大臣談話・大臣記者会見要旨

原田大臣記者会見録(令和元年7月25日(木)11:03 ~ 11:35 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

(大臣)皆様おはようございます。実は、定例閣議も明日はないようでありますので、政策について御報告をしたいと思っております。
 フロン回収処理の国際展開についてということで、今日は特段に御報告をさせていただきたいと思います。
 先週、16日でございますけれども、フロン回収の改正法を施行する上で必要となる政省令等のパブリックコメントの手続を開始したことをまずは御報告いたしますとともに、改正フロン排出抑制法の成立を受けて5月末の会見を開いて以降、G20における他国との意見交換や国内の専門家との意見交換を通じまして、我が国のフロン回収処理対策を国際展開する重要性を改めて強く認識したところでございまして、その旨を、決意表明したいと思っております。
 実は、世界のフロン対策に目を向けますと、モントリオール議定書に基づき各国が製造等の規制には取り組んできましたけれども、回収処理に係る取組は必ずしも進んでおりません。代替フロンは二酸化炭素の数十から1万倍超と、非常に高い温室効果を持っているところでございます。世界全体での代替フロン排出量は、二酸化炭素換算で約9億トンでございますが、現在の対策を実施しても、なお将来的には日本の温室効果ガス排出量全体の1.5倍の約20億トンを超えると推計されておりまして、我が国だけでなく世界的にフロンの回収処理対策を進めることが極めて重要であると考えております。
 日本には、上流から下流までフロンのライフサイクル全体にわたる総合的な排出抑制の仕組みがございます。特に、フロン回収処理の仕組みについて、日本は主要先進国と比較しても、高度な対策を実施しています。回収の義務づけに加えて、回収量を正確に把握し、公表する仕組みは、EUやアメリカでも整備されておらず、我が国が世界に誇ることのできる先進的な状況であります。
 今回の法改正により、フロン回収済みの証明書がないまま廃棄機器が流通することを禁止するなど、実効性を更に向上させることで、世界に類を見ない画期的な仕組みになったと考えております。
 また、上流の製造段階ではイノベーションを起こし、日本のすぐれたグリーン冷媒技術を展開して、世界の温暖化対策に貢献すべく、環境省が導入促進、経済産業省が技術開発という役割分担の下、連携して支援を行ってまいります。
 また、特定フロンの一種であり、世界で生産が全廃されているはずのCFC-11の大気中への放出が増加しており、その原因が中国北東部での違法製造ではないかとの国立環境研究所を含む国際共同研究チームによる科学論文が発表され、報道もなされたところでございます。
 これらを踏まえ、我が国のフロン回収処理の仕組みを世界各国に広げていくため、先月開催されましたG20エネルギー環境大臣会合においても投げかけましたが、先日開催された締約国会議の作業部会に事務方を派遣し、モントリオール議定書事務局と意見交換をして、回収処理の重要性を共有するとともに、各国に対して、我が国が優れた、進んだ回収処理の仕組みをつくり上げたことを発言してまいりました。
 今後とも議定書締約国会合におきまして、我が国の優れた仕組みを発信するとともに、議定書事務局を含めた関係機関、関係各国とも連携し、例えば我が国のような機器の廃棄時における回収処理の義務づけ、回収量の報告の仕組みといったものを含めまして、各国の世界的、経済的な情勢等に応じて、このような取組を広げていくための方策や体制についても、あわせて検討を進めてまいります。
 作業部会においてはCFC-11の問題についても議論され、中国からは、国内対策の強化を行う旨が説明されたところであります。引き続き、モントリオール議定書の枠組みの中で原因究明、対策についての議論が進められておりますので、我が国としても積極的に協力してまいりたいと思います。
 いずれにせよ、地球温暖化防止に貢献するため、我が国の最先端の仕組みを世界各国に広げていくことは、環境省の使命であり、様々な機会を捉えて、フロン対策の重要性について呼びかけ、世界的なフロン対策の大きなうねりを作り出していく、そういう決意でございます。
 以上、私が申し上げましたように、私ども、この改正フロン排出抑制法を5月に成立させたところであります。このフロンの問題は、この30年来、大きな環境問題として国際的には議論されてきたところでありますけれども、それをどう、それぞれの国が抑制、規制するかということについては、それぞれの国に任せられてきたところがございまして、特に製造段階と、あとは使った後の回収・廃棄という段階を大きく見ますと、製造段階については、それぞれの国が相当しっかり、このモントリオール議定書に基づいてやっているようでありますけれども、どうも回収・廃棄といった処理の仕方が、少しばらばらではないかと。とりわけ私どもの今回の改正法に基づいて、非常にそこのところは厳しく対応したところであります。
 あわせて、では諸外国はどうだろうかと、こういうことを検討する過程で、どうも日本だけだとは言いませんけれども、日本はその辺は非常にやはり真面目にというか、かなり厳しくやっており、しかし、まだまだ十分その目的は達成されていないので、今回、規制を強化したところであります。それに比べて、諸外国には、先進国においてもかなりばらばらなところ、発展途上国はなおという感じがいたします。そこで、せっかくですから、私どもは、先進的に取り組んでいるこの規制のあり方について、国内で終わるばかりではなくて、地球全体の問題でありますので、各国、国際機関も含めて呼びかけようということであります。例えば事務局の体制がこれでいいのかとか、さらにはそれぞれの国の取組、とりわけ先進国には、やはりもっと強化してもらう部分があるのではないかと、こういう呼びかけをしようと考えたところであります。
 そういう意味では、待ったなしの環境政策を世界中で積極的に取り組むためにも、このフロンの問題というのは、ここで一回取扱いを見直して、世界中にそれを呼びかけていくということは必要だろうと思っております。
 今日は、幾つかお手元にも資料をお配りしておりまして、相当それぞれの分野の技術開発の状況が進んでおります。基本的に、フロンにつきましては、いわゆるオゾン層を破壊するという意味での問題は、ほぼ解決に向かっていると。ただ、CO2対策としての技術開発をこれからも相当進めていかないといけない、こんな状況であります。
 ただ、これは5月21日に、これはもう各報道の皆さんにも発表されましたけれども、中国の北部においてオゾン層破壊効果を持つCFC-11が相当、出されているのではないかとの科学論文が発表されたことから、報道にはしっかり出たところであります。このCFC-11と、また温室効果ガスとしてのフロンガスがどういう関係になるか、これはそれぞれ調査をしなければならないとありますけれども、このフロン全体については、この際しっかりまた見直し、また国際的にも呼びかける必要もあると考えております。
 そういう意味で、私どもは、これからはますますこの分野でもしっかりやっていかなければいけないと思っております。私ども今、考えているのは、以上のようなことであります。
 なお、我が国の規制については、産業界がイノベーションも含めて相当しっかりと対応しておりますので、その辺の皆さんの御意見も聞いておりますし、また、更なる努力も必要かと思っております。一方で、フロンの問題についての国際協力は、しっかり見直していくことも必要かと考えております。私からは、冒頭以上でございます。ついでに言ってしまいますか、他の報告も。いいですか、それではそういうことで。

