大臣談話・大臣記者会見要旨

小泉大臣記者会見録(令和3年9月28日(火)11:01~11:28於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

今日冒頭、私から3点あります。1点目が食ロス、そして2つ目が万博、そして3つ目が脱炭素の関係であります。まず1点目の食品ロスの関係ですが、今日の閣議の後に食品ロス削減推進会議がありまして、そちらに出席をしてきました。食品ロス削減推進法の施行から間もなく2年を迎える中、これまでの関係省庁の取組について進捗報告がありました。今日の推進会議でも申し上げましたが、食品ロスの削減というのは、脱炭素へもつながります。直近の2018年度の日本の食品ロス量は600万トンとなっていて、2030年度までの半減目標である489万トンには、このままでは到達できません。更なる食品ロスの削減の取組が必要であります。国連世界食糧計画、WFPによる食糧支援量、世界に対する食糧支援量が約400万トンでありますから、日本の半減目標の489万トンというのは、それを達成したとしてもWFPの食糧支援量をまだ上回っているという、そういう現状を考えたら、私は目標を引き上げるべきだということで食ロス推進会議でも申し上げてきました。先日の井上大臣とともに出席をした関係省庁連絡会議で、489万トンではなくて400万トンを目指すべきだという発言をして、その検討の指示をしました。そして、今日の会議でも同じような発言をさせていただきましたので、今後、カーボンニュートラルの新たな目標を鑑みて、食ロスの目標も400万トンに引き上げていただきたいと考えています。また、来月10月は食品ロス削減月間です。お手元の配布資料にあるとおり、関係省庁と連携して取組を推進します。今年は、環境大臣表彰も新設をしました。mottECO(もってこ)やフードドライブなど、食品ロスの削減に係る様々な取組の応募をいただいていますので、来月10月中には受賞者の発表を予定しています。帝国ホテルでは、バイキングをやめてオーダー方式に変更するなど、食品ロスの削減に向けて世の中は様々な動きが出てきました。来年度概算要求に盛り込んだ環境省のグリーンライフ・ポイントなども活用しながら、更なる推進に取り組んでいきたいと思います。1点目は以上です。2点目は万博です。環境省では、2025年大阪・関西万博の開催に向けて、環境省内プロジェクトチームを10月1日付けで立ち上げることにいたしました。万博テーマの「いのち輝く未来社会のデザイン」は、環境省のミッションそのものであります。環境省も積極的に貢献してまいります。このプロジェクトチームの目的は、大きく3点です。1点目は、環境省としてカーボンネガティブ万博を追求し、貢献をしていくということ。例えば再生可能エネルギーの活用、移動手段のゼロエミッション化などを提案、実施することにより、万博開催に伴う温室効果ガスを徹底的に削減をしていきたいと考えています。2点目は、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」のための行動変容を環境省から提案、実施することです。ごみゼロ、食品ロスゼロ、ファッションロスゼロなどの具体的な取組を万博で実施することによって、万博開催に伴う環境負荷の最小化を徹底するとともに、2,800万人と想定される来場者、さらに世界の行動変容につなげていければと考えています。3点目は、我が国の先進的な取組の世界への発信であります。地域の脱炭素化のトップランナーや次世代半導体、次世代太陽電池、ネガティブエミッション技術、これらを支えるデジタル技術といった独創的な次世代技術など、我が国の先進的な取組を関係府省、自治体、産業界と連携しながら世界に発信すべく、環境省としても汗をかいていきたいと思います。現在起きている社会変革、デジタル技術の実装やグリーン社会に向けた機運の高まりは、この数年でも予想がつかなかった勢いで進んでいます。2025年、4年後に向けては、今の私たちが想像すらつかないようなことも生まれているはずですので、今後、このプロジェクトチームには、若手にも積極的に加わっていただいて、柔軟な発想で取り組んでもらうことを期待をしています。2点目は以上です。最後に3点目になりますが、前回もお伝えをしましたが、脱炭素先行地域の説明会を環境省が開催をして、合計約600自治体、約1,000人が参加をしてくれました。非常に反響が大きかったです。そして自工会の豊田会長も、自動車のみならず、社会全体の脱炭素化を進めるべきとの指摘を再三されておりました。そして、よくエネルギージャーナルの清水さんからも、交付金の話で、予算の額についても再三御質問をいただいている中、改めて私からも一言、こういった規模感についてもお話をしておいた方がいいかなと思って、最後に一言申し上げたいと思います。まず、脱炭素に向けては、2030年までの10年間を集中期間とした大規模先行投資が必要です。まず2050年カーボンニュートラルに向けて、巨額のR&D投資の加速化が必須で、その規模はこれまでにないものだと思います。加えて、2030年削減目標、地域脱炭素ロードマップの実現に向けて、交付金などで既存技術を確実に社会実装しなければなりません。他方、国土強靱化、これは数年間の計画で予算を使うという話がありますが、この国土強靭化と異なるのは、民間の役割の大きさであります。国の覚悟を示すことによって、国内外の環境ビジネス投資を最大限呼び込むと。今日資料にお配りをしたとおり、国際機関による様々な試算を見ると、2030年までに官民合わせて100兆円規模の投資が必要と考えられます。脱炭素化の大競争時代に勝ち抜いて、雇用と成長を守るためには、次期政権に望むのは、2030年までの先行集中投資に関する計画を策定することだと思います。今まで、かなり様々な政策の強度を上げてきましたが、これからさらに一歩必要になるのは、やはり国が覚悟を示すような投資に対する決意、それをしっかりとした計画で位置付けることだと思いますので、今後、新政権にはそういった計画の策定も期待をしたいところであります。私からは以上です。

