大臣談話・大臣記者会見要旨

山口大臣記者会見録(令和3年12月3日(金)10:52~11:14 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

初めに、「星空の街・あおぞらの街」全国大会への出席についてお話しさせていただきます。明日12月4日(土)、岡山県井原市で行われる第33回の「星空の街・あおぞらの街」全国大会に出席させていただきます。この大会は、大気環境の保全に対する意識を高めるとともに、郷土の環境をいかした地域おこしの推進に役立てることを目的とするものです。新型コロナウイルス感染症の影響もあり2年ぶりの開催となります。これまでと同様、高円宮妃殿下にも御臨席をいただく予定です。今回の開催地である井原市の美星町地区は、平成元年に国内初の光害防止条例を制定されました。また、本年11月には、国際ダークスカイ協会の「ダークスカイ・コミュニティ部門」において、アジア初となる星空保護区の認定を受けました。地区名のとおり、地域資源である美しい星空を守り、活用した地域づくりを進められている地域です。今回の大会などを通じて、こうした優良事例を全国へ発信して、環境保全を通じた地域づくりを更に推進していきたいと思います。当日は、井原市の美しい星空を見ることを私も楽しみしています。以上です。

2.質疑応答

(記者)時事通信の武司です。カーボンプライシングについてお伺いしたいんですけども、与党の税制調査会の税制改正に向けた議論が来週大詰めを迎えます。それで環境省は、この夏の税制改正要望で、初めてカーボンプライシングについて要望項目に盛り込んでいまして、自民党の宮沢税調会長は先月メディアへのインタビューで、カーボンプライシングについては、「検討項目として、何らかの大きな方向性を書ければと思っている」というような発言をされています。そういった中で、大臣は与党の税調でカーボンプライシングについてどのような議論の進展があることを期待されているかということと、あと今後の導入に向けた意気込みなどもお聞かせいただければと思います。
(大臣)今、与党の税制改正大綱の取りまとめに向けて、まさに自民党の税制調査会において、議論が進められているところだと、今、御指摘のとおりです。ただ、私も今までの経緯については承知しているつもりです。他方、税調の取りまとめについて、今、政府からのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。このカーボンプライシングについては、先月開催した「中央環境審議会カーボンプライシングの活用に関する小委員会」において、クレジット取引あるいは炭素税あるいは排出量取引、それぞれについて具体的な検討の方向性を示し、議論をいただいたところです。2030年度の46%排出削減に向けた「勝負の10年」において、必要な政策を総動員していく中で、成長に資するカーボンプライグについても、与党での議論あるいは小委員会での議論も踏まえさせていただいて、引き続き、経産省とも連携して検討していきます。

(記者)朝日新聞の関根です。先日、福島浜通りを視察されたと伺っているんですけれども、改めてとなりますが、大臣として、あの視察をされてですね、復興や除染とか中間貯蔵というような課題について、どのように取り組もうというふうに思われたか、考えをお聞かせください。
(大臣)2011年の3.11の直後に訪れさせていただいたときから、もう10年以上ですね。その間もちろん、奇跡的に、いろいろと復興の努力をされて、大分進んできたこともあるわけですけれども、ただ、この特定復興再生拠点の区域を始めとして帰還困難区域について、いろいろと課題が残っていることは間違いないですね。避難指示解除できる来年の春に向けて、大熊町あるいは双葉町、いろいろとあるわけですけれども、それがまず、きちんとできるように、除染あるいは家屋の解体を進めるということも、まずあるんだと思います。それから、この区域外について、皆さんの希望をいろいろお聞きしながら、できるところから1つ1つやっていこうというところはあると思います。中間貯蔵施設を見させていただいて、きちんとした分別、それからそれに対して、徐々に徐々に細かく細かく分けていって、最後は埋立てしていくというようなことも見させていただいて、ただ、それ、相当膨大な量ですからね。どういうふうに30年以内に最終処分をするかというところは、これから減容化とか再生利用とか、そういうものを進めながらも、それぞれの理解を醸成する動きもかけていかなければいけないなということを非常に強く思った次第です。私自身拝見して、かなりきちっとした作業をしているなということは思いましたけれども、それに対する理解を深めるという意味で、今月の18日に、まず名古屋のほうで、そういう会合をさせていただく予定です。復興のみならず、未来志向のいろんな取組もあるわけですから、そういう意味で、大熊町で車座対話というものもさせていただいて、これまでの御苦労、あるいはこれからの抱負、何をすべきか、いろんなアイデア、あるいは思いもいただきました。そういう意味で、これからも復興、まだ道半ばだということを非常に強く思った次第なので、そういう意味で環境省として、あるいは復興庁ともいろいろ連携をしながら、あるいは各省庁とも連携しながら、それぞれの方が納得できるところまでやらないといけないなというふうに思った次第です。