2.質疑応答

(記者)幹事を務めます、毎日新聞の鈴木です。よろしくお願いいたします。フロン対策については、5月29日に同様に臨時会見が開かれまして、同じような趣旨の発言をされていると思うのですけれども、今回、改めて臨時会見をされる意味というのをもう一度、改めて教えてください。
(大臣)5月末に、あれはちょうど法律が成立したところでございました。その過程で率直に私ども、また私の印象として、日本はまだ十分でないから法律を改正、強化したところですが、相当真剣にやっている割には、ちょうど前後に中国北東部でのフロンガス、オゾン層を破壊するというような報道も大々的に出ましたし、この際にしっかり国際的な実態をと思いまして、各国の状況も子細に調べたところであります。フロンの規制はモントリオール議定書をつくった時期に一段落したという部分もないわけではありませんけれども、やはり、フロンガスとCO2の排出を考えたときに、我々が今、一生懸命努力しているCO2対策と比べて、フロンに何千倍も、また1万倍も温室効果があるというのは、これはやはり見逃すわけいきません。しかも、それに対して具体的な対策が必要だということで、既にあの時点から、私の長野での環境大臣会議もそうでありましたし、あのときもアメリカ、中国、ヨーロッパと、この問題についても取り上げました。そして、その後の専門の会議、作業部会でも、日本の取組を発信し、そしてまた、各国の更なる努力をお願いした、そういういきさつがあります。G20における各国との意見交換や国内の専門家との意見交換を通じまして、我が国のフロン回収・処理対策を国際的に展開する重要性を強く認識したところでありまして、それを私どもの中でおさめておくだけではなくて、国際的にも働きかけを具体化したいと思っております。ついては、このような決意を諸外国にももちろん申し上げますし、あわせて、モントリオール議定書の事務局、これは国連の機関でございますけれども、その国連機関にもしっかりこのことを申し上げます。そして、私個人的には、モントリオール議定書の事務局体制をやはり強化しなければいけないのではないかと、こういうこともこの意に含んでおりまして、そういう理由で、5月末の法律改正を踏まえてお話をいたしましたけれども、その後のいきさつを踏まえて、今日に及んだところであります。

