大臣談話・大臣記者会見要旨

山口大臣記者会見録(令和3年10月5日(火)11:01~11:52 於:環境省第一会議室)

1.発言要旨

おはようございます。ただいま御紹介いただきました、昨日環境大臣・内閣府原子力防災担当大臣を拝命しました、山口壯です。よろしくお願いします。総理からは、脱炭素推進、あるいは海洋プラスチックごみの処理、福島復興の加速化、そしてまた原子力規制委員会のサポート、そしてまた原子力防災体制の強化ということをしっかりやるようにというように指示をいただきました。今、異常気候が続いたりして、これは何とかしなきゃいけないということから、2050年のこのカーボンニュートラル、あるいは2030年の温室効果ガスの46%削減というようなことで、かなりはっきりした目標が出ているわけですから、環境省としてしっかりその形になるように、あるいは具体化できるように、結果が出るように頑張っていきたいと思います。そういう意味では、いろんな人の意見を聞くわけですけれども、産業界の意見もしっかり聞きながら、イノベーションということも頭に置いて、こういうことをどうやったら具体的にできるのか、車の両輪としてしっかり耳を傾けていきたいなと思っています。そういう意味で、この企業、金融、あるいは地域とどういうふうにコラボしていくかという話だと思うのですけども、この再生可能エネルギーを最大限導入していくというところが一番のポイントだと思います。その辺を我々が、後押ししていくというのが環境省の役割だろうと思っています。そういう意味で、国民1人1人のライフスタイルを変えていくっていうこともあるかもしれません。そういうところも環境省として、頑張っていくということだと思います。また、今日明日というよりも長い時間、少しかかるようなところもありますから、熱中症対策ということで、気温がどんどん上がっていく状況の中で、どういうふうに適応していくかというところについても、環境省の仕事かなというふうに思っています。それから、もう近々の話ですけれども、COP26ということがイギリスのグラスゴーで予定されているわけですから、そのことについて、そのCOP26始め、一連の国際会議、その対処方針を決めるに当たっては、環境省がリーダーシップをとって関係大臣、あるいは関係省庁をまとめ上げるというところを、きちんとやらなきゃいかんなというふうに思っています。ただし、行けるかどうか、国会のお許しがいただければということですけれども、できればやっぱりきちんと行かせていただきたいなというふうには思っています。やはり、日本のこれからの国際社会の中での役割を考えるに当たって非常に大事な部分ですから、プレゼンスを確保すると同時に、きちんとしたメッセージも発信して、そしてまた、流れも作っていくというところをやっていきたいなというふうに思っています。海洋プラスチックごみの処理について、あるいはそのサーキュラ-・エコノミーというか、循環経済の話、特に私自身にとって、念頭にあるのは海洋プラスチックごみ処理の国際的な枠組みをどうやって作っていくのか。私自身は外務省に勤務したときに、当時、気候変動条約の枠組みを一番最初に作ったときに2か月間、1か月は国内に、1か月はニューヨークにいて、当時はパキスタンから出張という格好だったのですけれども、作りました。それは、最初に枠組みを作るためにどれだけ多くの国を巻き込んで、そしてその国とそういうふうにその枠組みを作っていくかというところで議論したわけですけれども、この海洋プラスチックのごみ処理問題、せっかく大阪でイニシアティブを取ったのですから、それがやっぱり形になるように、具体的な条約化に向けて頑張っていきたいなというふうに思います。それから、この自然環境の分野では特にCOP15、これが来年春に中国で開催ということも聞いています。このG7サミットで合意されたという「30 by 30」、これについてもどういうふうに枠組みとして実現していくのか、その道筋を世界に発信していくという仕事もあろうかと思います。それから、コロナが明日消えるわけじゃないので、そういう意味ではウィズコロナということになるんでしょうけども、仕事のやり方として、いろんな多様化が進む中で、国立公園の満喫プロジェクト、環境省がせっかく始めたこのプロジェクトがさらに行き渡っていくように、それも課題としてあろうかと思います。福島については、いまだ道半ばということで、どういうふうにして我々が取り組めるのか、一番、環境省にとっても最重要課題の1つです。特に、ALPS処理水については、モニタリングが環境省の役割だと思いますけれども、そこの準備についても、きちっとやっていくということだろうと思います。我々環境省、できてから50年ということで、最初、環境庁だったわけです。水俣病、あるいはこのアスベストの話、人の命から始まったわけで、今年は環境省ができてから20年と言いますけど、やっぱりこの初心を忘れないというところを守りながら、どういうふうに進化させていくかというところが私にとっても大きな課題だし、環境省のスタッフのみんなと心合わせして、そして力を合わせて、1つ1つ、一歩一歩実現させていきたいなというふうに思っています。あとは、私自身はこの原子力規制委員会のサポート、予算、体制、そちらのほうもやらせていただくということと、それからまた原子力防災体制についてはそれぞれの自治体と心合わせをして、よく声も聞かせていただきながら強化に努めていきたいというふうに思っています。私自身は、実は外務省に勤務して、一番最初の配属が、経済局の国際機関第2課というところで、そこはOECD担当だったのですけど、いろんな委員会がある中で、環境委員会をやれということで、当時の浜中さんという人がパリにいて、毎日毎日連絡を取って、時差があるものですからね、夜の電話になりましたけれども、環境についてが私自身の仕事の一番のきっかけでした。また御縁があって、こうやって大きくなった環境省に来させていただいたこと、本当に光栄に思いますし、その中でいろんな意味で関わっておられる方々、心合わせをしながらしっかり前に進めさせていただければなと思う次第です。よろしくお願いします。

