大臣談話・大臣記者会見要旨

COP29 閣僚級セッション 浅尾慶一郎環境大臣ステートメント

(はじめに) 
○ 議長、ありがとうございます。はじめに、COP29 の開催に尽力されたアゼルバイジャン共和国に感謝申し上げます。 
○ 昨年の COP28 での最初のグローバル・ストックテイ クの決定は、世界の行動が 1.5 度目標に沿っておらず、この決定的な 10 年での行動が重要であることを明ら かにしました。同時に、緩和、適応、実施手段のそれぞれにおいて、各国が目指すべき具体的な行動を示しました。我が国は、この決定を重視し、既に行動を起こしています。
 
(気候資金) 
〇 今次 COP では、2025 年以降の気候資金に関する新規 合同数値目標(NCQG)に合意することが期待されています。我が国は、これまで世界の気候変動対策に貢献してきました。具体的には、気候変動分野における途上国支援のため、2025 年までの5年間で官民合わせて最大700億ドル規模の支援を表明し、その実現に着実に取り組んでいるところです。 
〇 国際社会全体が気候変動対策に貢献していく体制を整えることが必要です。特に、1.5 度目標の達成に向けては、能力のある国による貢献や、民間資金の動員が不可欠です。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が採択された1992 年から30年以上が経過し、世界経済は大きく変化しました。NCQG は、この現実を踏まえたものとしなければなりません。 
〇 我が国として、COP29での野心的かつ実現可能なNCQG決定に向け、引き続き積極的に議論に貢献していきます。 
 
(適応、ロス&ダメージ(損失及び損害))
○ 我が国は、気候変動に適応するための支援倍増に取組んでいます。また、ロス&ダメージの観点も踏まえ、早期警戒システム導入促進イニシアティブの下、官民が連携し、アジア太平洋地域での気候変動により悪化する災害への対策に取り組んでいます。
○ さらに、COP28 で運用化が決定されたロス&ダメー ジに対応するための基金の立ち上げのため、我が国は、1000 万ドルを既に拠出しました。引き続き、同基金による早期の支援開始に貢献していきます。 
 
(緩和) 
○ 緩和については、昨年の GST 決定を踏まえ、全ての締約国が、最新の科学を踏まえ、1.5 度目標に整合的な、全温室効果ガス(GHG)、セクター、カテゴリーを対象とする経済全体の排出削減目標を設定することを求めます。また、特に主要経済国に対して、総量削減目標を設定することを呼び掛けます。加えて、GST 決定の緩和部分のフォローアップを含む、緩和に関する強いメッセ ージを決定することが重要であることを強調します。 
○ 我が国は、現行の国が決定する貢献(NDC)の達成及 び 2050 年ネット・ゼロに向けて、オントラックで GHG の削減に取り組んでいます。また、脱炭素、経済成長、エネルギー安全保障を同時に達成しつつ、各国の事情 に応じた多様な道筋の下で、ネット・ゼロという共通 の目標を目指すことを、締約国に呼び掛けます。 
○ 我が国は、今後、産業構造、産業立地、エネルギー、 市場創造を一体的に議論し、スピード感を持って「GX2040 ビジョン」を策定します。また、来年2月を 目指し、1.5 度目標と整合的で野心的な NDC を提出すべく、具体的な検討を加速していきます。 
 
(共同行動のイニシアティブ) 
○ しかしながら、緩和は、NDC で野心を掲げて終わりではなく、着実に実施し、その野心を実現してこそ意味 を成す継続的な活動です。 
○ このため、我が国は、各国が NDC に基づき緩和の取組を着実に実施し、その実施状況を世界と共有できるよう、「NDC 実施と透明性向上に向けた共同行動」を発表し、国際的な協力の下での共同行動を促進することを約束します。 
○ 共同行動は、3つの柱により構成されます。一つ目 は、サーキュラーエコノミーやネイチャーポジティブ とのシナジーアプローチです。例えば、日本の地方都 市である佐賀市では、廃棄物発電施設から排出されるCO2を回収し、隣接する植物工場に移送し、野菜を栽培する取組を行っています。野菜の収量は1.5倍に増加 しました。 
○ 二つ目は、今次 COP での6条運用ルールの更なる整 備の進展も見据えた国際協力での緩和の拡大です。日本は、29か国の JCM パートナー国と協力して緩和プロ ジェクトを加速していきます。3つ目は、「バクー世界 気候透明性プラットフォーム(BTP)」と連携した世界 の透明性向上です。 
○ 我が国は、このイニシアティブの下、世界各国と共 同し、NDC の着実な実施と透明性の確保を追求してい きます。 
 
(パリ協定第6条) 
○ 最後に、我が国としては、今次 COP の成功にパリ協定第6条の詳細運用ルールの決定が必要であることを強調します。 
○ パリ協定6条は、質の高い炭素市場を構築し、脱炭 素技術に対する民間資金の動員を促し、各国の協力の 下で、世界全体に緩和を拡大していくものです。我が国としても、二国間クレジット(JCM)を通じて、世界の脱炭素化に貢献していきます。今次 COP で詳細運用 ルールを決定し、各国が協力して、世界全体での緩和の取組を広げていきましょう。 
 
(おわりに) 
○ 各国の皆様、COP29 を成功に導き、1.5 度目標の達成 に向けて、揺るぐことのない緩和の道を、共に歩み続けていきましょう。ありがとうございました。