大臣談話・大臣記者会見要旨

西村大臣閣議後記者会見録 (令和5年8月4日(金)11:35~12:02 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

   本日、私のほうから4件、お話をさせていただきたいと思います。
   一つはインドのチェンナイで開催されましたG20の環境・気候持続可能性大臣会合に出席いたしましたので、そのご報告をさせていただきます。
 今回のG20大臣会合におきましては、ウクライナ情勢の扱いや、気候変動への対応の一部で合意ができませんでしたが、成果文書及び議長総括という形で取りまとめることになりました。我が国が重視するポイントの多くを、同文書に盛り込むことができました。一定の成果を得たというふうに考えております。
 また、会合に際しまして、議長国インドのヤーダブ環境・森林・気候変動大臣、またCOP28の議長国であるUAEのジャーベル特使を初めとして、合計14か国、17名の閣僚級の皆様と意見交換を行うことができました。
 その後、7月29日から31日までブータン王国を訪問いたしました。滞在中、ワンチュク国王陛下に謁見したほか、ツェリン首相、シャルマエネルギー・天然資源大臣、ドルジ外務・貿易大臣、またツェリンインフラ交通大臣と会談をいたしました。
 ブータンで伺った具体的な協力ニーズ、これを踏まえて、環境分野においてどのような協力が可能か、会談後、事務方に検討を指示したところであります。
 2件目が、8月7日月曜日から、英国、アイスランド、ノルウェーの3か国を訪問いたします。英国におきましては、風力発電関連事業者との意見交換や、バイオ燃料製造のスタートアップ等の視察を行います。また、アイスランドとノルウェーでは、両国の環境担当大臣とバイの会談を行うほか、地熱発電所、国立公園等を視察いたします。
 今回の出張を通じまして、再エネや海洋プラスチック対策などの先導的な役割を果たす各国の現状を現地で確認し、今後の国際協力や、我が国の環境政策に活かしてまいりたいというふうに考えております。
 3点目が、本日、国立公園における滞在体験の魅力向上のための先端モデル事業の対象とする国立公園を選定いたしました。
 具体的には、6月29日に公表した取組方針を踏まえまして、有識者を含む専門委員会の助言を得て、十和田八幡平国立公園、十和田湖地域、中部山岳国立公園の南部地域及び大山隠岐国立公園の大山蒜山地域の3か所を選定いたしました。
 なお、ほかにも有望な候補とされた公園がございます。今後、地元と調整した上で、追加を検討してまいりたいと考えております。
 まずは、本日発表の3つの国立公園において、関係自治体と連携し、民間提案をいただきながら、国立公園の利用の高付加価値化に向けた基本構想の検討を進めてまいります。
 このほか、国立公園の滞在体験の魅力向上や、記念貨幣の発行を含む、国立公園制度100周年に向けた記念事業の取組については、お配りした資料をご覧いただければと思います。
 4点目が熱中症対策でございます。連日、記録的な暑さが続いておりまして、熱中症による救急搬送の人員は、先週1週間だけで1万人を超えております。気候変動対策として、温室効果ガスの排出削減に取り組むとともに、熱中症対策を含め、気候変動への適応を進めていくことが必要であります。国民の皆様には、自らの命を守るために、熱中症予防行動に努めていただくようお願いをいたします。熱中症対策については、これまでも、学校や関係団体に周知をし、取組を行ってまいりましたけれども、先月、熱中症対策の普及啓発の強化について、関係府省庁と合意をいたしました。
 これを受けて環境省では、7月31日から、SNSを活用した集中的な情報発信を行っております。また来週からは、政府の取組の全体像を分かりやすく整理し、発信してまいりたいと考えております。
 来週以降も厳しい暑さが続く見込みでありますので、報道各社の皆様には、これまでの熱中症対策の発信に、大変感謝しておりますし、今後とも一層の情報発信へのご協力をお願いいたしたいと思います。冒頭は以上です。
 

