大臣談話・大臣記者会見要旨

小泉大臣記者会見録(令和2年2月10日(月)9:30 ~ 9:54 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 今日、このしつらえを見ていただいても分かる通り、まずは昨日の福島出張について一言コメントしたいと思います。昨日、福島県の飯舘村、双葉町、大熊町を訪問しました。飯舘村長泥地区におきましては、日曜日にもかかわらず、菅野村長、門馬副村長、そして鴫原区長をはじめ多くの住民の皆さん、15名の皆さんにお集まりをいただいて、短時間ではありますが、意見交換が実りある形でできたと思います。今日はその際にいただきましたお花を飾らせていただいています。こちらですね。これは、住民の皆さんの9年間の思いが込められたものであります。これまで長泥での実証事業で手塩にかけて育てていただいた花は、残念ながら、今まで使われることなく処分をされていたり、また内部でのという形でありましたが、昨日いろいろお話を聞きながら、ぜひこれからは環境省で使わせていただこうということで、このように使わせていただくことにしました。今までもノーベル賞受賞をされた吉野先生、そして日中韓の環境大臣会合等でも活用させていただきましたが、これからはこういった形でも活用させていただきたいと思います。なお、今日は閣議の時に、いろんな大臣と昨日の話をしまして、私の隣の席が、閣議前のあの椅子で座っている時は福島出身の森法務大臣でして、昨日の話をしたら、ぜひ法務省でも使いたいと、そういったお話がありましたので、今後、環境省だけでなく、法務省、また他にも使っていただけたらうれしいなと、私からも声をかけたいというふうに思っています。なお、昨日の意見交換では、環境大臣が来てくれるのはありがたいけども、やはり農業復興が関わるから農水省にももっと前に出てほしいと、そういうお声をいただきましたので、早速、江藤拓農水大臣に昨日のお話をしたところ、それはぜひということで、農水省の方でも政務の現地への訪問を含めた前向きな検討をいただくということになりました。このように一つ一つ地元の皆さんの声を受けて確実にアクションを積み重ねて、一日も早く、この再生利用の実証事業を頑張っている皆さんの努力が報われる形をつくっていきたいと、そういうふうに思っています。双葉町では、町内で初めて3月4日に避難指示が解除される双葉駅周辺及び中野地区復興産業拠点を伊澤町長の御案内で視察しました。本日、私の左側にタオルがありますが、これは中野地区に立地予定の企業のタオルです。このように今までなかった産業が双葉町に立地をしてくる、そういう産業の創生、こういったことも伊澤町長と一緒にこれからも前に進めていきたいと思っています。ちなみに、この3色のタオルに込められた思いというのは、緑が、昔ながらの双葉高校という伝統ある甲子園にも出場したことのある高校ですが、この双葉高校を含めた双葉のイメージというのはグリーンであると。そして、青は双葉の海の色をイメージしていて、そしてピンクもありますがピンクは双葉の桜であると、そういう思いを込めているというお話も聞きました。ぜひ、皆さんにも御紹介いただけたらと思います。そして、大熊町では、昨年4月に避難指示が一部解除された大川原地区にある町役場で吉田町長と面会をしました。大熊町では、復興に向け新たな農業の取組もスタートしているということで、昨日は帰るときにこのイチゴをくださいました。4つありますが、すべて品種は違うイチゴで、今回この箱にあるのは4品種でありますが、今、大熊町では6品種イチゴを作られているということです。意見交換でも食べさせていただきましたが、爽やかな甘さで非常においしかったです。こういったイチゴも今、大川原地区、大熊町ではやっているということも改めて御紹介をしたいと思います。吉田町長からは、大熊町がとうとう58自治体目となるゼロカーボンシティとなる宣言、大熊町2050ゼロカーボン宣言が表明をされました。環境省では、今までも自治体の人口規模6500万人に今年は達するようにしていきたいという目標を掲げていますが、大熊町のこのゼロカーボンシティ宣言の意義は、人口の問題にとどまらない、これまでにない別の意義があると考えています。原発事故によって全町避難を強いられた町が、復興に向けた次のステップの旗印、基軸として再生可能エネルギー施策などに基づくゼロカーボンを掲げたことは、日本国内のみならず国際社会、世界に対しても大きな意義があると思います。昨日の意見交換の中で、職員さんのある方が、このゼロカーボンの話があってから、どこにこれから向かっていけばいいか一つの背骨のようなものがはっきりしてありがたい、これから本当に頑張っていきたい、という前向きな思いをいただいたことは、私としても本当にうれしく思いました。