2.質疑応答

(記者)幹事社の読売新聞の山下です。大臣、これからよろしくお願いいたします。幹事社からは、先ほどもちょっと言及あったんですけれども、前のですね、小泉大臣時代にはですね、再エネ最優先の原則を打ち出されるなど、脱炭素に向けた取組の強化がありました。そうした、前小泉環境相時代のですね、路線というのを継承するのかどうか、その所感について教えてください。
(大臣)私も役所出身ということで、行政にとって一番大事なことは継続ですよね。特に、小泉前環境大臣、頑張ってやってこられたわけですから、その路線は踏襲します。他方、私としていろいろできることもあるわけですから、その進化ということは当然あるでしょう。だから、この政府、あるいは与党においてしっかり議論されてきた中の話ですから、それは踏襲しながら頑張っていきたいと思います。2050年カーボンニュートラルとか、あるいはその2030年の46%削減とか、そういう意味ではきっちりした話が積み重なってますのでね、それを大事にしていきたいと思ってます。

(記者)日本テレビの川崎と申します。今後ともよろしくお願いいたします。今、大臣、福島の話で、最重要課題だというふうに発言をされました。いわゆる、この福島の問題、いわゆる除染土壌も含めてですけれども、いわゆる県外搬出するであったりとか、処理水など非常に問題を抱えていると思います。まず、福島の方に向けての思い、住民の方々へどういう形でこの先進めていくかという決意、決断みたいなものをお聞かせいただけませんか。
(大臣)2011年の3月11日、私自身もここ、霞が関にいたときのこのビルの揺れ方というのはすさまじかったですね。すぐに被災地に行きました。本当にびっくりしましたね。ここからどういうふうに復興していくのか、本当に胸が痛む思いでしたけれども、あれから10年、多くの方が亡くなられ、またそれを乗り越えて立ち上がってこられた多くの方々、魂レベルの話ですから、そういう意味では、我々、この行政という中でやる中でも、その、みんなの乗り越えてこられたという魂の力をやっぱり後押しさせていただきたいなと。それで、この除染というのは非常に難しいところを、まだまだ課題が残っていますよね。簡単にできる話ではないけども、いろんな技術も進化している中で、やはり環境省としてもそこを取り入れながらも、帰還困難区域の方々についてもできるだけ、むしろ帰還も可能になるようなこともやっていきたいなという気はします。行政はね、どっちかというと、できないことを正確に「できない」と言うことも仕事のうちですけども、政治は不可能を可能に変えるというところもありますから、それは1つ、イノベーションということも入れながら、この福島の方々について、不可能を可能に変えていけるように後押しさせていただきたいなと思います。私自身、もうできるだけ早く知事さん、あるいは地元の県議の方々と出会わせていただいて、そしてまず、御挨拶のみならず、お聞かせいただくというところももう一度させてもらわなきゃいかんなと思います。また、町長さん方ともですね。私自身ももう、福島に、そういう形で、復興という趣旨で伺ったのはだいぶ前になりますから、もう一度改めて、今回は環境を担当させていただくという立場で、もう一度伺わせていただいて、私にできることは精いっぱい、むしろできないことも含めて、不可能を可能に変えるつもりで取り組ませていただきたいと思います。

