大臣談話・大臣記者会見要旨

伊藤大臣閣議後記者会見録 (令和5年10月13日(金)11:15~11:31 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 おはようございます。伊藤信太郎です。よろしくお願いします。
 まず本日の閣議において、先の通常国会で成立した熱中症対策を強化するための改正気候変動適応法等の施行日を、令和6年4月1日と定める政令を決定いたしました。来年度から、改正法で新たに創設された熱中症特別警戒情報や、指定暑熱避難施設等の仕組みを適切に運用し、熱中症から国民の命を守る対策を一層強化してまいります。
 次に、IAEAによるALPS処理水に関わる海域モニタリングの比較評価についてでございます。一昨日、公表いたしましたが、ALPS処理水に係る海域モニタリングの比較評価のため、IAEA等の専門家が来週10月16日月曜日から23日月曜日にかけて、来日いたします。具体的には、IAEA及び第三国の分析機関と共同で海水等を採取し、各機関による分析結果を比較することで、モニタリングが適切に実施されているか、IAEAが確認いたします。第三国としては、カナダ、中国及び韓国の分析機関が参加する予定でございます。IAEAに加えて、各国の分析機関に参加いただくことは、モニタリングの客観性及び透明性の向上の観点から重要だと考えております。環境省としては、こうした国際的な確認を受けつつ、引き続き客観性、透明性、信頼性の高いモニタリングを徹底してまいります。
 次に、脱炭素都市づくり大賞の募集開始についてでございます。本日から、脱炭素都市づくり大賞の募集を、国土交通省と合同で開始いたします。募集期間は、11月28日火曜日まででございます。2030年度温室効果ガス46%削減、また、その先の2050年ネットゼロの実現には、世界の温室効果ガス排出量の7割、エネルギー需要の6割以上を占める都市の脱炭素移行が不可欠でございます。このため、今般、国土交通省と連携し、2030年度までにネットゼロ実現を目指す優れた脱炭素型の都市の開発事業を表彰する制度を創設いたしました。好事例として、国の内外に発信し、都市部における脱炭素の取組を促進したいと考えております。環境大臣賞においては、デコ活や資源循環、ネイチャーポジティブの推進に資する取組を評価いたします。デベロッパーをはじめとした民間事業者からの積極的な応募を期待しております。
 次に、ネイチャーポジティブの実現に向けた取組についてでございます。今年はまさに、ネイチャーポジティブ元年と言えます。先日の自然共生サイトの認定に続き、ネイチャーポジティブに関する様々な取組を展開していきたいと考えており、本日は2つの取組を発表いたします。
 1つは、ネイチャーポジティブのイメージキャラクターの決定についてです。全83件の御応募をいただき、環境省職員等による投票の結果、滋賀県在住の本山清数さんが制作された「だいだらポジー」に決定いたしました。これが「だいだらポジー」でございます。 日本各地で伝承される巨人である、「だいだらぼっち」がモチーフで、地球のポジティブな未来を抱きしめて見守り続けるキャラクターとして制作されたとのことでございます。デコ活とも連動し、ネイチャーポジティブをテーマにした様々なイベント等で活用してまいります。また、国民の皆様にもぜひ活用していただきたいと考えています。どうぞよろしくお願いします。
 2つ目の取組は、産学官民ネットワークである「2030生物多様性枠組実現日本会議」J-GBFによるネイチャーポジティブ宣言の発出、登録の呼びかけでございます。民間企業、自治体など多くの関係者に、ネイチャーポジティブを目指す宣言を表明していただくことで、社会経済の変革に向けた機運醸成を図ってまいります。以上でございます。
 

2.質疑応答

(記者)幹事社フジテレビの岩田と申します。よろしくお願いします。冒頭でもありましたが、ALPS処理水のモニタリングについてお伺いします。客観性、透明性の観点から重要とお話しいただきましたが、改めて中国など処理水放出に対して批判的な国の分析機関も参加することについて、大臣の受け止めをお聞かせください。
(大臣)以前より、中国に対しては、科学的根拠に基づく対応をとるように、我が国から強く、粘り強く求めてきたところでございます。そういった中におきましても、今回のIAEAのレビューの枠組みの下で行われる比較評価に、中国等の分析機関が参加することは、客観性、透明性の高いモニタリングを実施し、科学的根拠に基づく形での対話を進めていく上で、大変意義のあるものだと考えております。
 
