大臣談話・大臣記者会見要旨

西村大臣閣議後記者会見録 (令和5年9月1日(金)10:30~10:53 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 冒頭、私のほうから3点、お話をさせていただきたいと思います。
 まず1つが、防災の日の総合防災訓練についてであります。本日9月1日は、皆様ご承知のように防災の日でありまして、先ほどまで官邸において、総理、そして全閣僚が参加した中で、首都直下地震を想定した緊急災害対策本部の運営訓練を行っておりました。また、この後、環境省におきましても、私を本部長とする環境省緊急災害対策本部の設置訓練を行います。本省の各部局及び地方環境事務所等における初動対応の再確認を行いたいと考えております。
 本年は関東大震災から100年という節目の年でありまして、環境省は今後危惧されている首都直下地震や南海トラフ地震などの大災害にも適切に対応できるように、本日の訓練で得られる課題や教訓といったものを活かしつつ、万全の備えを進めてまいりたいと考えております。
 2点目が、令和6年度の環境省概算要求等についてでございます。昨日公表いたしました令和6年度環境省概算要求について、御報告をさせていただきます。
 今回の概算要求では、政策統合によって、環境の切り口から社会課題の解決に貢献するという統合的アプローチ、この考え方の下、地域、企業、くらしといった観点から予算・施策を整理しております。概算要求・要望額の総額は、7,875億円、前年度比19%増になっております。特に、くらしの観点におきましては、今週火曜日に発表したデコ活予算として、国民運動や断熱窓への改修、電動車の導入支援など、総額で2,830億円と大きく要求しているところでございます。
 環境省といたしまして、必要な予算の確保に努めるとともに、原子力規制委員会の組織体制の充実や、内閣府原子力防災担当の原子力災害対応の実効性向上等の要求・要望も進めてまいりたいと考えております。
 3点目です。除去土壌の再生利用等に関するIAEA専門家会合第1回のサマリーレポートの公表についてでございます。5月に開催されました除去土壌の再生利用等に関する国際原子力機関(IAEA)の専門家会議第1回のサマリーレポートが、今般取りまとめられましたので、お知らせをさせていただきます。
 今回のサマリーレポートでは、IAEAによる現地視察や意見交換の結果として、福島県飯舘村長泥地区での実証事業は、除去土壌の再生利用の観点から安全に実施されている。除去土壌は、もともと貴重な資源であるため、再生利用にはポジティブな理由があり、推進すべき。再生利用に係る安全性がIAEA安全基準に従って、実証されていることを今後確認するため、詳細な安全性評価のレビューをさらに行う。こうしたことなど、幅広い見解が示されたところでございます。詳細は皆さんのお手元にお配りしております。
 今後、来年の早い時期に予定されている第3回会合を経て、最終的な報告書が取りまとめられる予定です。IAEAによる科学的かつ客観的な見地からの国際的な評価、助言をいただいて、除去土壌の再生利用等に対する国民の皆様の理解醸成につなげてまいりたいというふうに考えております。冒頭は以上です。

2.質疑応答

(記者)本日から幹事社を務めます、NHKの林と申します。よろしくお願いします。
 幹事社質問ですけど、2点ありまして、まず1点目は、先ほど冒頭で発言がありました、令和6年度の環境省の予算の概算要求について、改めて大臣として特に重要と考える点はどのよ点なのかについてお伺いします。お願いします。
(大臣)まず第一に、GXの推進、特に、くらしといった観点から総額で2,830億円と大きく要求しているデコ活予算、これによって脱炭素で豊かなライフスタイルへの変革に取り組む。また地域については、自然再興に向けた民間活動の促進。企業といった観点では、動静脈連携を通じた競争力の強化等に取り組む考えであります。
 第二に、環境省の不変の原点を追求する施策として、公害の防止また健康被害の補償・救済、PFAS対策、水道衛生の管理といった人の命と環境を守る取組、これを着実に進めたいと考えています。あわせて、東日本大震災・原発事故からの復興・再生に向けて、ALPS処理水放出に係る海域環境のモニタリング、こうしたことなどを着実に実施してまいりたいというふうに考えています。
(記者)2点目ですが、これも冒頭の発言でありましたIAEAの報告書についてですけれども、まず改めてその受け止めというのと、特にこの報告書の中でも言及されている再生利用、また最終処分について、先ほど発言がありました理解醸成について、処理水については、国外でも反発が強まっている中で、改めて国内外でどういった形で理解醸成というのを進めていくのかというのを伺えればと思うのですけれども。
(大臣)今回、IAEAの第1回会合のサマリーレポートが公表されたわけでありますけれども、科学的かつ客観的な見地から国際的な評価、そして助言をいただいたというふうに思っております。除去土壌の再生利用、また最終処分につきましては、国民の皆様の理解醸成に加えて、国際的な情報発信、今御指摘いただいたような点も非常に重要だというふうに認識しております。
 環境省においては、これまでも、海外メディア向けの福島現地ツアーや気候変動COPのサイドイベントなどを通じて、海外へも情報発信を行ってきました。具体的には、COP27のジャパンパビリオンでの情報発信、また今年予定されているCOP28においても、同様の活動をしてまいりたいと思っておりますし、今言及した福島の現地ツアー、そしてG7広島サミットにおいても、ブースなどでの情報発信を行いましたし、またダボス会議のメンバー、海外研究機関と長泥の実証事業の視察対応、こうしたことなどで国際的な情報発信も行うと同時に、さらに国内においても、これまでも会見でいろいろ言及しました、全国各地における対話フォーラムであり、また除去土壌を用いた鉢植えを、環境大臣室や総理官邸を含めたところに設置し、また実証事業の現地見学会といったものを進めてきているところでございます。今後もIAEAによる評価といったものを活かしながら、より幅広い取組を通じて、丁寧な情報発信を行うことで国内外の理解醸成、これにしっかりとつなげて参りたいというふうに考えています。
(記者)ありがとうございます。幹事社としては以上です。
 
