大臣談話・大臣記者会見要旨

伊藤大臣閣議後記者会見録 (令和6年2月9日(金)09:15~09:43 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 本日の閣議において総務大臣から、浄化槽行政に関する調査の結果に基づく勧告があり、生活環境の保全等に重大な支障の恐れのある浄化槽が的確に判定されていない等の実態を踏まえ、必要な措置を講じることが求められました。
 環境省としては、今回の勧告を踏まえ、国が定めている判定指針の見直し等について、早急に検討を進め、その結果に基づき、必要な措置を講じてまいります。
 2月6日に、石川県の馳知事が記者会見において、県の災害廃棄物処理基本方針が示され、今回の災害では、県全体で約240万tの災害廃棄物が発生すると推計され、その迅速かつ広域的な処理が必要であること、市町への、国や県、全国の自治体などからの支援により、令和7年度末までの災害廃棄物の処理完了を目標とすることなどが発表されました。
 膨大な量の災害廃棄物であり、被災自治体だけで対応することは困難です。環境省では、発災直後から、環境省職員の派遣や、人材バンク制度の活用などによる人的支援、ごみ収集車の応援派遣などにより、石川県や被災市町への現場支援を積極的に行ってまいりました。
 引き続き、県や関係省庁、関係団体等と緊密に連携し、被災自治体に対して、経験、知見を持つ環境省職員や、他の自治体職員の派遣、常駐等による人的支援、技術的支援を行っていくとともに、特例的な財政支援を行っていきます。これにより、石川県の基本方針に沿って、災害廃棄物処理の計画が具体化され、広域処理も含めて処理が円滑、迅速に進むよう、総力を挙げて被災自治体を支援してまいります。
 本日、脱炭素先行地域の第5回目の募集要領を発表します。募集期間は6月17日から28日です。脱炭素先行地域は、2050年を待つことなく、2030年度までにカーボンニュートラルの実現を目指す全国の先行例、模範となる地域で、これまでに74地域が選定されています。 今回の募集では、地域特性や地域課題解決、横展開に結びつく地域脱炭素の基盤の構築などの観点で、これまで以上に先進性、モデル性に優れた提案を選定したいと考えています。 募集までの期間もあることから、十分にご検討いただき、先進性、モデル性の高い計画を提案いただけることを期待しております。
 

2.質疑応答

(記者)おはようございます。幹事社の共同通信、堀口です。一点伺います。 欧州連合欧州委員会は6日、温室効果ガスの域内排出を2040年までに1990年比で90%削減する目標を発表しました。EUは既に排出を2030年までに55%削減し、50年までに実質ゼロとする目標を掲げていますが、40年の目標を設定することで、実現に向けた道筋を示した形になっています。 これについて、大臣の受け止めと、日本での次期目標に向けた考えについてお願いします。
(大臣)欧州委員会が、1990年比で2040年90%削減という目標案をEU各国に提案したことは承知しております。極めて意欲的な目標案であるという印象を持っております。いずれにしても、この提案はこれからEU内で具体的な議論が進められていくものというふうに認識しております。
 我が国は、1.5度目標と整合的なものとして、2030年度までに温室効果ガスの46%削減、さらに、50%の高みに向けて挑戦を続けていくという目標を掲げております。2021年度には、2013年度に比べ約20%の削減を達成し、着実に実績を積み重ねております。
 次期のNDC、これについても、IPCCによる科学的知見や排出削減の実績等を踏まえつつ、関係省庁と連携しながら、しっかり検討してまいりたいと思います。
 
(記者)時事通信の鴨川です。脱炭素先行地域に関してお伺いします。先ほど発言がありましたように、5回目の募集が今後行われます。地域の脱炭素化を図るには、再生エネルギーの調達が課題となっていて、再エネ促進区域を市町村と都道府県が共同で設定できるように制度改正する動きが今あります。再エネ促進区域と脱炭素先行地域の施策を連携して実施することで、地域の脱炭素化をスムーズに図ることができると思うのですけれども、今後の制度改正と脱炭素先行地域の取り組みをどのように連携させて進めていくべきでしょうか。
(大臣)2050年にネットゼロの実現、また、2030年度46%削減目標の達成のためには、地方公共団体が主導する地域の脱炭素化が必要不可欠でございます。あらゆる施策を総動員していくことが必要だと考えております。
 脱炭素先行地域は、市町村等の一定地域内における民生部門の電力消費を中心に、2050年ネットゼロを20年前倒しで実現する「脱炭素ドミノ」のモデル作りを目的とするというものでございます。
 他方、地球温暖化対策推進法に基づく再エネ促進区域は、環境への適正な配慮を確保し、地域における円滑な合意形成を図りながら、地域共生型の再エネの導入を促進するための制度でございます。
 このように、戦術的に言えば、両施策の目的は若干異なるのですけれども、戦略的には共通でございます。こういった様々な施策を地域の実情に応じて組み合わせる、そのことによって地域の脱酸素化をさらに加速してまいりたいと、そのように考えております。
 
