大臣談話・大臣記者会見要旨

伊藤大臣閣議後記者会見録 (令和6年1月9日(火)11:00~11:23 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 2024年の年頭所感として、今年の重要課題、目指す方向性について、大きく5点申し上げます。
 1点目は、令和6年能登半島地震への対応についてでございます。お亡くなりになられました皆様に、心から御冥福を申し上げます。また、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。被災地域における生活環境の保全と早期の復旧、復興に向け、し尿、災害廃棄物の処理をはじめ、被災市町村のニーズに即した、きめ細かい支援に全力で取り組んでまいります。
 2点目は、気候変動対策の推進です。昨年12月にUAE、ドバイで開催されたCOP28を踏まえ、地域脱炭素の推進、地域共生型の再エネの拡大、サーキュラーエコノミーを通じた脱炭素化、ネイチャーポジティブの推進等に取り組んでまいります。
 3点目は、東日本大震災からの復興です。2020年代にかけて、故郷に戻りたいという御意向のある住民の方々が帰還できるよう、除染や家屋等の解体、県外最終処分に向けた取組、ALPS処理水に係るモニタリング等、地域に寄り添いながら取り組んでまいります。
 4点目は、環境基本計画の見直しです。環境課題と経済・社会課題に対して、統合的アプローチによって、同時解決を図るなど、今後の環境政策のグランドデザインを示す新しい計画として、本年4月の閣議決定を目指します。
 5点目は、原子力防災です。関係自治体と緊密に連携し、原子力災害対応の実効性向上に取り組みます。これらに加えて、公害健康被害対策、PFAS対策、クマ対策、プラスチック汚染に関する条約交渉をはじめとする環境外交など、環境課題に真摯に取り組む1年にしたいと思います。
 続いて、令和6年能登半島地震における環境省の対応について、1月4日木曜日の会見以降の取組、進捗状況をご報告いたします。
 まずは、避難所のし尿対策でございます。仮設トイレの増設が順次進んでおり、し尿の回収体制の強化が課題となっております。関係団体に協力いただき、本日から、バキュームカーによる回収を30台体制に増強し、仮設トイレからのし尿回収を進めています。回収したし尿の効率的な運搬も重要です。現在、能登地域のし尿処理施設が稼働を停止しており、代替措置として、県南部の白山市の処理施設への運搬・処理を行っていますが、輸送距離が長く、非効率な状況です。このため、県とも連携し、七尾市、珠洲市などの能登地域にある稼働停止中のし尿処理施設の受入れタンクを、一時的なし尿の貯留施設として昨日から活用し、輸送距離の短縮を図っています。今後も、運搬効率化に向けた対策を鋭意進めてまいります。
 また、仮設トイレが適切に使用されないことで、紙詰まりや衛生環境の悪化につながるおそれがございます。このため、前田大臣官房審議官を現地に派遣し、関係省庁とも連携しながら、仮設トイレの適切な使用法に関する周知を進めております。
 また、被災地で発生する生活ごみについても、被災自治体のごみ収集車に加えて、名古屋市から、ごみ収集車の応援派遣をいただき、被災地の生活ごみの順次回収を行っております。生活ごみが堆積し、避難所での生活環境に支障を来すことがないように、引き続き収集体制の強化に取り組んでまいります。
 次に、現地の支援体制についてでございます。石川県に合計25名規模の職員を派遣し、特に大きな被害を受けている能登地域の輪島市、珠洲市、志賀町、能登町、穴水町、七尾市の6市町に、それぞれ2名の職員を常駐させ、現地支援を行っています。
 また、環境省の人材バンク制度を活用し、災害廃棄物対応の知見を有する長野市、倉敷市、東京都、八王子市、常総市の職員計13名が、能登地域の被災自治体に常駐し、災害廃棄物対策業務を支援しております。災害廃棄物処理支援ネットワークの加盟団体からも、技術専門家の派遣や収集運搬の応援をいただいております。この場をお借りして御支援、御協力いただいている全ての方々に御礼申し上げます。
 また、今後、被災家屋の片づけなどが進むにつれて、災害廃棄物が順次発生することから、仮置場の確保が課題となります。一部の自治体で仮置場が設置されており、今後さらに設置が進むと見込まれます。このため、現地の環境省職員が仮置場や、その候補地を現地確認し、仮置場の設置、運営が適切に行われるように、敷地の広さ、搬入道路の状況、分別や管理の方法などについて助言を行うなど、現地での支援を強力に進めてまいります。
 今後とも、被災自治体に寄り添った支援を環境省一丸となって行ってまいります。以上でございます。
 