(記者)エネルギージャーナル社の清水です。2問ほどお願いします。1つは先ほど幹事の質問にもあったんですけど、税制改正で今年度ですね、確か前にも伺いましたけれども、エネルギー課税の中の石油石炭税の課税の見直しというのは、もうこれは1年来というか、2年来のテーマだと思うんですが、これは今度の税制改正の環境省が要望している、税制改正の一連の事項として、税調で議論してもらうという、そういうお考えなんでしょうか。それとも、それは脱炭素型税制の一環として、その項目を独立して検討してもらうと、これはエネルギー政策上の課題もありますんで、どっちのほうから検討をしてくれということなのかどうか、そこが1点です。あと、もう1点、お考え伺ってからさせてもらいます。
(大臣)今、申し上げたとおり税調のほうでしっかり議論しているところですから、あんまり詳細なコメントというのはむしろしないほうがいいと思うんですけれども、御指摘のとおり経産省に関わる部分もあるし、それから環境・エネルギー、いろんな意味で難しい部分はあるし、今、現実に石油についてはえらく値段が高いということで、アメリカがいろんな意味で放出したり、複雑な面もいろいろありますよね。だから、ちょっと今までの状況と少し違っていることはあるにせよ、環境省として、2030年までに46%あるいは50%削減、あるいは2050年にネットゼロ、そういうことを目指していくという筋は全く変わっていないわけですから、そのために必要な施策は何なのか。例えば、イノベーションでもって環境が経済成長に結びつくように、そのためのいろんな財源をどうするのか、そういう中での位置づけの話だと思いますから、必要な施策は全部やっていくという中での大きな方向性は変わっていないんですけれども、今、現時点におけるコメントは、少し差し控えさせていただければなと思います。
(記者)石油石炭税の見直しをどうするかということのお考えを伺いたかったんですけども、今、直前にあれですから、分かりました。では、2つ目に移らせていただきます。 2つ目は経済安全保障で、これは相当、制度化ということで、政府部内で検討されていると。中心は半導体とレアメタル、これのやっぱり経済対策上の隘路を解消していくことが狙いだと思うんですけど、ただ、気候変動とかですね、それから適応事業とか、やっぱり経済安全保障には、気候変動的な要因を企業がどうカバレッジしていくか、あるいは地域がどうカバレッジしていくかということは、経済安全保障にも密接に関連すると思います。その辺を大臣は、この経済安全保障の制度化に環境省としてどう関与されていかれるおつもりなのか、そこをちょっとお伺いします。
(大臣)少し長い歴史の中での文脈もあると思うんですよね。二、三十年前、例えば中国という国があって、もっともっと日本よりも経済的には勢いがなかったと思うんです。経済的に日本を追い越して、GDP2位になったのは2010年ですから、そういう意味では、この10年ぐらいの間に中国に対する見方というのも、我々は相当大きく変わったと思うんですよね。それまでは、中国での実質的な賃金も安かったし、安かろう悪かろうということで、日本で作るより中国で作ったほうが安いからという流れも、当たり前のごとくあったと思うんですですよね。ところが、やっぱり中国との関係というものが、向こうの経済が大きくなったのみならず、今、民主主義対全体主義という異なる文脈も出てきたわけですから、その中で、中国で今まで作っていたもの、工場で安かろう悪かろうで作っていたもの、これは少しサプライチェーンを見直すべきではないのかというのが出てきていると思うんです。きっかけはコロナであっても、大きな歴史的な文脈のほうがむしろ大きいと思うんですよね。そこから経済的な安全保障の話も出てきている。環境ということに限って言うよりも、むしろ、そういう大きな歴史の文脈の流れを考えるべきことですけれども、例えば、環境に限って言っても、風力をこれから日本は大事にする、これから陸上のみならず洋上も考えていく。ただ、この風力の羽を作る会社が日本にないわけですよね。コスト面で中国から安いものを持ってこざるを得ないというのは、これはやはり経済安全保障的にも、私的にもクエスチョンマークだから、いずれ日本の会社で作れるようにしてもらいたいし、そういう気持ちのある会社も現実にあるわけですから、経済安全保障的っていうのか、あるいは環境的にも、風力を一生懸命やったら中国がもうかっただけでは、少し調子悪いですね。