大臣談話・大臣記者会見要旨

山口大臣記者会見録(令和3年12月7日(火)10:37~10:56 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

本日、私から発言するのは、海洋プラスチック汚染対策に係る国際約束づくりに向けた動きについてです。海洋プラスチック汚染対策に係る国際約束づくりとして、昨日、国連環境計画(UNEP)事務局に対して、来年2月にケニアで開催される国連環境総会(UNEA)に向けて、日本政府としての海洋プラスチック汚染に関する決議案を提出しましたので、報告させていただきます。今回提出した決議案は、2022年からプラスチックの大量消費国・排出国を含む多くの国にとって参加しやすい形ということで、海洋プラスチック汚染に関する国際約束づくりに向けた交渉の開始を求めるものです。海洋プラスチック汚染は、来年のUNEAにおける主要議題の1つです。日本は、以前から「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」をG20諸国らと共有するなど、海洋プラスチック汚染への対応について国際的な議論を主導してきました。こうした経緯を踏まえて、将来の実効的な国際約束づくりに、積極的に貢献するという趣旨です。以上です。

2.質疑応答

(記者)時事通信の武司です。海洋プラスチックの関連でお伺いします。正式に今後、国際約束とすることを目指すということですが、今後の手続やスケジュールの見通しについてと、あと日本が議論を主導することで、世界の海洋プラ問題にどういった効果があるというふうにお考えでしょうか。
(大臣)今後の動きとしては、来年2月に開催される予定の国連環境総会(UNEA)に向けて、いろいろ二国間の対話を通じて、各国に日本決議案に対する理解と支持を促していくことになります。あらゆる国から排出されるプラスチックによる海洋汚染問題を解決するためにも、多量排出国を含め、多くの国が参加する枠組みとなることが重要だと思います。 ペルー及びルワンダによる決議案も既に提出されているわけで、その場合、ペルー・ルワンダ案は、プラスチックの設計や製造段階の規制が示唆されるほか、資金支援の在り方等についても述べられていて、今後の交渉内容をむしろ限定しかねないというふうに懸念する声もあると承知しています。これに対して、我が国の案というのが、各国自らの状況に合わせた効果的な取組を行うということを念頭に、国別の行動計画を策定して公表する仕組みを提案しています。パリ協定のように、多くの国が参加する実効的な枠組みづくりを目指すというのがその趣旨です。他方、両決議案とも国際約束づくりに向けた交渉の場である政府間交渉委員会(INC:Intergovernmental Negotiating Committee)を設置する点では一致しています。したがって、UNEAではそのINCを設置するということがまず1つのポイントで、各国の理解が得られるように、日本としても積極的に働きかけていきたいと思います。この枠組みづくりというのは、1つの、これからの新しい日本の関わり方のポイントですから、この間のCOP26でも、市場メカニズムについて、やっぱり枠組みづくりに関わってきたということがあると思うんです。プラスチックについても、日本が、大阪から始まって、いろいろ提案してきたという経緯もあって、そういう枠組みづくりを提案し、それが形になっていくということは大きいことだなというふうに思います。
(記者)大臣としては、ここに「国際約束」というふうに書いてあるんですけれども、条約にすることを目指されるというお考えでしょうか。
(大臣)1つの形ですよね、どういう形になるかはともかく、枠組みづくり、どういうふうにこれからプラスチックごみを対応していくかということが、今それぞれ、ぼんやりした格好ですから、まだ精神論に終わっていると思うんですよね。それが、1つの枠組みということが大きなステップになると思いますのでね、どういう形になるのか、それは国際法的に条約と呼ぶのか何と呼ぶのか、いろんな形はあるでしょうけど、1つの合意を作っていきたいなというふうに思います。

