大臣談話・大臣記者会見要旨

小泉大臣記者会見録(令和3年5月28日(金) 12:32 ~ 12:58 環境省第1会議室)

1.発言要旨

 まず閣議案件は、環境省関連は今日はありません。冒頭、私から2点ございます。1点目が日EUグリーン・アライアンスについて。そして2点目が、今日夕方に岸防衛大臣と懇談を持ちますので、そのことについて少し触れたいと思います。まず、昨日開催された日EU首脳会談で、気候変動と環境に関する日本とEUの協力について定めた「日EUグリーン・アライアンス」を立ち上げることで合意をしました。この日本とEUのアライアンスの下では、7つの分野、エネルギー移行、自然環境保護、民間部門支援、研究開発、持続可能な金融、第三国協力、そして公平な気候変動対策といった幅広い分野で協力を行っていくということになりました。特に気候変動については、2050年までのカーボンニュートラル、そして2030年削減目標の達成に向けて再生可能エネルギー、蓄電池、水素などの脱炭素技術の開発に関する技術協力や、第三国における脱炭素移行の促進について協力をします。また、生物多様性について、COP15が今年行われますが、野心的なポスト2020枠組みの合意や、2030年までに陸域30%、そして、海域30%を保護する目標の達成に向けて協力をしてまいります。さらに、サーキュラーエコノミー、この循環経済の原則の策定、そして海洋プラスチックごみ対策の推進についても協力を行ってまいります。このように大変網羅的な協力、日EUのグリーン・アライアンスになりますが、EUとしては今後、他の国々とも「グリーン・アライアンス」を結んでいくことにしているということを聞いています。このEUが進めるグリーン・アライアンスの第1弾が日本と結ばれるということになったことは、非常に意義の深いものでもあると思います。今後、この枠組みの下で二つのCOPの成功、そして世界全体での環境対策をより進めていくことで国際社会でリードしていきたいと思います。次に2点目が岸大臣との懇談の件です。今日は特にポイントは3つあります。1つ目が災害廃棄物の撤去、2つ目が再生可能エネルギーの導入、3つ目が気候変動と安全保障の連携、この3点について特に議論をしたいと思っています。1点目は、これは昨年もお話をしましたが、もう出水期に入ってきて梅雨の季節、また今後、台風シーズンも来る中で、自衛隊と環境省の災害廃棄物などの連携、これを改めて確認をしたいと思っています。そして、2つ目の再生可能エネルギーの導入については、硫黄島や南鳥島での再エネ導入に関するこれまでの協力に感謝申し上げますし、また今後も継続、連携強化をしていきたいと。そして、3つ目の気候変動と安全保障については、先日4月23日に米国主催の気候サミットで岸大臣が「防衛省気候変動タスクフォース」を立ち上げると、それを表明しました。第1回の会合が5月14日に開催されたと聞いていますので、今日改めて、そのことについてもどういった議論があったのか、お話を聞いて、その上で環境省と防衛省によって今後どのように気候変動についても連携ができるかを探りたいというふうに思っています。今日は冒頭2点、私からは以上です。

2.質疑応答

(記者)幹事社共同通信の水内です。改正地球温暖化対策推進法が26日に成立しました。全会一致での可決で、衆院でもそうだったと思いますが、一方で再エネ拡大に向けては自治体が実際に促進区域を設けて、本当に新制度を活用していくのかどうかが鍵を握るんだと思います。そこに向けて、どのように活用を呼び掛けたり、後押ししたりしていくのかお考えをお聞かせください。
(大臣)今触れていただいたとおり、今回、温対法の改正法の成立の意義は、やはり総理のカーボンニュートラル宣言が法律になった、この法的根拠をもって今後の政策の継続性、これをしっかりと示すことができた。これは世界でも例外的な法律になっています、2050年という年限を区切るというのは。そしてもう1つ、今触れていただいたポイントが私はすごく日本の強みになると思っていて、それは全会一致だったということです。この日本の中で気候変動対策に与野党の対立がないということ。これはアメリカやヨーロッパと大きく違うところです。今後どのような形に政治情勢がなっても、カーボンニュートラル2050年までの目標に向けて与野党が全会一致で進めたということが大きな基盤になると思います。こういった形で成立ができたこと、環境省でこの法律の策定に当たった担当部局のみんなの努力、そしてこの審議の中で途中、私が一時、戦線離脱ということがあったにもかかわらず、代わりに支えていただいた笹川副大臣を始め政務の皆さんの支えと、そして国会の皆さんで御協力をいただいたことを改めて心から感謝申し上げたいと思います。再エネ促進区域については、この成立までの間も首長さんと会うたびに私からも活用について訴えてきました。その中で既に成立の暁には活用も考えたいと言っている声も届いていますが、1つでも多くそういった活用が進んで、実際に自治体における再エネ促進が実現されることを私としても期待をしています。今後、環境省としても自治体向けにどのような形で促進区域の設定ができるか、助言も含めてしっかりと連携を深めたいと思います。