(記者)朝日新聞の川田と申します。よろしくお願いいたします。先ほど、再エネ最優先の原則については引き継がれるということだったんですけども、前大臣が原子力についてはかなり慎重な立場だったんですけれども、山口大臣はそれについてはどういうお考えでしょうか。(大臣)原子力についても、党あるいは政府で相当きちんとした議論がなされていると思うのです。そういう意味で、できるだけそれを低減させていくという一番のゴールはあると思うんですけれども、他方、日本全体の声をよく聞いていきたいと思うのです。今までのラインというのを、私は外しません。ですから、そういう意味で小泉さんがやってこられたことを原則引き継がせていただいて、他方、いろんな意見があるんですよね。そこはよく聞いていったらいいと思うんです。産業界には産業界の意見があるだろうし。やっぱりその、明日すぐなくせるわけではないし、廃炉にするにしても何十年もかかるわけですから、それに必要な体制もちゃんと持っとかなきゃいけない。そういう意味では、また新しい原子力の形というのも出てきているようですから、小型のものとか、いろんなものも含めて、やっぱりその科学的で、どういうふうな安全性が確保されているのかということも含めて、それはいろいろ考えなきゃいけないところも、新たな部分はあるんでしょう。あるんでしょうけども、これから原子力については長期的にはできるだけ低減させていく、その中で、エネルギーとしては再エネの最大限導入というところを踏まえながら考えていくというのが正しいんだろうなと思っています。
(記者)ありがとうございます。関連して、カーボンニュートラルに向けては産業界の意見をよく聞いていく、この趣旨をお願いします。
(大臣)国の国益を考えながら、あるいは地球規模課題としての脱炭素化を見据えていくと、この辺だと思うのです。その2つ、相反するようで、そこはイノベーションを活用しながら結びつけられるというふうに思っていますから、そういう意味では、両輪であれば、地球規模課題のこの声、それから産業界がどういうふうにそれを可能になっていくのか、いろんな課題が見えてくるでしょう。それを実現するためにはカーボンプライシングという話もあるだろうし。要するに、このイノベーションを可能にするためにお金もいるんだったらその工夫もどうやってやるんだという話もあるでしょうし、そこは産業界を抜きにしては考えられないわけですよね。そこを私は言っています。

(記者)熊本日日新聞の福山と申します。よろしくお願いいたします。水俣病についてお尋ねいたします。被害者団体は、認定基準を見直すことと、被害の全容解明に向けた住民健康調査、これの早期実施を求めています。この2つのことについて、お考えをお聞かせください。
(大臣)水俣については、この環境省、あるいは前身の環境庁ができた一番のポイントですから、それからそのことについては我々も初心を忘れることなく取り組んでいきたいと思うんです。ここのところ、コロナの関係で5月1日の式典というのが2年ほどなかったようなことも聞いていますけれども、来年、もしもあるのであれば、その、伺わせていただかなきゃいかんなというふうに思います。このメチル水銀について、この影響を客観的に明らかにする調査の手法、そういうことも今、開発を進めているようですね。それから、この2022年秋までに、この成果の整理をどういうふうに進めていくのか、手法の精度を上げていくというようなことではないかと思うんです。今、水俣の話の中でおっしゃられたこというのは、これまでも議論をずっとされていることでしょうから、私自身はこれまでの方針に沿ってやらせていただきたいなと思っています。
(記者)認定基準の見直しについてもお考えをお聞かせください。
(大臣)認定基準についても、これまでの方針を踏襲させていただきたいと思っています。

(記者)テレビ朝日の川﨑です。よろしくお願いします。今、福島のお話もありましたけれども、除染廃棄物については2045年度までに福島県外に運び出すというようなことになっていますけれども、特に小泉前大臣は「どんな立場であっても守らなければいけない約束」というふうにしていましたが、その点はどうでしょうか。
(大臣)2015年に例の中間貯蔵施設ができて30年以内にやりますという話ですから、そこはそのとおりだと思うんです。我々もできるだけその県外に廃棄できるようにいろんな意味でこの中間貯蔵施設っていうもの活用しながら進めていくんだと思いますけれども、そのこと自体が国としての責任があるんだ、約束あるんだというところがまず1つあるんでしょうね。国が約束したのだから、そのことは法律にも規定されている話なので、そこは大事にしていかなければいけないなと思っています。いわゆる減容、あるいは再生利用ということを含めてどういうふうにできるのかということだと思うんですけども、実際に減容とか再生利用できるところまで持っていければ最終的な処分量っていうことも減っていくんだと思うんです。今の2016年に策定した技術開発戦略あるいは工程表に基づいていろんな実証の話を技術的に検討しているということだというふうにも理解しています。また、この対話集会、みんなの理解がなければ最終的に県外に持っていけないわけですから、対話集会ということもこれからやっていかなければいけないなというふうに思っています。着実に前進させていきたいと思っています。
(記者)先ほど、小泉大臣のお話を引き継ぐというお話がありましたけれども、新たに取り組みたいこと、そういった点はあるのでしょうか。
(大臣)現実に2050年のカーボンニュートラル、あるいは2030年の46%の温室効果ガスの削減についての枠組みを作ったり、前進させること、そのこと自体がめちゃくちゃに大きなことですよね。だから、中心軸をぴたっと定めたらそれからぶれないというところでいけば私がやるべきことはその辺でしょう。COP26、COP15をきちんと具体化していく、それに尽きるのではないでしょうか。
(記者)今のところ特に、その他でですね、新たに取り込むとか、そういうことは。
(大臣)いろいろな課題が出てくるでしょうから、1つ1つ着実に目いっぱい頑張ります。野球で言ったら打率というのは3割以上がみんな強打者になるでしょう。私の仕事の打率は大体9割ぐらいなんです。強打者に入るんだと思います。そういう意味でも実務的に関係者のスタッフの人としっかり力を合わせて1つ1つの課題が出てくるでしょうから、大きいところはカーボンニュートラル2050、それから2030年の46%削減、あるいはCOP26あるいはCOP15の生物多様性、その辺のところをきっちりやりながら、その間に一番大事な福島の復興、あるいは海洋プラスチックの話も含めてですけども、さっきのCOP15ですけれども、そういったところを中心にやっていきたいなと思っています。
(記者)ちなみに「打率9割」というのはどういう意味で9割なんですか。
(大臣)気持ちも込めて。別に誰かが計ったわけではないです。

