大臣談話・大臣記者会見要旨

G20環境大臣会合における小泉環境大臣発言

■ セッション1

1.はじめに
 議長、ありがとう。はじめに、洪水により甚大なる影響を受けている中国やドイツと周辺の国々にお悔やみ申し上げる。

 我々は現在、コロナ禍と気候変動、そして生物多様性損失という三つの世界的危機に直面。この重要な分岐点において、社会経済システムを持続可能で強靭なものに再設計(リデザイン)することが必要不可欠。

 その取組において、G20 が果たすべき役割は極めて大きい。コロナ禍の困難な状況下で、この会合を対面で開催いただいた議長国イタリアの尽力に深く感謝するとともに、多くの国の大臣や代表と約2年ぶりに直接顔を合わせることができたことの喜びを皆さんと共有したい。

2.生物多様性関係
 コロナ禍と気候変動、そして生物多様性損失という三つの世界的危機は一体不可分に結びついている。先進国か途上国かを問わず、世界が一致団結してこれらの危機を乗り越えていく必要。

 人類の生存基盤である生物多様性を保全し、自然と共生する社会を実現するために、今、経済社会のリデザインが必要であり、あらゆる手段をこの目的に向かって投入する必要がある。そのためにも、まずは「ポスト2020 生物多様性枠組」の合意に向けて、政治的にも議論を後押ししていくことが重要。

 日本が生物多様性に関して力を入れている3つの取組を紹介したい。

 第一に、「2030 年までに、地球上の陸と海の少なくとも 30%を保護及び保全する」という目標(30by30)について。日本は、ワンプラネットサミットの機会に、「自然と人々のための高い野心連合(HAC:High Ambition Coalition for Nature and People)」に参加した。さらに日本を含むG7 各国は、世界目標に加え、G7 各国が国レベルで、各国の状況及びアプローチに応じて、2030 年までに、陸と海それぞれにおいて30%保全に取り組んでいくこととした。日本は、G20 各国とともに、2030 年までに、生物多様性の損失傾向を食い止め、回復に向かわせるべく全力で取り組んでいく。

 第二に、民間との連携。環境省は、日本最大の経済団体である経団連と約 30 年にわたり、生物多様性の主流化に向けて取り組んでいる。生物多様性を経営理念に入れている企業の数は、ここ 10 年で255 社とほぼ倍増した。これは世界最高水準である。

 これらの多くの日本企業は優れた技術、製品、サービスを活用して、生物多様性保全に貢献している。環境省と経団連では、こうした優良事例をとりまとめており、「ポスト 2020 生物多様性枠組」の達成に貢献する具体的なソリューションを世界と共有したい。

 第三に、「SATOYAMA イニシアティブ」。地域資源の持続可能な利用と生物多様性保全を進め、気候変動対策にも資するものや、サーキュラーエコノミーへの移行を含む地域的な良き実践例を積み重ねてきた。今後、「SATOYAMA イニシアティブ」を踏まえて生物多様性国家戦略が改定されるよう、OECM による30by30 実現の後押しも含め、途上国を支援していく予定である。

 日本は、環境と地域経済再生の好循環への solution を提供するこのイニシアティブを、多くのパートナーとともに発展させていく。

■ セッション2

1.循環経済関係
 社会経済システムの再設計(リデザイン)において、循環経済への移行は大きな柱の一つ。今、我々が一堂に会しているイタリアは、サーキュラーエコノミーと大きく3つの関係があると考えている。

 第一に、イタリアといえばファッション。G20 各国には優れた取組があると承知しており、たとえば日本では、循環型ファッションの推進に意欲的な企業が、企業アライアンスを8 月に設立することを決定した。日本としては、2050 年カーボンニュートラルに向けて、環境負荷の見える化や循環型ファッションに取り組むこととしており、本アライアンスとも連携して取り組んでいく。

 第二に、イタリアといえば食事。食事を楽しむためにも、食品ロスを減らしていくことは人類共通のミッションといえる。日本は、現在、2030 年までに、食品ロス量を半減させる目標を掲げている。しかしながら、この半減目標は国連世界食糧計画(WFP)による食料支援量よりも多く、目標としては十分ではないと考えており、より野心的で新たな目標を設定すべきと考えている。食品ロスについては各国でも様々な課題に直面していると承知しており、ともに議論しながら課題を解決していきたい。

 第三に、イタリアと言えばサッカー。サッカーはスポーツとして大変魅力的なだけでなく、サーキュラーエコノミーをリードしていく可能性を秘めている。例えば日本のJリーグは、2025 年までに使い捨てプラスチックを使用しないことを表明した。また、これらはリサイクルプラスチックから作ったサッカーボールである。組み立てることも、解体することもできる。子どもたちにとってはサッカーで楽しむと同時に、海洋プラスチックや循環経済について学ぶ機会ともなる。ご関心あれば後でぜひご覧いただきたい。

 サーキュラーエコノミーへの移行に当たっては、様々な取組事例の知見や経験をG20 間で共有することが重要。本会合では、各国の取組事例を情報共有するポータルサイトの策定が盛り込まれることを高く評価したい。日本は、官民連携で立ち上げた「循環経済パートナーシップ」の取組を各国と共有するとともに、各国と協力して、サーキュラーエコノミーへの移行に向けた取組の結集を図ってまいりたい。

2.海洋プラスチックごみ関係
 また、海洋プラスチックごみ問題について、日本が提唱した、2050 年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」と、その実現に向けた実施枠組の取組のモメンタムを、今年のG20でも維持、そして発展いただき感謝。

 「G20 実施枠組」に基づき、今般、議長国であるイタリアのリーダーシップの下、「第3次海洋プラスチックごみ対策報告書」を公表できた。取組を共有していただいた方々の協力に感謝。

 また、将来に向けた取り組みとして、新たな国際枠組を議論するための政府間交渉会合(INC)ついて、これまでのニュートラルな姿勢ではなく、来年 2 月の UNEA5.2 で設置されることを支持する。このINC は、多くの国が参加することが重要。

 また、海洋プラスチックごみが喫緊の課題であることから、新たな国際枠組の議論と並行し、各国・機関が、「2050 年までに追加的なプラごみゼロを目指」した実質的な対策の継続が必要。

 なお、国内での取組として、6月に、プラスチック製品の設計から使用後の処理までのライフサイクル全体をカバーする新法を成立させた。

 また、今回、皆さんの手元に回収海プラごみを利用したペンと、日本企業のマイクロプラスチック削減の取り組みの事例集をお配りした。海プラ削減に向けた企業の取組も進んでいることから、マルチステークホルダーの取り組みを後押しすることが重要だと考えている。

 グラッツェ、ありがとう。