2.質疑応答

(記者)幹事社の読売の山下です。幹事社の読売新聞から質問させていただきます。COP26に先立ちまして、近くプレCOPがイタリアで開催される予定です。こうしたプレCOPの重要性、また、小泉大臣の出欠を含めですね、政務が出席しないことは影響するのでしょうか。
(大臣)私含めて、政務が今回は出席がかないませんので、今日事務方が出張に、日本を離れます。そして、これは政務が出ないことで影響がないように、昨日、私とイギリスのCOP26の議長のシャーマ議長と、オンラインでバイ会談を行いました。そして、やはり先方としても今の日本の状況、そこは関心を持たれているので、私からも今の政治状況を含めて少し説明をさせていただいて、そして、前回シャーマ議長とイギリスでお会いをしています。7月ですね。そのイギリスでお会いして以降積み重ねてきた日本の中での進捗や、また、私が外国とバイ会談を行っている中での様々な感触も含めて共有させていただいて、ともにCOP26の成功に向けて連携を深めていこうということを確認できましたので、このプレCOPで私が、政務が出られないということが影響ないように、しっかりとした準備は進めています。

(記者)NHKの岡本です。少し話変わるんですけれども、先週からですね、水俣病を世界に伝えた写真家、ユージン・スミスを主人公にした映画が公開されています。再び水俣に注目が集まっていますけれども、常々大臣は「水俣病は環境省の原点だ」と言ってきたわけですけれども、大臣の、今回、映画に注目が集まっていることに対する所感と、今後御覧になる予定があるかどうかを含めてお聞かせください。また、併せてですね、水俣病は公式確認から65年たっても、いまだ解決にはほど遠い状況で、被害の全貌も明らかになっていません。そうした中で、特措法で国が行うように定められている健康調査を今後どのような方針で行っていくのか、改めてお聞かせください。
(大臣)ジョニー・デップさんが主演を務めているということもあって、今までにない関心をこの水俣のことについても持たれるきっかけになるのではないかと思っています。私も映画は見ました。そういった中で、その感想は様々あると思いますが、私も環境大臣になって、この「環境省の原点は水俣にある」と。その意味と、そして実際に私は水俣に行っていますので、そこで語り部の皆さん、そして団体の皆さん、行政関係者、そして水俣の新たな地域作りや、水俣病によって地域の中で生まれてしまった分断などを、何とか解きほぐそうと、「もやい直し」という言葉を使っていますが、こういったことに腐心をしている方々、そういった方々とお話をする中で、この映画を見てくださった方々には、この映画をきっかけとして、様々な水俣の今までの歴史や経緯、そしてまた今の水俣の現状を、より理解をしていただけるようなきっかけになればなと思っています。特に私は、非常に感銘を受けたのは、熊本県内の小学校5年生全員が、毎年必ずこの語り部さんから話を聞いて、水俣病について決して世代を超えて継承が断絶をしないような学校教育の取組など、たゆまず努力をされている、こんなことも是非御理解いただければなと思いますね。環境省としても、今進めている1つ1つの取組を着実に前に進めていきたいと考えています。
(記者)健康調査については如何でしょうか。
(大臣)今まで言ってきたとおり、「まずこの1~2年でめどをつける」というふうに我々は言っていますから、それをしっかりと進めていきますし、前回、私がお話を聞いた専門家の方、その方のお話も大変分かりやすかったので、これは日程調整中ですが、その専門家の方のお話を現地の皆さんにも聞いていただけるような場も設定をする予定でいますので、そういった1つ1つの取組を積み重ねていきたいと思っています。

