大臣談話・大臣記者会見要旨

原田大臣記者会見録(平成31年4月5日(金)9:32 ~ 10:02 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 私から2点御報告いたします。まず、4月2日に第5回の「パリ協定長期成長戦略懇談会」が開催され、御承知のとおり提言が取りまとめられたところであります。懇談会では、私から、先週、電力分野の低炭素化に向けたアクションを発表し、環境大臣としてこれまでより一段厳しい姿勢として、CO2排出削減の取組への対応の道筋が確認できない案件については、「中止を求める」ということを、はっきり申し上げたところであります。その上で、提言においては、昨年のIPCC1.5℃レポートの公表を始めとする脱炭素社会に向けた国際的議論の高まりを踏まえまして、「今世紀後半のできるだけ早期に『脱炭素社会』、すなわち実質排出ゼロの実現を目指す」という全体ビジョンと、これを踏まえた各分野のビジョンなど、世界に胸を張って発信できる野心的な内容が示されているところであります。なお、IPCCにつきましては、昨年秋に1.5℃というレポートが出ました。今年の5月に京都でIPCC総会がございます。他の案件もございますけれども、そこではこの1.5℃目標の重要性を更に強調して、世界全体で、この一つの目標がより広まるように努力をしたいと思っており、そのことも私は懇談会で発表したところであります。また、ビジョンの実現に向けた具体的アプローチとして、日本の特長をいかした視点が盛り込まれたところであります。「環境と成長の好循環」の実現のためのイノベーションの重要性です。今回この懇談会では、イノベーションが非常に重要であると。ある意味では、これしか方法がないのだというような中身になっておりますけれども、特に脱炭素という観点から、CCUSは様々な国や産業の脱炭素化のカギを握る技術分野でありまして、環境省としても、CCUの商用化技術を2023年までに確立するということを、この懇談会で私がはっきり申し上げたところであります。懇談会の中身にはそこまでは書いておりませんけれども、先ほどの、石炭火力について中止を求めていくということと併せて、このCCUのことについても、2023年という年限を挙げて報告したところであります。また、グリーンファイナンスについては、イノベーションに国内外のESG資金を集める方向性が盛り込まれました。環境省としても、ESG金融ハイレベル・パネルの開催等を通じて、しっかり取り組んでいくということを報告したところであります。ビジョン実現に向け、「望ましい社会像」への移行の観点が重要であるとし、「地域」の視点から「地域循環共生圏」の創造というのがしっかり盛り込まれたところであります。環境省として、関係主体と連携・対話しながらこうしたアプローチを実践し、また世界に発信してまいります。今後は、今回の懇談会における総理の御指示を受け、提言の内容を踏まえて、今年6月のG20までに、政府としての長期戦略を策定すべく、作業を加速したいと思っております。
 続きまして2点目は、新宿御苑のライトアップについて御報告いたします。新宿御苑の魅力向上の一環として実施する八重桜ライトアップ等についてお知らせをしたいと思います。八重桜の開花時期に合わせて、4月8日から10 日及び、総理主催の「桜を見る会」を挟んだ、14 日から20 日の計10 日間の日程で行いたいと思います。また、14 日から18 日の5日間は観光庁との連携の下、桜、食、伝統芸能等のエンターテインメントを組み合わせ、観光コンテンツの造成と効果検証を目的とした公共空間のナイトタイムエコノミーに関する実証事業を実施したいと思います。これらの取組を通じ、インバウンド、訪日外国人観光客を含む多くの来園者の皆様に一層楽しんでいただき、我が国を代表する庭園として、新宿御苑の価値を最大限引き出してまいります。なお、新宿御苑につきましては、議論は昨年から続けましたけれども、今年1月になって、思い切った新宿御苑改革ということを打ち出したところであります。これだけの国民資産を、やはり更に内外の人々に知っていただきたいということです。200円から500円という入場料金アップもしたところであり、多少心配しましたけれども、お陰様で大変なお客さんに入っていただいているという報告を受けておりますし、時間の延長等も含め、また、お話ししましたように、観光庁とよく連絡とりながら、中でのエンターテインメント事業もこれからどんどんやっていきたいと思っております。この素晴らしい大自然を、東京のど真ん中で見られるということで、これはもう本当に、極めて得がたい新宿御苑であると思っております。是非また皆さん方もそういう観点から、新宿御苑のこれからについて、しっかりまた御期待していただきたいなと思います。たまさか「令和」という新しい元号も始まるところでございますので、どうぞよろしくお願いします。

