大臣談話・大臣記者会見要旨

小泉大臣記者会見録(令和2年3月13日(金)9:00 ~ 9:22 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 本日の閣議において、自然環境保全法に基づく自然環境保全基本方針の変更について決定されました。この基本方針は、自然環境の保全に関する基本構想などを示すものであり、今回の変更においては、昨年の通常国会で成立した改正自然環境保全法に基づく沖合海底自然環境保全地域の指定及び保全の考え方の追加、そして社会及び自然環境を取り巻く状況の変化を踏まえた記述の変更などを行っております。今後は、この基本方針を踏まえて、今年の4月に施行される改正自然環境保全法を適切に運用し、自然環境保全の更なる推進に努めてまいりたいと思います。詳細については、お手元にお配りの資料を御覧ください。
 二つ目が、これもお手元に資料をお配りしていますが、熱中症の対策強化のために、先日も国会で、近々気象庁との連携を発表するというお話をしましたが、気象庁と連携をして、気象庁の高温注意情報と環境省の暑さ指数、この強みを掛け合わせた統一的な指標創設に向けた有識者による共同検討会を立ち上げることとしたので、御報告をしたいと思います。お手元、資料の中にA3の横に開く大きな資料もあると思います。恐らくそちらが一番分かりやすいかなと思いますので、参考までに御覧いただきながら聞いていただければと思います。近年、気候変動の影響等で、熱中症による救急搬送者数や死亡者数が増加傾向にあり、我が国の社会全体にとっての大きな課題となっています。一昨年の夏には災害級の暑さとも報道されて、熱中症による救急搬送者数が過去最多となりました。熱中症は、適切な予防、対処を行うことで、その発症や重症化を防ぐことができる病気でありますが、現状、環境省から提供している暑さ指数(WBGT)は、熱中症発生との相関関係は高い一方で、認知度が低いという課題があります。また、気象庁の高温注意情報は確立した伝達経路により広く情報を届けられるが、熱中症発生との相関が弱いという課題があります。そのことを整理したのが、お手元の資料の左側の下の3であります。現行手法のメリット、デメリットです。そこで、今回、我々環境省と気象庁とがタッグを組んで、お互いの取組の強みを掛け合わせて、より強力な熱中症予防のための熱中症警戒アラート、これは仮称ですが、この創設に向けて検討を行います。これは、例えば熱中症リスクの極めて高い気象条件が予測される日の前日に、テレビやネットなどのメディア、自治体などの御協力も得ながら、国民の皆さまに広く情報を発信して、熱中症についての注意を喚起して予防のための行動を促すものです。具体的には、4月から立ち上がる予定の環境省と気象庁の両省庁の共同検討会で詳細を詰めて、今年の夏には関東甲信地域、1都8県でまずは先行実施を行って、来年、令和3年からは全国で本格実施をしたいと考えています。気候変動の影響も考えると、いつまた災害級の暑さがやってきても不思議ではありません。今回の気象庁とのコラボは、気候変動×防災、この取組の一つと考えています。この取組を契機に、夏の過ごし方、そして、社会全体の在り方にも変革を促していきたいと考えています。
 三つ目はゼロカーボンシティです。富山県の石井知事が3月6日に、そして神奈川県の開成町の府川町長が3月5日に、そして北海道の鈴木知事が3月11日に、二酸化炭素の排出を2050年までに実質ゼロにするとの方針を表明されました。これで累計で80自治体、人口ベースではついに6,000万人を超えて6,122万人となりました。特に、新型コロナウイルス緊急事態宣言をしている中で表明をいただいた北海道の鈴木知事には、心から敬意を表したいと思います。私からもお電話をさせていただいて、最近の状況等、またお礼も申し上げました。北海道は、2020年度に予定している北海道地球温暖化対策推進計画、この見直しにおいて、脱炭素社会を見据えた長期的な視点を踏まえ、取組の方向性や推進方策を検討していくということです。また、富山県と開成町も一言御紹介をすると、富山県におかれましては、新とやま温暖化ストップ計画、これは去年策定されたものですが、これに基づいてレジ袋無料配布運動、特にレジ袋の辞退率は富山県は95%という、全国でも特に高い辞退率を誇りますが、そういったことに加えて食品ロス対策、こういった県民、事業者、行政が連携した取組に加えて再生可能エネルギーの推進、水と緑の森づくり税を活用した里山、また里の山林の整備、また温室効果ガスの排出量削減や吸収源対策などに徹底して取り組むということです。そして、神奈川県の開成町の町長さんともお会いをしましたが、こちらは日本で初めてとなるZEB庁舎、新しい役場の庁舎がZEB、ゼロ・エネルギー・ビルディングですね。ZEB庁舎である役場庁舎を起点にZEH、これはゼロ・エネルギー・ハウス、こういったことをはじめとする住宅のエコロジー化の補助、また電気自動車の普及促進を図る、そういったことも開成町では進められるということです。本年中の目標としているのは、人口規模6,500万人です。この達成も目の前の視野に入ってきたということでありますので、引き続き各地域におけるこういったゼロカーボンの実現を支援する施策についても、省内で精力的に検討していきたいと考えております。
 最後になりますが、コロナ対策です。新型コロナウイルス感染症対策について、環境省においては、3月15日まで、環境省が主催する全てのイベントや会議について、規模にかかわらず原則、延期又はネット中継、動画配信に切り替える対応を行っていますが、これを3月31日まで延長します。また、例年桜の最盛期には多い時で7万人御来園いただいている新宿御苑につきましては、感染防止策を徹底した上で開放を継続してまいります。ただし、来園者の皆さまには、園内の混雑の状況によっては入園をお断りする場合があること。そして、明日14日からは、園内のレジャーシートなどの使用ができなくなることについて御理解をいただきたいと思います。また、園内には温室というのがありますが、温室は14日から閉鎖をするとともに、カフェやレストランなどの施設については、混雑時に来園者の密集を防止するような対策を講じていきます。こうした環境省の取組については、公衆衛生学を専門とし、行政の危機管理にも詳しい専門家の方をアドバイザーとして助言をいただくこととしましたので、専門家の意見も聞きながら、的確な対応を進めていきたいと考えております。冒頭、私からは以上です。

