてもらいました。全国の関係者の方々とじっくり意見を交換して、意識をその点でも共有させていただくことが大事だろうなというふうに思います。その文脈の中で、総理からカーボンプライシングということも直接に言及があり、それは自民党での税調での議論のことも全部踏まえられた上での発言だったと思います。ですから、我々もその気持ちに沿って、全国行脚というものもできる形で進めていきますし、そういう意味では、急に上からボンと出るような話にならないように、やっぱり国民の大勢の方々の理解、納得を得ながら進めていけるように、そのことがこの脱炭素のイノベーションの動きにもつながっていくわけですから、その辺をより地に足のついた説明の仕方をしていく必要があるなというふうに受け止めています。その中での、今日の夕方に予定されている会議ですから、議論はいろいろ多岐にわたるわけですよね。日本のグランドデザインを作っていくという意味が大きくあると思います。萩生田経産大臣の下で私も協力しながら、ということになると思うんですけれども、それは形はどうあれ、やっぱり環境省が主導していかなければならないものはたくさんあると思います。カーボンプライシングについてもそうですね。ですから、「脱炭素を制するものは次の時代を制するんだ」という覚悟でもって、日本がある意味で、ある人によればラストチャンスだというふうに捉えている向きもありますし、私もそういう点は共有するところがあります。ですから、今回の夕方からの会議というのは多岐にわたる議論の中で、日本がこれからグランドデザインを、最後の崖っぷちのところまで来ている中で、しっかり捉えてそれを反転攻勢、ピンチをチャンスにというところで持っていきたいなというふうに考えています。

(記者)朝日新聞の関根です。今日の夕方の会議ですけれども、脱炭素に向けてですね、欧州のほうでは、例えばタクソノミーでの新たな分類の話とか出てきていて、原子力を新しく位置づけ直すという動きも強まっているんですけれども、この総理の新しい資本主義の中でのインプットに向けてですね、原発の新増設、いわゆるリプレースということも含めて、議論の対象にすべきだというお考えではありますでしょうか。環境大臣としての考えを教えてください。
(大臣)ヨーロッパの中でも議論は分かれていると思うんです。ドイツなんかは原子力をその中に含むべきではないというふうに思っていると思いますし、フランスの場合にはむしろ入れるべきだという議論もあるでしょうし、ヨーロッパの中でももちろん議論は分かれているところだと思います。日本の場合には、日本の事情でもって議論するわけですけれども、2050年のカーボンニュートラルに向けてあらゆる手段を総動員で実現していくんだという中で、総理も触れられたんだと思います。原発についてはね、これまでの政府の方針がありますから、その安全性をきっちり最大限確認して、他方、できるだけその依存を低減化していくと。そのために再生可能エネルギーを主力電源に定めて導入していくと。こういう姿勢に変わりありませんから、その中での話だと思います。
(記者)結局、その新増設ということについては、これは今の段階で、その明確になっていないと思うんですけど、そこについて改めて明確にし直すべきなのか、それともこれまでのように、直接的に言うと、曖昧にしておいたほうがいいと思っていらっしゃるのか、大臣としてのお考えを伺えればと思います。
(大臣)私は政府の一員として、政府の方針に従うわけです。その政府の方針は私は正しいと思います。この安全を確認した上で、そして、できるだけその依存を低減させていく。そして、再生可能エネルギーをできるだけ導入していく。今はそういう段階でしょう。ですから、2050年に向けて、いろいろなまだやるべきことはたくさんある中で、ヨーロッパと違う日本の状況を踏まえて、今、新増設という議論にまだ行く段階ではないと思います。