昨日も言いましたが、国際社会、COPとかの場では、横浜や京都、既にゼロカーボンシティの宣言をしているまちの取組が、関係の職員さんも出席をして発信がありますから、私として期待をするのは、今年の11月のグラスゴーという場で、COP26で大熊町の担当者、もしくは町の方がどういう思いでこのゼロカーボン宣言をしたのか、またこれからどう進めていくのか、そういったことを国際社会にも発信をするような機会、そういったことも後押しをしていきたいと私としては思っています。環境省としても、大熊町のこれからのビジョンづくり、そして企業などとのネットワークの構築、個別のプロジェクトの実現、こういったことを一つ一つ全力で後押しをしていきたいと考えています。来月には東日本大震災の発生から9年が経過しますが、福島の復興・再生の取組は、まだまだこれからやらなければいけないことが多くあります。今回、福島を訪問して、飯舘村の住民の方々の再生利用事業に対する様々な思い、中間貯蔵施設を受け入れていただいている双葉町、大熊町の復興の新たなステップに向けた力強い決意を直接伺って、改めて地域の方々の苦渋の思いを忘れてはならない、こういった思いを強くしました。今回の訪問では、被災地の方々の中で、来年で10年ということで風化への不安、懸念、こういったことも大変強いということを改めて感じました。今、紹介をいただいているこの飯舘村の飯舘だより、こういった環境省が取り組む発信ですが、こちらは村長のサインを昨日書いていただいて、こちらでは意見交換に参加していただいた鴫原区長のサインもいただきました。こういった風化に対する現地の皆さんの思いを受けて、改めて環境省としても、今後、情報発信の取組を今までよりも強化すると、その方向で調整をしたいと思います。引き続き、関係自治体の東北の皆さん、福島の皆さんと密に連携しながら、一体となって被災地の復興を全力で後押ししていきたいと思います。
 2点目は、これも週末土曜日にイギリスのラーブ外務大臣と面会をした件についても触れたいと思います。11月にグラスゴーで開催されるCOP26に向けた対応などについて、率直に意見交換ができました。会談では、私からCOP25の経験や教訓など感じていることを率直に共有させていただきました。また、パリ協定の残された宿題とも言えるパリ協定の6条、この市場メカニズムのルール交渉を日本は長年取り組んでいますから、このルール交渉をCOP26で合意すべく、日本として協力を惜しまないことを申し上げまして、議長国イギリスと緊密に連携していくことを確認しました。ラーブ大臣からは、COP26ですべての国の取組を向上させる必要があり、そのためにも日本を含む先進国が率先して2050年までの脱炭素社会の実現など、より野心の高い明確な目標を期待するという話がありました。それに対して私からは、日本は2050年以降できる限り早い段階で脱炭素社会を実現すると長期戦略で宣言していますが、私は国会答弁で2051年も含むという話をしていて、最近では総理も2050年を視野にと答弁するなど、間違いなく今までより前向きな野心的な表現に変わってきているということを伝えました。また、先方からは、日英両国が協力してアフリカなど開発途上国の再生可能エネルギー導入支援に取り組んではどうかと提案もありましたので、その可能性と重要性について認識を共有していますから、今後お互いの事務方同士で調整するように指示をしたところであります。そして、TCFD、ESGの金融の気候変動対策における重要性についても議題に上がりました。私からは、TCFD賛同企業は日本が世界一であることや、今月、ESGアワードを環境省が主催することなどを紹介して、今後、金融面でも協力の可能性があることを共有することができました。ちなみに、イングランド銀行のカーニー総裁は、今後、COP26のファイナンスアドバイザーということで関わることになりますし、昨年のTCFDサミットが日本で開催されたときは、カーニー総裁が日本に来られ、講演などもされています。私もニューヨーク、そして首相官邸でもお会いをしていますが、そのたびに日本がTCFDで世界一だということをカーニー総裁もいろんなところで発信をしてくれているので、こういったところもまた心強いことだと思います。また、石炭の政策についても話題になりましたので、私からは今問題提起をしている輸出の4要件のことなど説明をさせていただきました。 EUの離脱後にイギリスの外務大臣として初めての来日で、過密日程にもかかわらず御招待があったことは光栄に思いますし、イギリスが議長国としてCOPを成功させる決意の表れだと思います。先月に環境省の交渉官をイギリスに派遣したばかりでありますが、今後とも議長国とは緊密に連携していきたいと思いますし、各国とも意見交換をやっていきたいと思います。今日の夕方はエストニアの首相が来られますので、エストニアの首相とも、そういったことも含めて意見交換をしたいと思います。
