大臣談話・大臣記者会見要旨

山口大臣閣議後記者会見録(令和3年12月28日(火)11:01~11:24 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

今日私から発言させていただくのは、宇宙基本計画工程表の改訂についてです。本日、宇宙開発戦略本部会合が開催されて、宇宙基本計画の工程表が改訂されました。環境省に関連する事項について、2点御紹介させていただきます。1点目は、温室効果ガス観測技術衛星GOSATシリーズを活用した、世界各国の気候変動対策への貢献です。モンゴルでは既にGOSATの観測データが温室効果ガスの排出量の算定に活用されており、こうした取組を更に広げることで、各国の排出量報告の透明性の確保に貢献していきます。2点目は、文部科学省と共同で開発しているGOSATの3号機、「GOSAT-GW」についてです。これが完成すれば、全地球を面的に観測することが可能になり、温室効果ガスの排出量推計の精度が飛躍的に向上します。本計画の工程表にのっとって、着実に開発を進め、2023年度の打上げを目指していきます。衛星データによる温室効果ガス排出量推計技術については、今後、日本の主導による国際標準化も検討を進めていきます。我が国の宇宙関連技術により、世界の気候変動対策に貢献してまいりたいと思います。以上です。

2.質疑応答

(記者)朝日新聞の関根です。年内最後の閣議後会見ということで、来年に向けてですね、改めて環境省として、大臣として、最も力を入れて取り組みたいことについて、教えてください。
(大臣)強く印象に残ったのは、やっぱりCOP26でした。本当にいろいろな意味で守られていたという印象を持ってるんですけれども、オミクロン株がもしも早ければ、ああいう会合もできていなかった中で、本当に全世界があそこに一堂に会して、そして世界全体が1.5度目標の達成に向けて脱炭素化を実行するという合意ができたと思うんです。そういう段階に入るわけですから、歴史的なCOPとなったというふうに思っています。特に日本として、市場メカニズムの実施ルールについて提案をし、またそれがベースとなって合意が成立するという点でも、非常に大きかったと思います。そのことが全体の機運を高めて、この1.5度目標を共通の目標にしていこうという合意に至ったわけですから、非常にそこは大きな役割を果たしたと思っています。大きな貢献ができたと思っています。この2050年カーボンニュートラルを目指すということは、この地球温暖化対策という観点に加えて、我が国として、新たな経済の仕組みを作っていく、経済成長のチャンスだという点からも、非常に重要な課題であるというふうに認識しています。また、福島県を2度訪問させていただいて、福島県知事、大熊町の町長さん、双葉町の町長さん、富岡町長さん、楢葉町長さん等との面会を行わせていただきました。また、中間貯蔵施設も実際に見学させていただいて、かなりきちんと処理してもらっているなという印象を持ちました。実際に現場を目の当たりにして、またそれぞれの町長さん方とも意見交換し、あるいは住民の方々とも直接意見交換させていただいて、環境省の最重要課題である福島の復興・再生に向けた取組を、また全力で進めていくという気持ちを新たにしました。来年は、このCOP26の成果も踏まえて、具体的なアクションを進めていく「実行」の年というふうに位置付けています。キーワードは「脱炭素」です。国内では、その意味で「脱炭素先行地域」の選定、そしてそのことによって、「脱炭素ドミノ」を起こしていくというつもりで全力を尽くしていきます。この間も紹介させていただきましたけど、私を含めて政務三役、5人いるわけですから、単純に平均したら1人10件弱で全部回ってしまいますのでね、そういうことで、「脱炭素ドミノ」ということも意識しながら、意識を全日本で共有できればなという、そういう動きをかけていきたいなと思います。この脱炭素社会を始めとする持続可能な社会の実現に向けて、様々な関係者の皆様と心を合わせて政策を進めてまいりたいと思います。

