大臣談話・大臣記者会見要旨

西村大臣閣議後記者会見録 (令和4年9月2日(金)13:30~13:52 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 今日はリーガン長官との記者会見がありましたので、大変遅くなりまして申し訳ございませんでした。まず、私のほうから、本日は3点につきましてお話をさせていただきたいと思っております。
まず、環境省の令和5年度概算要求等についてでございます。全体的な方向性としては、炭素中立、循環経済、自然再興の同時達成に向けた取組を通じて、持続可能性をめぐる社会課題解決と経済成長を同時実現して、「新しい資本主義」に貢献する、こうした方向性のもとで、「成長志向型カーボンプライシング構想」の具体化、最大限の活用を行い、地域・暮らしの脱炭素トランジションに向けた投資、また、地域脱炭素と密接に関連する社会インフラ、サプライチェーン分野における投資、こうしたものを促してまいります。また、来年日本で開催されますG7において、国際的議論をリードするとともに、世界のESG資金を呼び込む。同時に、日本の優れた技術を海外展開して、「アジア・ゼロエミッション共同体構想」の実現に貢献する。さらには、環境省の不変の原点であります、人の命と環境を守る基盤的な取組、東日本大震災からの復興・再生を着実に実施してまいります。また、環境省として、こうした対応に、十分な予算の確保に向けてしっかりと取り組んでまいりたいと考えています。また、原子力規制委員会の組織体制の充実等の要求や要望、内閣府原子力防災担当の原子力災害対応の実効性向上等の要求・要望もしっかり行ってまいりたいというふうに考えております。
 次に、G20環境・気候大臣会合の成果につきましてでございます。インドネシアのバリ島で開催されましたG20環境・気候大臣会合に出席して、昨日帰国したところであります。今回の会合では、ウクライナ問題もございましたけれども、気候変動や生物多様性といった課題に対しまして、先進国と途上国の意見の隔たりが非常に大きいこと、そして、合意が容易でないということを実感したところであります。問題を具体的に解決しようとするステージに入っているがゆえに、立場の違いがより顕著になっているんではないかと感じました。私からは、気候変動、生物多様性、海洋プラスチックごみなどの各分野において我が国が重視するポイントを主張いたしました。今後、議長国において、議長サマリーを発出予定というふうに聞いております。会合に際しまして、議長国であるインドネシアのルフット海洋・投資調整大臣、また、シティ環境林業大臣、インドのヤーダブ環境・森林・気候変動大臣、米国のケリー大統領気候特使とバイ会談を行いました。また、G7等の16か国、2つの国際機関の閣僚等と直接意見交換を行いまして、G7に向けた信頼構築の第一歩を踏み出せたのではないかと考えています。11月のCOP27、12月の生物多様性COP15、及び我が国が議長国となります来年のG7に向けて、環境・気候変動問題の重要性を踏まえて、立場の違いを乗り越えて精力的に取り組んでまいりたいと考えています。
 3点目です。TICAD8における環境分野の取組及び日本チュニジア間のJCM署名についてであります。8月27日、28日にチュニジアで開催されたTICAD8におきまして、岸田総理より、アフリカの脱炭素への構造転換を目指す、「アフリカ・グリーン成長イニシアティブ」が発表されました。このイニシアティブの一環として、8月26日にセネガルに続いてチュニジアが19か国目の二国間クレジット制度(JCM)のパートナー国となりました。あわせて、廃棄物管理を通じたアフリカ諸国の公衆衛生の改善にも貢献してまいりたいと考えております。冒頭は以上でございます。
 

2.質疑応答

(記者)幹事社の共同通信の出崎です。まず、2点質問させてください。1点目なんですが、概算要求についての質問になります。大臣として最も力を入れて取り組みたい施策についてお伺いできますでしょうか。
(大臣)総理から、「クリーンエネルギー戦略」に関する有識者会議において検討指示のありました「地域・暮らしの脱炭素化」、これに向けまして、脱炭素技術の社会実装を推進する施策に重点的に取り組んでまいりたいというふうに考えています。また、官邸のGX実行会議で検討・議論されています「成長志向型カーボンプライシング構想」の具体化、そして最大限の活用に力を注いでまいりたいというふうに考えています。
(記者)2点目なんですが、G20の関連です。今後、先ほどもお話があったように、COP27、G7と、様々こうした会議が続くと思うのですが、G7の議長国になる中で、いかにして国際的なリーダーシップを発揮していくのか、そういったところの意気込みを改めてお伺いできますでしょうか。
(大臣)冒頭申し上げましたように、気候変動、そしてまた生物多様性といった、地球規模の環境問題につきましては、先進国と途上国との立場の違いというものが、非常に顕著になってきているというふうに思います。これも繰り返しになりますが、先進国においても、また途上国においても、しっかりとこの環境問題に取り組まなければならないという、そういったステージにそれぞれの意識が入ってきたがゆえの、立場の違いが顕著になってきたんだろうと思っております。こういった立場の違いはありますけれども、この問題を解決しようという思いの中で、国際社会が一致団結して、そして、こういった課題を乗り越えていく。これが今、一番重要であろうというふうに思っています。そして、今御指摘があったようにですね、今後、11月の気候変動のCOP27、12月の生物多様性のCOP15、そして、来年、我が国が議長国となりますG7気候エネルギー環境大臣会合と、重要な会議が続いてまいります。こうした中で、各国閣僚と、しっかりと意見交換を進める。そしてそのために今回も4つのバイ会談のほかに、16か国2国際機関の閣僚の皆さんと様々、短時間ではありましたけど、意見交換をいたしました。こういったことが地球環境問題の克服に向けて、一致団結していくための、まさに第1歩となったんだろうというふうに思っております。信頼関係を高めて、議論をしっかり進めてまいりたいというふうに思っています。
 