(記者)共同通信の水内です。トンガの噴火についてお伺いしますが、被害の全容自体、まだちょっとよく分からないところもありますが、そう考えたら、日本に何か影響が出るのかどうかとかですね、何か警戒したり、情報収集を進めているということがあれば教えてください。
(大臣)今、トンガの火山噴火については、相当、みんな大きな関心を寄せておられるということはよく認識しています。環境省では、このトンガ諸島の火山噴火による津波の発生に対応して、16日の日曜日に環境省災害情報連絡室を設置して、被害状況の情報収集を行っています。これまでのところ、廃棄物処理施設など環境省に係る施設の被害報告はありません。これが、例えば、以前議論があったような気候にどれだけ影響あるのかとかいう話も関わってきていると思うんですね。ですから、今回のトンガの海底火山噴火でどの程度のCO2が排出されるか、そこら辺でしょうけれども、まだ実際のところはよく分かっていません。他方、すごく大きな噴火ということで、1991年のフィリピンのピナツボ火山の噴火というものがあるわけですけれども、そこでのCO2の排出量というのが1年当たりに5,000万トンだったという推計があるようです。この5,000万トンというのは、この同じ時期の人間活動によるCO2の排出量、これは1990年でいえば205億トンだったそうですけれども、その約410分の1ということで、以前の大きなフィリピンの火山噴火においても、現実には人間の活動の結果出てくるCO2の量の410分の1だったかもしれない。だから、一番大きいのはやっぱり人間の活動から出てくるCO2だという話に帰着すると思うんです。ですから、火山の活動、自然の影響によって出てくるCO2、決して小さくありませんけれども、我々、そういう意味では、どれくらいの規模感だというと、そういう規模感だと思うんです。環境省としては、この人間活動によるCO2の排出を抑制しなければ、現在の地球温暖化の進行は続くと、そういう意識を持って、更に全力を尽くしていくということになると思います。

(記者)NHKの岡本です。国会の提出予定の法案についてなんですけれども、国土交通省の所管の法令ですけれども、建築物省エネ法がですね、今国会での改正が目指されているということで議論が進められてきたと思うんですけれども、今回、「提出予定」から「検討中」ということで、昨日、国土交通省発表したかと思います。気候変動対策、まさにラストチャンスという、先ほど言葉もありましたけれども、そういった中で、今国会での改正が難しいというような国交省の今の姿勢について、気候変動対策を所管する環境大臣としてどういうふうに所感抱いているか、お願いします。
(大臣)法律というのは、仕組みを変えていくという中では重要な手段の1つですから、私自身が、ちょっとごめんなさい、法律についてどこまで省エネについて触れられているかというのはつまびらかじゃないんですけれども、我々、補正予算の中でも、例のZEBとかZEHとか含めて、いわゆるお金も出すということで、建築に関する省エネというのは非常に大事なことだなということは認識しています。これまでの中で、どういうふうに法律というものが位置づけられるか、よく分かっていないんですけれども、その法律があってもなくても必要なことは進めていくというところで、いろいろとまた国土交通省のほうとも議論は続けるつもりです。少し、法律についての影響というのは、後で調べさせてください。
(記者)再エネタスクフォースでも議論があったりとかですね、検討会に環境省も参加したりとかして、かなりもめて、着地点を見出して、法改正にもっていく流れだった法案なので、かなり重要な、特にライフスタイルの転換は大事だと思うので、その辺りのライフスタイルの転換とか建築物の重要性、どういうふうに認識されているか、もう一度すみません、改めてお願いいたします。
(大臣)ライフスタイルというもの、国民1人1人の問題意識にも繋がるんですけれども、結局、社会を変えていくというのは国民1人1人に帰着していきますから、そういう中で、我々の生活の大事な部分を占めている建築物ですから、それについて、再エネのことも含めて、省エネのことも含めて、それがちゃんとそっちの方向に向くように持っていかなければいけないなということは強く思っています。

(記者)テレビ朝日の川﨑です。トンガの噴火に関連してですね、先ほど、二酸化炭素という話がありましたけれども、ピナツボ火山のときにですね、いわゆる二酸化硫黄(SO2)というものが大量に出て、これで大気中の空気と反応して硫酸エアロゾルができて、太陽光を遮って寒冷化になったということがあって、実際に1993年の日本の米騒動、タイ米を輸入するとかということもあったんですけれども、この二酸化硫黄などの調査など、例えば国立環境研究所さんにお願いするとか、CO2と同じくらいですね、寒冷化した場合は、当時は日本の夏が平均で2度から3度くらい下がったということもあったと思うんですが、こういったことを調査したいとか、そういったところはありますでしょうか。
(大臣)後でちょっとチェックさせてもらいたいとは思うんですけれども、そういう、例えばトンガのことに対して日本の環境省が協力する、こういうこと、これからすごく大事になっていくと思います。日本の中で持っている技術を提供して、人類全体のために役に立つというところも含まれているでしょうから、そのSO2の問題についてもどういうふうに考えているか、後でちょっとチェックさせていただければと思います。このトンガのことについて、みんながすごく今、関心持っておられるというのは、いろいろな自然の、今、異常気象も含めて、何かが起こっているのかなという不安感もあるかもしれません。そういう意味で、環境省としてできるところはよく調査していきたいなと思います。あと、所管的には文科省とかいろいろなところが関わっているとは思うんですけれどもね、よく連絡取らせてください。