(記者)朝日新聞の市野です。除去土壌の件ですけれども、IAEAの調査自体はまだ3回目まであるかと思うのですけれども、今回のサマリーの中である程度一定の、客観的なお墨つきのようなものも、示唆されているかと思うのですが、これも踏まえて3回目までを待たずに今後の動きを加速させていくお考えがあるのか。その辺りのお考えを聞かせてください。
(大臣)今回のサマリーにおいて、例えば除染土再生利用の実証事業について、このIAEAのサマリーレポートによると、福島県外における実証事業が非常に重要であり、計測データを提供し、国民の理解を醸成する可能性を有しているといった見解を示されておりまして、こうした見解を受けて、再生利用の実証事業の重要性、これを改めて認識したところであります。引き続き、地域の関係者に対して丁寧な説明を行ってまいりたいと考えておりますが、すぐにということよりも、IAEAの最終的な報告書が出るのをしっかり見つつ、今できることに関しては、しっかり情報発信を続けていきたいというふうに思っております。
 
(記者)時事通信の鴨川です。ALPS処理水に関してお伺いしたいのですけれども、今も放出がされておりますが、環境省に他国からのいたずら電話のような電話がかかってきている事例はあるのかというところと、そのいたずら電話に対する受け止めや、環境省としての対応をお聞かせいただければと思います。
(大臣)8月24日のALPS処理水の放出後、中国から発信されていると思われる電話等が来ております。環境省本省、原子力規制庁及び福島地方環境事務所には、昨日の17時時点において、それぞれ16件、6件、6件の計28件の電話があったというふうな報告を受けております。こうした事案が発生しているということ、極めて遺憾でありまして、憂慮しているところでございます。環境省としては、引き続き客観性、透明性、そして信頼性の高い海域モニタリング、これを徹底して行い、その結果を国内外に分かりやすく発信するということによって、この地元の皆様が懸念されている風評被害、これの払拭のために貢献してまいりたいというふうに考えています。
 
(記者)日経新聞の田中です。ガソリン補助金の関係で一点お尋ねしたいのですけど、政府はおととい、今の補助金を年末まで延長して、10月中にレギュラーガソリン価格が1リットル当たり175円程度になるよう調整するという支援策を公表しました。消費者の負担軽減が図られる一方、広島サミットでも合意した非効率な化石燃料の廃止という合意とも反すると思うのですけど、また、環境省の脱炭素に関するいろいろな取組とも反すると思います。今回の政府支援策延長に対する環境大臣としての受け止めと、環境省としてスキームを作っているのは経産省だと思うのですけど、経産省に対して何か意見など述べたりしたのか、そこら辺をお伺いできればと思います。
(大臣)いわゆるガソリン補助金、これにつきましては、この物価高の影響を抑えて、足元の国民の皆さんの暮らしや我が国の経済を守るために必要な取組であるというふうに認識しています。
一方で、環境省としても取り組んでいる脱炭素の取組を着実に進めていく、このことは大変重要であります。例えば自動車から排出される温室効果ガスの削減には、電動車の普及が極めて重要でありますし、GXの推進戦略においても、自動車分野の脱炭素化に大規模な投資を行っていくということへの方針が示されているのは御承知のとおりです。
環境省では、こうした運輸部門の排出量の約4割を占めると言われているトラックなどの商用車の電動化、これを集中的に支援する事業を行っておりますし、令和6年度の概算要求においては、341億円と大幅に増額しているところでございます。
お尋ねにあったガソリン補助金に対する経済産業省への意見等は行っておりませんけれども、脱炭素の実現、この大目標に向かって継続的に意見交換は常に行ってきています。商用車の電動化促進事業についても、経済産業省のみならず、国土交通省とも連携しながら取組の強化はしっかり進めているところであります。
 