(記者)毎日新聞の岡田です。冒頭の幹事社質問の、次期NDCの設定について質問したいのですけど、この次期NDCとしては2035年目標を出すという理解でよろしいでしょうか。それと、EUは40年目標を示したわけですけど、この40年目標も一緒に示した上で議論するのか、どういった次期NDCの考え方かというのをお聞かせください。
(大臣)お答えします。NDCに関する御質問でありますけれども、温室効果ガスの2035年以降のそれぞれの国の排出削減目標については、COPの決定の中で、2025年までに2035年目標を、2030年までに2040年目標を提出することが国連から奨励されております。
 我が国の次期NDCに関する議論の開始時期については、現行の2030年度目標に向けた進捗や各国の動向などを踏まえつつ、関係省庁とも連携しながら検討してまいりますけれども、いずれにしても、しっかり議論を進めてまいりたいと思います。
(記者)今のところは、35年目標を出すかどうかということも明言はできないというようなことでしょうか。
(大臣)今のところ、その結論が出ていないということでございます。
(記者)過去の設定経緯を見ますと、NDCのほうを先に設定して、それに合うようにエネルギー基本計画を議論していたというのが現行のものだと思うのですけれども、それまでは順番が逆だったと思うのですけど、今回は、大臣としてはどういう考え方をしていますでしょうか。NDCを先に設定した上で、その目標に向かってエネルギー基本計画を議論する方向に、日本政府を方向付けたいのか、環境大臣としてどういう考えかというのをお聞かせください。
(大臣)NDCについては、基本的に環境省が主導的に決めるものだと思います。ですから、決める中において、もちろんエネルギー排出をどうするかということになりますので、順番の話がありますけれども、あくまで、環境省が主導的にNDCに関しての議論は進めてまいりたいと思います。まだ、その時期については、今日は明言できませんでしたけれども。
(記者)それは、エネルギー基本計画よりも先行してということもあるのですか。
(大臣)その時期がどうなるかという問題はありますけれども、いずれにしても、NDCに整合的な形でエネルギー基本計画が定められるというふうに考えております。
(記者)確認ですけど、整合した形でというのは、NDCを設定した上でという意味なのかというところはどうなのですか。
(大臣)NDCの議論をするときに環境省が主導的になりますけども、主導している中に、経済産業省も議論に入りますので、したがって、整合的な形で、エネルギー基本計画を決められるというふうに理解しております。
(記者)それについては、今のところ白紙ということなのですか。
(大臣)NDCをいつ出すかということについて、まだ結論を出しておりませんので、そういうことになると思います。
 
(記者)北海道新聞の大能と申します。クマの指定管理鳥獣についてお伺いしたいのですけれども、大臣が昨日、クマ類の指定を表明なされて、地元では非常に期待の声が高まっている一方で、新しくクマに特化した新たな支援メニューについては、本当に財政的な措置がとれるのかということが、まだわからないというような声も出ております。おそらく、シカとイノシシと違って、新たなメニューを作るということであれば財源が必要になるかと思うんですけれども、こうした予算獲得に向けて大臣はどういうふうに取り組まれていくのかお教えください。
(大臣)御質問にお答え申し上げます。今度、4月になると思いますけども、指定管理鳥獣に指定した場合は、そのための財政支援というのは環境省として責任を持って行ってまいりたいと思います。令和6年度の予算はまだ決定しておりませんけれども、その中に既に指定管理鳥獣に対する予算というのは組み込まれていると思います。
 ですから、まず6年に関しては、その中で必要な財源を振り向けるということになると思いますし、また、令和6年度で終わるわけではありませんので、令和7年度については、予算申請の段階から、その分も十分に勘案して財源を確保するという形になろうかと思います。
(記者)大臣の御決意としてお伺いしたいのですけど、昨日の検討会で示されたメニューというのは、だいたいもうほとんど実現に向けて大臣は動かれるという認識でよろしいでしょうか。
(大臣)もちろんです。昨日の決意といいますか、方針は大きく言えば二つあると思うのですけれども、クマ類と人間社会の共生を図るということが基本でございます。そのためにゾーニング管理、広域的な管理、順応的な管理、この三つの管理を推進して、人とクマ類の空間的なすみ分けを図っていくと。その中において、個体数の適切なモニタリングをした上で必要な措置を取る。その中に、もちろん指定管理鳥獣に指定したことによって必要な措置の中に捕殺も入ってくるという、それに対する財政支援というのもあるわけでございますので、そこだけをピックアップするということではなくて、とにかく人とクマ類がすみ分けるというか、共生して、クマ類を絶滅させてはいけないと逆に思いますので、人身被害を減らす、なくすということは、今回の目標だと思います。
 
