大臣談話・大臣記者会見要旨

伊藤大臣閣議後記者会見録 (令和5年12月26日(火)12:50~13:08 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 まず、本日の閣議決定案件についてお知らせいたします。
 本日の閣議において、水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令を決定しました。昨年の環境基準の見直しを踏まえ、水質汚濁防止法の規定に基づく、排出水の水質の項目の「大腸菌群数」を「大腸菌数」に見直すものでございます。改正の政令が円滑に施行され、公共用水域の汚染の防止が一層図れるように、しっかり取り組んでまいります。
 次に、環境省令和6年度の予算案についてお知らせいたします。先週22日に令和6年度予算案を閣議決定したので、改めて報告いたします。環境省に関しては、総額約5,800億円であり、令和5年度の補正予算の約3,600億円と合わせて必要な額を計上できたと考えてございます。ポイントとしては、統合的アプローチの考え方の下、地域、企業、くらしの目線を重視してまいります。地域の目線では、ネイチャーポジティブ関連予算や、地域脱炭素推進交付金で増額しました。国立公園関係では、国際観光旅客税を充当した事業の予算額を倍増しました。企業の目線では、GX推進対策費として、先進的な資源循環設備への投資や、ゼロエミッション船等の建造促進を計上しました。くらしの目線では、国民運動デコ活の推進や、それから住宅の省CO2化の促進などを計上しました。環境省の原点である、人の命と環境を守る基盤的な取組として、熱中症対策、PFAS対策のほか、復興の取組を着実に進める予算についても計上しています。また、原子力規制委員会については安全確保のための審査促進等の予算を、原子力防災については避難の円滑化対策等の災害対応の実効性向上の予算を計上しております。
 次に、PFASに関する総合研究の公募開始についてでございます。専門家会議において取りまとめた「PFASに関する今後の対応の方向性」を踏まえ、本日より、PFASに関する総合研究の研究課題について公募を開始します。PFASには約1万物質がありますが、このうち、リスク管理を行う優先度の高い物質の有害性を評価する研究等を募集します。今回の研究は、先週閣議決定した令和6年度予算案に計上した調査費を用いて実施します。来年の通常国会で予算案の御審議をいただき、予算の成立後、速やかに執行できるよう、準備を進め、国民の安全・安心の確保に努めてまいります。
 冒頭発言は以上でございます。
 

2.質疑応答

(記者)朝日新聞の市野です。今回、年内最後ということで、政策の振り返りについて、2点お伺いいたします。先ほども出ましたPFASの対策について、まず1点目です。年の初めに立ち上げた2つの専門家会議のうち、「総合戦略検討専門家会議」では、今年の夏に、QA集であるとか今後の対応方針をまとめるといった一定の成果、一定の進捗がありましたが、「水質の目標値等の専門家会議」においては結論がまだ出ていない状況です。この会議の進捗状況の受け止めや、議論のスピードアップの必要性について、どのように考えているのかお答えください。
(大臣)「PFOS・PFOAに係る水質の目標値等の専門家会議」では、厚生労働省の検討会と連携して、PFOS・PFOAに係る水環境の暫定目標値等の取扱いについて、最新の科学的知見を踏まえた議論を進めていただいております。PFOS等の健康影響については、現在、食品安全委員会で検討が行われていると承知しております。連携を図りつつ検討を進めていくことが重要だと考えます。来年4月には、水道行政の一部移管に伴い、環境省において、水道及び水環境中の水質を一体的に担当していくこととなります。国民の皆様の安全・安心を確保するため、食品安全委員会の検討状況や、WHO等の国際的な動向を踏まえ、水質の暫定目標値の検討についてもしっかり取り組んでまいりたいと思います。
(記者)水質については、結論を出す時期についてのめどなど、何かお考えはありますでしょうか。
(大臣)現在、まだ日程的なめどはございません。
(記者)2点目について、そのほかの環境行政の中で、今年の振り返りと、積み残した課題があれば教えてください。
(大臣)私が環境大臣に就任させていただきましたけれども、約3か月半の期間でございます。環境行政、私は今年、2023年度は、いろんな意味で大きく前進した年ではなかったかなというふうに考えております。
まず、第一に、今回のCOP28でのグローバル・ストックテイクの成果でございます。成果文書において、1.5度目標達成のための緊急行動、2025年までのピークアウト、全ての部門、全ての温室効果ガスを対象とした削減目標の設定など、我が国の主張を明確に盛り込むことに成功してございます。化石燃料からの移行にも合意できました。
 第二に、ネイチャーポジティブに向けた前進でございます。民間の取組によって生物多様性が保全されている場所、自然共生サイトですね、122か所認定しました。TNFDからの提言も公表され、経済活動における自然関連情報の開示も進展しました。まさに、「ネイチャーポジティブ元年」とも言える年ではなかったかなと思います。
 第三に、福島の復興・再生のさらなる進展でございます。8月のALPS処理水放出開始を受け、迅速かつ丁寧に海域モニタリングを実施し、人や環境への影響がないことを確認してきました。また、全ての特定復興再生拠点区域の避難指示が解除され、新たに特定帰還居住区域の除染、解体工事が開始されました。2024年には、これらの取組をさらに加速させてまいりたいと思います。
 また、来年に向けて一層取組がなされるべき課題としては、それぞれ重要な課題でありますけれども、あえて幾つか挙げるとすれば、PFAS対策、クマ対策などが挙げられると思います。これらの課題にも全力で取り組み、国民の皆様の安全・安心の確保に努めてまいりたいと思います。
 