(記者)すみません、もう一つのことというのは何なのか気になるので、もう一つのことを、何か続きに発表されようとしていたので、もう一つのことというのは。
(事務方)それは、今回のテーマとは関係がない話です。
(大臣)関係ないのです。関係ございませんので、また後で、これが一段落したらお話ししたいと思います。

(記者)共同通信の石川です。よろしくお願いします。CFC-11について、先日の作業部会で、中国からは対策を進めるとの旨の発表があったという御発言だったと思うのですけれども、これは中国自身がCFC-11を排出しているということを認めた上で対策を進めるという旨の発表だったのか、それともただ単に対策を進めるという旨の発表だけだったのでしょうか。
(大臣)これにつきましては、御承知のように、あれは5月に大々的に報道されました。私からは、その後のG20、長野での環境大臣会合のときに、このことを踏まえながら、アメリカ、ヨーロッパ、そして中国とも直接対話しました。中国の側は、これについては予想はしていたようでありますけれども、まず、その事実については、まだまだ調査は十分でないということはありました。ただ、この件については、排出している企業がわかれば、そこについては決して違反がないようにやっていると、こういうような答えをいただきました。その状況については、必ずしも、もちろん認めているわけではありませんけれども、今のようなお話が返ってきたと思います。その後、専門家会議、作業部会があったものですから、そのとき、うちの事務方からしっかりこのことを指摘させていただきました。中国側からの話は事務方から。
(事務方)CFC-11放出の原因については、引き続き、議定書の枠組みの中で原因究明をしていくことになっています。一方で、中国において対策を強化するということで、4点ございまして、違法製造に対する罰則強化、立入検査の強化、簡易測定器の導入、それから大気モニタリング体制の構築、そのように対策を強化すると作業部会で表明がございました。

(記者)読売新聞の安田です。お疲れさまです。今回のフロンの日本の仕組みを国際展開へということですが、具体的にどういう方法で国際展開をしていこうと、いろいろな方法があると思うのですけれども、考えていらっしゃるかをお聞きしたいと思います。
(大臣)我が国のような機器の廃棄時における回収処理の義務づけ、回収量の報告の仕組みといったものも含めまして、各国の社会的、経済的な情勢等に応じて、議定書の事務局を含めた関係機関、関係各国とも連携しつつ検討してまいりたいと思っております。私どもは、中立的に見て、私どもの法的な制度も含め各国に比べて先進的な取組をやっているということは、やはり諸外国に対して、また事務局に対しても積極的に意見を陳述して、それぞれの改善の効果に結びつけばいいなと考えております。とりわけ、CO2対策にしましては、これは、今はもうパリ協定以降、それぞれの国が目標を作り、それぞれまたイノベーションも含めて相当な努力を今やっている、また日本もやらなければいけない、そんな段階に来ているところでありますけれども、しかし同時に、フロンガスが持つ温室効果が、CO2換算で5,000倍にも、1万倍にもなります。それを、かなり規制が緩い中で、CO2対策を一生懸命やっている。CCUSとか、そういうことも含めてやっているところを考えると、まず、もっと大きな効果を持つ、フロンをもう一回真剣に取り締まるというか、抑制しなければ、一方で我々が今やっているCCUSとか、そういうことも含めての対策と比較したときに、もっとやるべきことがあるのではないかと、こういうことが出てきます。これは、ある意味では論理的に出てくる話だろうと思っております。出発点は素朴かもしれませんけれども、これもあれもしっかり、ぎりぎりまでやることによって、最終的には我々この地球の環境を守ると、こういうことはやはり必要だろうと思います。具体的には、それぞれ各国に問題があると思えば、しっかり訴えにも行きますし、本当に今のままでいいのかということも含めて、事務局にもしっかり訴えていきたいと思っております。これは国際的な動きになりますから、やはり日本の外務省も含めて、相当な力を結集していかなければいけないと思っております。

