大臣談話・大臣記者会見要旨

山口大臣閣議後記者会見録(令和3年11月5日(金) 10:35~11:00於:環境省第一会議室)

1.発言要旨

初めに私のほうからは、今日、経団連との懇談会をさせていただきますので、そのことをお知らせ申し上げます。本日、経団連の杉森副会長にお越しいただき、懇談会を行います。COP26に向けて、先日経団連が公表された提言などについて意見交換を行わせていただく予定です。環境省と経団連は昨年9月に脱炭素社会実現に向けた連携合意を取り交わして以降、定期的に意見交換を行うなど連携を深めてきたところです。生物多様性の分野でも、11月から十倉会長をトップとする次期国際目標の達成に向けた産官学民の会議体を発足させました。かねてから申し上げているとおりですが、環境問題の解決にはイノベーションの開発と普及を進めていくことが必要であり、産業界との緊密な連携は不可欠と考えております。経団連との懇談会は、私の大臣就任後初めてであり、非常に楽しみにしています。COP26の閣僚級会合に向けて、本日の懇談会を有意義なものとなるようにさせていただきたいと思っています。以上です。

2.質疑応答

(記者)TBSテレビの緒方です。先日のCOP26で岸田総理の演説で、温暖化対策に後ろ向きな国に贈られる化石賞が贈られたかと思うんですが、その受け止めと、あと現地では日本の高校生や大学生がその石炭火力の全廃を訴えて抗議デモを行っていたと思うんですが、それの受け止めもお願いします。
(大臣)COP26の首脳級会合は気候変動対策の機運を高める重要な機会であったと思います。岸田総理からは、短い滞在期間において会合でのスピーチや各国首脳との会談を精力的にこなされて、非常に意義のある訪問となったと思います。総理はスピーチにおいて、2050年カーボンニュートラルに向けた、日本の強い決意を発信され、5年間で100億ドルの新規の支援を含むアジアや世界の脱炭素化に向けた我が国のイニシアチブを力強く発信されました。2050年カーボンニュートラルに向けては、再生可能エネルギーの主力電源化の徹底と火力発電の脱炭素化が必要です。その上で、石炭火力については排出されるCO2を削減し、早期に脱炭素化することが重要です。今回の総理のスピーチもそれに沿ったものと認識しています。引き続き、2050年カーボンニュートラルとそれに整合する野心的な2030年度目標の達成に向けて取り組んでまいりたいと思います。この石炭の火力発電については、もちろんいろんな見方があるんでしょうけども、日本としてアンモニアあるいは水素等の混焼も含めて、やはりこの排出されるCO2を削減すると。現実にそういう試みも実証をスタートしていることもあり、そういう中で、このいろんな事情を含んだ上での石炭火力発電という位置づけだと思います。
(記者)すみません、現地の高校生と大学生の抗議デモについてはどのように受け止めていますか。
(大臣)何を言わんとされているかはよく分かっているつもりです。そのCO2の排出を削減しようというところでは一致していますから、それに沿って日本としても更に進めていきたいと思います。

(記者)テレビ朝日の川﨑です。今もありましたけれども、COP26での岸田総理のスピーチなんですけれども、大臣が特に印象に残った点、1つ挙げるとすればどの辺りでしょうか。
(大臣)この資金の話というのが1つの大きな柱だと思うんですよね。その100億ドルというふうに打ち出されたことに対して、私が側聞しているところでは、ケリーさん等拍手があったように聞いていますから、そういう意味では我々がこの100億ドルというのはもっともっときちんと言っていいと思います。どういうふうにCOP26が成功だというふうに言えるかというと、いろんな見方があると思いますけれども、1つには目標の更に前向きな、いわゆる野心的というんですか、そういうこともあるでしょうし、もう1つにはこの資金の話もあるでしょうし、そういう中でこの100億ドルの話というのは、かなり前向きに受け取られたように側聞しています。
(記者)あと、OPECが「OPECプラスで原油の追加増産見送りを決定」というニュースが出ているんですけれども、天然ガスと原油価格のこのところの高騰というのは脱炭素の動きとも関係してくると思うんですが、この辺りは大臣はどういうふうに受け止めていらっしゃるでしょうか。
(大臣)そこはちょっと難しいところだと思うんですけれども、石油価格が高騰する、そういう意味ではいろんな意味でエネルギーの安全保障というものを考えていかなきゃいけない。そういう日本のエネルギーの安全保障の中でどういういろんなオプションがあり得るかということを更によく考えていかなきゃいけないなということを思います。