(記者)NHKの林と申します。よろしくお願いします。今、冒頭でも御発言いただいたと思うのですけれども、クマ対策について伺えればと思うのですが、本日、まさに先ほどまでクマの検討会というものが開かれていたと思うんですけれども、まずその議論を踏まえて、改めて環境省としては、クマ対策、どのように今後進めていくというふうにお考えでしょうか。
(大臣)国民の皆様の安全・安心のために、クマ対策は非常に重要だと思います。先ほどまで、第一回の「クマ類保護及び管理に関する検討会」を開催したところでございます。まだ終わったばかりだと思いますので、詳細の報告はまだ受けておりませんけども、会議では、今年度のクマ類の出没状況、被害状況を踏まえた今後の対策の方向性について、出席した専門家の皆様による活発な議論が行われたと聞いてございます。検討会は引き続き、年明けにも2回開催し、指定管理鳥獣への指定の必要性を含め、来年度以降の人身被害防止等に向けた総合的対策について、来年2月末までに取りまとめていただく予定でございます。環境省としては、検討会の取りまとめ結果を踏まえ、関係省庁や都道府県と連携し、必要な対策を速やかに実行に移して、国民の皆様の安心・安全が確保されるように、全力を挙げてスピードアップして対策を進めてまいる、そのような所存でございます。
(記者)すみません、まさに今、大臣がおっしゃっていただいたと思うのですけれども、これは大臣として、また環境省として、改めてそのクマ対策というのは、今、省庁が取り組むべき対策の中で、それこそ最上位の課題と言っていいのか、そこら辺の評価、クマ対策が環境省にとって、どれほど力を入れなければいけない問題、課題かというふうに認識されているのか、改めて、それを大臣としても、どのような思いで進めていかれるというところどうしょうか。
(大臣)環境省はやっぱり人の命と健康を守るということが大事な役所であります。そういう意味で、クマ対策、最重要項目の1つだと思います。どちらがより大事だということは、なかなか、それぞれ気候危機も大変重要でございますので。しかし、クマ対策については、やはり今年、近年にないレベルで人身被害が各地でありますので、私としては、役所に何度も指示しておりますけど、なるだけスピードアップして対策を進めるように指示しておりますし、私の思いとしては、クマが冬眠を明ける頃までには、しっかりとした結論を出して、戦略的にこの問題に取り組んでまいりたいと、そういう強い意志を持っております。
 