2.質疑応答

(記者)朝日新聞の川村です。大臣、冒頭御発言があった、長期戦略の有識者懇談会の提言がまとまったことについてですが、大臣、先ほど、「世界に胸を張って」というふうな形でおっしゃいましたが、大臣から見て、特に各国が、既に長期戦略を出している国もありますけれども、そういう各国の戦略と比べて、特に今回の提言が優れているという点、大臣はどの辺だとお考えか教えてください。
(大臣)各国と比較というのは、私は必ずしも適当でないというか、それぞれの国の事情を踏まえて、しっかりとした主張をすればいいのではないかと思っております。この懇談会においては、北岡座長、本当によく頑張っていただきました。また、私どもは、立派な提言をまとめていただいたというふうに思っております。提言においては、今世紀後半のできるだけ早期に脱炭素社会、実質排出ゼロを目指すということを今回、改めて打ち出したところであります。従来は2050年までに80%カットという、これ自体大変な目標でありますけれども、今世紀の後半のできるだけ早いうち、できるだけ早いという解釈でありますけれど、やはり90年ごろとなるともう遅すぎます。そのときに脱炭素、排出ゼロということでありますから、元々の2050年80%カットに比べれば、相当な前向きな目標だと思っております。そのための国内政策、しっかりまたこれから打ち立てていかなければいけないなということであります。先ほど、石炭火力についても、もちろん多くの関係者の皆さんとこれから相談でありますけれども、私としては意欲的な施策を打つことによって、国際社会を引っ張っていけるような、それぐらいの気迫で臨みたいと思っております。CCUについても申し上げたとおりであります。さらに、地域の観点から地域循環共生圏、この概念はかねがね我が環境省が、地域創生、更には自立、しかしお互いの地域で連絡を密にすることによって、最終的には国全体が地域循環共生圏として、かつそれぞれの地域で経済も社会も回るようにということで打ち出したところであります。今やSDGsというのは非常に広まってはきました。観念的には皆、理解してきましたけども、これは国際的な運動でありますけれども、同時にそれを我が国に引き直せば、やはりこれは地域循環共生圏という言葉に多分収れんされるのではないかと思っております。いずれにいたしましても、この国際、地球大ではSDGs、またオールジャパンとしては、この地域循環共生圏というものを、私ども、しっかりまた広めていかなければいけないと思っています。こうした要素が含まれた提言は、世界に胸を張って発信できる野心的な内容と、あえてそう申し上げておりますけども、かなり自信を持ったこの目標ということであります。ついては、それをしっかりまた目指せるような具体的な政策を今考えてもおりますし、何とかG20では内外に示せるように努力をしたいと思っております。今回の懇談会における総理の御指示を受けて、作業を加速したいというふうに今思ってるところであります。
(記者)今大臣おっしゃったように、最終ゴールとしての脱炭素社会やパリ協定の掲げる1.5℃目標、IPCCの報告書などに触れている点が今までより野心的だと思うのですが、一方で昨秋のIPCCの報告書では、世界が1.5℃に抑えることを目指すのであれば、2050年にネットゼロは実質ゼロの必要性があるのではないかというような指摘もありましたけれども、今回あくまで2050年80%という目標というのは変わらないままですけれども、今後2050年時点での目標について引き上げるお考えはあるでしょうか。またその辺りをお答えください。
(大臣)やや高い目標でありますけれども、政府の戦略に、今世紀後半の「できるだけ早期に」脱炭素社会、つまり実質排出ゼロにする目標を位置づければ、G7としては初めてのことになります。そういう意味では、前回というか、2.0℃から、1.5℃目標を高らかに掲げた以上は、従来の2℃目標よりも実質排出ゼロの実現の前倒しを図るというふうにも意味しているところだと思っています。さらに、そのビジョンを踏まえ、各分野での脱炭素社会の実現に向けた挑戦や「可能な地域、企業から2050年を待たずに、カーボンニュートラル、カーボンゼロを実現する」といった分野ごとの野心的な方向性も盛り込まれたところであります。こうしたことを踏まえまして、この提言は世界に胸を張って発信できるビジョンではないかというふうに考えてるところであります。分野ごとと申しますのは、当然のことながら経済界、産業界も含めて、それぞれ非常に特殊性、それぞれの独自な状況があります。せんだっても、今日までの実績について、温暖化対策計画の点検についても数日前に発表いたしました。相当意欲的に守っているところと、まだまだ課題が多いところ、これはもう当然でありますけど、そういうものをしっかりまた踏まえまして、それぞれの経済界、産業界、いろいろなことを相談しながら、しかし、事はそういう重大なこの目標を目指してやるのだということを、私ども環境行政の中でもしっかりまた皆さんと相談をしていきたいと思っております。