2.質疑応答

(記者)幹事社、日本テレビの西出です。よろしくお願いします。
 2点質問させていただきます。まず一点目ですが、G20環境・気候持続可能性大臣会合の議長サマリーに、「いくつかの国が、先進国の2040年温室効果ガス排出実質ゼロを求めた」という内容があるのですけれども、これは先進国側がさらなる高い目標を設定しようと提言したのか、それとも、途上国側が先進国の責任を問う形で言及したものなのか明らかにしていただきたいと思います。また日本は、どのような立場を取ったのかもあわせて教えてください。
(大臣)ご指摘の「一部のG20メンバーは、先進国が2040年までにネットゼロを達成する必要を述べた。」この文言につきましては、議長国インドが、議長総括という形で取りまとめた箇所でございます。成果文書に係る交渉におきましては、様々な意見というものが交わされました。非公開の場における議論が行われたということを踏まえて、ご指摘の文言は議長国インドによる判断で記載されたというふうに承知しておりまして、外交上そのクローズドの会議の中における議論は、詳細については差し控えさせていただきたいと思いますが、その上で申し上げますと、今年5月のG7広島首脳コミュニケにおいて、遅くとも2050年までに温室効果ガス排出ネットゼロを達成するという、我々のG7の目標は揺るぎがないわけでございまして、G7の立場に変更はないということを、その上で申し上げたいと思います。
(記者)2点目ですけれども、今日発表されました先端モデル事業、国立公園の先端モデル事業の対象の国立公園が、どのような理由で選定されたのか、お聞かせください。
(大臣)6月の29日に公表したこの事業の取組方針において、対象公園の選定の考え方として、4点をお示ししております。
 一つが、広域な利用推進の観点、もう一つが、国が取組を調整・実施する意義や効果、3点目が、地域の合意形成の枠組みや環境省の体制等の基盤、4点目が、先端モデル事業の中心となりうる利用拠点。この4点でございます。
 こうしたものに加えて、将来的な他の地域への展開の可能性や、有識者を含む専門委員会からのご意見といったものを踏まえて、環境省が政策的な観点から決定したものでございまして、それぞれの国立公園の選定のポイントは、十和田八幡平につきましては、利用拠点の再生による新たな魅力づくり、中部山岳におきましては、山岳地域の利用の高付加価値化を含めた広域連携、大山隠岐につきましては、日本の伝統的自然観や歴史文化を踏まえた自然体験の拠点作り、こういったものがポイントとなっております。
 
(記者)日刊工業新聞社の松木です。今週開かれた中環審の総政部会で、気候変動問題を心配する日本人の割合が以前よりも大きく減っているというのが指摘されていました。また、そのときの資料の中で、環境保護企業、環境を保護している企業の商品を買う割合というのも、他国に比べて少ないというのがデータが示されました。国民のこういう気候変動問題ですとか、環境問題の意識を高めないと、頑張っている、先行して環境問題に取り組んでいる企業が報われないのかなというふうに思います。国民の意識を高めるにはどのようにしたらいいと大臣はお考えでしょうか。また、脱炭素の国民運動の愛称をデコ活としましたが、大臣は普段、どのようにデコ活という言葉を使われて、脱炭素の国民運動の浸透を図っているのか、教えてください。
(大臣)デコ活、これはもう何度もお話しさせていただいておりますけれども、二酸化炭素CO2を減らす、「デ」という意味と、あと脱炭素、Decarbonizationと、また環境に良いエコという言葉の韻を含むデコ、これと、生活、活動の活を組み合わせた言葉だということは、これまで申し上げたとおりでございます。このデコ活をあらゆる場面でまさに活用して、国民や消費者の皆さんの意識を変えて、脱炭素につながる行動変容、ライフスタイルの転換といったものを一層促していくことが、ご指摘のとおり必要だというふうに考えております。そのためにも、政府が率先してデコ活を進めることが必要でありまして、私自身もクールビズや、また今後、家電製品などを買い換える際には、省エネ製品の選択をはじめとして、デコ活を実践してまいりたいというふうに考えております。
 ともかく、環境省を挙げて、国民の皆さまの先頭に立って、デコ活を進めてまいりたいと考えております。皆様にご協力いただいて、デコ活というのは、決定、発信されましたけれど、まだまだデコ活という言葉自体が広がりを持っている状況ではございませんので、しっかり環境省としても、この言葉、そしてこの言葉の意味するところ、これを周知できるように、しっかり旗を振ってまいりたいというふうに考えております。
 
(記者)共同通信の矢野です。海外出張に行かれるということで、少し時期が早いのですが、今月15日に終戦の日を迎えます、15日前後の靖国神社の参拝予定についてお伺いできればと思います。また参拝されない場合、例えば真榊の奉納など、予定などがあるかどうかも合わせて伺えればと思います。
(大臣)今のご指摘の件に関しましては、個人として適切に判断してまいりたいというふうに考えております。
また、戦争において、貴い命をなくされた皆様に対しまして、心から哀悼の誠をささげたいというふうに考えております。
 