(記者)NHKの吉田です。来週のお話なんですが、COP26のほうで閣僚級会合のほうが始まるかと思うんですけれども、こちらに今のところ、現段階で参加の御予定ですとか、大臣のスケジュールのほうはいかがでしょうか。
(大臣)国会がこれからどういう日程かということで決まってくると思うんですけれども、その中で事情が許せばということで。気持ちとしては、私は行かせていただきたいという気持ちです。

(記者)エネルギージャーナル社の清水です。ちょっと古い話で恐縮なんですが、選挙戦のときに官邸の脱炭素有識者会議というのがあって、結構重要なことをアウトプットしたと思うんですが、選挙戦だったので政策への反映をどういう形でやるのかというのは、まだ見えていないような感じがするんですけども、これは設置したのはやはり環境省が主導になって設置したわけで、有識者会議のどこのポイントをどんな環境省の政策なり政府の政策なりに反映する考えですか。その点をお聞きしたいです。
(大臣)ちょっと詳細について、今、つまびらかにしていませんけれども、やはり大きな政策は決まっているわけですから、2050カーボンニュートラル、あるいは2030・46%あるいは50%、その中でこれから日本の中でもいろんなプレイヤーがいる、それをコラボしながら連携を取って、そして地域の中でも脱炭素のいろいろなプロジェクトを進めていく。そういう中でのいろんな意見を伺ったんだろうと察します。
(記者)言っているポイントはですね、やっぱりライフスタイル。カーボンニュートラルあるいは中間目標達成のためには、ライフスタイルの変換というのは非常に重要だと。その一環としては、カーボンプライシングとかそういうことをやはり全面に立てて、政府はいろいろと検討すべきじゃないか。私なりに解釈するとそのような感じなんですけども、その辺はどうですか。
(大臣)そういうのも大事なコンポーネントだと思います。そういうのも含めて、今、いろんな意味で進んでいると思います。カーボンプライシングについても年内にということで、いろいろと取りまとめが行われているように承知しています。
(記者)税制調査会へ、これにカーボンニュートラルのどのことをやるか、検討するかというのは、もう議題になっているんですかね。
(大臣)今年は、まず頭出しできれば上々じゃないですか。いろいろと意見も取りまとめていかなきゃいけないし、そういう意味ではじっくりじっくりみんなの納得をいただきながらという進め方が一番いいんじゃないかなと思います。

(記者)共同通信の水内です。カーボンプライシングの件なんですけど、今の御発言だと、今年は頭出しできれば上々ではないかということなんですけれども、年内取りまとめで、ということにはなっていますけれども、その排出量の取引とか、炭素税だとか、そういったことにはなかなかすぐ結論は得られないという認識なんでしょうか。
(大臣)炭素税についても、いろいろな分野がありますよね、いわゆるでこぼこというのかな。だから、そういうものをどういうふうに考えていくかということも含めて、少し時間がかかるんじゃないかなと思うんです。でも、地球温暖化対策税を含めて、少し頭出しは、過去にあったようにも思うから、そういうところも念頭に置きながら、もう少し図柄を精緻なものにしていく必要はあると思うんです。だけれども、成長に資する仕組みについては「躊躇なく取り組む」という発想でもって、どういうふうな頭出しができるのか、どこまで進めることができるのか、その辺、この年内取りまとめという中で考えていきたいなと思っています。これは関係省庁もありますよね、経済産業省とか。そういうところとのすり合わせも、やっぱり拙速にできるわけでもないから、きっちりきっちりやりたいなと思っています。