(記者)電気新聞の匂坂です。総理の施政方針演説の中でも、地域における脱炭素化ですとか、カーボンプライシングなど、「多くの論点に方向性を見出してい」くとありましたけれども、環境省とも関連する部分だと思うんですけれども、そもそもどういった論点が現在あるんでしょうか。
(大臣)総理の施政方針演説の中で、相当大きな分量、あるいは重点の置き方があったと思うんです。全体として見たら、もちろんオミクロンの話とか含めて、あるいはワクチンの話も含めて、大事な話、カバーされているわけですけれども、やっぱり我々の所管している中での地球温暖化に関わる話も非常に多かったと思うんですね。特に、今、我々、予算の手当てもしながら、地域脱炭素の中で先行地域を決めていくという動きを現実に25日から公募かけます。既に埼玉にも行かせていただき、あるいはこの間、北海道にも行かせていただき、あるいは務台副大臣が長野、あるいは大岡副大臣が大阪という格好で、既に地域脱炭素に向けての呼び掛けというのは強く行っているわけですよね。そこは、私の中では、非常に大きな比重を占めています。総理の中でも、そこのことをよく共有させていただいているし、日本全体として、その中でカーボンニュートラルに向けての動きということになる。そうしたら、カーボンニュートラルの中で、いろいろな論点の中の一つの大きな1つが、これからカーボンプライシングということになるかもしれません。はっきり総理の施政方針演説の中で、直接に言及されたということの意味も大きいと思います。そのことも踏まえながら、じゃあ、それが受け入れられるためには、何を政府として、あるいは政治としてやっていくのか。それぞれの業界によって事情が異なると思うんですね。ですから、その業界ごとに何が必要で、また政府として何がそこで後押しできるのか、そういう議論が今日をキックオフとして始まるということも言えると思います。論点的にはその地域脱炭素、総理の中でいろいろ触れられた中でのカーボンプライシングもありますし、それから国外的には、我々はJoint Crediting Mechanismを利用して、総理の中で「アジア・ゼロエミッション共同体」という言葉も出てきましたね。ですから、それは「有志国を募る」という言い方をされていましたけれども、私的には、その気持ちも目いっぱい受け止めさせてもらって、できれば枠組み的なものもできればいいのになという気持ちはあります。「アジア・ゼロエミッション共同体」ということで言えば、今までのJCMでもってパートナー国になっている国、この辺が中心になっていくんでしょうけどね。その国々との心合わせの中で、アジアについてはゼロエミッション、その共同体だと。「環境問題に国境なし」ということを私よく言わせてもらっていますけれども、このアジア太平洋というか、インド太平洋というか、そういう文脈の中では、ロシアとか中国とか、我々の民主主義体制とは少し様相の違う国も含んでいるわけですね。でも、「環境問題に国境なし」。そういう国々、特に中国については温室効果ガス最大の排出国ですから、そういう国を交えていかないとこの地球温暖化の問題解決しない。そういう中で、総理が「アジア・ゼロエミッション共同体」というものを打ち出されているのは、この意味も大きいと思います。ですから、それを現実に推進していくには、環境省あるいは外務省あるいは経産省のみならず、いろいろ関係するところ多いと思うんですけれども、そこも大きな私的には論点の1つです。今の共同体ということに類似するものとして、例えばTPP がありますよね。TPPはアメリカをできるだけ早く引き戻すという作業が必要でしょうし、それからASEANというのは既にできている。それからRCEPということで日中韓も入ってきている。日中韓のこの枠組みというのは、非常に大変だったわけですけれどもね、中韓は結びついているけれども、日中韓というのは。それをRCEPという格好で実現した。抜けているのが、環太平洋がTPPだったら、環日本海の部分が抜けているわけですよね。ですから、そういうものも、この総理が言われる「アジア・ゼロエミッション共同体」、そういう枠組みの中で有志を募る中で、私なんかそこも「環境問題に国境なし」というところで1つの繋がりが、きっかけできれば、そのことは日本にとっても世界にとっても大きいなというふうに思っています。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/oDaLHOq9MFE 

(以上)