(記者)エネルギージャーナルの清水です。2点ほどお願いしたいのですが、1つは前小泉大臣の時は気候変動担当大臣というのがあったと思うのですが、これは岸田内閣ではなくなったという理解でいいのでしょうか。それが1つと、それからもう1つはいろいろと質問が出ていますけども、地球環境問題についてはいまや経済成長を比肩するくらい重要な対策になっているというのは菅内閣でもそうでしたし、国際的にもそういう大きな流れになってきている。しかし、菅内閣から経済成長、骨太方針、成長戦略ということで経済対策に最重視の対策が進められていますけども、新内閣ではやっぱり環境と経済は、両方のバランスをとって、時には環境優先ということも含めて大臣としては、舵取りをされるつもりでしょうか。2点をお願いします。
(大臣)資本主義がどういうふうにみんなを幸せにしてきたか、その限界でいくつか言われる中の1つがこの地球規模の環境問題です。環境なくして経済はないです。したがって、どちらを取るかではありません。どちらも両立させていくことがこれからの我々の健全な資本主義の在り方だと思います。岸田内閣が「新しい資本主義」ということを昨日記者会見でも総理が言っておられましたけれども、その中の1つは、今までの資本主義が対応できていなかった部分をどういうふうに対応していくのか。そのうちの1つが地球規模の環境でしょう。そういう観点で私は環境省の仕事に取り組ませていただければと思います。先ほど清水さんが一番最初におっしゃられた気候変動の担当の大臣、その小泉さんの一生懸命に頑張られた部分があってこそ、昨日の総理からの指示の中で、「気候変動問題に係る一連の国際会議に向け、関係大臣と協力して、気候変動問題に対応する諸施策に係る対応方針を準備する」というところもしっかりと入っていますので、そこは生きていることだと思います。そういう意味で環境に対する重点の置き方、それは我々が経済をどういうふうに見るかという中で、今までは資本主義というのが、今さえよければよいとか、自分さえよければよいとか、儲かりさえすればよいとか、それを超えようとしているわけですよね。総理は成長と分配という言い方をされていましたけども、資本主義はきれいに機能していくために乗り越えなければいけない部分、それは自分さえよければよいのではなくて、地球規模の課題というのは、みんなが協力して、みんなが幸せになっていくという、ある意味で今までのユークリッド幾何学を超えたようなところがあると思いますから、そこは私についても小泉さんが求めようとされたことは大事なことだと思いますので、しっかり引き継いでやっていきます。

