大臣談話・大臣記者会見要旨

小泉大臣記者会見録(令和3年4月13日(火)8:50~ 9:18 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 今日は冒頭、閣議関係のものはありませんが、私からは2点お話をさせていただきます。1点目が温室効果ガスの排出量の確報値について、そして2点目がALPS処理水の処分に関する環境省の対応についてお話ししたいと思います。
 まずは、日本の温室効果ガス排出量の2019年度の確報値を取りまとめました。速報値の排出量からさらに約100万トン減少して12億1200万トン、これは前年度から2.9%の減少になりました。ポイントは2つです。1つ目が、2014年度以降6年連続で減少、これは削減目標の基準年から14%の減少に相当します。そして、2つ目のポイントが、排出量を算定している1990年度以降過去30年間で最も少ない排出量であり、2年連続で過去最少の排出量を更新したということであります。
 この確報値については、国連の気候変動枠組条約事務局に2019年度の我が国の温室効果ガスのインベントリとして提出予定であります。6年連続での排出量削減、そして2年連続での過去最少の更新となったことは、省エネの進展や再エネの拡大など国民の皆さまの取組が反映されたもので、評価されるべきことと考えています。他方で、今回の結果を楽観視せず、引き続き取組を進めていく必要があります。2050年カーボンニュートラルに向けては、この5年、10年の取組が決定的に重要だという認識です。地球温暖化対策計画の見直しを進めるとともに、自治体、企業、国民などあらゆる主体の取組がますます加速するように今後も全力を尽くしてまいります。
 そして、2点目であります。先ほど官邸で会議が開催されまして、いわゆるALPS処理水の処分に関する基本方針が決定されましたので、これを受けた環境省の対応についてお知らせしたいと思います。私としては、政府に設置されたモニタリング調整会議の議長として、この基本方針に基づく役割を全力で果たしてまいります。具体的には、これまで主にセシウムに関する海域モニタリングを実施してきたところでありますが、環境省として新たに処理水の放出の前と後における放射性物質のトリチウムに関する海域でのモニタリングを実施します。
 これにより、関係省庁などが連携したモニタリングの強化を図っていきます。福島第1原発の立地する大熊町や双葉町の両町からは国に対して、大熊町からは、多核種除去設備等処理水を除去するための処分の方法を早期に決定すること、そして双葉町からは、この問題が帰還の妨げになっていることを十分に認識し、根本的な問題解決を先送りすることなく、国として責任を持って対応策を早急に決定していただきたいという要望が出されています。私はこの両町のお二方の言葉、非常に重いと思っています。また、トリチウムは国内外の原子力施設から各国の規制基準を順守しつつ放出されています。あたかも福島第1原発だけがトリチウムを放出するかのような誤った認識が広がることこそが私は一番良くないと思っています。
 いずれにしても、これまでにいただいた御意見、御懸念などをしっかり受け止め、福島県の皆さまを始めとする関係者に御安心いただけるように、透明性、客観性を最大限重視したモニタリングを実施して、またその結果を公表することによって風評影響の抑制につなげていきたいと思います。
 今日は冒頭、私からは以上です。

2.質疑応答

(記者)幹事社のTBSの亀井です。今お話しいただいた処理水の海洋放出の件でお伺いいたします。大臣が今おっしゃられたように、先日の会見でもおっしゃっていましたが、地元町長の声として決定の先送りは復興の足かせになることを指摘されています。実際に県内でも、そのような記事、意見は割れていると思うんですけれども、一方で一次産業者の方からは絶対に反対だと、地元の理解なくしてやらないと言っていたのに約束違反ではないかという強い声がいまだに上がっています。思い入れを持って福島と関わってこられている大臣として、そのような声に対しては、地元の一次産業者の声に対してはどのようにお応えになるのか、この在り方がベストだったと今も思っているかを教えてください。
(大臣)まず、今回の決定に際して、特に漁業関係者の皆さまから反対である、そして風評に対する大きな不安の声、総理もこの決定から2年ぐらい最終的に放出まで時間がかかる、そういったお話がありましたが、これから環境省として今まで以上にモニタリングの体制を強化して、そしてそのモニタリングの在り方を科学に基づく形で客観的に、そして多くの国内外の方にそれを公表する形で信頼回復を最大限努めていきたいと。これは絶対先送りできない課題でありますので、そういった環境省としての役割をさらに強化する形で復興の力になっていきたいと考えています。