(記者)毎日新聞の鈴木です。冒頭大臣から発言のあった、日EUのグリーン・アライアンスに関して1点お聞きしたいことがあります。このアライアンスの中で、途上国の脱炭素移行支援が含まれていると思うんですけれども、日本としては石炭の脱炭素支援というのも進めていくと思うんですけれども、その点については日EUで見解の一致はあるのでしょうか。
(大臣)今回、このアライアンスの中で石炭の輸出支援、これについては例外的な場合を除いて、排出削減対策の講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援の全面的な終了に向かっていく具体的なステップを、本年中に取ることを日EUでも確認をする内容となっていますので、この前のG7、このコミュニケと同じようなことを反映している日EUの中身になっているということです。
(記者)先日、環境委員会で委員の方からG7の中身について質問があったんですけれども、その回答で大臣御自身、日本の今回のスタンスが「受け身の姿勢」という言い方をされた部分があったと思いますが、それはどういう趣旨でおっしゃったのか教えてください。
(大臣)「受け身の姿勢」と私が言ったことはありました?私の中ではそう言ったつもりはなかったんですけど。このコミュニケの中では、逆に私が一番強調したのは、大臣就任以降から一番言っていたことは石炭政策の見直しで、海外に対する輸出支援はこれからは原則と例外を転換すべきだということをずっと言ってきたと思います。政府内でも。COP25に行くときに本当はそれが実現できていれば一番よかったんですけど、それが間に合わなかった。ただ、今回このコミュニケでこの原則支援をせずに、こういったことになったことは、今までかねてから取り組んできたことが反映されたというふうに思っているというのが一番言いたかったことですので、一番のポイントは私はそこだと思っているというふうに御理解いただければと思います。
(記者)最後すみません、先ほど、冒頭であったんですけれども、保護区の30%についてなんですけれども、日本国内のぎりぎり、愛知目標については間に合った、ということがあったと思うんですけれども、今後30%達成する上で、さらに保護区の拡大とか、課題になってくると思うんですけれども、そこはどういうふうにお考えでしょうか。
(大臣)これは関係省庁としっかり、その拡大と30%の達成に向けて協力をしていきたいと思います。ただ、この非常に野心の高い30%の目標を日本がしっかりと打ち出すことができたこと、これはCOP15に向けての日本の生物多様性の保全に向けた強い意思というものを内外に示すことができましたので、今後それに向けて施策の強化もしっかりやっていきたいと思います。

(記者)福島民友の桑田です。会計検査院からですね、国、環境省が直轄で行った除染につきまして、線量の低減についての効果が不透明だという指摘を受けました。環境省としては今、東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域の特定復興再生拠点区域の除染を進めておりますが、今回の会計検査院の指摘をどのように改善に生かすお考えでいらっしゃいますか。
(大臣)まず、指摘はしっかりと受け止めた上で、改善すべきは改善をして、復興に向けてしっかりと全力で前に進めていきたいと思います。この除染については、環境省としては、今までやったことのない事業、大変大きな巨大な公共事業を小さな組織が担うことになりました。これは非常に難しい事業の中で試行錯誤の連続だったと私は思います。その中での過程で今回、会計検査院に指摘をされたような改善すべき事項もあったかもしれません。いくら前代未聞の初めての行政課題だったとしても、担った以上、言い訳は許されないと考えています。ですので今回、指摘をされたことも踏まえて、改善すべき点は、もう既に改善しているところもありますが、復興事業に対して国民の皆さんから信頼をされることが復興にとっても不可欠なことですので、しっかりとそれを受け止めて前に進めていければと思っています。

