大臣談話・大臣記者会見要旨

伊藤環境大臣COP28期間中ぶら下がり会見録 (令和5年12月13日(水)16:18~16:36(現地時間) 於:COP28会場)

1.発言要旨

 先ほど、COP28の決定文書を採択することができました。私も参加したのですけれども、このCOP28では、パリ協定採択後、初めての世界全体での進捗評価、いわゆるグローバル・ストックテイクが行われました。私も9日の午前中以来、数え切れないほどの閣僚級の会合に参加して、発言して、数えてみると21カ国の国とバイ会談も行いました。状況を鑑みますと、いろいろな国でそれぞれ意見も違いますし、状況も違います。ただ共通して言えるは、パリ協定の1.5度目標を達成しないと本当に戻ることの出来ない厳しい状況になる。気候危機に対する意識は共通していると思います。そういった中で危機意識もあるので、最終的に立場の違いを乗り越え、1.5度目標の実現に向けて各国に具体的な行動を求める決定をできたと思います。
 更に具体的に申し上げれば、2025年までの世界全体の温室効果ガス排出量のピークアウトの必要性、2035年までの60%削減の必要性の共有、すべての部門・すべての温室効果ガスを対象とした排出削減目標の策定、再エネ発電容量を「世界全体で3倍・省エネ改善率を世界平均で2倍」にする取組、排出削減対策の講じられていない石炭火力発電のフェーズダウンに向けた努力の加速、化石燃料からの移行、持続可能なライフスタイルへの移行、地域における取組の推進などでございます。それから、ロス&ダメージに対応するための基金については、初日に決定を採択し、気候変動の悪影響に特に脆弱な途上国への支援に向けた着実な一歩が刻まれたと、私も認識しております。
 また、適応について、世界全体で行動を強化するための枠組みに初めて合意されました。我が国として、途上国支援を強く打ち出し、気候変動対策を促進するソリューションを示してきたところでございます。具体的には、二国間クレジット制度や、観測衛星GOSATを活用した排出量の把握を含む「投資促進支援パッケージ」の発表、また、私も何度も足を運びましたけれども、日本パビリオンにおける約40件のセミナーや、15件の展示を通じた我が国の技術、特に環境技術や取組、日本の技術が途上国の排出削減や適応策の促進に大いに貢献できると確信したところでございます。今回のCOP28の成果を踏まえて、1.5度目標の実現に向けて、すべての国と一致団結して気候変動対策を着実に進めてまいりたいと思います。
 

2.質疑応答

(記者)毎日新聞の岡田です。よろしくお願いします。
今回のCOPでは化石燃料からの脱却、transition awayとなっていますが、先ほど大臣は移行とおっしゃっていましたが、transition awayと入っているんですけれども、化石燃料からの脱却をこの10年で加速することはできるのでしょうか。
(大臣)移行というのは定訳となっているということです。それからこの文言には、何年というのは明記されておりません。2050年のネットゼロに向けて、進めると言うことで、年限の区切りはないと思います。
(記者)critical decadeと書いてありますけど。基本的にはこの10年とか2030年までとか、短期的なスコープに書かれていると思いますが、日本としては石炭の廃止年限というのは提示できていないですし、アンモニアは2030年以降の技術確立が見込まれている。そのアンモニア混焼で石炭火力を使い続けるという方針を掲げている日本にとって、化石燃料からのtransition awayということは、どう受け止めていますでしょうか。
(大臣)今回、化石燃料から移行する文書に合意されたことは、大変重要だと認識しております。我が国としてはGX推進戦略に沿って、化石エネルギー中心の産業構造をクリーンエネルギー中心のものへの転換に取り組んでおります。我が国の方針と整合性のとれるものと考えております。
 
(記者)NHKの林と申します。化石燃料の脱却に関してなんですけれども、従前、交渉の中では化石燃料の廃止を求める国から、そういうことには言及しないという国もあったと思いますが、大臣が実際に交渉に臨まれて、最終的に今回この言葉で合意ができたということは、どういった歩み寄りがあって合意できたと思いますでしょうか。
(大臣)多国間のいろいろな交渉、どの国がどのように動いたかということはちょっと差し控えたいと思いますけれども、前段で申し上げたように、どの国もこのまま行ったのでは1.5度目標を達成することはできないし、そうすればそれぞれの国、気候危機は国境を越えて訪れますので、何とかしなければいけないというのがあったと思います。それから先ほどの質問にも関係してますが、年限をはっきり明記してはおりません。それぞれの国の状況に応じて、もちろんなるだけ早く移行した方が良いわけですけれども、そういうニュアンスがあったのだとうと私は思います。
(記者)英語ではawayということは、最終的なゴールとしては化石燃料をゼロにするというのが、日本としてゴールになっているのでしょうか。
(大臣)どれくらいの最終的にもよりますけれども、年限を区切らないという意味ではそういうことだと思います。10年以内とか、そういうことがここで約束されたわけではないと思います。
 