2.質疑応答

(記者)おはようございます。幹事社、テレビ朝日の中尾です。2点ございまして、まず1点目。能登半島地震の発生から8日たちまして、今具体的に環境省の対応の進捗状況をお示しいただいたところです。この8日間というか、対応を始めてから、大臣がいろいろお話を聞いて率直に受け止められていることと、また災害ごみ等の当面の処理について、自治体へのヒアリングや政府の被害推計から、具体的な推定値、あるいは推定値を出せるめどが立ったのか、この辺りを伺えればと思います。
(大臣)今回の能登半島地震、大変な災害であるとともに、やっぱり半島であるという地理的な状況もあって、道路の寸断が続くなど、困難な状況が続いていると思います。そういった中で、まだ孤立集落が解消され切っていないと、大変な困難な状況でありますし、また私が今お話ししましたように、し尿処理、これもその運搬手段、あるいは道路の問題などもありますので、全力を挙げて、環境省としても動いているところでございます。
 それから、今お話がありました災害廃棄物の問題でございますけれども、まだ全容が分かっておりませんけれども、過去の経験から私としては、この災害廃棄物の対策は発災後の時系列、局面に応じて、大きく分けて、応急初期の「し尿、生活ごみの処理」、それから応急・復旧期の「災害廃棄物撤去」、それから復旧・復興期の「災害廃棄物処理」の3つのステージがあって、大局観を持って、戦略的に対処することが重要であるというふうに考えております。
 発災後、初動の現在は現地体制の構築・強化を進めながら、1つ目の、し尿、生活ごみの処理の支援に注力しておりますけれども、2つ目の災害廃棄物撤去に向けた支援も並行して徐々に進めているところでございます。
 例えば、1つ目のステージの取組である、し尿処理については、冒頭でも発言したように、バキュームカーを派遣し、回収体制を増強するとともに、運搬の効率化のための取組も鋭意進めているところでございます。
 それから、災害廃棄物の発生量の推計については、現時点では、現地では救命・救助活動、あるいは道路の啓開がまだ行われている最中であって、また、余震も続く中、また雪も降っている中、被害の全容がまだ明らかになっておりません。したがって、その発生量を現時点でお示しすることは困難であると思います。他方、今後、災害廃棄物の処理を計画的に進めていくためには、災害廃棄物の発生量の推計が重要であることから、被害の実態が明らかになった時点において、被害自治体が行う発生量の推計や処理実行計画の策定などに対して、技術的な助言や支援を行ってまいりたいと思います。
(記者)ありがとうございます。続いて2点目、こちらも能登半島地震になりますけれども、能登の志賀原発周辺、志賀原発に関連するモニタリングポストで測定できなくなっているものがあると、規制庁が明らかにしているということです。万が一の原発事故の際に、遠方のほうの住民の避難に重要とされる情報が失われておりまして、影響も想定されることがあるかと思われます。環境大臣というより、原子力防災担当大臣としてになるかもしれませんけれども、今回のモニタリングポストに関する現状をどのように受け止めて、どう対応されているかをお示しいただければと思います。
(大臣)原子力規制庁からは、志賀原発周辺のモニタリングポストは、8日月曜日16時の時点で、6局が欠測中であると、測れない状態にあるという報告を受けておりまして、これは発電所の北側15km以遠の地点でございます。より近傍のモニタリングポストが稼働していることから、十分な放射線監視体制が維持できているとの報告を受けております。これは全体のモニタリングポストの5%、6%に当たる数だと思います。その上で、欠測しているモニタリングポストの復旧等に取り組むとともに、航空機モニタリングの準備を整えるなど、放射線監視については万全の対応をとってございますという報告も受けております。
 現時点では、原子力発電所の安全確保に影響のある問題が生じていないと認識しておりますけれども、近傍のモニタリングポストを通じて放射線監視体制をしっかりして、原子力規制庁とも連携して、原子力防災体制の維持に努めてまいりたいと考えます。
 