(記者)テレビ朝日の川﨑です。G20の結果について、総理にどのように御報告されたのか、また、総理からは反応があったか、教えてください。
(大臣)総理には、朝、閣議後に、総理の執務室において御報告申し上げました。議長サマリーが発出の予定で進んでいるという状況、そして、我が国とすれば、気候変動、そして生物多様性、海洋プラスチックごみといった重視すべきポイントについて、しっかり主張した上で、ほぼ合意も盛り込まれたというふうに認識しております。議長サマリーがまだ発出されておりませんけれども、そういった主張は受け入れていただいたということをお伝えいたしました。ただ、環境問題という、一朝一夕には乗り越えられない、非常に大きな課題ですので、総理のほうからは、来年のG7に向けて、更にCOP等々を通じて議論を積み重ねて解決の出口に向かって力を注いでほしいというお話をいただきました。
(記者)それにも関係すると思うんですけれども、今回のG20に関しては、日本も含めてですね、ロシアのウクライナ侵攻への非難がありまして、そういう関係もあって合意、共同声明の採択に至らなかったという点もあると思うんですが、今後COP27それからCOP15もある中で、日本としては、これを、ロシアの関係も含めて、どう乗り越えていくのか、何かお考えがあれば伺わせてください。
(大臣)現状、G20の会議においても、ウクライナの侵攻に関する非難の声というのが、我が国としてもしっかり申し上げましたし、多くの国々からそういった意見が出たのは事実です。しかしながら、こういったウクライナ情勢を乗り越えて、環境や気候変動の対策を進めていかなければならない、歩みを止めてはならないという、そういった強い意思を表明する国々が非常に多かったと思っております。そういった、歩みを止めない、乗り越えていくんだという、この意思を各国と連携しながら、更に強めてまいりたいというふうに思っています。
(記者)会議の中でのロシアのウクライナ侵攻への非難を、今後も触れたりとか、あるいは触れなかったりとかということに関してはお考えは今のところ無いでしょうか。
(大臣)今後、各国がどういう対応をされるかは、承知するところではありませんが、今回の会議においては非常に多くの国々が、我が国を含めて、ウクライナの侵攻に対する非難、そしてまたウクライナ国民への連帯の意思を表明したということであります。
(記者)すみません、もう一点。先ほど日米環境政策対話のほうでありました、リーガン長官とお話をされたと思うのですけれども、会見の中で、リーガン長官からですね、「原子力が気候危機を緩和する技術として欠かせない」という発言もありましたが、その場で大臣も原子力に対する考えをお話されていましたけれども、改めてアメリカのこういった考えを聞いて、受け止めといいますか、ありますでしょうか。
(大臣)原子力に関しましては、先ほど私が申し上げた、我が国の立場は安全性第一、最優先という中で、岸田総理の検討指示がGX実行会議でありましたので、その中で経産省が検討を進めている。環境省とすれば、原発の利用に関するものを経産省と今検討を進めていますので、環境省は規制部分において原子力規制委員会という独立性の高い機関がしっかりと適切に判断していくのをサポートするという状況でございます。アメリカの立場に関しては、リーガン長官が申し上げたとおりでございまして、それに関して我が国としてコメントすることは遠慮させていただきたいと思います。
(記者)気候危機を緩和する技術として、原子力が欠かせないというような内容に関しては、どう感じられますか。
(大臣)先ほどのリーガン長官のお話であれば、カーボンニュートラル、こういったものを、気候変動緩和のために脱炭素化を実現するためには、非常に有用なものの1つであるというふうに発言されたと承知しています。
(記者)大臣としては、そこに共感するところは特にはないですか。
(大臣)環境大臣とすれば、それに対してコメントは控えさせていただきたいと思います。
 