(記者)テレビ朝日の藤原です。熱中症についてお伺いしたいんですけれども、今日、学校向けのガイドラインが文科省と初めて作成されて発表される予定だと思いますが、今回これを作った意図とか狙い、どういうふうに変えていきたいかとか、そういったところを教えてください。
(大臣)結構、熱中症に関心あるんですね。この前はペットの熱中症でしたけど。学校に向けてのガイドライン、熱中症の対策ガイドラインはこの後、発出する予定になっております。まず現実、データとして今、学校現場では毎年5,000件程度の熱中症の事故が発生していて、熱中症の対応、子どもたちの健康、命を守るためにも喫緊の課題となっています。そういった中で、都道府県や市町村の教育委員会の多くはマニュアルやガイドラインなどを作成していますが、残念ながら、その内容の充実には差が見られるのが現状で、しかも、いまだに策定していない教育委員会もあります。今回、環境省と文科省と連携をして全国の教育委員会などに学校向けの熱中症対策ガイドラインを作成する上で参考にしていただくために、学校における熱中症対策ガイドラインの作成の手引を作成をしました。この後、公表しますが、文科省から各都道府県、市町村の教育委員会に届けますので、これをぜひ活用いただいて、生徒の皆さんの健康と命を守ってもらいたいと、そういうふうに思います。今回の連携は、今年の3月に熱中症対策行動計画で打ち出した各省連携の強化、これに基づくものでもありますので、今後、必要な省庁ともより連携を深めていきたいと思います。

(記者)エネルギージャーナルの清水です。抽象的なことを伺って恐縮ですが、2050年カーボンニュートラル、2030年46%から50%の高みへ、削減という、こういう世界、世の中が魔女狩り的なものにならないかということも1点、指摘しているんですけれども、といいますのは、要するにCO対策がいわば最大の社会を構成する人たちの最大の義務であって、義務というか責務であって、それ以外の価値観というか、そういうものがなおざりにされる、あるいはある意味で魔女狩り的にやられるということは非常に懸念されることだと思うんですが、その辺の哲学で、もし何かありましたら、1点伺いたい。そしてもう1点は、やはり、2030年の再エネ最大限導入というのは、今は40%とか、そういう数字も出ていますけれども、なかなか大変だろうと思うんですね。もちろん市民からの反対運動もありますし、加えてやっぱりスペースの、設置スペースの限界もあるでしょうし、ということは、再エネ以外の、非再エネのエネルギー源をどうやって確保して、トランジット、CO社会へトランジットさせるかということも大事だと思うんですが、その辺、何か環境省として対応を考えていることはありますか。
(大臣)「魔女狩り」ということについては、清水さんがどういう、例えば事例を魔女狩りだというふうに理解をしているのか、もう少し聞きたいと思いますが、後ろの部分で言えば、もはや再エネを、導入が拡大できるかどうかは、日本の雇用と産業を守れるかどうかに関わっている次元になりました。最近でも、企業の動きが急速に進んでいますよね。昨日も、パナソニックが2030年までのカーボンニュートラルという話が出ていますけども、トヨタの再エネ導入じゃなければ雇用を守れないかもしれないという、あのようなことも含めて、もう企業、需要家サイドが再エネでなければビジネスができない、これは言い換えれば、もしも再エネ導入がスピードを持って進まなかった場合、日本から海外へと企業の立地が移転することにもなりかねない。じゃなければ、ビジネスができないんですから。ですから、再エネの導入拡大に向けた課題は様々ありますが、課題のない電源はありません。ですから、その課題を1つ1つクリアして、いかに再生可能エネルギーの導入拡大を進めていくかが、日本の雇用と産業を守っていくことと環境を守ることにつながるんだと、それを改めて多くの方と共有したいと思います。もはや好き嫌いの次元じゃない。日本の雇用、産業、環境を守るためだと。冒頭、もしその「魔女狩り」というのが何を意味するのか、もしあれば。
(記者)ちょっと長くなりますので、やめますけれども、「魔女狩り」というのは、要するにCO対策を重視しない、そういう人たち、あるいは一生懸命やらない人たちは非国民じゃないかというような雰囲気が醸成されると。そういうことを魔女狩りと私は言っていますが、それはまたさておくと。2点目でおっしゃったことで、せんだって環境省と経産省の合同部会で、杉山委員という人が、瀬戸内海地域のベルト工業地帯、これが脱COになったらどうするかというね、意見をきっちり出しているんですよ。そこでは大変な工業出荷額の低下と失業と、それから雇用の、もちろんその、減少と、失業ということ、そういうマイナス面をかなり誇張しているかどうか分かりませんけれども、定量的に出しているんですね。私がトランジションと申し上げたのは、そういうことのマイナスの面を本当に再エネだけでカバーできるんですか。要するに、環境省はもうちょっと、きちっとした戦略なり地図をね、地図というか、中身をもうちょっと具体的なものを出していかなきゃいかんのじゃないですかということを申し上げたのです。
(大臣)そこは環境省だけでは作ることができないぐらい、あらゆる産業とあらゆる地域が関わりますので。私も今の清水さんの御意見と同感なのは、今後必要なのは移行戦略だと思います。いかに公正な移行が進んでいくように、ロードマップのようなものが見えていくか、ここは政府全体としてやっていかなければいけないんじゃないかと。それをお示しすることが私は重要だというのは、認識は同じだと思います。