(記者)朝日新聞の市野です。よろしくお願いします。処理水に関連してですけども、今回の枠組みにおいても、中国の外務省の汪文斌副報道局長がですね、11日の定例会見の中で、今回の枠組みにおいてでも、IAEAが日本側との調整を踏まえて行うものであり、利害関係国が実質的に加わる長期的かつ有効な国際モニタリングとは言えないというふうな、否定的な見解を示しています。これに対する受け止め、また日本の立場の発信についてどのように考えるか教えてください。
(大臣)IAEAは、原子力分野において、国際的な安全基準を策定、適用を行う権限を有する唯一の機関でございます。IAEAの権限や中立性を否定することは不適切であると考えております。その上で、今般の比較評価でございますが、IAEA及び中国を含む第三国の分析機関と共同で試料を採取し、IAEAによって各機関の分析結果の比較が行われ、高い透明性、客観性を持って科学的な評価を示すものであり、御批判は当たらないと考えております。
(記者)ありがとうございます。もう一点、別件ですけども御質問させていただきます。 来週17日火曜日からですね、靖国神社の秋の例大祭が開かれます。19日までの期間の間に参拝されるかどうか。参拝されない場合でも、真榊などの供え物を奉納される御予定があるかどうかを教えてください。
(大臣)靖国神社の参拝に関しては、個人として適正に判断することでございますけれども、現在のところ参拝する予定はございません。真榊もございません。
 
(記者)時事通信の鴨川です。先ほど、冒頭の発言でありましたネットゼロという言葉についてお伺いします。2020年10月に当時の菅総理大臣がカーボンニュートラル宣言を行ってから、環境省ではカーボンニュートラルや脱炭素、そしてGXといった様々な言葉が使われています。最近ではネットゼロという言葉も見かけるようになりましたが、それぞれの言葉の使い分けや、ネットゼロを強調している理由は何でしょうか。また、先ほど、ネイチャーポジティブという言葉も出てきましたが、日本語に訳すと自然再興という、一般の人ではちょっと分かりにくい言葉になっていますが、どういった経緯で自然再興という言葉も使われているのでしょうか。よろしくお願いいたします。
(大臣)はい、ありがとうございます。2020年10月、我が国は、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すということを宣言したわけであります。以降、カーボンニュートラルや脱炭素という用語を用いてきたところでございます。
一方、G7の広島サミットの成果文書等にあるように、国際的な文脈においては、ネットゼロと表現することが一般的となっております。
 こうした状況を踏まえつつも、カーボンニュートラルや脱炭素という用語は、企業等においては日常的に使用されている現状等も勘案し、現時点においては、文脈に応じて用語を適切に選択していくということでございます。基本的な意味は同じだと思います。
 それからGX、グリーン・トランスフォーメーションとは、脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の3つの同時実現に向けて、化石エネルギー中心の産業構造、社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換することを意味するというふうに認識しております。
 それで今、後段の御質問のネイチャーポジティブということでございますけども、これはネイチャーポジティブ、日本語では一応自然再興というふうに訳しておりますけれども、これは昨年合意された昆明・モントリオール生物多様性枠組において考え方が掲げられた、ネイチャーポジティブに対応する日本語として使っております。今年、改正した生物多様性国家戦略において用い始めたところでございます。英語と日本語、訳すというのは非常に必ずしも容易ではありませんけども、政府としては、再興という言葉が、この文脈におけるポジティブな訳として適切というふうに考えたことでありますけど、その意味はですね、生物多様性の損失を止めて、反転させること。そのためにいま一度、自然の価値を的確に認識して、社会変革を促進するという意味を込めて、再興という言葉で表現しているというところでございます。
 
(記者)環境新聞の小峰です。ALPS処理水に関してお尋ねします。ALPS処理水をもう2回目放出しましたけれども、いまだに風評被害が発生していないどころか、福島産を含む日本各地の水産物が大変よく売れています。福島県産の一部のヒラメなどの魚種は、入手が困難になるほど、価格も非常に好調に推移しています。大臣の地元の石巻、隣ですかね。石巻市のふるさと納税は非常に急増して、その返礼品が、冷凍ホタテ貝や冷凍カキなどが非常にきていると。これは日本国国民全体の国民運動といってもいいかもしれません。国民運動、愛国運動だと環境新聞は考えますけれども、大臣の、政治家としての1つ、この国民運動、自然発生的に起きた国民運動をどういうふうに伊藤信太郎さんは考えていますか。受け止めていますか。ちょっとここは政治家としての言葉も含めてお願いいたします。
(大臣)日本の国民の皆様が、また科学的根拠に基づいて冷静に対応していること、そして今、おっしゃられたように、やっぱり日本国民の皆様が、それぞれ自分の立場で風評被害が払拭されるように、むしろそのことが、それぞれの地域の水産業の振興に資するように動かれていることは、本当にありがたいことだと思います。

 
会見動画は以下にございます。
https://www.youtube.com/watch?v=PkgQHjPLIy0
(以上)