(記者)時事通信の鴨川です。ALPS処理水についてお伺いします。先ほど、冒頭の発言の中にも少しありましたが、8月24日に東京電力福島第一原子力発電所からALPS処理水の放出が始まっております。環境省は毎週、海域モニタリングを続けて、周辺海域のトリチウム濃度の調査などをされているかと思うのですが、今のところ、モニタリングの数値で異常は確認されておりません。いつまで海洋モニタリングを続けるのが適切であるか、お伺いできますでしょうか。
(大臣)先週22日に開催した専門家会議では、8月末のALPS処理水の放出開始以降の状況や、モニタリング会議結果を踏まえて、今後の海域モニタリングの在り方について議論をしていただいたところでございます。
 その結果、処理水の放出中は現在の迅速分析の規模を維持しつつ、放出停止中は測定頻度を抑えるなど、メリハリをつけた対応が妥当であるということが確認されました。国民の皆様の安全・安心を確保するには、客観性、透明性、信頼性の高いモニタリングを継続的に行っていくことが重要だと考えております。当分は、専門家会議に確認いただいた今回の方針に基づき、継続的、長期的に海域モニタリングを実施してまいります。
 
(記者)エネルギージャーナル社の清水です。先ほど大臣がお話しになったCOP28、あるいは温暖化対策で伺うのですが。どうですか、来年は国内、各国がどれだけ対策のレベルアップをするかということが問われる、あるいは具体化する年だと思いますが、日本の場合、エネルギー基本計画の改定も予定されていますけれども、やっぱりエネルギーだけでは、さっきも、あらゆる温室効果ガスとおっしゃったけれども、ちょっと何ていうか、表現がまずいかもしれませんが、片手落ちだろうと思うんです。したがって、エネルギー基本計画ではなくて、エネルギー環境基本計画というような、そういう、より総合的な政府としての対応をする必要があると思うのですが、その辺はどういう具合にお考えですか。
(大臣)我が国は、既にGX推進戦略に基づき、今おっしゃられたような化石エネルギーへの過度な依存からシフトするということを進めておりますけれども、おっしゃられたように、温室効果ガスの75%は二酸化炭素ですけども、16%、17%、ちょっと数字が違うかもしれませんけれども、メタンガスもあります。ですから、エネルギー以外のものから生まれる二酸化炭素、あるいはメタンガスもあるんです。例えば、牛のゲップもメタンガスの発生源の割合大きな部分でもございます。ですから、おっしゃられたように、別に、エネルギー基本計画だけじゃなく、環境省は総合的な政策の中で、環境を守るために、温室効果ガス全体の削減のための、戦略なり、政策を進めております。それから、もちろん、エネルギーを作るときに二酸化炭素が生まれるということもありますけども、環境省はどちらかというと、エネルギーを消費する、要するに、需要側の観点も非常に注目されて、むしろ環境省は、くらし、地域、あるいは個人の意識変容、こういったことにも重点を置いて政策を進めております。そこを総合的に進めて、とにかく地球の気温上昇は1.5度以内に収めるように全力を挙げてまいりたいと、そのように思います。
(記者)2020年に、菅内閣のときに、気候非常事態宣言というのを国会で衆参決議している。そういうことの経緯もあって、やっぱり温暖化対策への総合的なアプローチというのが、やっぱり政府にとっても、自治体のほうは結構進んでいると思いますが、政府にとっても必要じゃないかと思うのですが、まさに需要家サイドとか、民生とか、そういうところの考え方が、エネルギー基本計画ではちょっと弱いんだろうと思うんです。やっぱり供給サイドのどうしても対策になっている。どうですか。その国会決議からもう4年経つわけですけれども、来年は。
(大臣)エネルギー基本計画も1つの環境政策の要素でありますけども、エネルギー基本計画だけが環境政策ではありませんので、環境省としてはもう、おっしゃられたように、くらし、地域、あるいはデコ活、あるいは、そういうことを考えた基本行動を進めていくということで、重点を置いて進めてまいりたいと思います。政府全体として進めるということに対しても、環境省として、発言できる場で発言してまいりたいと、そういうふうに思います。
 
会見動画は以下にございます。
https://www.youtube.com/watch?v=iYdp0nNKRQM&list=PL9Gx55DGS7x7KxcngqArvF_NxEuXney24&index=1
(以上)