(記者)産経新聞の奥原です。風評被害というものは、科学的な知見は経産省を中心にこれまで危険性はないということを喧伝してきたにもかかわらず、官邸前でデモ活動、汚染水を海洋に放出するなとか、逆に漁業者の風評を拡散させないような声も広がっており、マスコミなどでも、産経新聞も振り返ってはそうだったと思うんですけど、一部で汚染水の放出とか、そういう報道もあり、科学的な知見以上に感情的なものが結局そういった風評の拡散というところにつながってくるのかと思います。幹事社さんの質問に関連して、福島に思い入れを持っている大臣だからこそ発信力があると言われていますけれども、ソフトな面での取組などを何かなされるおつもりはないんでしょうか。
(大臣)例えばどんなイメージですか、そのソフトなものというのは。
(記者)実際、漁業者の方々と面会をされて、ある程度科学的な知見なども踏まえながら、これは海外、フランスでは日本の福島第1原発で伝えられている10倍が年間放出されているとか、月城(ウォルソン)の原発では福島第1原発で放出される基準よりもさらに高いレベルで放出されているとか、いろいろとやれることはあるのかなと思います。実際に足を運んで矢面に立って批判を浴びることがいいのかなと思っています。例えば細野豪志さんはSNSなどでかなり批判を浴びながらもいろいろと科学的なベースについてはうんぬんかんぬんされていましたので、いかがかと。
(大臣)一言で申し上げれば、環境大臣として今まで以上にモニタリングの体制を強化する、そして国民、そして国内外、関係者の皆さんの理解に努めていけるように、科学的な見地からしっかりと客観性、そして国際性にも合った形でモニタリングをやっていきたいと。私個人としても一政治家としても、できることは何でもやっていきたいというふうに思いますし、今、奥原さんが言ったように、漁業者と向き合って何ができるか、そしてまた、今、環境省としては、先月発表しましたけど、再生利用の課題を抱えています。併せて、再生利用だけにとどまらず、この処理水に対する理解を福島県内外、そして国外についてもしっかりと理解が広まる形を私としても全力を尽くしていきたいと考えています。
(記者)処理水の放出というものは安倍晋三政権でさえタッチできなかった重要な重い政治課題だと言えます。菅政権が嫌われるような政策に着手したのは、すごい決断をした、重要な政策に首相は位置付けたと思います。ただ一方で、相当な国民的な反発、批判がこれから政権に対して出てくると思われます。菅さんを支える閣僚としての自認があるのであれば、私はこういう批判、福島に対する誤解に基づくような批判を大臣が先頭を切って一身に浴びるぐらいの取組があってもいいんじゃないかと期待をしていますが、その辺りの受け止めがあれば教えてください。
(大臣)まず、今日総理が全ての閣僚を集める形で会議を開催されたのは、誰か特定の大臣がこの問題を扱うというのではなくて、これは政権全体で全ての閣僚が復興大臣という気持ちで取り組むべき課題であるという強い決意の下だと思います。ですから、復興大臣としては平沢さん、そして今回会議の司会をお務めになった経産大臣の梶山大臣、そして私として、環境大臣としての役割は何かといえば、やはり我々の見地が、知見が活かせることというのはモニタリングなわけです。そこで、それぞれが最大限の組織の力と役割を生かせるところで全力を尽くすというのが大事だと思います。
 一方で、私も、特に今、梶山大臣と、この処理水の課題だけでなく、カーボンニュートラルに向けた様々な調整なども向き合っている中で、大きな決断を様々な仕事がある中で抱えている中、大変な御苦労をされています。そういった今最前線で向き合っている梶山大臣をしっかりとお支えをする、そういったことも非常に大事だなと。できることを全力でやっていきたいと思います。

(記者)朝日新聞の川田と申します。モニタリング調整会議で具体的で分かりやすい情報提供といいますけれども、例えば国内外にどのような形で発信していくのか。風評被害の対策は非常に重要だと思うんですが、その辺はいかがですか。
(大臣)まず、風評被害は、このモニタリング調整会議が抱えている課題というよりは、政府全体として取り組んでいる課題であります。じゃ、このモニタリング調整会議はというと、先ほど体制強化をするという話をしましたが、その具体的な体制強化の在り方というものはまた後日報告をさせていただきたいと思います。ただですね、このモニタリングの調整会議、今までもセシウムを含めてやっていましたが、やはり今後、放出する前からしっかりとモニタリングをして、放出をした後にどのような変化が出てくるか、そういったものを国内外に対しても公表してやっていくことというのは信頼回復と風評払拭に向けても非常に大事だと思っていますので、しっかりとこのモニタリング調整会議、体制強化の中で進めていければと、こういうふうに思っています。
(記者)漁業者の方は反対されていますが、これは漁業者の理解は得られたと考えているのか、これから得ていくものですか。
(大臣)漁業者の方、特に全漁連の岸会長、これは反対は変わらないと、そういった思いですから。ただ、反対は変わらないという言葉と併せて、風評被害に対する対応ですとか、これはモニタリングということですが、そういったことも触れられています。ですので、我々としては、今理解を得られないからといって理解を得ることを諦めるのではなくて、我々がこれから放出前も含めて一つ一つ積み重ねていく行動の結果、反対の気持ちは変わらなくても、我々が全力で福島の復興に対して向き合っているということ、そのことを見ていただけるように一つ一つの行動を積み上げていきたいと思っています。