(記者)日経新聞の田中です、お願いします。私も今の原子力防災の関連で何点かありまして、今回の地震で道路が寸断されるという事態が起きていますけれど、これを受けて、国内の原発周辺における災害時の避難のあり方とか、見直していく考えなど、現時点で何かありますでしょうか。
(大臣)地域防災計画、避難計画の具体化、充実化の支援については、常にこの地震を始めとする自然災害、そして原子力災害の複合災害も想定して、今日まで行ってきております。他方で、原子力防災の備えに、終わりや完璧はございません。今回の地震を通じて得られた教訓もしっかり活かしながら、踏まえて、原子力防災体制の充実・強化を図り、原子力災害対応の実効性向上に、これからもしっかり取り組んでまいりたいと、そういうふうに考えます。
(記者)今のお話は、例えば政府として原発の立地自治体だとか、原発から半径30キロ圏内の自治体が作っている避難計画とか、当該自治体に対して、例えば検証を促していくとか、現時点でそういうような呼びかけだとか指示をするような考えはあるのでしょうか。
(大臣)今、今日このときあるかと言えば、それは震災対応もありますけども、検討課題として図ってまいりたいと思います。
(記者)関連で最後、今年2024年は、特に東京電力の柏崎刈羽原発の7号機の再稼働がどうなるかというのは1つ、原子力の焦点かなと思っていまして、柏崎刈羽地域においては、内閣府の原子力防災協議会の作業部会で緊急時対応というのを現在取りまとめ中だと思うんですけど、今回の震源に近い新潟県ということもあって、今回の地震を受けて、柏崎刈羽の対応に今後何か、今回の知見を盛り込んだり、具体的な対応を取っていくお考えはありますでしょうか。
(大臣)御指摘のように、関係省庁や関係自治体が参加する柏崎刈羽地域原子力防災協議会の枠組みの下、「柏崎刈羽地域の緊急時対応」の取りまとめに向けて取り組んでいるところでございます。この緊急時対応については、地震をはじめとする自然災害と原子力災害の複合災害を想定した検討を進めており、引き続き、協議会の枠組みの下、今回の地震のことも含めて、緊急時の取りまとめについて検討を進めてまいりたいというふうに考えます。
 
(記者)時事通信の鴨川です。2点、御質問をさせていただきます。1点目が、冒頭にありました地震に関しまして、少し重複するところもあるかもしれませんけれども、生活ごみの焼却施設やし尿処理施設が被災して、稼働を停止していますが、現地では生活ごみの処理が追いついていないようです。衛生的な観点からも、早い段階で処理や対応していくことが重要だと思いますが、環境省として自治体に対して、支援や対策を行う方針などありましたら教えてください。
(大臣)御指摘のように、今回の地震により、能登地方を中心とした、し尿処理施設、ごみ焼却施設が被災しております。それによって、稼働停止もあるわけです。これらの施設の早期復旧や代替措置の確保が重要だと思います。環境省としては、まずは各施設のプラントメーカーと連携し、被災自治体に対して早期復旧に向けた技術的助言を行っています。
 それから、し尿については、市町村域を越えて、受入れ可能な白山市の処理施設に運搬し、処理を行っておりますけども、先ほど少し御説明申し上げましたけれども、輸送距離が長く、非効率な状況であるため、一旦七尾市、珠洲市など、稼働停止中の施設の受入れタンクを一時的な貯留施設として活用して、輸送距離の短縮を図っているところでございます。
 それから固形ごみについては、施設復旧までの間は、停止中の施設の受入ピットや敷地内での仮置きを行いつつ、他県や民間事業者も含めた広域的な処理の検討も行っております。
 し尿や生活ごみなどの処理が円滑かつ確実に実施されるように、引き続き、県とも連携しながら、被災市町村に寄り添って、環境省として支援を続けてまいりたいと思います。
(記者)ありがとうございます。もう1点ですけれども、自民党の政治資金パーティーを巡る問題に関してお伺いさせていただきます。池田佳隆議員が政治資金規正法違反容疑で逮捕されました。国民からは政治とカネを巡って疑念を持たれていまして、党内外からも派閥の解体の声も上がっております。大臣はこの問題に関してどのような認識で、御自身の活動をどういったふうに取り組むべきだと考えていらっしゃいますでしょうか。
(大臣)まず、捜査機関の活動内容そのものについてはコメントを差し控えたいと思いますけれども、自民党の国会議員が逮捕されたことは大変遺憾だと思います。党として、また私、政治家として、政治の信頼回復に向けて全力を挙げていかなければならないというふうに強く感じております。
 