(記者)電気新聞の匂坂と申します。またちょっとCOP26に戻りますけど、岸田総理のスピーチで、資金支援の拡充、資金支援の強化を中心に、目玉として話されていましたけど、そこに何か環境省としてですね、今回のCOPを受けて、途上国への対策を強化するですとか、これから検討していくですとか、そういったお考えはいかがでしょうか。
(大臣)この二酸化炭素を減らすというのは、全世界で心合わせしなきゃいけないわけでしょうから、そういう意味では、大きな国がやると同時に大小様々な国の心合わせが必要だと思うんです。日本的には、アジアにいるわけですから、東南アジアの国含めて、あるいは日中韓という1つのフレームワークも含めて、どういうふうにお互いがコラボできるか、日中韓的には、どちらかというと支援しているという立場が多いと思いますけれども、日本的にもそういう中で大きな協力をどういうふうに出していくかということだと思うんですね。この間も選挙中にASEANのそれぞれの環境大臣の方々と、あるいは中国・韓国の環境大臣の方々とネットでの会議を行ったような次第ですけれども、そういうことも踏まえて、このCOPという中でも、日本的にはアジアというものは当然、念頭に強くありますから、そういうことも含みながら、100億ドルという話も、そういうことも非常に念頭に置いた話だと思うんです。だから今回、中国とかロシアが首脳は来れなかった。でもまあそれは事務方の人たちがちゃんと来ておられる。そういう中で心合わせを進められればいいなというふうに思います。日本的にもね、100億ドルというのは決して小さなコミットメントでもないし、前に前に進めていくという大きな原動力になればなというふうに思っています。やらなきゃいけないことが幾つかありますよね、その6条の仕上げとか、そういうこともあるから、そういうものも全部いろいろと一歩一歩、なおかつ着実に行くってことじゃないでしょうか。
(記者)追加で、また総理のスピーチの中で、火力発電のゼロエミッション化というところも総理は強調されていたと思うんですけれども、アンモニアや水素を活用してですね。COP、英国などは脱石炭火力でまとまっていますけれども、日本としては、火力発電を、脱炭素化技術を成長産業としてどんどん輸出していくんだと、そういう方針を示されたという理解でよろしいでしょうか。
(大臣)石炭について、そのいわゆる海外協力するという話ですか。それはもう卒業したんじゃないかなというふうに私は認識しているんですけど。
(記者)石炭の輸出は、そのままでは止めているとは思うんですけれども、それをアンモニアとか水素の形として推進していくのかというのは。
(大臣)なるほど。文言ではそういう形、日本自身がそういうアンモニアとか水素の話、例えば、その株式会社JERAというんですかね、JAPAN ENERGY NEW ERAとか。それは本年度から現実に4年間実機を活用したアンモニア20%混焼のテスト、パイロット的なこと、実際にやっているわけですから、これが2020年代後半の実用化に向けていると、実際にやっているわけですよね。夢物語でも何でもない。それから、2030年代前半には保有の石炭火力全体におけるアンモニア混焼率20%を達成しようとしていると。それから2040年代にはアンモニア専焼へ移行しようとしていると。こういうビジョンの下に、現実にこの6月からスタートしていると。だから、夢物語ではないんだと思うんです。実際に始まっている。だからそういうことも含めると、その石炭の火力発電所からのCO2の排出というのを少なくしていくというのは現実に行われつつあるんだというふうに認識しています。

(記者)テレビ朝日の川﨑です。すみません、ちょっと大臣に、就任されて以来ちょっと気になっていたんですが、「心合わせ」という言葉をよく使われると思うんですが、これはどういう意味で大臣は使われていらっしゃいますか。
(大臣)心を合わせると、合意が取りやすくなりますよね。
(記者)あんまり普段、個人的になのかもしれないですけど、使ったことがなかったんですけど、何か思い入れがある言葉というか。
(大臣)やっぱり、人間、お互い協力していかなきゃこの社会は成り立たないのでね、その中の一番大事な部分は心でしょうな。その心を合わせなきゃ物事は前に進まない。そういう意味で言っています。

(記者)NHKの吉田です。2回目ですみません。一応整理をする上でもう一度アンモニアと水素のことを伺いたいんですが、実際にJERAのほうで実証をされていたりですとか、技術の開発を進める動きは実際にあるわけなんですけれども、これは2030年の目標に寄与するものというふうに考えているんでしょうか。何か戦略的に、アンモニアと水素を改めてどう位置付けているのか。タイムラインはどうなっているのかということを知りたいんですけど、いかがでしょうか。
(大臣)行き着くところは2050年にカーボンニュートラルということは、まずみんなあるわけですよね。このアンモニアにしても水素にしても、今、混焼から始まっているわけだけど、専焼になったらもう石炭火力じゃないわけでしょう。アンモニアの発電、水素の発電。だから今はその石炭火力発電に混焼しているから、まだ石炭火力発電所ということになっているでしょうけど、順番にそれを、パーセンテージを高めていくわけですよね。 だから、それは現実にその2030年に向けての貢献にも当然なっていくと思います。
(記者)すみません。アンモニアの専焼が、そうすると2030年ですとか、その近い時期に実現できると考えておっしゃられているのか、それとも。
(大臣)もう一回先ほどの、私が申し上げたことをもう一回言いますけど、JERAは2040年代にアンモニアの専焼へ移行するということをビジョンで掲げているわけですから、2030年ではありません。
(記者)お話を聞いているとやはりこう、専焼を、技術を開発したところで、社会的な実装という課題も出てくる中で、日本政府として火力発電をこの長いタイムラインで、どういうふうにその技術を実装していくのかという具体的な戦略が読めない中で、こういうステートメントが出されているような印象を受けるんですけれども。
(大臣)JERAというのは現実にあるし、現実にやっているわけですよね。何も計画ではない。現実に6月から実機を活用したアンモニア20%混焼を行っていると。ここは事実ですよね。そこには何も、これからの話ではなくて、現実にやっている。これからの話というのは、この2020年代後半の実用化に向けてと。そこにはいろいろと、例えばアンモニアの調達、水素の調達という課題もあるんでしょう。それはこれから努力していかなきゃいけない面も入っています。だけれども、現実にはかなりはっきりしたビジョンで語られていると思います。だから、政府的にはそれをどういうふうにコラボして実現していくかということじゃないでしょうか。
(記者)JERAについては、今進められていますけれども、国全体としてどう進めていくのか、今100基以上ある火力発電所についてはどうしていくのかということについては、今後議論していくということで。
(大臣)それもありますし、やっぱりJERAのこのモデルケースというのは非常に参考になるんじゃないでしょうか。