 最後になりますが、来月3月8日に、環境省、内閣府、国連防災機関と共同で「気候変動と防災」、SDGsについての国際的な公開シンポジウムを開催します。このシンポジウムでは、国連防災機関の水鳥真美特別代表による基調講演、そして有識者によるパネルディスカッションの他、水鳥特別代表、武田防災担当大臣、そして私、この3者による鼎談も公開で行う予定です。最近、近年の気象災害などを受けて、社会全体がこうした気象災害の脅威を強く実感していると思います。地球温暖化の進展に伴って、今後このような気象災害のリスクは更に高まると予測されていることから、環境省では国民の危機意識の高まりも踏まえて、気候変動への対応が防災にも資すると。言い換えれば、気候変動×防災という視点に立って気候変動の緩和と適応、この両面において施策を展開し始めているところなので、こういったことも紹介をしたり、共有をしていきたいと思います。また、4月に、国連の気候変動とSDGsのシナジーに関する会合というのが開催をされる予定ですので、来月行われるこのシンポジウムの結果を4月に開催されるこの会合にインプットしていきたいと考えています。私からは冒頭以上です。

2.質疑応答

(記者)テレビ朝日の中村です。昨日の出張の案件でお伺いします。今、大臣冒頭にお話がありましたように、大熊町の宣言など前向きな動きも多く見られた一方で、飯舘の長泥地区の住民との意見交換の場では、除染対象エリアの拡大を求める住民の切実な声が上がったと承知しています。大臣はこうした声をどのように受け止め、どのように対応していくお考えでしょうか。
(大臣)そういった声は飯舘村もありましたし、その他の福島の地域に行っても、また首長さんとの意見交換でも、今までも同じような思いを私は伺っています。その思いというのは、9年間、この時間の経過とともに、ある程度のスケジュール感があったとしても、日常の中での変化が感じにくいという部分も率直にあるんではないかなというふうに思います。私としても、例えば昨日の長泥地区での再生利用の実証の計画については、今後一定のスケジュール感を持ちながら、共有しながら地域とは取り組んでいますが、やはり9年間という長い期間の中で、そういったスケジュール感をしっかり捉えながら進めていくと同時に、一つ一つの小さなアクションでも生活の中での変化が生まれたり、日常の中で新しいことが動いているということって、ものすごく大事だと思うんですね。ですので、昨日、このお花の、今までだったら処理をしていたところを、その処理をやめて、我々が使わせていただくという小さなことも含めて前に進めていくことをやらなければいけないと思っていますし、あの実証の中でも、今お花をやっていますが、お花以外もやりたいという声が率直にあります。そういった地域の皆さんの努力が報われるような、そして希望が報われるような形を、大きくなくとも様々な課題もありますから、いかに一つでも実現できるかという思いを持ちながら進めていきたいと私としては考えています。いろんなご要望もあります。そういった中ですべてを、今すぐできること、できないことというのはありますが、どうやったらできるのか、そういったことを積極的に考えていって、一つ一つ形にしていきたいと思います。まさに森法務大臣とのお花のお話や、江藤農水大臣に昨日のことをすぐに伝えて連携を深めて形にしていくということもその一つの表れだと。今後もできることは何か、そのことを真っ先に考えて、環境省としても、全大臣が復興大臣という思いですから、その思いで頑張っていきたいと思います。

(記者)朝日新聞の菊地です。冒頭、英国外相との会談の中で、石炭火力の輸出4要件の話に触れたということで、その件についてお伺いします。小泉大臣から輸出4要件について取り組んでいることを紹介されたときに、紹介できる範囲で結構なんですが、ラーブ外相はどのような反応を示されたかということと、大臣はこれを国際社会に向けてどのように発信していきたいかということを伺います。その上で、小泉大臣がこの問題提起をされて以降、国会では公明党をはじめ、与野党を問わず議論が起きていますが、これを政府内で今後どのように調整されていくか。そして、めどとして、期限としてどのぐらいに4要件の見直しであるとか、形を出していきたいかという思いがあったらお願いしたい。