(記者)NHKの岡本です。ベトナムでですね、計画が進められているブンアン2という石炭火力発電所についてなんですけれども、このたび、四国電力がですね、新たな融資をするということで発表がありました。ベトナムはCOP26の場で2050年カーボンニュートラルを宣言した国でもありますし、そうした中で、石炭火力発電の新設の計画というものを、これは公的融資も入っているわけですけれども、今回新たな四国電力の融資ということを、どういうふうに捉えられているか、大臣の所感をお願いします。
(大臣)個別のプロジェクトに関する事業者の判断というものは、それぞれあるのでしょうけど、コメントは差し控えたいと思います。確かに、ベトナムは2050年までのカーボンニュートラルというものを宣言していることについては、我々と、あるいは世界と共通の目標であるということで、環境省としては、長期戦略の策定など政策面での支援から、個別のプロジェクトのJCMによる資金支援まで、包括的な支援を行っているところです。今後とも引き続き、ベトナムの事情も踏まえながら、脱炭素移行に向けた包括的支援を更に押し進めてまいりたいと思います。

(記者)環境新聞の小峰です。大臣、冒頭おっしゃいました、宇宙基本計画工程表の改訂に関してのお話ですけれども、そこにスペースデブリ(宇宙ごみ)、人工衛星がぶつかった破片がですね、ものすごく地球の周りを回っていて、大変危険な状態であるということは御認識されていると思いますけれども、スペースデブリ(宇宙ごみ)について、確か、前々大臣の原田義昭さんの頃からですね、それから小泉進次郎さんと続いて、やってきてはおるんですけれども、今回、この宇宙基本計画工程表の改訂の中に、スペースデブリ(宇宙ごみ)、これはどのように扱われたのでしょうか。環境省はごみ行政もやっていますので、市町村のごみだけではなくてですね、宇宙のごみまでも所管すべきだと思いますけれども、その辺も併せて大臣のお考えを聞かせてください。
(大臣)大事なことだと思うんです。他方、私のほうからは、この気候変動というところに焦点を当てて、パリ協定に基づいて各国が行う温室効果ガスの排出量報告、こういうのは各国の統計データを用いて行われているものを、特に途上国では、この統計データの整備が不十分だというところもあって、誤差が大きくなるということがあるんですね。そういうものをGOSATシリーズの衛星観測データから、温室効果ガスの排出量を推計するという技術を確立することによって、各国が自身の温室効果ガスの排出量報告をチェックできるということになりますから、排出量報告の客観性、透明性を高めるということは可能で、そういうことに貢献していくということを目指すということを言わせてもらいました。
(記者)大臣、スペースデブリ(宇宙ごみ)に対する大臣のお考えはどうなんですか。
(大臣)それは、いずれ何とかしないといけないですね。一遍にいろいろ、市町村のごみから宇宙のごみまで、一遍にできることはないんですけれども、いずれ何とかしないといけないですね。大きな話だと思います。