(記者)日経新聞の岩井です。このプラスチックについてお伺いしたいんですけれども、脱炭素の技術に関しては、日本のメーカーがあまり存在感を発揮できていないという問題意識を、先日の会見でもおっしゃっていたかと思うんですが、このプラスチック汚染に対する対策ですね、日本の企業がこれをビジネスチャンスにしていくという、その戦略について、何かお考えがあれば教えていただきたいです。
(大臣)この間、私が申し上げたのは、多分、風力について、特に申し上げたかもしれません。その風力の羽根については、今、コストの安い中国が頑張っているとしたら、私が申し上げたのは、やっぱり日本でもそれを作れるようにしていくことが、日本の中で風力についても自分たちで頑張れるという素地を作っていく、そういう趣旨で申し上げたんだと思うんです。全体について日本の企業がということではなくて、特に風力について申し上げたんだと思うんです。これから、日本がこの間のCOP26で6条についての市場メカニズムという1つのルールを作っていく大きな原動力になったということもありますけれども、脱炭素ビジネスというのが、大きなこれから流れになっていくと思うんです。これはもう世界的に大きな流れ、よく私が申し上げている、3,000兆とも4,000兆とも言われているESGマネー、これをどういうふうに引きつけていくのかというのは、日本経済にとっても大きいし、世界経済にとっても大きな流れになっていくと思うんですね。そうした場合に、今、日本の中で決して先行していなくても、あるいは日本として、例えば蓄電池みたいに、昔は先頭を走っていたけれど今は中国とか韓国が頑張っているような、そういう分野でも、やっぱり日本が、この脱炭素ビジネスというものがこれから大きな流れだということを企業の中でも認識、共有させてもらって、それで、また日本が先頭に立てるぐらいの気持ちでやっていくということが、これからの流れだと思うんです。プラスチックについて、私、どこが今どうということは、つまびらかではありません。だけど、日本がやっぱりこれ、言い出している面もあるのみならず、日本の環境に対する気持ちを具体化する意味では、企業のほうとも少し連絡を密にさせてもらって、そういう流れを共有させてもらえればなと思います。

(記者)テレビ朝日の川﨑です。2つ伺いたいんですけれども、昨日ですね、総理の所信表明演説があったと思うんですが、気候変動問題にも言及がありましたけれども、どういうふうに受け止めていらっしゃいますでしょうか。
(大臣)総理の意識の中でも、それから政府の認識の中でも、これから日本の経済をどういうふうに発展させていくか、その中で気候変動あるいはグリーン、ものすごく大きな意識を持っておられるということだし、それから我々も政府全体として、この環境というのが、いろんな分野にわたりますしね、日本の経済をこれからどういうふうに発展させていくか、という中では大きいという認識は共有できていると思うんです。改めて、昨日、所信表明の中で、そのことに触れられたというふうに私は受け止めました。
(記者)大臣の中で、特に残った言葉であったり、分野であったりというのは何かありましたか。
(大臣)この中で、「人類共通の課題である」というところから始まって、「この社会課題を、新たな市場を生む成長分野へと大きく転換していきます」と、もうこの辺は大きなポイントですよね。だから、大きな流れの中で、その中でカーボンプライシングの話も出てくるだろうし、これから仕組みづくりの話が関わってくるんだと思うんです。それで、ここに書いてあるような、「送配電網のバージョンアップ」あるいは「蓄電池の導入拡大などの投資」、この辺は大きいですよね。自動車産業500万人の雇用を抱えておられる中で、これからの自動車の形態というのが、これまでのガソリンの内燃機関というよりも、もうコンピューターが自動車の形をして走るみたいな格好に、革命的に変わろうとしていますから。そういう中で、この蓄電池というのは大きいし、それで、欧米の自動車産業の中で、日本の蓄電池がどこまで市場を持っているかといったら、ほとんどないんじゃないですかね、今。だから、やっぱりそこは日本としてきっちりやっておかないと、500万の雇用の問題が関わってくると思いますのでね。自動車産業しかり、それから、この火力発電のゼロ・エミッション化というものは、私も度々ここで申し上げているような、JERAが取りあえず6月からパワープラントの実験開始されていて、まだ20%の混焼というところまで大々的にというのは行っていないようですけれども、2024年までにこの4年間でその実験を終了させて、そして2030年までにはこの20%の混焼を実用化させて、2030年代前半で全部の火力発電所で20%のアンモニア混焼を行き渡らせて、2040年代で20%から40%、60%と上げて100%を目指していく。この1つのビジョンが今やっと始まったばかりなので、我々もそこをエンカレッジしていっているわけですけれども、そういうことを、1つの言葉の中で、ものすごく込めて言っておられるんですけど、深いことに触れてもらったと思っています。それから、このクリーンエネルギー戦略、これは経産省とのコラボの中での話ですけれども、全体的に環境とエネルギー、その中で新しい成長分野を作っていく。そのことによって日本の経済が新たな発展をとげていく。その辺を、国民一般の認識の中で、より高めさせてもらって、それが実際の生活の中でも感じられるように、我々、この地域脱炭素ロードマップの話も含めて、ドミノ効果というものを作っていかなければいけないなというふうに思っています。
(記者)あともう1件。鳥インフルエンザが相次いで確認されていますけれども、野鳥への警戒レベルも、去年に引き続いて連続でレベル「3」になっている。それで、今回の件、大臣としての所感と、あと具体的な指示などがあれば教えてください。
(大臣)高病原性鳥インフルエンザ、今年の10月以降、野鳥及び家きんで合計14件が確認されています。環境省では、各発見地の周辺の監視を一層強化しています。なお、現在、野鳥が大量死するといった状況は確認されていません。また、11月11日には全国の対応レベルを最高の「3」に引き上げて、自治体などによる野鳥の監視・調査を強化しているところです。冬の渡り鳥の飛来時期になって、全国において鳥インフルエンザ発生のリスクが高い期間が続く可能性も高いと考えられるわけですから、引き続き、関係機関及び関係府省庁間で連携を取りつつ、適切に対応していくという考えです。
(記者)去年、殺処分がですね、過去最大の987万羽くらいあったということなんですけれども、野鳥が持ってきているのはほぼ間違いないと思うのですが、この抜本的な対策などは考えていらっしゃるところなんでしょうか。
(大臣)そこは相当難しいところも入ってくると思うんですね。イノベーション的なところが入ってくるかと思うんですけど、飛んでくる野鳥をどういうふうにコントロールできるかという話はなかなかちょっと不可能に近いと思うんですよね。じゃあ鶏辺り、どういうふうにそこから隔離できるかという話もあるかもしれません。これは、どれほど厳重に隔離していても起こっていることですから、これも「感染症に国境なし」みたいなところかもしれませんけれども、農水省ともいろいろと知恵を絞って対策を考えないといけないかもしれないですね。ちょっと今、これだというのは私、つまびらかではありません。