(記者)朝日新聞の市野です。ここに大臣が来られたときに、議論を主導していきたいという話もあったのですけれども、主導できたと考えているか、いかがでしょうか。
(大臣)自分でいうのも恐縮ですが、今回相当精力的に閣僚級会合でも二国間会談でも発言し、提案も行いました。そのいくつかのことが今回の決定文書にも反映されていると思います。例えば、普段私たち環境省は言っているのですけれども、消費者あるいは地域、そこに視点を置いた環境政策が必要である、これは日本が言わなければ入っていなかったと思います。日本やある国が、こうやってモデルになったということは、言及は避けたいと思いますけれども、それぞれの国が中々難しいなど事情もありましたが、そうは言っても皆で減らすことをしなければ、今住んでいる地球が住めなくなる、そこを強調する、それから日本としてそれができるために全面的に協力する、これを強く言いました。やはり、1つは財政の問題、もう一つは、日本は大変多くの環境技術を持っております。この技術を供与するという問題、それを使っていくために能力開発をする、こういう3点で、それぞれ全力で違う山を登るわけですが、こちらの道からも登れると日本が協力するような、そういったことが結果として皆さんが文書に合意することにつながった、そういう意味では私が言うのはちょっとあれですけれども、先導的な役割を果たす一助になったと考えています。
 
(記者)共同通信の矢野です。化石燃料の脱却についてお伺いするのですが、出発前には各国の事情があって、日本に日本の事情があって、それが石炭火力を一例としてあげたと思うのですけれども、今回、バイや会合の中で、日本にとって石炭火力は重要なものなんだというのはアピールされたのでしょうか。
(大臣)石炭火力が重要だと直接言ったところがあったかどうか、記憶が曖昧ですが、そこを含めて各国の事情があって、日本の事情があって、それから日本はトランジッションとしてそういうものをやるけれど、その技術もあると申し上げましたし、多くの国が来年石炭火力をゼロにできないという現実もあります。その中で、石炭火力を使ってもCO2を出さない技術を日本は相当開発していますので、そこも触れたと思います。
 
(記者)日経新聞の田中です。さっき年限については区切っていないということだったのですが、英文にはin this decadeともあったのですけれども、年限が入っているようにも読めるのですけれども、そこをどういうふうに日本語として捉えているか、教えて下さい。
(大臣)よく文章を見ていただきたいのですが、それまでに完全にゼロにするという文書にはなっていないということです。それを目指すという文書になっていると思います。
(経産省事務方)この10年間は一生懸命がんばると書いてある。2050年のネットゼロを達成するために、transition awayするとなっているので、あくまで目標はネットゼロです。したがって、10年間は、非常に重要な期間で一生懸命頑張っていく期間として定められている。そこで全てtransition awayすることにはなっていないという趣旨で書かれていると理解しています。
(記者)化石燃料も、再エネ3倍とか原子力とか、主要な世界のテーマがエネルギーに移っているエネルギーのCOPという言い方をする方もいますが、その中で環境省の所管にない部分に注目が集まることがどうだったかということと、今後もエネルギーに注目が集まると思いますが、日本政府としてどういうふうにCOPに望んでいくかということについてどうお考えでしょうか。
(大臣)日本パビリオンでオーストラリアの大臣と一緒にブルーオーシャンというものをやっています。海草は木よりも多くCO2を吸収する、海草があることにより海の生態系が守られる、ということで、必ずしもエネルギーばかりをやったわけではありません。二国間会談でも生物多様性の話とか森林保全の話とか、広いものを話していますので、先ほどの質問のことばかりを話しているわけではありません。気候変動の問題とか汚染の問題とか、全部をシナジーで解決していこうというのが基本的な姿勢ですので、環境問題を幅広く話し合っております。
 
(記者)朝日新聞の市野です。グローバル・ストックテイクは次のNDCに次ぐ大きなものだと思います。化石燃料からの脱却というのは、すぐではなくても、この10年で上がらないといけない中で、NDCに与える影響を大臣はどう考えてますでしょうか。
(大臣)大きな影響を与えると思いますし、日本も可能な限り化石燃料の比率を減らしてリニューアブルエネルギーを大きくするということだと思います。我々の努力を加速する効果があると思います。
 
 
(以上)