そういう経済安全保障的な要素もありますけれども、日本の中で再生可能エネルギーが自前できっちり確保できるように、そういう仕組みというものを、環境省的にも必要だなと思っています。今、企業的にも3,000兆円とも言われる、あるいは4,000兆円と言う人もいるけれども、ESGマネー、これをどういうふうに持ってこようかと思って、環境に配慮したような、例えばTask Force on Climate-related Financial Disclosures(TCFD)、そういうこともきっちりやっていかないと、そのお金を持ってこられないわけですよね。我々、政治では自分たちでマネージできる予算ということで、何十兆という話をよくするわけですけれども、現実には3,000兆、4,000兆というお金をどうやって引き込めるかという、官民一体となった動きというのは、どうしてもこれから大事になってくると思うんです。だから、そういう意味でいったら、「環境問題に国境なし」という観点も踏まえながら、どういうふうに経済の発展に結びつけていくか、それも経済的な安全保障の1つの側面だと思うんですね。ですから、環境省的にというところで、全体像の中でそこだけ切り取るというのは、少々無理があるとは思うんですけれども、やはり、そういう環境省として考えなきゃいけないことが幾つかあるわけですから、その辺も方向性として確保されるように、関わっていかなきゃいけないのかなと思っています。
(記者)それに関連してもう一点だけ。以前1年ぐらい前に、気候変動問題などの環境問題は日本の安全保障と密接な連動をしているという認識があったと思うんです。これは環境省も前の大臣のときもそういう認識で、自衛隊や何かに再生エネの導入とか、あるいは広い意味での気候変動被害に対する対応を自衛隊や何かと一緒になってやるとか、言わば気候変動の安全対策というのが必要だという認識があったと思うんですけど、これは大臣の持論で結構なんですが、やっぱり気候変動は今や防衛省的な安全保障対策とも連動しているという具合の認識が、これは日本だけではなくて、アメリカなんかもきっちり気候変動の脅威というのは安全保障対策だという認識をしていますけど、その辺、経済の安全保障も重要だけども、やっぱり本来の意味での国の安全保障という観点で、気候変動対策をどうお考えで、かつ具体的にそれをどうやっぱり進展させるべきかというところを、どうでしょうか、持論としてお伺いしたいんですが。
(大臣)安全保障というのは、複合的に考えるべきものですから、気候問題と防衛問題とが切り離されるということが、そもそもないわけですよね。だから、「環境問題に国境なし」というのもその一部であり、何かと何かを分けるという話は当然ありません。その中で、防衛省というのは自衛隊という側面を今とっておられると思いますけれども、これは適応の部分ですよね。実際に起こったことについて、どう対応するかという適応の部分を言っておられることになるわけですけれども、自衛隊の動き方についても歴史的に相当変わってきていますよね。昔は要請がなければ自衛隊は動けなかった。だから、阪神・淡路大震災のとき、95年のときには、そういうことだったから、自衛隊がすぐ行こうかと言っても、自治体のほうで非常に混乱の極みだったから要請までできなかった、だから、動けなかった。だから、それを改めて、あえて自治体の要請がなくても、自衛隊の災害派遣が可能になるように今改まっていると思います。それは、安全保障というのは全てですから、それが関係ないわけが全くないわけで、そういう意味では関係があるけれども、私的には国の安全保障というのは、そういう複合的に見る中で、どういうふうにまず平和を作っていくかということがあると思うんですよね。外交官で処理できなければ、軍人の仕事になると。そういう意味では、対話を閉ざさないということも1つあるでしょう。環境に関する対話は絶対に続けていかなきゃいけないと。それは「環境問題に国境なし」ということもあるし、それはひいては対話を途切れさせることによって戦争になったという日米の歴史というのも踏まえると、環境が安全保障にというのは、大きな意味で、言わばいろんなところでつながっているんだと思います。だから、自衛隊との関連というのは、いろんな意味でこれからあるんでしょうけれども、そういう捉え方を私はしています。