2.質疑応答

(記者)毎日新聞の鈴木です。冒頭で大臣から発言があった、気象庁と合同検討する新たな情報発信についてお聞きします。一部地域で警戒アラートが導入されるということですが、一時的に各省庁で運用する情報と混在することにもなるので、情報を受け取る側の国民の混乱も予想されます。今後の分かりやすい発信に向けた対策などがあればお聞かせください。
(大臣)まさに具体的な詰めは、これから共同の検討会、こういったところで詰められるんであろうというふうに思います。ただ、今日お示しした資料の中にもある通り、現在の環境省の暑さ指数、そして気象庁の高温注意情報、それぞれのメリット、デメリットというのがありますので、私は今回のこれから創設をされる予定の統一的な熱中症警戒アラート、これができた暁には、双方のデメリットが双方の強みによってしっかりと補完されていく、そして国民の皆さんにとっては分かりやすく熱中症の情報提供がされることによって、様々なイベントやスポーツ、行事、こういったことの熱中症対策の予防についてもより実効的なものに取り組んでいただける一助になることを期待しています。

(記者)朝日新聞の菊地です。コロナウイルス対策の関連で伺います。昨日、衆議院で新型インフル等の特措法が通過して、今日にも参議院で審議が始まります。この法案の一つの焦点として緊急事態宣言があります。この法案自体が民主党政権で作られた立て付けではありますが、改めてこの緊急事態宣言における私権の制限や、公共の利益と人権についての大臣のお考えについて伺います。
(大臣)今回、この感染症に直面をしている、我々だけでなくて世界中の国にとって、まさにその私権と公共の福祉、そういったものというのが問われていると思います。特に民主主義国と、また中国のようにそうではない、そういった国の中での感染症に対する対策、そして政府の対応、そういったことについては、今後大きな一つの考えさせられるようなテーマでもあるのではないでしょうか。ただ、こういうときに一番大切にしなければいけないのは、まさにいかに早く終息をさせるか。最近経済の状況も大変大きな影響がありますが、やはり一番大事なことは、一日も早く終息に向かう動きをつくっていくこと。そして、世界の今までの歴史を見れば、感染症と、そして終息、これを繰り返して人類というのはここまで来ているわけですから、今回のコロナウイルスについても世界中に今、感染が広がるパンデミックというふうにWHOも認める状況にはありますが、終息をしない感染症はないと。必ず終息の日は来ると。そこに向けて国民の皆さんに御協力をいただくことは御協力をいただきながら、政府としては一日も早い終息をと、それに向かって全力を尽くすと、そういったことだと思います。

(記者)時事通信の木田です。新型コロナウイルスの感染症拡大を受けて、東京オリンピックの予定通りの開催を懸念するような声も出てきています。東京オリンピックは復興五輪とも言われていて、東日本大震災の復興に熱心に取り組まれてこられた大臣として、現状をどう御覧になっているのか、何かお考えなどがあればお願いします。
(大臣)やはり気になりますよね、率直に申し上げれば。どうなるんだろうかと。ただ、それについても一番大事なことは、やはり一日も早く終息に向かう、そういった現状をいかに早くつくれるか、そういったことが大事だと思っています。私は高校球児でもありましたので、最近の選抜、これの中止ということも、高校球児の心境を思うと、もしかしたら一度きりのチャンスだったかもしれない。