(記者)電気新聞の匂坂です。本日の午後に、中国と韓国と3カ国で大臣会合をするということですけれども、改めてどのような議論をされるのかということと、この三カ国大臣会合の意義、重要性などについて、お尋ねできればと思います。
(大臣)このTEMM(Tripartite Environment Ministers Meeting)ということで、TEMM(テム)と呼んでいるわけですけれども、22回の日中韓の3カ国の環境大臣会合です。1999年以降、昨年の新型コロナに伴う延期を除いて毎年開催しているということで、今回特にCOP26を先日終えて、やっぱりアジアの中でどういうふうに主導して気候変動対策を行っていくかというところを喫緊の課題として打ち合わせたいなと思うんです。そういう中で、私も常々申し上げているような「環境問題に国境なし」という観点もありますけれども、二酸化炭素を減らしたり、あるいは生物多様性の話とか、海洋プラスチック、全部、日本だけ頑張ってもどうにもならないので、その近隣の中国・韓国、特にプラスチックについては中国についてもよく、いろいろな心合わせをしたいし、それから中国については、日本と韓国が2050年までにゼロ・エミッションと言っている中で、中国はまだ2060年、そこまでやっと来たかという気はしますけれども、他方でやっぱり心合わせをして、これからできるだけ野心的な方向に持っていく対話の契機にしたいなという気持ちもあります。ですから、この環境問題、喫緊の課題だという認識も含めて、今日、オンラインという形ではありますけどね、実際には、なかなか膝を突き合わせてというところでないとという気持ちも若干ありますけれども、こういう状況ですから、オンラインとはいえ、やはり対話のチャンネルをきちんと保っておきたいなと。急ぎのこともいっぱいありますから、いろいろ心合わせもさせてもらいたいなというふうに思っています。

(記者)朝日新聞の関根です。今の関連なんですけれども、主要な議題じゃないかもしれないんですけど、1Fの処理水の問題について、先方のほうから、もしかしたら発言があるかもしれないんですけれども、日本側として、対応を改めて説明するというようなお考えはあるんでしょうか。
(大臣)処理水の話は、基本的にはIAEAというのかな、そっちのほうの話だろうから、あんまりそこで、我々としたら、ちゃんと処理して出しているものだから汚染水じゃありませんというところ、それから国際基準もきっちり十分クリアしながらやる話ですというところは、少し言うかもしれないけど、言われればですけどね。言われれば言うかもしれないけど、もうそれどまりですね。あとは、きちっとした場所でやっていったほうがいいと思いますというふうに対応しようかと思っています。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/vmYAgjXqYeE

(以上)

配付資料

海洋プラスチック汚染に関する日本決議案について.pdf