(記者)日刊工業新聞の松木です。僕もこの経済からの絡みで1つ質問なんですけれども、先日、総合化学大手の三菱ケミカルがプラスチック原料を作っている石油化学事業と、あと石炭コークスを作っている炭素事業を分離すると発表しました。それぞれ理由なんですけれども、脱炭素の政策によって、今後エネルギーコストが上がってくるので、それらの2つの事業を分離するという理由でした。このように脱炭素が1つ契機となって、日本の経済界にもこういう事業構造改革が起きてきたことについて、受け止めがあれば教えてください。
(大臣)この脱炭素の動き、グリーンと言われたり、いろんな表現がある中で、これは世界を変えつつあると思うんですね。そういう中で、日本あるいは世界、どういうふうに経済の在り方が変わってくるかというのは、我々が考えているより多分大きいと思うんです。この間のイギリスのグラスゴーでのCOP26で、産業革命前からの温度と比較して1.5度以内に抑える、そういうことはもう世界の流れとして定着したと思います。だから、会社それぞれにおいても、これからの発展を考えるときには、脱炭素ということが至上命題になっているという意識というのは、いろんな会社が急速に今持っていただきつつあると思うんです。でも、それを今までみたいにコストとして考えるんじゃなくて、ここは、自分を変えるというのは大変ですけどね、でも産業構造の在り方も踏まえて、やっぱり変えていくということ、それをどういうふうに政治がサポートできるかというのが、これからの我々の仕事の1つだと思うんです。産業的に言ったら、例えば大きな産業である自動車、約500万人以上の方がそこに雇用されている。今までの自動車の在り方、作り方であれば、これは世界の中で売れなくなるというのが、もうはっきり見えていると思うんですね。それをもちろんみんな認識して、これからの自動車というのはある意味でコンピューターが動いている自動車になるわけですから、だから、そういうものを作れるような構造変革、これは大きいですよね。そこは1社だけでできることではなくて、例えば電気自動車を走らせるようにしようと思ったら、それは充電できる仕組みが日本全国に本当に十分あるのかというようなことも含めてやらないと、今までの内燃機関のガソリンで走る自動車を電気で走らせるようにしたら、それで済むというわけではないと思うんですね。国全体でそういうサポートもしなければいけないというところだと思うんです。産業構造の変革というものが大きく、これからどういうふうに政治がサポートできるのかなというところはあると思います。ダーウィンの言葉で有名なやつがありますよね。恐竜がなんで滅びて、なんで小さな哺乳類が生き残ったのか。大きいものが勝つんじゃないんですね。あるいは強いものが生き残るんじゃないんですよね。自らを変えることができる種だけが生き残っていくと言ったと言われているんですけど、実際に彼が言ったかどうか分かりませんけれども、そういうぐらいに自らを変えることができるかどうかというのは、これから生き残っていく際の一番大きなポイントですから、この構造変革というのは大変な作業であることは誰も分かっているんだけど、それができるかどうかで日本が生き残り、さらに世界を平和にできる、そういう役割を果たせるかどうか、今、分かれ道だと思っています。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/afP2SHESnqI

(以上)