そういったことが今回のコロナウイルスによって開催できずということになったことは、一体どのような思いだろうかと、そういう思いを持っていますし、オリンピック・パラリンピックについても、4年に1度来るとはいえ、アスリートの方にとっては、まさに自分のアスリートのキャリアの中で今回が一度きりだと。4年に1度のこの日のためにというふうにやってこられた方々、その方々のことを思えば、いかに無事に開催するような環境をつくることができるか。それこそまさに開催国である日本の、今の我々政府の取組にも問われていることだと思いますし、一方でオリンピックというのは、開催国は日本でありますが、参加するのは世界中です。そうなると世界の中でのコロナウイルスの感染拡大防止、こういったことについても、国際社会の連携というのが極めて重要ではないかなと考えております。

(記者)TBSの守川です。新型コロナ対策の関連で、WHOのパンデミック宣言以降、世界で経済も外交も様々な動き、影響が出ています。秋にCOPも予定されていますが、環境省では事務方の事務作業や環境外交の分野でどのような影響が出ていて、その対応策をどのように考えているのか。もう1点が、今回のパンデミックを受けて、経済面でも非常に大きな影響が出ています。マーケット、株価も為替もかなり様々な面で影響が出て乱高下しています。環境分野の金融の重要性というのを大臣はずっと言われていて、経済が混乱すると環境の方に投資をしていこうという意欲がそがれるのではないかという懸念もありますが、経済の混乱による環境投資への影響をどのように見ているかお願いします。
(大臣)まず、気候変動外交についての影響ということでありますが、テレビ会議を含めて、あらゆるツールを駆使して、今例えば世銀の会合だとか、またG7の外相会合とか、そういったことも含めてテレカンファレンス、テレビ会議、ウェブ、そういったことも活用されています。まさにそういったツールも駆使をしながらやるべきことはやっていく、そういったことが大事だと思います。そして、COPは11月ですから、その11月の状況については今はまだ何も言えないと。ただ、11月に無事にグラスゴーで開催できることを念頭に置きながら、変わらずにやるべきことは進めていきます。一方で、この感染症というのは、気候変動とも大きな関係があります。今後、気候変動のリスクが高まることで、感染症のリスクも高まるというようにも言われています。我々環境省としても、まさにこの感染症が広がるという歴史的なパンデミックの状況の中で、気候変動という大きな世界的な地球規模の課題とパンデミックという地球規模の課題、これは無関係なものではないということもしっかりと問題意識を持って、今後我々にとってどういった取組、また発信、国民の皆さんへの説明、御理解を求められるか、しっかりと検討を深めていきたいというふう考えています。また、経済的な影響、金融、ESG金融を含めてどうかということでありますが、まず我々環境省の担当している分野の一つには廃棄物があります。そういった廃棄物の処理業の世界においては、やはり産業の形態というのが廃棄物処理業に対しての影響に対しても出てきます。ですので、今、関係の事務方にも指示をしていますが、このコロナウイルス感染拡大の中で経済的に今、廃棄物関連事業者、こういったところにどういう経済的な影響が出ているのか、出そうか、しっかりと状況を把握してもらいたいと、そういったことも今指示を出しているところであります。ESGなどについては、これは世界のトレンドはむしろこの流れは強まっています。ESGに対して配慮する、取り組んでいるところに対して投資、融資、そういったことが集まっていく。このトレンドは、経済的な落ち込みはもちろん影響はある部分はあると思いますが、このトレンド自体は変わることはないと私は考えています。