(記者)毎日新聞の信田です。今、パブコメでエネ基だとか温対計画を募集していると思うんですけれども、WWFジャパンも出されていて、原発や石炭を使わなくても、天然ガスを稼働していないところを稼働させたら、今のままでエネルギーは十分賄える、というような研究結果を用いられていて、それは自然エネルギー財団も同じような研究をしていると思うんですけれども、今、エネルギーが総裁選でも焦点になっていて、どうやって安定供給するかという話が出ている中で、その研究について政府はどう見ているのか、ということをお聞かせください。
(大臣)まずパブコメは、多くの皆さんの意見を伺う機会ですから、今のような御意見も含めて、様々声を受けていく。その上で、パブコメの後に最終的に決定をしていくということですので、幅広い意見にしっかりと耳を傾けたいと思いますね。ただ、このパブコメの前に、エネルギー基本計画の案として、政府のプロセスを経て、そしてまた、与党のプロセスも経て、パブコメにかけているわけです。そういった中でも様々な声がありました。特に一番重要なのは、やはり今までだったら多くの方が予想もしなかった「再エネ最優先の原則」というものをしっかりと打ち立てることができた。これが、与党プロセスも、政府のプロセスも通ったわけですね。この意義というのは、私は今の御意見にあったような方々とも方向性として同じ方向を向いていると思います。あとは大事なのは、いかに再生可能エネルギーの導入を着実に進めていけるか。この実行が極めて大事ですし、再エネ最優先の原則とは相いれない様々な規制やルールを、徹底的に見直しを進めていくこと、そのことによって、思った以上に再エネが入るという現実を見せていかなければいけないと思います。そして今でも総裁選の中では、エネルギーの議論のときに、再生可能エネルギーに対するネガティブキャンペーンとも言ってもいいような、そういった言質が散見される中で、そういうことではないということをしっかりと意見を言っていかなければいけないんじゃないかなと思いますね。
(記者)天然ガスで賄えるから原発や石炭は必要ないのではないかという意見については、どういうふうにお考えでしょうか。
(大臣)将来的な方向を言えば、天然ガスはあくまでも移行期間の中での必要な電源構成の中の1つだと思います。やはり世界全体、どこを見ているかといえば、脱化石燃料なわけですから、この化石燃料からいかに再生可能エネルギーの方向に持っていけるか。それは移行期間としてだったら分かります。しかし、そこは目的地ではありません。
(記者)移行期間で石炭を使うのか、それとも天然ガスを使うのか、原発を使うのか、その辺りはどうでしょうか。
(大臣)2050年カーボンニュートラルの移行期間の中で、まずは再エネがどれぐらい入るかでしょう。入らない部分を他の何で埋めていくか。できる限り、国際的にはもう、先進国は特に早く石炭からの脱却というものを求められている中で、日本は2030年までに非効率なものをやめていく。これが実際にできるかどうかは、再エネがどこまで入るかですから、そこの部分にまずは注力すること、それが「再エネ最優先の原則」の一番大事なところだと思うので。ぜひ、毎日新聞さんは以前、「太陽光は公害だ」というふうに書いていましたけど、私は全くそういうことはないと思いますから、そういうことをしっかりと、そんなことはないと。毎日新聞さんは原発についても慎重な立場だと思いますけど、再エネについても随分、最近慎重な形ですけど、再エネをしっかり、一律に公害だと見られることがないように、ちゃんと反論すべきは反論しなきゃいけないなと思っています。
(記者)再エネについて慎重というよりは、今後進めていく中で、そういう課題もあるから気を付けて進めていかなきゃいけないということで書いています。
(大臣)是非、今度は見出しを。「公害」という見出しは私は賛成しかねますね。
(記者)公害にならないように進めていくということで。
(大臣)はい、お願いします。