(大臣)まず、ラーブ外務大臣の方から私の問題提起を知っているということでお話もありまして、私から改めて、COP25でお話をしたこと、そして今、どういう主張を私はしているのか、そして今の状況についても私なりに説明をさせていただきました。そこから石炭に限らず、今の日本の原発事故以降、エネルギー政策を含めた状況についても様々質問もありましたので、そういったことにお答えをする形で、かなり今の日本の状況に対して、ああ、なるほど、そういうことなのかという新たな理解をしていただく形になったのではないかなというふうに私も思いました。ですので、今、日本が前向きな脱炭素に向けた取組を一つ一つ、どうやったら前に進めるかを考えていることは伝わったと思いますし、日本に来る前にラーブ外相はオーストラリアに行っています。オーストラリアはまさに石炭で有名な国ですけど、そのオーストラリアに対してラーブ外相は、2050年までの脱炭素社会の実現についてはどう思っているのかということも提案をされたり、お話をされたというのは報道でも私も聞いていました。ですので、議長国としていかにこのG7を含む先進国がより野心を持った取組をすることが、途上国やまた中国やインドなどの大きな排出国に対してのメッセージとしても非常に重要だという思いを持たれているということは私にもよく伝わりましたので、今後も情報交換をしっかりしていこうということで一致をしました。国内の調整についてですが、まさに今の政府内、関係省庁との調整をしているところですから、予断を持ったことは私からは差し控えたいと思いますが、十分、環境省側の主張、それは伝わっていると私は思います。

(記者)NHKの吉田です。昨日の福島出張を踏まえまして、再生利用実証事業について伺いたいのですが、今、環境省の方で実証事業を行っているのは、昨日視察に伺った長泥地区だけであって、他の自治体や地域では実証事業が行われていない状況かと思うんですね。長泥の昨日の視察も踏まえて、今後、再生利用の実証事業をどう展開していくのか、広げていくのか、あるいは現状維持のままになってしまうのか、そこら辺のお考えをおねがいいたします。
(大臣)この再生利用の推進は、私も今までも言っている通り、地元の皆さんの理解がなかったら実現できないというふうに思っています。今まさに長泥地区の皆さんが、村長さん、そして区長さん、昨日はメインのテーブルではなく、後ろの方の椅子の1列目、端っこに杉下さんという方がいましたけど、その杉下さんは前の区長さんです。その区長さんなどの思いも聞きながら、いかに再生利用の実証に取り組むまでの様々な思いがあったか、そういったことは私も見聞きをしています。ですので、大事なことは、いろんなことを乗り越えながら、様々な思いも抱えながら、だけどこの再生利用の実証に対して夢とか希望とか、それと長泥とか飯舘のためにという思いを超えて福島の復興であり、日本のためにもこの事業を成功させなければいけないんだという思いを持っている現場の皆さんがいますから。環境省としてやるべきことはその思いに応えて、この実証事業を多くの方に理解をいただく、そしてその長泥の皆さんが報われる形をつくっていくこと、これが何よりも大事だというふうに考えていますので、信頼を得て進めていけるように丁寧に、そして関係省庁とも、昨日あったように現場からは農水省にもっと前へ出てほしいとか、そういったことも受けて、それをしっかりと声を届けて、連携が深まったという形を現場の皆さんにも分かっていただくような取組が大事だと思いますので、そこをしっかりと踏まえて進めていきたいと私としては考えています。

(記者)毎日新聞の鈴木です。ラーブ外相との会談の関連です。これまで大臣はCOP25でも輸出要件の見直しについて政府内で調整されたり、大臣御自身いろいろ気候変動への思いがあると思います。会談の中で、例えば今、ブンアン2について大臣の主張があると思いますが、それも含めて、例えば輸出4要件をさらに見直したいとか、御自身の思いを伝えたことはあるのでしょうか。
(大臣)そうですね、私からはラーブ外相には自分が考えていること、そして今、議長国として世界の中でのオーストラリアに対してもそうですし、日本にもそうだし、EU離脱後、初めてとなる外遊でラーブ外相が各国を回ったときに、より野心の高い目標を掲げることができないのか、そういった思いというのは私も共有をしているということは、はっきりと伝えました。そして、それを受けて間違いなく国会の空気は変わっていると、これだけ石炭のことが議論になる国会は今までなかった。そして、与党の一角からも明確な、この石炭に対する更なるアクションが必要だという声が与党の幹事長からも出てきている。また、総理の答弁も、今まで私は2051年をということを言っていましたが、総理は2050年を視野にと言われた。あまりニュースになっていませんけど、私はものすごい発言だと思いますよ。2050年を視野にですよ。そういったことも含めて、脱炭素の方向に向けて間違いなく日本の中では前向きな機運というのが高まっているということをお伝えさせていただきました。