(記者)NHKの金澤です。震災と原発事故から9年たちましたが、改めて環境省で進めている除染土の再生利用と、その先の県外最終処分も含めて伺います。この問題は、本来福島だけが抱える問題ではなくて、全国で考えていくべき問題だとは思いますが、どうしても取材の中で感じるのは、結果的に福島だけが当事者として悩んでしまっている部分が強いのかなと思っています。福島県内の各首長の声をいろいろ聞きましたが、除染土の再生利用に関しては賛成とも反対とも、どっちつかずの声が一番多く聞かれました。その中で思い悩んでいる福島が、本当に福島だけが考えればいいのか、県外の人たちはどこまで真剣に考えているのか、県内の人たちはまだ分かっていない状況があります。そういう状況にあって、小泉大臣としてはあくまで県内外で再生利用を進めようとしているのか、お考えをお聞かせください。
(大臣)この再生利用はものすごく大事な事業だと思っています。中間貯蔵と除染、この大事な大事業を担当する環境省としても、地元の皆さんの御理解なくしてはこれは進みませんし、また今おっしゃったように、福島の復興というのは全国の課題です。福島だけの課題ではありません。先週、私もこの福島の再生土を活用した鉢植えを、初めての県外の実証という形で環境省、私の大臣室も含めて今置いていますが、昨日も私の部屋に訪問される方がいたので、そういった方にもそこで一緒に写真を撮りながら、放射線量が持ち込む前と持ち込んだ後と大体0.06マイクロシーベルトぐらいでありますが、そういったことに変化はないこと、そしてまた、全国、日本の中の各地の放射線量、空間線量、これがどうなっているのか、そして海外の主要な都市、これが線量がどうなっているのか、今私の部屋にはパネルになっていますから、そういったことを提示しながら御説明をさせていただきました。この鉢植え、そしてまた飯舘村のお花も今利用させていただいておりますが、そういったことに込めている思いは、実行としては小さく映るかもしれませんが、中長期の再生利用や技術開発目標とか、そういった戦略を中長期でしっかりとスケジュール通り進めていくことは大事ですが、やはり私がものすごく感じるのは、現場の高齢化も含めて、9年間の時間の経過の重みです。そうなると、どんなに小さいことでもいいから動きや変化、こういったことを現地の皆さんに届けていきたいと。そして、最近改めて不安が強くなってきたなと思うのは、風化に対する思いです。それを絶対に風化をさせない。こういったことも含めて、まさに福島だけの課題ではない、そういう思いで取り組んでいるわけではない、これがしっかりと伝わるように、今後も日々の中で何ができるかという、その小さな動きも含めて努力の追求をしていきたいと考えています。

(以上)