(記者)日刊工業新聞の松木です。ちょっと古い話になりますけど、今週の月曜日に経団連と意見交換をやられたかと思うんですけれども、その場で46%削減の新しい目標達成に向けての経団連側の意見ですとか、カーボンプライシングについてもどのような意見があったのかというのと、あと、中西会長が退任されますけれども、財界の脱炭素の議論を中西会長がリードされてきたかと思うんですけれども、その中西会長の功績について何かありましたらお聞かせください。
(大臣)経団連としては、もう既に46%に対する賛意を、歓迎をするということを示していますので、意見交換の中でも、そういった中での意見交換を行いました。確認できたことは、今後何度も意見交換をこれからも、会長が代わっても継続的にやっていこうと、そういったことを合意をしました。詳細は控えます。いろんな議論はしましたが、定期的にこのような意見交換をするのは非常に大事だなと。移行戦略の話もありましたが、やはり産業界からも、この移行戦略が大事だということを言われています。その声をしっかり受け止めて、移行についてもしっかり政府の方針を示していかなければいけないと感じています。中西会長につきましては、中西会長御退任という報道を知ったのは、私が手術をする日でした。自分も入院をしながら、長期入院をされている中西会長のお気持ちいかばかりかと、何度も会長のことを考えました。それはなぜかと言えば、私が大臣に就任して以降、ここまでカーボンニュートラルが政府全体の政策に広がり、経済界が常に、経団連の会長として、本来であれば、今までの経団連だったら環境省の方針に対して、もっと文句を言いたくなるようなところもあったと思うんですよね。そして、環境省と経団連で定期的な意見交換会を開催しようと、経団連と環境省の連携協定を締結をすることができた背景には、中西会長御自身が温かい思いで見ていただいて、経団連を引っ張っていただいたこと抜きに、今の環境省と経団連の関係はないと思います。そして今の政治と経済界は、経済界にも様々な御苦労をいただくことになるようなこの脱炭素の方向に常に足並みをそろえて、ともに歩んでいただいてこの路線を引いていただいたのは、間違いなく中西会長個人のリーダーシップの力が非常に大きかったと思います。心から感謝申し上げたいと思いますし、会長ではなくなった立場としても、今後も御指導いただきたい、尊敬する方です。心から回復を願っています。

(記者)電気新聞の匂坂と申します。改正温対法に戻って恐縮なんですけれども、改めて、再エネに有効な促進区域の制度ですとか、脱炭素事業の認定ですとか、再エネの普及の後押しになる策を盛り込まれていますけれども、これが2030年までにどれくらいの再エネの押し上げ効果があるのかといったところがお聞きできればと思うんですけれども、いかがでしょうか。
(大臣)これはまさに1つ1つ再エネ促進区域を積み上げていく、そしてそのためには自治体との連携を深めていく、さらに環境省自身が地熱をこれから倍増させていくという中で、アセスの在り方も含めて、より最適化をできるところはしていく、そして短縮ができるところは短縮をする。とにかく、自ら汗をかいてやっていくことが重要ですし、関係省庁との協力関係も深めていきたいと思います。昨日も読売新聞の夕刊で、1面は小学校とか学校で太陽光パネルを敷いていくという話がありましたけど、今、経産省、国交省を含めて、今後、太陽光の設置義務を含めた意見を私どもは言いながら議論を深めているところですので、とにかく全ての省庁を挙げて再生可能エネルギーの導入をするという公共部門、そして政治部門、その率先導入が、結果として自治体の皆さんに対しても、「ああ国は本気だな」と。「再エネ促進区域も活用しよう」と、こういったところにもつながってくると思います。我々としても、まず政治の率先垂範、公共部門の率先調達、こういったことも考えて進めていきたいと思います。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/EQLd4ZhDVvI

(以上)