(記者)フジテレビの安宅と申します。COP26がまもなく開催されますけれども、その中で日本がリーダーシップをとっていく、かなり世界の国々を見ていても足並みがなかなか揃わないでいるという状況もあると思うんですが、この状況をどうとらえているのか。そして、その中でどういった形でリーダーシップをとっていくのか、枠組み作りという話もありましたけれども、もう1度、具体的にお話しいただければと思います。
(大臣)世界にいっぱい国があるわけですから、簡単な話ではないということは当たり前のことですよね。こっちの国はああ考え、そっちの国はこう考えしているわけですから。その意味ではパリ協定というところが最初にあるわけですよね。パリ協定をどういうふうに実行に移していくか。パリ協定を COP26でルールを作っていく。そんな位置付けなんでしょう。今、関わっている国も190以上はある中で、これを一発で日本がこうやりましょうと言ったから付いてくるというものではないのは誰が考えてもわかるわけですよね。だけれども、これまでの日本だったら、ある意味でほかの国は何を考えているのかな、では、日本はそれと一緒にやって行こうかな、という話だったと思いますけれども、戦後76年たって日本は自分の見識でもって世界の秩序作りをしていこう、そういうことまで我々は発想しているわけでしょう。そうしたらこの世界の中で、簡単にはできなくてもどういうふうに日本として脱炭素化を進めるんだというところを打ち出すことが1つの大きな日本としての役割だと思いますね。この枠組み作りというのは相当事務方でもっても、その関係者だけではなくて、現場の外務省とか、いろいろなところと、経産省も関わってくるのでしょう。そういうところでもって、二国間ではなくて多国間の200近い国の話ですからね。核になる国をいくつかターゲットを定めて、実際に相談して行くのでしょうけど、そんなに道のりは簡単で短いものじゃないという気はしています。さっき申し上げたように気候変動の問題だって、私がやっていたのは1990年代ですからね。それから30年ずっとやっているわけですよ。だからそういう中での話ではあるけれども、もう少し時間軸をもっともっと縮めて急いでやっていくことが大事だと思っていますからね。そういう意味では各国とどういうふうに心合わせをしていくかというところを事務方の人にも頑張ってもらい、必要に応じて向こうの首脳レベルとも話をし、骨格を少しでも作っていくということが道筋だと思っています。骨格というのは相談の枠組みの骨格ですね。

(記者)NHKの岡本と申します。大臣、よろしくお願いします。カーボンニュートラルを目指す上での方法なんですけれども、先ほども大臣、再生可能エネルギーの導入ということとと、1人1人のライフスタイルを変えることも必要かもしれないというふうにおっしゃったと思います。小泉前大臣は経済社会全体の変革が必要だということをよくおっしゃっていましたし、世界的にはグリーンリカバリーとか、グレートリセットというように社会全体の構造を変えて脱炭素型の社会にしていこうという動きが主流だと思います。そうしたことに対する大臣の考え方を教えてください。
(大臣)そこは当然大事なんじゃないですかね。その経済社会全体の変革を求めていく、これは小泉前大臣の言われたことはそのとおりだと思いますから、私もそれは踏襲します。それに加えてイノベーションだと思いますね。水素とかアンモニアとかも含めて、いろいろなこれからのイノベーションというのは控えているのだと思います。エネルギーの作り方も含めてですね。ですから、カーボンニュートラルを進める中で、比率として大きいのは電力の話かもしれませんから、そこの中でイノベーションというのは非常に大事だと思います。そのイノベ-ションというものが社会全体の電力の作り方、電力の配分の仕方、あるいはスマートシティみたいなことも含めて大きな構想に結び付くのだと思います。ですから、地道なことも含めまして社会全体で変革していくことにつながっていくのではないかと思っています。

(記者)共同通信の水内です。よろしくお願いします。大臣のホームページを拝見しますと、原発について触れていらっしゃいまして、先ほどもお話がありました点を、できるだけ依存度を低減していくとか、さらには脱原発を実現しようという考えであると記されておりますが、将来的な脱原発が必要だというお考えで国内でのお仕事に臨まれるのかという確認が1つ。もう1つは先ほどありましたけれども、新型炉を念頭に置いたものだと思うのですけども、「安全性を確認しながら」という話がありました。そういったものも活用するということも一方で検討する必要があるというお考えでしょうか。お願いします。
(大臣)今、水内さんがおっしゃった、私の答えはそうなるんだと思うんですね。原発については安全を最優先にして再生可能エネルギーの拡大を図る中で可能な限り原発依存度を低減する。これに尽きると思います。もちろん気持ちとしてはとにかくできるだけ早く低減させていきたいというところが、さっき水内さんがおっしゃられたことの解釈だと思っていただければありがたいです。
(記者)すみません。2問目のお答えをいただいていなかったようなんで。いわゆる新型炉等も考える必要があるということでしょうか。
(大臣)いろんな技術が出てくるわけですから、経産省が考えたり、いろいろなところがやるのでしょうから、いろんな形で我々も共有させていただくことがあるでしょうけれども、別にそこまでは今はっきりしたことはないわけですから、これからいろいろと考えていったらいいと思います。