(記者)エネルギーと環境、エネルギージャーナルの清水です。まず伺いたい点は、先ほどの質問にもありましたけれども、大臣もおっしゃった先進国と途上国の乖離というか落差が目立ったという点。これは特に前環境大臣のときから、そうだったと思うのですが、世界の気候変動1.5℃達成のためには、中国とインド、それの排出量ピークをとにかく前倒ししないと、もう何ともしようがないという。これはもう国際的な共通の理解だと思います。日本は先ほどいろいろ主張されたとおっしゃったけれども、中国、インドに対するCO2削減の対応というのは、何か特に意見を言ったのでしょうか。それと国際会議、G20として何らかの合意的なものがあったのかどうか、そこをお伺いします。
(大臣)G20全体とすれば、今、議長サマリーをまとめている状況でございますので、それを待つしかないと思っておりますが、しっかり我が国とすれば主張すべきことは主張する。それと同時に、今御指摘のあった中国、インドという御意見は大変もっともな御意見だとは思います。そうした中で、インドの大臣ともバイで会談いたしましたし、ケリー特使ともバイで会談して、大分突っ込んだお話はさせていただきましたが、まだまとまった話ではございませんので、交渉過程の話でございますので、詳細についてはちょっと現状は遠慮させていただきたいと思っています。かなり様々な突っ込んだお話をさせていただきました。
(記者)では2つ目、概算要求関連で、やっぱりGX、あるいは炭素税、カーボンプライシングをどうするかということが非常に大きいと思いますが、概算要求の資料を見ると、何か炭素税は中期的に検討とかという、これは私の理解ですけれども、そんな具合に書いてある。ちょっと方針が変わったのかなと思うんですが、どういうものに使途を考えるか、生活、民生分野ということでさっきおっしゃったけれども、具体的な、どのくらいの金が必要なのか、どのくらいの投資が必要なのかという、青写真は、産業用は一応それなりにあるけれども、環境省では何もないんですよ、まだね。そこはどういう手順で示していくのか。それと炭素税導入も、これは税制調査会のほうに何か全面的に委ねて、どういう炭素税にするか、税率から何から、これは環境省で案を作らなければいけないと私は思うんだけれども、その辺はどうお考えですか。
(大臣)まず1つは炭素税に関する話ですけれども、カーボンプライシングということで、炭素税という言葉を使わなくなったという御指摘だと思いますけれども、このカーボンプライシングという言葉自体がですね、炭素税と排出量取引、この2つを包含するものでありますので、炭素税と排出量取引、この合わせたものを含めてカーボンプライシングという言い方をしているというふうに御理解いただければと思います。また、あわせて、税制等々について、環境省で取りまとめるべきだという御意見をいただきましたが、税調がございます。そうした中で、与党の税調、また政府税調を含めてですね、環境省としての思いの形はお伝えするけれども、そういった細かな数字等々は税調等で決めていく部分もございますので、その持ち場持ち場と申しますか、立場立場でやるべきところがありますので、環境省としての考えはしっかりお伝えしていきたいというふうに思っています。
 
(記者)毎日新聞の岡田です。今の清水さんの質問と少し重複はするんですけど、G20で先進国と途上国との立場の違いがはっきりしていたと。このウクライナ情勢の中でですね、より国際的な協調というのは難しくなっていると思うんですけど、今年のG7ではドイツはですね、気候クラブという構想を持って、そういったインドとか中国とかを巻き込んでいこうという構想を示しましたけれども、来年のG7に向けてこうしたこの難しい状況の中で、日本としてどういう戦略を描いているかというのを改めてお聞かせください。
(大臣)先ほど申し上げたようにですね、これからCOP27、COP15というものがございます。こうしたものを通しながらG7に向けてより議論を深めていきたいというふうに思っていますが、具体的に今この部分をこうするというよりも、まず今回G20でお会いした、私も環境大臣となって初めての会合でもありましたので、これから議論を進めていくに当たり、様々な人間関係、信頼関係というのは本当に必要だと思います。バイで会って、その人の人となりも含めて、しっかり信頼関係を含めた上で、どこをどうまとめていくかというのが、皆さんの会社においても同様のことだと思いますので、まずその一歩が今回だったというふうに認識しております。具体的にはこれからしっかりと積み上げてG7まで持っていきたい。先ほど岸田総理からもですね、「G7に向けてしっかり積み上げていってほしい」という御指示がございましたので、そのために力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。
 
(記者)電気新聞の湯川と申します。御意見あればでいいんですけど、リーガン長官も先ほどおっしゃっていたんですけど、アメリカのインフレ抑制法案、脱炭素への大規模投資を含む案なんですけど、大臣としてのこの法案に対する評価、どういったものがあるのか教えてください。また、日本における脱炭素投資はGX実行会議が決めていくと思うんですけど、年末までに決めるということで、ざっくり半年くらい遅れがあると思うんですけど、その辺に関する感想みたいなものがあれば教えてください。
(大臣)インフレ抑制法に関してはですね、先ほどリーガン長官と様々な話をしましたけど、非常に高く評価しております。これからカーボンニュートラルを進めていく上においてはですね、こういった投資の部分を含めた非常に大規模な決断というのは大変評価できるものだというふうに思っております。また、あわせて我が国でもGXをやってまいりますので、その部分の御説明をすると同時に、やっぱりこの辺がうまく連携しながらですね、世界をリードできるようにしてまいりたいというふうに考えています。
 
 
会見動画は以下にございます。
https://youtu.be/wERN2mfk5T4
(以上)