(記者)毎日新聞の五十嵐です。今のやり取りに関連してなのですが、今しがたの大臣の御発言の中で、前倒しを図るというふうな趣旨の話がありましたけど、これは、50年の80%削減の達成を前倒しすることを目指すと、そういう御趣旨ですか。
(大臣)まだ厳密にではありませんけども、この50年80%というのは、多分これは、今世紀2℃以内に抑えるというような、大きな前提があったように私は理解してまして、そういう意味では、21世紀の世紀末までに1.5℃を目指すということを目指しながらやるためには、やはり前提としては相当前倒しという政策にしなければいけないと、そういう意味でございます。要するに2.0℃を目指した80%ダウンから、1.5℃を最終的に目指すとなれば、やはり当然のことながら全体的に、前倒し的な活動をしなければいけない、そういう理解であります。
(事務方)事務方から補足です。パリ協定の中では、従来の2℃目標、つまり今世紀後半に人為的な排出と吸収のバランスを達成するということになっておりますけれども、今回いただいた提言では今世紀後半、できるだけ早期に目指していくという意味で、その部分でしっかり前倒しという姿勢が出せていると、こういう理解をしております。
(記者)せっかくなのでもう一つ伺いますけれども、一方で2030年目標というのもあって、こちらについてはもちろん今まさに目標達成に向けて実行している段階だと思いますが、こちらに関しては、まだ実際達成できるのかどうかというところも不明確な部分があると思うのですけど、ここを達成させるという意味で、大臣として何らかてこ入れをするとか、そういったお考えというのは現時点でお持ちなのでしょうか。
(大臣)先ほどのやり取りとも関係しますけど、まずは26%カット、更には50年の80%カットについて、私どもとして現在それを、まずは確実に実現するということが大切なことであります。ただ、今世紀後半に向けてという意味では、大きな目標として2.0から1.5℃を目指そうということになりますと、30年度26%削減というのが、まずは今のところ確実に実現しなければいけませんが、それをまず実現することによって、また更にそれ以上のことができれば、さらに追加的に努力をするということは当然だろうと思っております。

(記者)読売新聞の安田です。長期戦略についてお尋ねします。産業界とかとの関わりがいろいろある上で申し上げますが、今世紀できるだけ早期にというのは、もう先ほど木野室長のほうからもフォローがありましたが、パリ協定でも、そこら辺は目標としても打ち出されている部分ですし、それについて各項目の分野でも、例えば自動車からの排出ゼロに貢献するという部分がありましたが、そうすると、そのようなガソリン車を禁止するという意味で、それを書かないところも、ではあとは企業が勝手に頑張るのかというふうにもちょっと読めてしまいますし、やはり石炭火力についてもCCUSのお話は盛り込まれていますけれども、では将来的に石炭火力をどうするのかという部分もちょっと不明確な部分があると思います。そこで野心的なビジョンという意味についてもう一度お尋ねしますが、これをG20の場で、世界に誇れる目標というところで自信を持って出せるのかというところを、ちょっともう一度お聞きしたいと思います。
(大臣)申し上げましたように、懇談会報告ではこう盛り込まれたところであり、私どもはそれは相当な努力の結果、これを内外に示さなければいけないと、そういう思いであります。具体的な政策については、今でも見込めるものと、相当努力しなければいけないものと、これはまた当然出てきますから、それは6月の時点でどういう形で発表するかも含めまして、これから検討しなければいけないと思いますけれども、しかし私どもの今までのいきさつも含めて、あるとするなら、やはりこれは相当高い目標を掲げて、それを守れるように努力するというのは、これはまた政府、また行政の仕事だと思っていますから、是非またその辺も、皆さん、見守りいただきたいと思っております。胸を張れるかどうかというのは、これは自分で言う話ではなくて、やはり世の中が評価するものでありますから。