(記者)朝日新聞の市野です。2点お伺いします。1点目は、先ほども質問がありました原子力防災の件です。先ほど大臣が、今回の地震のことも受けて、地域防災計画の中でどう考えていくかは検討課題として図っていきたいというふうにおっしゃられたと理解しています。検討課題としてということですけれど、例えば今回の地震で、特にどこについて検討すべきだというふうに感じられたのか。道路の寸断であるとかいろいろあると思うのですけど、その辺りをどう考えておられるのか、お伺いしてもよろしいでしょうか。
(大臣)まず、今回の地震による影響が全て把握されているわけではありませんので、今時点で、どの点、どの点ということを明確に申し上げることは困難でありますけれども、あらゆる点をいろいろ調査、検討課題の中に考えていくということが必要じゃないかなというふうに思います。
(記者)先ほどの質問でも、道路も寸断というのは1つ、例示されていたと思うのですけども、具体的なところはこれからということかもしれないんですけれども、やはり道路の寸断がこれだけ起きるということは、1つ検討すべき点だというふうに認識されているということなのでしょうか。
(大臣)私も防災計画の詳細を全文チェックしたわけではないので、もともとその道路の寸断というものも、自然災害が起きたときの想定の中に入っているというふうに私は認識しております。ただ、さらに具体的な今回の例もありますから、そのことについてもしっかり検討材料だというふうに思います。
(記者)ありがとうございます。もう1点は能登半島の地震の件で、し尿処理の回収体制についてなんですけども、木曜日の時点で、例えばバキュームカーを40台というふうなある程度の目標もおっしゃっておられたと思うんですけど、改めて今回、連休を踏まえて課題も分かってきたところで、バキュームカーをどれぐらい増やして派遣していくお考えなのか。あるいは今回、一時貯留施設を2か所用意されたと思うのですけども、これをまたどれぐらい増やしていくおつもりなのか、何かその想定などがありましたら教えてください。
(大臣)今日の時点で、バキュームカーは30台に増強いたしました。40台で足りるかどうか、40台いらないかどうか、ちょっと現時点では正確にお答えできませんけれども、事態の進展に合わせて、必要なバキュームカーの量、あるいは一時貯留施設をつくってまいりたいと思いますし、仮設トイレは四百数十基が既に設置されておりますし、しっかりとし尿処理が円滑に行われることは、被災者の健康維持のためにも、復旧の促進のためにも非常に大事だと思うので、事態の進展を見ながら、先手先手でしっかりし尿処理が行われるように進めてまいりたいと思います。
(記者)具体的な数字があるわけではないということですか。
(大臣)現時点で何台必要かとか、あるいは2か所以外に一時貯留施設が必要かということはちょっと判断しかねますけど、もしあれでしたら、事務方のほうからお答えしたいと思います。
 

会見動画は以下にございます。
https://www.youtube.com/watch?v=ilROXJG2nTA
 
(以上)