大臣談話・大臣記者会見要旨

小泉大臣記者会見録(令和3年7月30日(金)10:50~11:20 於:オンライン)

1.発言要旨

今日、こうやって、まだ帰国後の隔離期間中ということなので、このようにオンラインの記者会見で対応いただいて、記者の皆さんにもありがとうございます。今回、G20でイタリア・ナポリで開催された環境大臣会合、そして気候・エネルギー大臣会合に出席をしましたが、私も報道のほうは確認をしています。一部書き方、また報じられ方というのが、G20はなかなか、石炭などについても「先進国と途上国の間に溝が」という報道もありましたが、出席をしていた私からすると、むしろ捉え方は逆で、もともとG20はG7とは全く違うので、まとまる形も今回のようなものは想定していなくて、今回のことほど中身が取れないんではないかなというふうに思っていました。それが、実際は想定以上の中身の共同声明をまとめることができて、さらに今後のCOP26に向けても非常につながる前向きな中身で、そして無理に今回折り合う形で、より弱まってしまうような中身で気候変動の部分などもまとまることではなくて、G20の首脳会合に対して、最後は議論をしてもらうという形で残した判断も私はすごくよかったと思っています。今回、特に初めてG20では「気候」という名前を冠する大臣会合がありましたが、議長国を私としても支えながら最後、議長からも日本に対する謝意が示されたとおり、この気候変動分野を、日本の今までは防御、守らなければいけない、しのぐというところを、むしろ日本の強みを発揮できるような分野にできているというふうに思います。そして改めて今回の議論を通して、私が大臣に就任した直後は、まだ「石炭=日本」というイメージがありましたが、そういった「石炭=日本」というイメージは完全に払拭されている、そういうふうに感じています。今回は一部の途上国の反対で、石炭の扱いについては合意をできない形になりましたが、それでも全体として見た場合は非常に前向きな共同声明にまとまったと思っています。また海外では、イギリスで50カ国以上が参加をする形でCOP26に向けた閣僚会合が開催されました。その場でも各国とCOP26で正式にパリ協定のルールを最終的に固めて、ルールブックを完成をさせて実際の排出削減につながっていく形を何とか作っていこうという前向きな機運を各国と共有できたことは、対面の会議の意義というものも改めて痛感をしました。そして、この機会にイギリスのシャルマCOP26の議長、そしてアメリカのジョン・ケリー気候変動特使、そしてリーガン米環境保護庁の長官など、各国のカウンターパートとも密なコミュニケーションを取ることができました。今後、生物多様性のCOP、そして気候変動COP、こういった重要な会議に向けて間違いなく前向きな、非常に充実感のある今回の閣僚会合であったなと思っています。冒頭、まず私からは以上ですので、皆さんから御質問あればお願いします。