(記者)環境新聞の福原と申します。今の点に関連してお伺いしたいのですけれども、この戦略ですけれども、カーボンプライシングのところはかなり今後検討を慎重に行っていくというような姿勢が示されているのですが、このイノベーションを促進していくためにも、インセンティブということは必要になってくると思います。ESG投資というところは強調されているのですけれども、国全体で脱炭素化を進めていくという上で、カーボンプライシングというのは非常に有効な手段と見られているわけですけれども、この企業の取組を進めていく上で、改めてそのカーボンプライシングへの考え方、どのように考えていらっしゃるのか、ちょっとお伺いしたいのですけれども。
(大臣)提言において、このカーボンプライシングについて専門的、技術的な議論が必要というふうな方向をいただいたところであります。今後提言の内容も踏まえながら、関係省庁と連携して、政府としての長期戦略を策定していきたいと思っております。現在、中央環境審議会において新たな経済成長の原動力としてのカーボンプライシング活用の可能性について審議されているところでございます。その提言、議論を踏まえて、私どもがむしろ中心になって、前向きに議論していきたいと思っております。このカーボンプライシングというのは、これは当然のことながら、あらゆるに近いぐらいの産業界、経済界にも関係しますし、また、仮にそれを具体化するには、法律、税制等にもあるいは関係するかもしれませんので、その辺は当然のことながら慎重に進めていかなければいけませんけれども、まずは大きな方向性、理念については、申し上げたとおりであります。
(記者)もう1点だけお願いしたいのですけれども、ちょっとまた別の話になりますが、プラスチックの問題に関してお伺いしたいと思っているのですけれども。先週、欧州議会で使い捨てプラスチックの禁止法が承認されました。ここではストローですとか、綿棒ですとか、いろいろな使い捨てプラスチックの使用ですとか製造ということが2021年から禁止の方向ですけれども、日本としては、これまでもレジ袋の有料化を義務化するという方針は示されているのですが、まだ使い捨てプラスチックの規制については具体的な議論が始まっていないように思うのですけれども、このような国際的な動きについて日本としてどのように考えていらっしゃるか、改めてお伺いしたいと思います。
(大臣)欧州議会でワンウェイプラスチック、今お話しのような規制案が承認されたということは伺っているところであります。プラスチック資源循環戦略については、中央環境審議会で諸外国の状況も見渡しながら審議をしていただきまして、答申を先だってまとめていただいたところであります。これから、本答申を重く受け止めながら、6月のG20までに政府としての具体的戦略を策定しなければならないと思っております。
(記者)今のところですけれども、今、政府の戦略を策定するとおっしゃったのは、3月に示されていて、今、関連省庁の会議があると思うのですけれども、省庁会議の中のビジョンの中に、プラスチックの使用削減の内容を盛り込むということでしょうか。
(大臣)当然私どもの主導で、ただ単にやるやるではできません。必ず具体的な施策、例えばレジ袋の有料化についても、環境省としてはもう既に方針を発表してるところでありますが、高い目標を掲げて、またそれに基づいた具体的な施策を推進するには、相当な努力、政策をつくる努力をしなければいけないと思っています。自らにその努力を課しまして、これから具体化していかないといけないと思っております。

(記者)日本テレビです。塚田国交副大臣の発言の件について、ちょっとお伺いしたいと思います。大臣と同じ為公会の所属ですけれど、塚田国交副大臣、道路整備に関して総理や麻生財務大臣の言うことを忖度したというような発言をしたわけですが、これについて、多分本日中に辞任かというふうな流れになっていると思いますが、まずこの塚田国交副大臣のこの発言について、大臣、どういうふうにお考えなのかということと、あと、実際大臣の御地元でも今、県知事選が行われておりますが、この統一地方選に与える影響、どのように御懸念されてますか。
(大臣)塚田副大臣の件につきましては、この種の政治家としての動き、挙動については、しっかりまた本人が説明責任をすると、国民の信頼に対してしっかり応えていくというふうに理解をしているところであります。選挙にどう影響するかは、これは私の立場としては、それをコメントする立場にはありません。

(以上)