(記者)エネルギージャーナル社の清水です。冒頭、大臣がおっしゃった能登半島沖の災害廃棄物に関して伺います。先ほどのお話だと石川県が発表したのは、災害廃棄物の総量として約240万t、令和7年度末までにということ。ただ、報道等はいろんな数字が出ていまして、要するに全容を伺いたいのですが、例えば災害廃棄物の従来の処理の対応でいくと、約50年分ぐらいある、60年分ぐらいあるとか、それから、5年以上かかるとかいろいろ出ているじゃないですか。今の廃棄物処理行政の施設なり、それから、廃棄物の発生状況から見ると、どのくらいの総量が出て、今の処理状況から処理施設からいくとどのくらいの年数で、完了できるだろうと、その辺どう見ているのですか、環境省は。石川県の予想だけじゃなくて。
(大臣)石川県の予想、一昨日発表されたわけでありますけれども、あくまでこれをベースに石川県が目指している7年度末までの完了を目指してまいりたいと思います。日本、今までいろんな災害がありました。私、宮城県の出身ですけども、東日本大震災もありました。そしてまた、熊本県の地震もありました。そういった過去のいろんな災害の中で、災害廃棄物の処理についてはいろいろなノウハウが高まってきているとともに、今回も宮城県等から、あるいは熊本県等からその災害廃棄物の経験、知見を要する職員が派遣されているとともに、そういう能力のある企業団体も多く支援に回っております。ですから、私は石川県の馳知事のおっしゃるように、7年度末までの処理を可能にするように、環境省として全力を挙げたいと、そのように考えております。
(記者)処理には、やっぱりその施設の整備とか、それから被災自治体だけじゃなくて、おっしゃったけれども、広域の処理体制をどうするか。中間置き場はどうするか、船や何かの海上輸送をどう活用するかとか、いろいろあるじゃないですか。環境省はそういうところをやっぱりまとめるのが主管官庁としては重要だと思うのですけども、その辺の見通しというのは立っているのですか。
(大臣)おっしゃられたように、環境省としては既に仮置き場の設置を進めておりますし、また今後必要になるさらなる仮置き場もやってまいりたいと思いますし、今、運搬手段のところの話がありましたけども、もちろん海上輸送、陸上輸送を合わせてやっていきたいと思いますし、東日本大震災は、現場におりましたけれども、やっぱりあのとき分別技術、あるいは分別のシステムというのは、非常に工夫されて進歩したんですね。今度そういう経験自治体からも既に職員が派遣されております。ですから、過去の経験を踏まえた形で、あのときよりは相当迅速な形で災害廃棄物の処理が進むということを期待しておりますし、今おっしゃられたように環境省としては広域処理も含め、それを取りまとめる役になりますので、石川県だけじゃありませんけれども、石川県とも連携して、そしてまた、国土交通省とも連携して、しっかりこの廃棄物の処理が7年度末までに完了するように全力挙げてまいりたいと、そういうふうに考えております。
(記者)東松島市というようなノウハウというか経験もね、大臣はされているわけで。私が言いたいのは、産業界。今は産業廃棄物事業者も優秀なところがあるので、ゼネコンとか産業廃棄物事業者をどーんと活用した、要するに官民一体の対応をやっぱりすべきじゃないかと。そういう体制をつくるべきじゃないかという具合に思うのですけども、どうですか。
(大臣)おっしゃるとおりです。既に一昨日、そういう関係の企業が石川県知事と面会したという話も聞いております。ですから、既に官民挙げて災害廃棄物処理をするという体制もできつつあります。
(記者)令和7年度なんて言わないで、もっと塗炭の苦しみを味わっているわけですから、被災者は。もっと早く、環境省は早く完了する時期を目標にするとか、そういうのを出してほしいですな。
(大臣)石川県とも連携して、7年度末という計画を立てておりますので、それが前倒しできるかどうかも検討してまいりたいと思います。
 