(記者)読売新聞の服部です。処理水の関係なんですけれども、モニタリングを強化するというのは、これまでトリチウムを観測していなかったのをするのか、あるいは観測地点を増やすとかですね、回数を増やすとか、どういった形になるんでしょうか。
(大臣)まず、そのポイントの数とか、そういったことも含めて、このモニタリング調整会議、また専門家の方の意見を聞きながら検討していきたいというふうに思っています。いずれにしても、透明性、客観性を最大限重視する形のモニタリングを実現できる体制を整えたいと。その役割の一つの中には、やはりかなり専門的、技術的分野でありますから、そういったことをどのように多くの国内外の皆さんに伝えていけるか、こういったこともものすごく重要だと思っています。そういった形で体制強化を図って、しっかりと政府全体としての情報発信にも活かしていきたいし、このモニタリングの在り方に対する客観性、透明性、これに対して多くの方が信頼していただけるようなモニタリングの実現を我々としては果たしていきたいと思います。

(記者)NHKの岡本です。2019年度温室効果ガスの排出量についてなんですけれども、6年連続の減少で過去最少ということで、このペースで削減が仮に進んだ場合、2050年度には80%近い削減になるという試算もありますけれども、先々もこのペースで削減が進むかどうかについては大臣はいかが思われますか。
(大臣)ペースは楽観視はできないと思っています。というのも、例えば、今後再生可能エネルギーがどこまで入るかということがこの削減の貢献度が直に効く部分です。ですので、この再生可能エネルギーが今後どこまでどのスピードになって入るかというものが今後の経路を位置付ける決定的な重要なポイントですので。ただ、今後見ていくと、風力とか地熱はリードタイムが長い。リードタイムが長いものはこの10年間で入るかというと、そのリードタイムを超えて入るのが、2030年を少し超えたぐらいが、大規模な洋上風力とか、そういったものが見込まれているという、こういったものはファクトとしてももう明らかになっています。ですので、我々としては、いかに早くこのリードタイムが短くて実現可能な太陽光の屋根置きも含めて導入をしていくか、そして併せて、リードタイムは長いけれども、確実に再エネの中でのボリュームを含めて大きな貢献を果たせる電源として早く実現をできるか、この両方をやっていくことが結果としてのカーボンニュートラルへの道のりを早く確実に達成するための道だと思います。だから、その2050年カーボンニュートラルに向けたこの線というのが直線とは限りませんので、どこからぐっとシャープに行くか、そういったことというのはやはり各国の事情があると思います。

(記者)産経新聞の奥原です。日本ならではのリードタイムの描き方といいますか、2050年ゼロに向けた排出削減の図は、日本はこうではない、直線ではなくて、リードタイムとしては長い洋上風力の導入は2030年以降になると思いますので、2030年が過ぎてから中期目標を経た後にぐっと削減幅が広がっていくというお考えなんですか。
(大臣)まず、再エネだけではない要素が全体の排出削減目標には入っているので、今私が言っているのは再エネを取り出した場合は2030年以降に大きくこの再エネの導入が見込まれるものがありますと。傾斜を引いたときに、それは機械的にやればいくらでも直線は引けます。ただ、機械的なところとは違うのがまさに各国の事情なわけで、日本はやっぱり再エネに動くのが他の先進国と比べれば出遅れていますから、それを考えたとき、じゃ、あと9年どれだけ入るのか、そしてそれ以降にどれだけ見込めるのか、こういったことは日本の立場もあります。ですから、そこを見据えながら、いずれにしても世界共通のゴールというのは、どのような放物線や傾斜を描いたとしても、2050年までにゼロに到達をさせるというのがゴールです。なので、そこをしっかりと国際社会で共有することが大事であるというふうに思っています。
(記者)NDCを含めて、ゴールに向かって中間地点をどういう放物線を描くと、日本の事情でですね、考えられますか。
(大臣)それをまさに、総理のできるだけ早くという指示の下で、梶山経産大臣を含め、今、政府内で調整をしています。