(記者)日本農業新聞の中川と申します。よろしくお願いします。野生動物の管理について伺います。クマの人身被害や、イノシシ・シカの農作物被害が続いております。被害への適切な個体管理に向けてどのような取組が必要だと思われるか考えをお聞かせください。お願いします。
(大臣)餌がないからいろいろと出てくるのですよね。餌がないというのは、例えば山もだいぶ荒れたりした中で農家の方もいろいろと苦慮されていることだと思うんです。 「30 by 30」ということで30年の間に陸・海でそれぞれ3割、どういうふうに保護していくか、地域を決めていくかということだと思うんですけれども、それぞれ農家の方の思いと、それから、日本流の保護の仕方。例えば里山というのは、欧米の人からいったら、少し、理解を我々が求めていかなきゃいけない、こんなやり方もあるんですよと。もう全く人間が手つかずの自然の在り方もあるし、里山のようなところで生き物を保護するやり方もあるし。里山というのは、大分人間の手が入っているんだと思うんですよね。だから、そういうような考え方でどういうふうに守っていけるのか、その辺考えていきたいと思うんですけどね。

(記者)環境新聞の小峰です。今日は初会見なので、まず、山口壯さん、あなたにですね、政治家として、日本国の国土を守る気概があるのかどうかをお尋ねします。元外務官僚で、駐米国、駐中国、駐英国の経験がある山口さんなら、先刻御承知のとおり、COP15のPart1ハイレベル会合が、10月、来週、オンラインと対面を併用して、南シナ海・東シナ海の、覇権主義丸出しの、中国は雲南省昆明で開催されます。先ほど冒頭山口大臣がおっしゃったように、G7サミットでもですね、G7国は「30 by 30」を愛知目標の次の世界目標の決定に先駆けて進めることで合意しています。日本国の現状は、今年8月末現在、陸域で20.5%、海域では僅か13.3%です。そして、昨年12月にやっと、5~6年前に中国の漁船群が大挙襲来して、海底のアカサンゴを根こそぎ乱獲していった小笠原諸島沖合海域を、やっと自然環境保全地域に設定して、13.3%です。中国共産党政権は狙っています。日本最東端の南鳥島周辺海域、日本最南端の沖ノ鳥島周辺海域の海底侵略です。さらに、今、日本も、新型コロナウイルス以上の国難である尖閣諸島の強奪に直面しています。今や、国土防衛と環境の保全が一体的な議論になっています。そこで、日本国の政治家として、また日本国の環境大臣として、山口壯さんにお尋ねします。希少生物が豊富な尖閣諸島の陸域及び尖閣諸島周辺海域を自然環境保全区域に指定する考えはありますか。日本が尖閣諸島と周辺海域を指定しておかないと、あの中国共産党政権が先んじて同諸島で周辺海域を指定しかねません。来年初めの北京冬季オリンピックの前に、日本国は指定すべきだと、本紙環境新聞は、あなた、山口壯さんに提唱します。あなたの政治家としての国土を守る気概をお聞かせください。以上です。
(大臣)ありがとうございます。小峰さんのおっしゃった、この尖閣については、いろいろとこの「30 by 30」の中でどこを3割、陸・海という話だと思います。ですから、科学的知見に基づいて、日本の守るべき自然がしっかり守られるような、そういう仕組みと環境を整えることが重要だと、そういうことだと思います。あと、中国との向き合い方については、ここは相当きっちりやらなきゃいかんですね。やっぱり日本がどういうふうに過去やってきたかという。過去というのは、アメリカと日本が何で戦争したかというようなことも含めて、いろいろ、相当考えないと、難しいところに来ていますよね。「米中覇権戦争」なんていう言い方をされていますけどね。その中で、我々の政治家の役目というのは、私は外交官だったわけですけど、外交官と政治家というのは似ているところがあります。外交官で処理できなけりゃ、軍人の仕事になってしまうんです。絶対に戦争をしない。それが、外交官、政治家の役割です。だから、戦争をしないという中で、この国土をどういうふうに守っていくかという話でしょ。そういう意味で、日本とアメリカが戦争した原因をいろんな形で突き詰めると、1つの見方はコミュニケーションギャップがあったということです。アメリカは日本に対して、1930年代の議会で、「日本には強く当たれば日本は引っ込む」と、こう言っていたんですよ。“if we stand firm”、確固とした立場を取れば、“Japan will back down”、引き下がるだろうと。だから、日本に対して石油を止め、あるいは日本の在米資産を凍結して、日本は引き下がったかというと、日本は真珠湾攻撃をしたんですよ。だから、アメリカは、それはえらい反省して、日本のことをもっとちゃんと理解しておかないと、ああいうことになってしまったと。だから、ルース・ベネディクトに『菊と刀』を書かせて、進駐軍の将校にはみんなそれを読ませて、「天皇陛下を特に大事にしろ」ということまで教えて、やっていったわけですよ。だから、中国と向き合うときに、どういうふうにこのコミュニケーションギャップをなくしていくか。そこは大事ですよね。だから、「尖閣は絶対守るぞ」と、そういうことをはっきり言わなきゃいけない。当たり前じゃない、そんなの。聞くまでもない。だから、そこを踏まえた上で、どういうふうに向こうとコミュニケーションギャップがないように対話をしていくか、これが政治家の仕事であり、まあ、もちろんそれを支える外交官の仕事でしょう。軍人の仕事には絶対にしないというところが最大のポイントですね。で、そこから行けば、今、小峰さんのおっしゃられたことは、私が申し上げたように、科学的知見に基づいて「30 by 30」をどういうふうにやっていくかというところを、環境省としてはこの仕組みを考えるという形で捉えさせていただいたほうがいいと思います。この、今の米中覇権戦争というのは、民主主義対全体主義みたいな文脈ですからね。だから、この、昔、冷戦と言われて、今は新冷戦という。まあ、私は新冷戦という呼び方はあまり適切じゃないと思いますけれども、昔は資本主義対共産主義でしょう。共産主義のほうが資本主義のほうを見て、あっちの生活のほうがみんな幸せそうだなということで、冷戦は資本主義が勝ったわけですね。ところが、今、いわゆる中国も赤い資本主義。資本主義になってしまっているから、こっちの市場資本主義と向こうの国家資本主義と、どっちが幸せかということで、こっちのほうが幸せだぞというふうに向こうに思わせることがこの冷戦の勝ち方ですよ。ということは、政治がしっかりしなきゃいけない。こっちの政治の在り方、それによる、みんな、人々が幸せそうに見えるか、向こうが。あるいは本当に幸せなのか。そのことがこの岸田内閣の掲げる新しい資本主義の在り方だろうし、そういう文脈の中で中国とどう向き合うかということだと思うんです。1つの戦争の防ぎ方は、つながりをつけるということですよ。日本とアメリカは76年前まで戦争したんですからね。原爆を2発まで落とされている。だけど、なぜ、今、日本とアメリカは戦争をしないか。それは、経済でつながり、社会でつながり、文化でつながり、だから、今、日本の中で、アメリカと戦争するなんてと思う人、1人もいないでしょ。アメリカの中にも日本と戦争すると思う人は1人もいないわけですよ。だから、そういうつながりをどういうふうに、このアジア太平洋、あるいはインド太平洋で作っていくかということが、政治家の大きな使命の1つですよ。だから、そんな中で、日本がどういうふうに役割を果たせるのか。つながるという中では、環境というものも大きなつながりの在り方なんです。それは、中国ともロシアとも、いろんなところとつながる中で、この生物多様性の話が中国であるんであれば、そこはつながるという1つの在り方でしょう。どういうふうにコミュニケーションギャップをなくして、戦争をなくしていくか。そのことが政治家の大きな役割の1つであるとすれば、この生物多様性の話でCOP15があるんであれば、よくお互い心合わせをして、人類のためにという部分を強調できるように、仕事をさせていただければと思います。