(記者)エネルギージャーナル社の清水です。先ほど、2021年を振り返ってポイントをおっしゃっていただきましたけれども、温対計画の見直しも含めて、新年、来年は「実行」の年だという御指摘がありました。通常国会は1月中旬ぐらいから開始されるということのようですが、環境省として、制度的な面での手当、これの基本的な今の御認識を伺いたいんですが。例えば法律関係とか、あるいはCOP26を踏まえた条約の具体化のようなものとか、その辺をお伺いさせてください。
(大臣)私の中では、最初の、温対計画の見直しについて、この間もちょっと言いましたけど、4月に気候サミットで、それ目がけて環境省として、あるいは関係省庁みんなで積上げをやっていって、非常に細かい積上げをやっていって、46%というところで(決まった)。ほんの半年ちょっと前ですけどね。そして、この10月に温対計画と。決まったばかりのものですから、それを今、変更するつもりはありません。そこをまず実現していくっていうことが大事なんだと思うんですね。この間も言いましたけど、期待値マイナス実際の現実というのが不満になりますからね。この期待値をきっちり現実に実現していくというところがまず大事だと思います。そういう意味では、温対計画を見直すのかということに関しては、まず実現に向けて、全力で頑張っていくというところだと思います。私的にはね、COP26でもって市場メカニズムに関する6条合意もやっと成り立ったんだし、それからJCMもあるし、それから、国内ではやっぱり、「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」、そして「脱炭素先行地域」を決めていく。その意識を「脱炭素ドミノ」というところを踏まえて、我々が意識をみんなに共有していただくための全国行脚も大事だと思っています。脱炭素の中にはいろいろな話題も入りますからね。ツールとしてのカーボンプライシングも入るでしょう。いろいろな意味で意識を共有させていただくための動きを、来年は早々にかけたいなというふうに思っています。法案的には、地球温暖化対策法の見直しを検討させてもらっています。条約的には、プラスチックごみに関するUNEPの会議がナイロビでありますから、それは日本の案も出しているわけで、もう1つ別の案も出ているようですけれども、我々の案というのはいろいろな国が参加しやすいような建付けにしたつもりなんで、そういう意味で働きかけを今行っています。私もこの間のCOP26をグラスゴーでやったときも、日本の案についての賛同を求めながら、バイの会談をやらせていただきました。それが1つですよね。あと生物多様性の会合が4月から5月にかけて中国で行われるかもしれない、このオミクロン株次第ですけどね。実際に行ければ、私も行かないといけないかなという気はしていますけれども、オミクロン株次第です。そういう中で、日本としても今まで議論をリードした部分がたくさんありますから、そこら辺の貢献もしていきたいなと思います。それから、国内においては脱炭素。国外においてもJCM。そしてまた、それ以外にもプラスチックごみ、そして生物多様性、いくつかの動きがあります。でも、来年のキーワードはやっぱり「脱炭素ドミノ」ですね。それに向けて頑張りたいと思います。
(記者)通常国会提出予定法案は、そうしますと、今の話だと、温対法の再度の見直しの改正法、あるいは事務方に前に聞いたんですけども、財政投融資の200億の温暖化対策への出資、これも法的根拠が必要だという具合に聞いたんですけれども。
(大臣)ごめんなさい。手続的にあるのかもしれませんが、私まだつまびらかではないです。
(記者)温対法の再提出ということですか。
(大臣)見直しを検討しているということだそうです。
(記者)もう1点だけ。「脱炭素ドミノ」ということで、随分頑張るということですけども、私前から1つ疑問に思っていたのは、地域社会で脱炭素で仮に46%、カーボンニュートラルが達成したとしても、地域社会が本当にハッピーなのかなと。要するに、CO2だけをね、削減すれば、地域社会が非常に明るい未来が待っているというイメージがちょっとどうかなという感じがしています。これは大臣の持論で結構ですから、地域社会というのはもっといろいろな要素が絡み合っているわけで、「CO2の中間目標やカーボンニュートラルを達成するとこんなメリットがあるよ」とかね、あるいは「地域社会がこう変わっていくよ」とか、「今までとは価値観が違ってくるよ」とか、そういう御持論はありますか。
(大臣)何度も説明しているように、地域脱炭素というのは、脱炭素と地域おこしが一体だと。これだけ説明しても清水さんにまだ伝わっていないのですから、それは全国で行脚するのはどれだけ重要かということですよ。1回言ったから伝わるものではないということは、私もよく分かっていますから、まずそういう意味では今、清水さんが言われたとおりのことを、みんなと共有していただけるように相当努力しないといけないと思います。例えば、いろいろな先行事例というものも紹介しながら回ろうと思うんですけれども、ただ単に CO2を減らすというだけではありません。CO2を減らす動きの中でね、例えばこれからの世界がCO2に対して環境配慮した、そういう格好で作ったものでないと材料として使いません。そういうことも、これからかなり強くなってくると思います。また、CO2を削減するという再エネの動きの中で、例えば雇用も生まれてくるっていうことも先行事例としていくつもあるんですね。それも日本の先行事例だけじゃなくて、外国の成功事例も交えながら紹介しようと思っているんですけれども、町おこしになるっていうところが大きなポイントです。その中で、もちろんCO2の削減ということも可能になるようにという話なんですけれどもね。特に、私はグランドデザインという言葉を前回からも使わせていただいていますけれども、必要な経済発展と絡めた上での話ですよね。例えば、鉄鋼業なんかで、コークスと一緒に燃やせばCO2が出るけれども、別のH2Oを作るような燃やし方がいろいろあると思うんですね。水素と一緒にするか、あるいはアンモニアでやるのか。そういう技術を使う場合に、高炉を変えるのであれば一体どれぐらいお金かかるんだろうと。何千億の単位では多分ないと思いますよね。兆単位でしょうね。じゃあ、これから日本がどういうふうに鉄鋼業を守り、あるいは航空業界を守り、あるいは守るのみならず、そういう技術を普及させることによって、実装することによって、世界一の鉄鋼業界にしていく。ここが大事ですよね。だから、地域の脱炭素という言い方をしていますけど、グランドデザインの中では、日本のそれぞれの業界を再び世界一に持っていくためにはどういうグランドデザインがあるんだと。そのためにいくら必要なんだと。200兆円か、300兆円か。そういうことも議論していかないといけない時代に入ってきているんですね。だから、そういう意識を持ってもらうためには、税金の話も出てくるでしょう。だったら、相当みんなと対話を重ね、本当に私の気持ちとしては一周ぐらいで足りるのかなっていう気持ちもありますけど、少なくても一周はしないと気が済まないですよね。これは実際にアレンジする点からいっても、決して簡単なことじゃないでしょうけど。47都道府県はきっちり回りたいと思います。