(記者)環境新聞の小峰でございます。大臣のおっしゃっていることをお聞きして、今の会見で自分なりに理解してみたのですけれども、国際機関を強化する必要があるとおっしゃっていましたけれども、フロンにしろ、代替フロンにしろ、各国がたくさん出し過ぎているだとか、また、中国の東北部のような、国際法上違反的なことに関しては査察権を持つような機関にしろということでしょうか。というのは、核拡散防止条約、よく大臣御存じでしょうけれども、エネルギー安保のところに詳しいでしょうから。先日、天野之弥IAEA事務局長が亡くなりましたけれども、IAEAにはNPTの核拡散防止条約の加盟国に査察権がありますよね。このモントリオール議定書の加盟国においても、将来的には査察権を持つような強力な体制をということを大臣はおっしゃりたいのではないかと思いましたけれども、いかがでしょうか。
(大臣)今、おっしゃるように、様々、条件もありますし、それに一般論で査察権といいましても、それぞれの考え方があろうかと思います。ですから、まずは、遠い将来にはそういうことも考えながら、まずは、今日までもう既にフロンの製造から処理まで、それなりの国がやってきた歴史がありますから、そういうものを踏まえて、仮に日本が訴えるようなことが効果を出してくればいいと思います。それをなかなかできないというのなら、今おっしゃったようなこともあり得るかもしれませんけれども、まずは私どもからすれば、理解していただく国々を増やしていって、何がそのときに一番必要なことかということは、しっかりまたその段階で決めていかなければいけないと思っております。まずは、本当に最初の振り出しでございますから、どれぐらいの国が同意してくれるか、そこから出発しなければいけませんけれども、それはやはり重要なことだと思っております。

(記者)エネルギーと環境の大村です。いわゆる最後のページの決意のところの、世界各国に取組を広げていくための方策や体制についてもあわせて検討とありますが、今、もう既に検討しているのですか、それともこれから、検討するに当たっては経産省と一緒にやらないといけないとは思いますが、その辺の取組の現状と、これからの予定というか、方針を教えてください。
(大臣)一番大事なところであります。そういう意味では、もう既に議定書事務局にも5月、6月の段階で私どもの問題意識はしっかり伝えておるところでありまして、作業部会でもそのことを御報告して伝えたところであります。具体的には、これからこの日本政府の決意をこれからしっかりした形でそれぞれ活動を始めなければいけないと思っております。経産省も含めて、しっかり今日までの環境省の取組についてはもちろん了解を得ているところでありますので、これを踏まえて、これから積極的に行動に移したい。何事もやはり政策にしていかなければ、これは具体化しないわけでありますので、そういう意味では、もう既に着手していると、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
(記者)いつぐらいまでに、何か、報告書を出すとかというのはありますか、目標は。
(大臣)報告書をですか。
(記者)ええ。例えば予算案の提出前とか。
(大臣)当然、こういう活動については、今後の我が省の予算の中にはしっかり取り込みたいと思います。最終結論は、それはあるいは時間がかかるかと思いますけれども、その方向で、私どもはやはりかじ取りをとっていきたいということを考えております。

(大臣)会見は終わりますけれども、実は昨日とおととい、私は新潟県の柏崎刈羽原子力発電所を視察してきました。柏崎市長、刈羽村長も含めて、多くの皆さんとお話をしてきたところです。その場所で記者会見をしてまいりましたけれども、しっかり皆さんやっておられることとあわせて、やはりこれから、例えば冬の間、これは他の地域にない豪雪の地帯でもありますから、本当に避難道路がしっかり確保されるかどうかも含めて、まだまだ課題はたくさんあるようでありますけれども、私ども、内閣府原子力防災担当としてしっかりこれも取り組んでいかなければいけないと思っております。とりあえずそれだけ御報告をしておきます。

(以上)