(記者)毎日新聞の岡田です。処理水に関してお聞きしたいのですけど、農林水産大臣が「処理水」というところを「汚染水」と発言して謝罪する事態になりましたが、この事態について同じ閣僚としてどう受け止めたかお聞かせください。
(大臣)昨日、野村大臣が記者の皆さんの質問に対して、「処理水」という言葉を言い間違えた、このことについては、昨晩、野村大臣が全面的に謝罪して、撤回したものというふうに承知しております。その上で、改めて緊張感を持って、水産事業者の皆様に寄り添った対策の実施に万全を尽くしていくというふうに発言をされておりまして、私の立場からはそれ以上のコメントは控えさせていただきたいと思います。
 
(記者)エネルギージャーナル社の清水です。引き続き処理水について2点ほど伺いたい。お伺いするのは国務大臣及び環境大臣として、受け止めていただきたい。
 1つは、中国のさんま事件もありましたけども、中国で一方的にいろいろな嫌がらせ等の行動をやっているということから踏まえると、それによって水産物の販路が厳しくなったり、輸出が厳しくなったりしているということであるならば、むしろ、それを国内でドンドン消費するような、そういう政権としての対応をやるべきじゃないかと思います。特に具体的に言えば、ホタテの貝柱なんか中々高くて、今日、タクシーの運転手さんも言っていましたけれども、なぜ国内でそういうのを安く割引して売るような手だてを講じないのかということ。その件に関して、ぜひ、大臣は宮城県でもあるわけで、選挙区は違いますけども、非常にその水産物については極めて重視されているのではないかと思うので、伺います。
それから2点目は、関連するのですけども、環境省は日中環境協力というのを、もう20何年前からずっとやってきて、職員がその体の体調がおかしくなるほど一生懸命やってきた。いずれもそれは科学的根拠ということをベースにした日中環境協力であるし、また日中韓環境協力というスキームもある。現在もやっている。そういうものを、中国の今回の対応に照らして一時中断するとか、一々そこはもう環境省としても見合わせるとか、そういう政治的な対応というのは必要なのではないかと。そういうことが国民に対して、よくやっているなということになるのではないかという気がするのですけど、その2点はどうですか。
(大臣)国内で消費すると、これは御指摘のとおりだと思います。今、正確な確認は取れておりませんけれども、私の地元の方からも、水産物に関して、例えば注文が国内のほうからいろいろ来ていること、また支えようという声もいただいているという話も聞いております。そうしたものを国民の皆さん全部で支えていこうという大変温かい気持ち、これは大事でございますし、それに対して、国として何ができるのか。環境大臣として農林水産物の支援策等について言及することは控えさせていただきますけれども、そういった我が国、国民の温かい気持ちが今そういった福島をはじめとした、三陸の皆様、水産業者の皆様に寄せられていると。これは非常にありがたい話でありますし、この気持ちと同時に、この輪が広がっていくようなことで何ができるのかということは、政府として考えていくべきだろうというふうに思います。
 また中国との関係でございますけれども、今我が国も、まず英語でいろいろな発信をしておりますけれども、中国語においても在中国日本大使館において、海域モニタリング結果、こういったものを中国語で発信しておりますし、特に中国以外の国々に対しては、ウェブサイトとか、旧ツイッターのX。こういったもので発信すると同時に、フィナンシャル・タイムズであるとか、ニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナル、ロイター、AP、こういった海外のメディアに対しても丁寧に説明しているところでございます。
先般もASEANと日中韓の環境大臣会合がありましたけれど、そうした折々にも、中国のみならず、他の国に対してもそういった説明をすると同時に、今、ご指摘があったように話を切るという考え方も1つの考え方でしょうけれども、そういった場を捉えて、できるだけ丁寧に繰り返し説明していくということも必要だろうと思います。
できるだけ機会を捉えながら、中国をはじめとした海外の国々に、科学的専門的な知見を持って、理解していただくように最大限の努力を続けていきたいと思います。
(記者)西村大臣の優しさが出たような気がしますけども、ここは例えばその日中環境協力は環境省が外務省とともに、きっちり所管しているわけですから、そういうことも含めて、科学的根拠云々ということを大前提に見直す必要があるのではないかと。一時的にでも、これはどうですか。
(大臣)御指摘として受け止めてまいりたいと思いますけれども、我が国にとって、このALPS処理水の課題という非常に大きな課題の1つですけれども、それ以外にも、海洋プラスチックゴミの問題であるとか、温室効果ガスの削減の問題であるとか、様々な各国と話をしていかなければならない課題もございますので、今の御意見を踏まえつつ、今後、検討してまいりたいと思います。
 

会見動画は以下にございます。
https://youtu.be/ppNYiyct5Pc?si=YTllZQy5_ih6XmaJ
 
(以上)