2.質疑応答

(記者)日経新聞の岩井です。G20気候・エネルギー大臣会合について質問させていただきます。冒頭の発言でもありましたように、非常に前向きな形でまとまったということがございましたが、実際にその、出国前に御説明されていたように、世界の排出の8割をG20が占めているところで、実際に排出削減をいかに進めていくのか、その方向でどう対策を強化してもらうのかというところは、大臣どのようにお考えでしょうか。
(大臣)まず今回、パリ協定の中で「1.5度目標」という言葉がよくありますけど、この1.5度目標はG20でも入ったんですね。これは、さっき私が「当初思い描いていた以上の中身になった」という意味の1つなんですけど、行く前は、もしかしたらこの1.5度目標ですら合意できないかもしれない、この「1.5度目標」という表現すらコミュニケ、この共同声明の中には入らないかもしれないという見立てもあったんです。そして、さらに2つ目がですね、長期戦略ですね、「長期戦略をCOP26までに全てのメンバーに策定を求める」、これも記述が明確に共同声明に入りました。これも、もしかしたら入らないかもしれないと思っていました。さらにですね、「2030年までの10年間が決定的な10年なんだ」というのを、私もよく国会でも記者会見でも言っていますが、この認識が入りました。この10年がクリティカルだと。そして、野心的なNDC、「野心的なNDCをCOP26までに更新又は通報を目指す」というのも入りました。ですので、「COP26で野心的かつバランスの取れた合意を得るために、G20で協調しよう」ということも入っていますから、そういった意味からすると、もちろん最後、各国が具体的にどのような対策を進めていくか、特に途上国、そこの部分というのはありますが、例えば印象的だったのはインドネシアなんかも石炭を今後やめていくメッセージなんかも出していましたし、間違いなく時代は変わっているなと。そして、よく「先進国対途上国」という1対1の構図で語られますけど、そういったことはなくて、むしろ途上国の中でも立場が随分、分かれてきたなというふうに感じています。そういった中で日本が調整役、間を取り持つ、若しくは全体の構図の中で交渉をリードしていく、そういった役割を果たすことが十分可能だと。日本の貢献の大きさというものも私自身も感じているので、非常にやりがいのある、充実感のあるものでしたね。しっかり、この共同声明の中に入ったものに基づいて、途上国なども対策を強化をしていく、そういったことになると思います。
(記者)少し追加よろしいでしょうか。1.5度目標というのは2050年カーボンニュートラルとほぼ同義かなと理解しているんですけれども、実際、2050年ではなく2060年にカーボンニュートラルと言っている国があったり、いつニュートラルにすると宣言していない国もあるかと思うんですが、これは各国が対策を今後、どんどん強化していくという見立てなんでしょうか。また、その方向に持っていくために日本はどういう貢献を発揮していかれるのでしょうか。
(大臣)そうですね、例えば、中国は2060年までのカーボンニュートラルということを言っていますが、今回改めて、全ての国の野心の強化が必要だということの思いの共有は、これはイタリアだけではなくてイギリスでも、閣僚間でもやったところもであります。ですので、そこについて、これからどうやって強化を求めていくかという中の日本の取組としては、途上国に対して、これからJCMも通じた支援もやっていきますし、そして中国だけに限らず、他の途上国の中でのかなり排出の多い、そして影響力を交渉の中でも持っている国との連携、今回特にブラジルが大臣が代わりましたので、新しい大臣と相当密にコミュニケーションもしました。こういった交渉の中で、声の大きい、そういった国との信頼関係を持てる、欧米だけではなかなか話ができない、そういったところで日本が入っていく、そして両者をつないでいくという役割は、今回も十分に発揮できているところもありますから、日本の、この、間を取り持っていく、欧米と途上国の間でしっかりと信頼関係に基づいて両者をつないでいくという役割、これは十分に日本は果たせるところが大きいなと。その力が強くなったのは、やっぱり日本自身が政策の強化をしてきたというところが非常に大きいと思います。もう日本の野心の低さ、取組の不十分さを指摘する声はゼロです。

(記者)神奈川新聞の石川です。話題変わって恐縮なんですけれども、26日にですね、菅首相が「黒い雨」訴訟の上告断念を決断されました。この上告断念なんですけれども、2001年には小泉大臣のお父様の小泉純一郎首相が、ハンセン病訴訟の控訴断念もされている経緯も過去にありました。今回のこの菅首相の決断は重い決断だと思うんですけれども、それについて大臣はどのように受け止めていらっしゃるのか。もう一つ、政務の話で恐縮なんですけれども、昨日横浜市内に配布されているタウン誌で、横浜市長選についてですね、菅首相が小此木さんを支持するということを初めて公言されました。政務になると思いますけれども、小泉さんがですね、市長選について対応をどうされるのか、またその対応の理由についても教えてください。
(大臣)まず1点目の総理の判断に対しては、やはりこういうふうに総理しか決断できないこと、それを決断するのが菅総理という方だと思います。私は、総理のことを近くで今までも拝見をしていて、総理はよく説明が足りないとか、今もコロナの対応などで厳しい批判も浴びることもありますが、決断の方なんですよね。そういった決断が表れた、そういった今回はケースだと思います。多くの方に理解をいただけるような説明も併せて、しっかりとやらなければいけないので、私は一閣僚として、総理の決断というこの決断力と、そして国民の皆さんに伝わるような説明、こういったものを併せてお支えしていかなければいけないなと感じています。それと、2つ目の小此木前大臣の横浜市長選挙で菅総理が支持を表明ということでありますが、私は前々から周りにも言っていますが、もちろん小此木さんが勝たれること、そのために自分ができることは何でもやりたいというふうに思っています。ただ、こういう緊急事態の状況ですので、実際に移動の制約、そういったこともある中で、どのような形だったらお力になれるのか、そういったことを私としても、もしも小此木さんの方から何かあれば考えたいというふうに思います。カーボンニュートラルというのも、選挙の中にも入れていただいているようですし。あとは、小此木さんは硬派な方で、非常に、どちらかというとこわもてな方なので、私としては380万人ぐらい、多くの人口を抱える自治体の中で、横浜という中で、実は小此木さんの人柄、非常に温かく優しく、後輩の私みたいな若輩者を非常にいつも元気よく励ましてくれる、温かく優しい方なんだと、そういった人柄の部分も多くの方に知っていただけるように、私ができることは是非お力になりたいと、そういうふうに思っています。