(記者)フジテレビの安宅と申します。2019年度の今回の削減の数字は満足されているのか、まだまだという気持ちなのか、率直な感想をお願いできますでしょうか。
(大臣)まずは、これだけ30年で最も低い、実現していただいたのは、我々国が実現をしたというより、国民皆さんの御協力と、そして企業の努力、そういったもの全て、自治体も含めて頑張った成果です。ですので、御協力いただいた多くの皆さんにまずは感謝を申し上げたいと思います。
 一方で、先ほど楽観視できないと言いましたけど、我々が目指しているのは2050年カーボンニュートラルということは、この約12億トンというCO2排出を最終的にはネットでゼロにしなければいけない、そういったことを考えたときに、普通に積み上げだけでは達成できないのは明らかですから、楽観視せずにできる限りのことをやって、しかもそれが、単純に排出を減らすという取組ではなくて、世界全体の投資、そして脱炭素の市場が取れるかどうかという今後の日本の経済と雇用とそして新たな産業構造への転換というところも関わってくるので、そこを多くの方と共有しながら、さあ、これを進めることが日本の経済と雇用にとって非常に大きいんだという認識を共有できる今後を作っていきたいと思っています。

(記者)日刊工業新聞の松木です。今の関連で、気候イニシアチブが2030年の目標として45%以上削減を求める声明を出されていたと思います。その前に日本気候リーダーズ・パートナーシップ、JCLPが50%以上削減を求めていました。企業から高い目標を求める声が上がっていることについて、大臣の御感想をお聞かせください。
(大臣)特に企業から高い声を求めている背景には、再エネの導入を加速してほしいという声だと私は思います。最近もある企業の方と意見交換をしましたが、どこに関心を持っているかと聞くと、実は、NDCではない、再エネがどこまで入るかという、そういう声も入りました。そして、日米で何が違うのかというと、日本はこの排出削減をどこまで進めるかという裏側にエネルギーミックスのことを考えたりします、電源構成別に。しかし、アメリカはこのエネルギーミックスはありません。こういった中で日本として今NDC、2030年目標を政府内で調整する中で、民間の方々からの声もしっかりと受け止めていったときに、共通しているのはいかに再エネを入れるかなんですよ。だから、政府全体で再エネ主力電源化と言っているわけで、今回どのような調整結果になったとしても、この再エネを早く入れなければ、トヨタの豊田章男社長が言っているように、日本から100万人の雇用が影響を受けかねないと。なので、企業という需要家サイドからは、早く再エネをよりボリュームを持って、追加性の再エネの発電所を増やして、そんな国づくり、環境をつくって、企業が再エネを調達することに不安のない、そしてコストがかからない、そんな経営環境を実現してもらいたいというのが、私は今の要望にあるような声をそんなメッセージだと受け止めています。それを少しでも実現することが日本の雇用を守るということでもありますから、今、最後まで調整に全力を尽くしたいと思います。

(記者)神奈川新聞の石川です。16日に菅総理がバイデン大統領と会談しますけれども、主要な議題として気候変動問題も取り上げられます。大臣としてはこの会談の成果に向けて、どのような期待をしているかということについてお伺いします。
(大臣)まず、会談の最重要テーマに気候変動が位置付けられたことが日米の新たな歴史を刻むそのスタートになると思います。例えば、1年前に日米首脳会談が行われたとして最重要課題に気候変動がなったかというと、恐らくなっていないでしょう。そして、日本で日米同盟という中でも脱炭素というものが位置付けられて、日米豪印というQUADの中でも気候変動の作業部会の立ち上げに合意をし、そして今回は重要議題の一つが気候変動。まさに日米が連携して共にカーボンニュートラルの道を歩み、そして世界全体の気候変動対策の機運を高めていくその新たな日米の協力の領域が広がったと。それは、菅総理が2050年カーボンニュートラルを宣言したことから始まっているわけですから、今回の首脳会談、そんな日米の新たな歴史のスタートがしっかりと国内外に示されることが非常に重要であるなと思いますね。
松山英樹選手も今回グリーンジャケットを着て、世界の中で日本ここにありと示したとおり、今回、菅総理は世界で初めてこのコロナ禍の中でアメリカのホワイトハウスでバイデン大統領と向き合うわけですから、共に、グリーンジャケットじゃないですけど、このグリーンの分野で日米はリーダーシップを発揮するんだと、その関係をしっかり最後まで調整したいと思います。総理には準備万端で臨んでいただきたいと思います。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/3gUbXGwXnmU

(以上)