(記者)エネルギージャーナルの清水です。今日のペーパーにある脱炭素に必要な投資額ということで、関連して伺います。これはワールドスケールの言わば投資額のようですけれども、日本の2050年カーボンニュートラル、2030年中間目標に向けて、どのぐらいの投資、あるいは公共部門の必要経費といいますか、幾ら必要なのかというのは早く明らかにすべきだと思うんですけれども、この中には、日本のというのは、まだ精査されていないということでしょうか。それが1つ。それからもう1つは、菅首相も言っておられたカーボンニュートラル、炭素税排出量取引の税制改革をどうするかという部分、これはやっぱり、菅政権にとってはこれは大きな宿題だったろうと思うんですよね。税制改正要望もされているということからいくと、政権が代わったからといって、これを一からまた始めるというのはおかしな話だと思うんで、小泉大臣もかねがねその必要性については言っておられたので、この投資額、必要経費との関係からいって、どういう具合にカーボンプライシングの話を成就させようとなさるか、その辺をお伺いしたい。
(大臣)そのお答えは1点目の清水さんの質問の答えにも重なるんですけど、やはり日本は今後2030年までに、国がまずは大規模な先行投資の計画を作ることによって、揺るぎない意思を見せていくことが不可欠だと思います。その額が幾らかということは、まさに今後、政府全体としてどれぐらいの規模で、これはさっき国土強靱化とちょっと違うと言ったのは、国土強靭化って防災がメインですから、これは公共投資の部分がかなり強いんですね。ただ、脱炭素に関する投資というのは民間の役割が非常に大きいので、この官民挙げてどのような規模になるか、そういったところで非常に規模感というのも、民間投資が誘発されるような規模感が不可欠だと思います。最近、トヨタの会長の発言の中でも、ガソリン車から電動車へという切り替えの中でも、確か25兆円とか豊田会長は言っておられたんじゃないですかね。そういうことも含めて、どれぐらいの覚悟を持って政府がやるかということの計画作りが不可欠だというのが私の思いです。今後、先行地域も、先日お話ししたように、かなり反響が大きいので、もう既に多くの自治体から反響がありますから、そういった数にもまた影響してくることではないかなと。ただ、後段の御質問にあったカーボンプライシングと集中的な先行投資の計画、これは両方とも46%削減やカーボンニュートラルにとって不可欠なことですので、今見ていますと、次の政権がどなたになってもカーボンニュートラルの方向性を否定する方はいません。でしたら、こういった先行投資の計画やカーボンプライシングについても、そんなに考え方が違うわけではないというふうに私は思いますね。

(記者)読売新聞の山下です。明日ですね、自民党の総裁選が行われると思うんですけれども、小泉大臣はかねてから河野大臣を支持されていますが、これまでの受け止めと手応えについて教えてください。
(大臣)全力で戦われていると思います。そういった中で、明日、党員の皆さんの審判と、そして議員の皆さんの審判を受ける。その結果をしっかりと受け止めたいと思います。

(記者)電気新聞の匂坂です。冒頭のCOP26に戻って恐縮なんですけれども、シャーマさんとCOP26の成功に向けて連携を確認しているとおっしゃいましたけれども、改めて今回のCOP26の成功というものをどのようにお考えなのかお聞かせいただけないでしょうか。
(大臣)まずは、1.5度目標という、この目標について、引き続き、世界全体として、「1.5度は死んでいない」、そういうメッセージが共有できるかどうか、そこが大事だと思います。そのために不可欠なのが、各国の野心を引き上げていくこと、その取組が不可欠です。さらには、ずっと日本が必要性を訴えている今後の排出の取引ですよね。市場メカニズムとも言いますけど、パリ協定第6条、この交渉を妥結をさせること。そのことでルールブックは完成しますので、ルールブックの交渉を終わらせて、排出削減の実施へとステージを動かしていくCOP26になると。これがやはり成功に必要な要素の大きな部分ではないかなと、そういった認識は一致していると思います。

(記者)エネルギージャーナルの清水です。先ほどのお答えでもう少し伺いたいんですが、環境省はカーボンプライシングについて中間報告をまとめてきたんですが、環境省として排出量取引なのか炭素税なのか、いわば国民にとってこれがベストだというものをそろそろ示す必要があるのではないかと思うんですが、その辺の考え方はまだ整理されていないんでしょうか。
(大臣)これは、どれか1つのカーボンプライシングの手法だけで完結する話ではないと思っています。私が石石税の話を何度もするのは、カーボンプライシングというものの全体像を見たときに、税の部分と、取引の部分と、そして民間の業界の自発的なクレジットの市場とか、様々な見方としてカーボンプライシングというのはあるだろうと。ただ、どれか1つだけでできるとは思わないので、まず先行的に何かと言えば、私は最も代表的な1つは石石税を早く見直しをしていって、石炭が一番負担が低い、そういった状況は明らかに脱炭素と逆行する税制になっていますから、こういったところは正されるべきではないかと。ただ、全体のカーボンプライシングの今後の本格的な導入に向けては、経産省の考え方、環境省の考え方、全体としてよくコミュニケーションをとった上でやらなければ、大きな話ですので、なかなかうまくいかないだろうなと。ただ、環境省としてはもう不退転の決意で、カーボンプライシング抜きに2030年目標の達成もないし、カーボンニュートラルの実現もない。この決意を固めていますから、今私が言ったような、まずできることというところの風穴をしっかり開けていくことが大事じゃないでしょうか。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/UkqsUTSOZsw

(以上)