(記者)朝日新聞の市野です。G20のことですが、冒頭大臣が一定の成果がというふうにおっしゃっていただいたところではあるのですけども、一方で、議長サマリーの中では、IPCCも言っていた35年60%のような点については、G7ではできていたとはいえ、G20の今回は合意には至っていないと。こういったところはあるわけなのですけども、G20は排出の8割を占めて、かなり大きなプレゼンスを持っているとは思うのですが、この成果とは逆に、年末のCOPに向けて、懸念に感じている部分というものがないのか、今回の結果についてですね、その辺りをお聞かせいただけないでしょうか。
(大臣)今回の交渉においては、G7と異なるG20のメンバーということで、様々な国の状況、経済状況を踏まえた大きな違いがあるという中において、様々な意見交換がなされました。どのような国が何に反対したかということは、詳細は差し控えなければならないと思いますけれども、全体として68の項目を議論し、そのうち64項目を取りまとめることができたということは、大きな成果だと思っております。ウクライナ情勢、また、気候変動の一部の案件について、4項目採択というふうには至りませんでしたけれども、その部分についても、議長総括の中で、こういった意見があったということが書き込まれたということでございます。
 非常に、国の状況が違う中で交渉というのは非常に厳しいものではありますけれども、ただ、地球全体の将来に向かって、そういった国々が議論をし、多くの項目においてその合意が得られたということは、希望が見い出せることができるのではないかというふうに思っております。
(記者)至らなかった4つの項目に、まさに年末にも議論になるような重要なポイントが含まれているようには感じるのですが、そこについてはいかがでしょうか。
(大臣)ウクライナ情勢に関しましては、一見、気候変動とは直接の案件ではございませんけれど、例えば2025年までにピークアウトという、そこはこの年限を区切るということに関して、様々な意見があったわけですけれど、全体としてピークアウトを図ろうという意味においては共通した認識があるものというふうに考えておりますし、また排出削減対策が講じられていない化石燃料のフェーズダウンという案件も、これも、各国の状況が異なる中において、将来的にはこうした排出削減対策が講じられていない、化石燃料を減らしていかなければならないということは、総意としてあるのだというふうに思っております。あと、炭素国境調整措置の件に関しましても、これもまだ、それぞれの国の経済発展の状況が異なる中での話ですけど、将来的には当然、全ての国において脱炭素に向けた取組を行っていくというのがベースとして、現状、今、なかなか厳しいという声があったというふうに考えておりますので、全く根っこから反対という話ではないので、将来、全ての合意に向けて進めるように、これからも国際交渉をしっかりやっていかなければならないと考えております。
 
(記者)毎日新聞の岡田です。今のG20の関連で、冒頭の幹事社質問と若干重複するところがあるのですけれど、改めて確認なんですけど、この議長サマリーに含まれていた2040年の温室効果ガスの実質排出ゼロにせよということに対して、日本として、反対したのか賛成したのか、もしくは意見表明というのは特にしなかったのか、この日本のスタンスについてもう一度聞かせてくださいというのが1点と、もう1点は、これはこれまでちょっと聞いていなかったので確認したいのですが、2035年の日本としての排出削減の目標、これは35年の目標を示すことが国連から推奨はされていますけど、日本として35年の目標って示すのですか。そこのお考え、この2点、お聞かせください。
(大臣)中での交渉における話につきましては、控えさせていただきたいと思いますけれども、先ほども申し上げたように、G7、我が国が議長国として取りまとめた、遅くとも2050年までに温室効果ガスの排出ネットゼロを達成するという、この我が国が議長として取りまとめた目標というものは揺るぎないということでございます。それ以外の年限につきましては、我が国のみならず世界各国それぞれの国の事情を踏まえた中で、目的に向かって着実に歩みを進めなければなければならないということは、それぞれの国が思っているというふうに、今回の交渉を含めても私自身感じておりますので、それに向けて各国が、最終目標に向けての歩みをできるだけ早く進めるように協力していかなければならないということだと思います。
(記者)日本として意見を表明する機会というのはあったのですか、2040年に対しての。
(大臣)それぞれの国、我が国も含めて、それぞれの国の情勢を踏まえた意見の発出というのは当然ございました。非常にクローズドの中で、各国の立場等々を踏まえた上での意見表明ですので、この場において、詳細については申し上げることはできませんけれども、繰り返しになりますが、G7で取りまとめたこのコミュニケに関しては、我が国をはじめG7各国はそろってしっかりやっていこうという、この目標に関しては揺るぎがないということであります。
(記者)もう一点、2035年の日本としての排出削減の目標を示すかどうかということはどうですか。
(大臣)2035年というのはあれですよね、グテーレスさんがお話しされた話だというふうに思っておりますけれども、次期NDCにつきましては、要するに3年ごとの地球温暖化対策計画の見直しや、2025年までの提出が奨励されている次期NDC、こうした機会を見据えて、IPCCによる科学的知見や排出削減の実績、また対策の進捗、また今後の見通し、こうしたことを踏まえまして、目標とする、実現するための対策や施策について、我が国とすれば、関係省庁連携を取りながら検討を進めていくということでございます。
 