(記者)NHKの林と申します。大臣、冒頭おっしゃっていただいた浄化槽の件、大臣が言える範囲でちょっと具体にどういう内容を受けて、今後、具体的に環境省としてどう対応をとっていくかというのを伺ってよろしいでしょうか。
(大臣)まず、指針の見直しについて促進するということだと思います。それから、もう一つは、個人が設置した浄化槽の情報というのは必ずしも市町村に十分把握されてないという現実もあります。ですから、そういった点でございますけれども、環境省としては、今のことをもう少し硬い言葉で言えば、国が定めている判定指針の見直し、それから、関係事業者からの情報収集の仕組みを機能させる措置でございます。環境省としては今回の勧告を踏まえて、専門家等による検討会を速やかに立ち上げて議論を進めてまいります。自治体や事業者へのヒアリングも行いながら、本年夏を目処に方針を取りまとめていただいて、その結果に基づき、判定指針の見直し等の必要な措置を速やかに講じてまいりたいと、そのように考えております。
 
(記者)環境新聞の小峰です。ちょっと話変わりますけれども、伊藤信太郎大臣は、英仏中伊の4か国語に堪能だということは有名ですけれども、昨日、ドイツ語も堪能なんだなということが分かりました。というのは、昨日、大臣室で17時半から30分間の予定でドイツ連邦議員団との会談がありましたけれども、30分間も超過してですね、随分話し合ったというのは。そして、先ほども質問が出ましたけれども、EUの欧州委員会は2040年に40%の削減を打ち出している。そういう中で、ドイツ与党のキリスト教民主同盟及びキリスト教社会同盟の院内副総務だとかですね、いろいろなそうそうたるメンバーが来られました。昨日はどんな突っ込んだ話をされたのでしょうか。
(大臣)昨日いらしたメンバーとは、実は私が自民党の国際局長のときにドイツに訪問しまして、既に何度か会ったことのある人がほとんどでございます。ですから、私が環境大臣になったので環境省にいらしたというのがまずございます。もちろん今、私は環境大臣でございますから、環境問題を中心に私のほうからお話を差し上げました。
まず、COP28において、私がどういう形で議論を主導したかということでございますけれども、COP28ではやはり、バイファケーションというか、先進国と発展途上国の二項対立にならないように、全体でパリの1.5度目標を達成するために、私が各会議で強く主張したことや、その結果、最終的には全会一致でデシジョンというペーパーが出されたことなど、お話しいたしまして、その中で私が申し上げたのは、196の加盟国・地域が協力して1.5度目標を達成することが必要であるということがデシジョンに盛り込まれたことと、それに必要な資金ですね、ロス&ダメージもありますし、また発展途上国が脱炭素をするためにどうしても資金が必要な部分がありますので、その資金が必ずしもG7の国だけが出すわけではなくて、発展途上国と言われている国の中にも、資金供与ができるだけの余力を持った国が複数ございますので、196の国の中で資金が出せる国は、それぞれ応分の資金を出すべきだという点とか、あるいはその資金は必ずしも国による公的資金だけではなくて、プライベートセクター、民間部門の資金というものも導入してやっていく。1.5度目標の達成のためには、日本みたいに既に整合的な削減を実施している国もありますけれども、実施していない国が多くありますので、実施していない国のうち、実施できない国というのはあると思うんですね。ですから、その1.5度目標の山に登るのに、日本のようにちゃんと登っている国もあるけれども、こう回らなければいけない国もあり、そう回らなければいけない国に対しては、やっぱり大きく二つ必要ですね。一つは資金供与と技術移転です。日本はやっぱり環境技術というのは大変持っておりますので、そういう環境技術を供与するということは、パリの目標を達成するのに非常に必要だと。そこで、外交の話なので、向こう側の発言は少し差し控えたいと思いますけれども、日本もドイツも技術のある国なのですね。ですから、その技術の面で協力していこうということを私のほうから強く申し上げたところでございます。それと、前段申し上げたように、私は元々ドイツに何度も訪れて、去年も訪れておりますので、日本とドイツが多層的な分野で協力していこうという話で、30分を超えて会談が行われたということでございます。
(記者)それでは、英仏中伊のほか、今後、ドイツ語も堪能というふうに理解してよろしいのでしょうか。
(大臣)私は、実はドイツ語が堪能どころか、ほとんどというか、しゃべれません。ところが昨日は、私は英語でやろうかなと思ったんですね。そうしたら、通訳の方が2名いらっしゃいまして、私の発言は、ドイツ人の通訳がドイツ語に訳して、ドイツ側の発言は日本人の通訳が日本語に訳すという、非常に丁寧な通訳体制で行われたので、ドイツ語ができないことはここではっきり申し上げたいと思います。
 

会見動画は以下にございます。
https://www.youtube.com/watch?v=-1fs582JQDs

(以上)