(記者)電気新聞の匂坂です。私はカーボンプライシングについてお伺いしたいと思います。昨日の小委員会で、中間整理の案が委員長の一任となりましたけれども、改めて大臣からですね、今回の中間整理のポイントですとか、2年前の中間整理と違ってどこが前進したですとか、あと、年内に、「本年中に一定の取りまとめを行うことも視野に」と中間整理に盛り込まれましたけれども、どのような取りまとめを目指したいと思われているか、というところをお伺いできればと思います。
(大臣)まず、今回あくまでも中間整理ですので、今回のが結論ではないので、何か今回、また「結論先送り」というふうになっているのは、私はそれはおかしいなというふうに思っています。もともと、この中間整理は今回、結論を出すものではありません。ただ、そういった中で、やはり年内に一定の取りまとめを図るための調整を進める、これは明確ですから、年内にカーボンプライシングを前進をさせるために、小委員会は引き続き、委員の皆さんには引き続き御努力いただきたいと思っています。私としてはですね、この小委で進めるところに委ねるところと、併せてカーボンプライシングというのは相当、幅広い解釈ができますから、全体として今、小委で議論されているのは排出量取引と、それと炭素税、そしてクレジット、こういったものが主な論点になっていますけど、この炭素の排出を抑制をすることに対するインセンティブ、そして炭素の排出が多いところに対する負荷を掛ける、こういった全体の方向性をカーボンプライシングだとすれば、この小委以外に環境省が独自に様々なツールを活用してやれるような余地があることも今、追求をするように省内で指示を出してあります。そういったことも併せて、政府全体の動きを進めていくと同時に、政府全体の動きを待たずに環境省だけでもできることは追求をします。それはまた詳細固まったら、しっかりと発信しなければいけませんが、今そういった方向も考えながら、カーボンプライシングを前進をさせる。それを抜きに46%削減、絶対できませんから。そこの思いは全く変わっていません。
(記者)最後の方の、省内に指示したというのは、どういったことを指示されたのでしょうか。もう少し解説や説明や補足をいただけないでしょうか。
(大臣)結局、カーボンプライシングを実際に、例えば炭素税なり排出量取引なりクレジットなり、こういったことをやろうとしたら、環境省だけではなくて政府全体の理解、調整というものが不可欠ですよね。そういったことで、全体が動かないから、全く今年もカーボンプライシングを強化できないということにならないように、環境省だけでもカーボンプライシングの方向性の政策が強化できるようなツールを活用する。現時点ではちょっと回りくどい、何を意味しているんだろうかというふうに思われるかもしれませんが、匂坂さん、感じてもらえるでしょうか。
(記者)すみません、感じられず恐縮ですが、現時点では分かりました。
(大臣)環境省だけでもできる、環境省の制度、ツール、これを活用していくという方向性での検討を今しているということです、併せて。
(記者)それは新しいツールという意味ですか。今ある既存のツールを強化するということですか。
(大臣)そうですね。既存のツールも含めて、このカーボンプライシングの方向性で政策を考えなければいけない。この中には今、既存のものをどうやって、より強化をする形で活用できるかという論点と、そして今までのものをよりカーボンプライシングのような発想で、炭素の排出など、この多寡に対して負担の多寡が併せて来ると、こういった形の方向も含めてですね、政策の議論をやっています。