(記者)毎日新聞の信田です。先ほどの清水さんの質問へのお答えで46%というところの「決めたばかりで検討するつもりはない」という話でしたけども、この間のCOP26でのグラスゴーパクトでは、「22年末までに再検討してパリ協定に見合ったもので再提出する」ということが盛り込まれたと思うんですけども、来年そこは検討する予定なのか、それとも日本としてはパリ協定に見合っている目標だから来年検討しないのか。その辺りのお考えをお聞かせください。
(大臣)46%と言いながら、50%の高みに向けて、という数字も出していますからね。そういうところをまず実現するための動きをかけていかないといけないと思うんです。「脱炭素先行地域」というのもそれだし、動きとしては、あまり具体的になっていませんからね。その辺の動きを具体的にして、どういうふうな数字が出てくるか、それを見て高みにできるものなら私もしたいところですから、それはそうしたいけど、今そういう意味での根拠がない話はしない方がいいかなと。根拠を持って仕事を進めていきたいなと思います。
(記者)グラスゴーパクトには「検討する」ということが盛り込まれていますけれども。
(大臣)検討しないというふうに僕は言っていなくて、まずは実現する。その中で、更に高みを目指していくと。その中で、50%より高い数字というのは今は根拠がない数字だと私的には思うから、そこはまだ言えませんという話ですね。

(大臣)今年1年、10月4日からだから3か月ちょっとですけれども、本当に大事な時期にお付き合いいただきましてありがとうございます。今日もいろいろと話題になったように、COP26を踏まえてどういうふうにやっていくかが、来年の大きな位置付けだと思いますから、岸田総理が言われたような2030年が「勝負」の年と。それは全人類にとって「勝負」の年(Critical Decade)ですよね。我々にとってという趣旨ではなくて、全人類にとってです。その中で、来年の持つ意味というのは非常に大きいということは、私も自覚していますのでね、自分自身がここで仕事をさせていただいている間に、できるだけ全速力で脱炭素に向けて、あるいは脱炭素ドミノを起こすべく、頑張らせていただきたいなというふうに思っています。それから福島のことについても、いろいろな意味で、この間、名古屋で対話も行わせていただいて、なかなか仕組みについて、最終処分を「県外で」ということについての理解が、県外では2割以下で、福島県でも5割ですから。なかなかそこら辺まだ共有できていないので、そういうことも含めて、来年、全速力で頑張らせていただきたいと思います。またよろしくお願いします。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/hhOXSrThtIY

(以上)