(記者)エネルギージャーナルの清水です。2回目で。今度COP26でね、目立ったのは、石炭火力もさることながら、やっぱり森林破壊。特にブラジルとかアマゾンなんかのね。そういう不法破壊を2030年でストップするという、やっぱり合意ができつつあると。翻って、日本もですね、森林大国と言われているわけですね。それで、相当、しかし、国土開発とかいろいろな工業開発等で森林はどんどん減少している、一次産業はもう衰退しているという、そういう状況から行くと、途上国とか先進国とかということの分け目なしに、やっぱり森林対策を、温室効果の対策としてね、もう一度重視する必要があるんじゃないかと私は思っているんですけど、まあ一次産業の振興も含めて、その辺、大臣は持論としてどうですか。そういう認識というか、どんなお考えですか。
(大臣)林業について、うちの地元に今、神河町というのがあって、昔は神崎町と大河内町というものが合併して神河町になって。神崎町の森林組合の標語があったんですよね。私が1軒1軒ずっと回っているときに、あるとき、その神崎町森林組合の標語に、「きっと来る 追い風」と。「待つだけでは来ない」と、「間伐・枝打ちに汗を流そう」と。これ、どきっとしますよね。私の選挙はいつも逆風でやっているから、「きっと来る 追い風」と言われるとどきっとします。これは林業に携わっておられる方々の気持ちを端的に表していると思うんですよね。「待つだけでは来ない 間伐・枝打ちに汗を流そう」。今、その材木の価格が思い描いていたものよりも大分低くなって、しかも外材に押されていると。どういうふうに立て直していくかという中で、そういう標語があるんだと思うんです。じゃあ、間伐・枝打ちをやってくれるのは一体誰だと。最近は都会の人からも環境税ということでそっちに回していく。そういうことも、要するに森林が豊かであれば、それがその恵みが川を伝って海に流れて。海のカキの養殖とか、海の幸も栄養が行き渡ると。やっぱり山と海というのはつながっているという。
(記者)恋人だというふうにも。
(大臣)そういうことがあります。そういう意味では、都会とそうじゃないところも、やっぱりこの一心同体的な部分もあると思うんです。だからその、同じ発想でね、やっぱり世界の中で、森林がきちんとあれば二酸化炭素も吸い取ってくれると、しかも、木というのは、若い木の方が吸ってくれるでしょう。そういう意味では、いろいろな工夫もこれから考えていかなきゃいけないんでしょうけど、全体的に見てね、全世界レベルでこの森林を大事に、なおかつ、どういうふうに成業として成り立っていくのか。その辺、大事な部分だと思います。アマゾンでね、火事で全部焼けたり、あるいはオーストラリアで森林が燃えているというのを見ると心が痛みますよね。何とかできないものかなというふうに思いますよね。でも、あれも異常気象ということで、二酸化炭素を減らさなきゃ、ああいうことが起こってしまうと。やっぱりその森林の役目は大きいなというふうに思うから、もう少し大きな、マクロレベルの戦略も非常に必要なんですよね。それからミクロじゃないけれども、各地域における林業の生業を確かなものにしていく。どちらも必要なんだと思うんです。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/tTj6wqNbP5A

(以上)