(記者)環境新聞の小峰です。今回訪問されたブータンについてお尋ねします。ブータンという国の憲法は、国民総幸福量という独自の概念を提唱し、一方で、豊かな自然環境の保全と持続可能な利用を国民に義務づけている、世界でもまれな憲法だと思います。西村大臣も恐らく、ブータンに行く前に事前勉強とかされていたのではないかと思いますけれども、ブータンでは、ブータンの憲法について、大臣はどなたかと、どのようなお話をされたのでしょうか。お聞かせください。
(大臣)ブータンにおきましては、憲法の話をする機会がありました。1つは国王陛下、そしてまた、前司法大臣とも会合で御一緒することがありましたので、ブータンの新たな憲法、たしか2008年に新たに制定されたと思うのですけれども、この憲法において、全てのブータン人は、現在及び将来の世代の利益に資するために、王国における自然資源及び環境の受託者であるという形で、新たに環境について明記されております。行く前に、そのことについて知っておりましたので、この環境に関する、ブータン国民全てが自然資源と環境、これの受託者であり、要するに守っていかなければいけないという、この新憲法の趣旨に大変感銘を受けたということをお話させていただきました。
 国王陛下からのお言葉については、差し控えますけれども、非常に、そのお話に関しては、国王陛下も、前司法大臣も、深く、我々は自然とともにあるという雰囲気の思いというのは、お伺いさせていただいたところでございます。
 今回、国王陛下を含め、各大臣、首相とお話をさせていただきましたので、そうした意味において、環境分野における二国間の協力、特にJCMや早期警戒システムを含めた様々な事案に関して、非常に関心を寄せられました。特に私が訪問する直前に、ブータンの東部地域で、集中豪雨による災害で多くの人命を失われたというお話がちょうどございましたので、そういった早期警戒システムや、またJCMも含めた様々な環境協力、これについてのブータン側のニーズといったものを承ってまいりましたので、それを一つ、向こうの事務方と協議するように、環境省の事務方に指示をしたところでございます。
(記者)それで大臣、ブータンの国王陛下、前司法大臣と非常に意気投合したようですけれども、憲法についてですね。それを、西村大臣は、日本国の憲法改正論議に活かすお考えはありませんでしょうか。
(大臣)ブータンの憲法については、今お話ししたとおりでございますけれども、我が国の憲法改正につきまして、今、国会における憲法審査会において議論をいただいているところでございますので、国会における議論が行われている中、内閣の一員として、環境大臣の私からのコメントは差し控えたいと思います。
 
(記者)NHKの間野と申します。政府が進めている洋上風力発電を巡って、報道で御存知かもしれないですけれども、自民党議員が業者から多額の資金提供を受けたというような疑惑が上がっているという報道が出ています。環境省としては、プロジェクトに直接関係がないというふうに聞いているのですけれども、脱炭素という観点で、政府が推進している洋上風力発電を巡って、この疑惑が出ていることについての、大臣として受け止めをお聞かせください。
(大臣)報道は今朝の新聞等を通じまして承知しておりますが、まさに捜査に関するものでございますので、その件に関するコメントは差し控えたいと思いますが、政治資金の問題については、それぞれの国会議員が説明責任をしっかりと果たしていくことが重要だというふうに考えております。本件によって、風力発電事業そのものに対して課題が示されたというものではないというふうに認識しております。政府とすれば、2050年のカーボンニュートラル、これに向けまして、風力発電を含め、再エネの最大限導入をしっかりと進めてまいりたいというふうに考えております。
 
会見動画は以下にございます。
https://youtu.be/a909gwcu0og
 
(以上)