(記者)毎日新聞の鈴木です。私からまず1点目なんですけれども、今開催中の東京五輪のことなんですけれども、その中で、組織委が注文した弁当の大量廃棄というものが問題視されています。食ロスという観点で、大臣はどのように受け止めているでしょうか。
(大臣)率直に残念ですね。こういったことが起きてしまったということで。ぜひ組織委員会の方でも、まだ開催中ですし、今後パラリンピックもあるので、是非改善をしてもらいたいというふうに思います。もともと今回のオリンピックは、サステナビリティというものにものすごく配慮している、最も今までのオリンピックの中で排出の少ない、サステナビリティの観点でもトップクラスのオリンピックにするということがうたわれていたと思います。是非そういった面で、間違いなく表彰台も再生プラスチックで作っているとか、メダルを回収で作っているとか、そして例えば最近ですと段ボールベッドとかも、いろんな意味で話題になっていますけど、良い取組がいっぱいあるので。そしてカーボンニュートラルで、電力も再生可能エネルギーでやっていると。ただ、こういうケースで、良くないケースが取り沙汰されてしまうことは非常に残念なので、改善を早急に求めたいというふうに思います。ただ、一方で私は、今回のケースをむしろ次の前向きな政策の強化につなげていきたいという思いが、やはり食品ロスというものにこれだけ着目をされたという点は、国民の皆さんがものすごく思いを持っている証拠ですよね。食品ロスは、減らせばエネルギーロスが減りますから、結果、CO2も減る、プラス炭素も減る。そういう方向につながりますので、食品ロス、これは連絡会議で環境省もメンバーになっているので、私からはこの前、より対策の強化、そして目標の強化を求めましたが、環境省としても、この食ロス対策を気候変動対策というふうにつなげた形で強化をするために、今省内でも議論を進めています。
(記者)もう1点質問なんですけれども、先日あったG20環境大臣会合についてです。コミュニケの中で、海洋プラスチックごみの削減などを進めるために、国際条約などの制定に向けた議論を始めるというものも盛り込まれています。そもそもこの対策自体は日本が主導して始めたもので、大きな一歩になったのかなという受け止めなんですけれども、大臣としての受け止めをお聞かせください。
(大臣)そうですね。鈴木さんおっしゃったとおり、これは大きな一歩だと思います。特に日本にとっては、今までの姿勢を今回、新しい姿勢に変えたんですね。それは今まで世界の中で、例えば条約とか、新たな世界共通のルールになっていくところに対しては、その議論に対して中立的な立場を維持していて、自らルールメーキングしましょう、歓迎をするという立場ではありませんでした。それを今回、明確に、我々はスタンスを変えるという表明をして、むしろ今後、UNEAの場で議論をされて、この政府間の交渉の会合を、これが委員会みたいなものが立ち上がることを、我々としてはサポートすると。そして、ルールメーキングはしっかりやるべきだと思っているというメッセージを明確に発したので、これはすごく日本にとっても、明確なメッセージを海外に対しても発することができて、これはやっぱり、なぜその立場の変更が、日本が可能となったのかというと、今年のプラスチック新法を国会で制定をしたということが1つのポイントになっています。「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」という国際的な枠組みを主導した。さらに国内法を整備した。これは日本の強みにできると。世界のルールメーキングにも関与しなければいけないというものがあったので、今回すごく前向きな、良い結果になりましたね。来年の、また動きが、国際社会では予定をされていますので、今後、各国がどういうスタンスで出てくるか、そういったところもしっかりと捉えながら、積極的に議論に参画をしていければと思います。ルールメーキングに関与していきたいと思います。

(記者)朝日新聞の川田です。エネルギー基本計画の素案と、温対計画の案が出ましたけれども、これについての受け止め、評価などをお聞かせください。
(大臣)まず、エネルギー基本計画の素案に対する、私が最大のポイントだと思っているところは、やはり再生可能エネルギー最優先の原則、これが明確に位置付けられたということに加えまして、再生可能エネルギーが増えれば、他の電源は減ると、こういったことが明確に位置付けられている。そこが、今まで以上に踏み込んだ最大のポイントだと思っています。そして温対計画については、この温対計画で、やはり需要サイドの削減が非常に重要だというところが、今まで以上に明確に位置付けられているところじゃないでしょうか。日本の中だと、目標達成はエネルギーだけというふうに捉えられている形が、報道を見てもそういうふうなものが多いなと思うんですけど、実際はエネルギーを変えるだけではカーボンニュートラルや2030年目標は実現できず、ライフスタイルを変えていかなければ、行動変容が起きて需要サイドが変化しなければ、これは絶対に実現できません。そういった観点からすれば、今回の温対計画に、その需要サイドの排出削減が不可欠だというポイントが、より色濃く出たことというのはポイントではないかなと思います。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/2chS6JCenv0

(以上)