(記者)日刊工業新聞の松木です。先ほど大臣の発言の中で、「産業界の声を聞いていく」という発言があったかと思います。先日、自動車工業会の豊田章男会長が、「脱炭素への移行によって550万人の大半の雇用が失われる」と発言し、政府の温暖化対策を批判していました。そういった脱炭素への移行によって痛みを伴う業界とどのように向き合っていかれるのか、心合わせしていくのか、お聞かせください。
(大臣)2035年までに、カリフォルニアもそうだろうし、ほかのところでもガソリン車はもう売れないというようなことがあると思うんですよね。今、トヨタの名前が出てきましたけども、やっぱりトヨタも今のままでは、おっしゃるように550万人の人が、仕事がどうなるかという話がありますよね。で、かといって、豊田章男さんも、そういう新しい流れに乗り遅れないように、新しい、いろんな試みを始められたんだと思います。自動車の在り方というのが、今までのガソリンを吹かして進むやり方から、やっぱり電力、電気でもって進むやり方に変わりつつあるんですし、どっちかというと、もうコンピューターが走っているような車に、これからなっていくんでしょう。そういうイノベーションに乗り遅れないようにするというのが550万人の人の仕事を守るということにつながると思うんです。ですから、今のまま、550万人の人の仕事というのは、これは乗り遅れないようにしないと、その550万人の人の仕事が危ういというのは、そのとおりだと思います。だから、どういうふうに国が、そこの環境を守るような、自動車の在り方について後押しできるのか、あるいはサポートできるのか、そういうことが産業界の声をよく聞いてということにつながるんだと思います。

(記者)化学工業日報の濱田です。元外交官としての意見を聞きたいんですけれども、中国は、環境問題、気象問題に関して、どういう見解を持っていると大臣はお考えなんでしょうか。つまり、中国にしてみると、日本も欧州も米国もさんざっぱら化石燃料を使ってきて、今さら脱炭素をというのは、おこがましいと、片腹痛いというふうに笑っているんじゃないかという気がするんですが、どうでしょうか。
(大臣)それは逆でしょう。中国も自分の限界が環境にあるということを相当認識していると思いますよ。だから、中国は、赤い資本主義ということを私は言いましたけれども、それは、1つは労働人口の減少。一人っ子政策をやってきた、ある意味で結果ですよね。いろんな限界を感じているんですね。そのうちの1つが環境ですよ。じゃあ、何で多くの中国の人が日本に来て、水を買い求めるんですか。それは、中国の水質について、もうちょっとよく変わってほしいと思うからでしょ。だから、そういう意味で、中国も環境に対して認識はかなりあると。それが自分の成長の限界になっていると、あるいはなりかかっているという認識はあると思うんです。そこでの共通点の見つけ方というのはあると思いますから、私は別に、中国が、今、環境に対して後ろ向きかどうかというのは、必ずしもそうとは限らないんじゃないかというふうに思います。

(記者)テレビ朝日の川﨑です。レジ袋の件とかですね、プラスチック削減であったり、あるいは住宅での太陽光発電とかマイボトルとか、いろんな、個人で取り組む環境対策というのが随分増えてきていると思うんですけれども、大臣自らが環境のために何か自分で取り組んでいらっしゃることはありますでしょうか。
(大臣)レジ袋とか、いろんな新しい試み、小泉さんの時代にされたと思うし、それは、私、いろんな声が今届いていますよ、いろんな意見がね。だけども、私自身も、別にレジ袋なしで外に出ることがありますよね。ただ、いろんな意見の中にはね、何かそうやって持っていっていたら、店の人に追いかけられて、すみませんとか言われたこともあるとか、まあ、それはいろいろあるんでしょう。それはやっぱり世の中が変わるときには、いろんな意味でひずみが出てくるからね。だから、どういうふうにするかというのは、これからまた続けていくということも含めて、またいろんな議論をしなきゃいかんのかもしれませんけどね。それから、マイボトルの話。私もできるだけ似たようなことはやっていますけれども、小さいところから始めて大きい結果につなげるんだろうなという趣旨で、いろいろと協力していっているつもりです。

(記者)毎日新聞の信田と申します。COP26に関連して石炭のことで伺いたいんですけれども、イギリス政府は石炭を廃止する、特に先進国は30年までに廃止するということで、今回、COPで訴えていきたいということを言っていて、昨日イギリス大使館がメディアブリーフをやったんですけれども、その中で日本はいつまでに廃止をするのかということも示していないという話がありまして、そこについてどんなお考えなのかをお聞かせいただけますでしょうか。
(大臣)あ、ごめんなさい。その石炭火力発電をどういうふうに低くするかという話を今おっしゃられているんですか。
(記者)そうですね。いつまでに廃止するか、あるいは将来的にずっと続けていくのかとか、どうお考えなのかをお聞かせいただけますでしょうか。
(大臣)今おっしゃられているのは、多分2050年のカーボンニュートラルということを実現するためにそういう石炭火力の話とかが邪魔になるんじゃないかということだと思うんです。で、それは電力の脱炭素化ということをおっしゃられているんだと思うんですけれども、そこは再エネの主力電源化というものをできるだけ進めていくということでしょう。再エネ最優先という中で最大限の導入を促して、その結果として、石炭火力を含む依存度をできるだけ引き下げていくと、そんなふうに捉えています。だから、再エネ最優先、最大限導入の、ここを一生懸命やれば、そういう話になっていくんじゃないですか。
(記者)例えばアメリカでしたら、シェール革命が起きて、石炭から天然ガスに移行したことでトランプ政権下でも下がっていたとか、そういう、石炭と天然ガスでも全然違うと、二酸化炭素の排出量も違うと思うんですけれども、再エネを拡大していく中でもその石炭の扱い、天然ガスとかよりももっと早く低減していくべきなのかとか、その辺りはどうお考えでしょうか。
(大臣)結局再エネ最優先、最大限導入、ここを徹底的にやるということに尽きるんだと思います。
(記者)その中でも、石炭、例えば移行期において、再エネを増やしていく移行期において天然ガスを使うのではなく、石炭を維持したままなのか石炭をもっと早く減らしていくべきなのかとかいうような。
(大臣)やっぱり同じ答えになってしまう。
(記者)同じでしょうか。
(大臣)再エネ最優先、主力電源化で、それで最大限導入していく。その結果として、今おっしゃられていることが実現できるんだと思っています。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/QvCtuXtoDTM

(以上)