大臣談話・大臣記者会見要旨

中川大臣記者会見録(平成30年5月8日(火)9:35~10:02 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 世界自然遺産推薦に関するIUCN評価結果について御報告いたします。今般、我が国から推薦を行っている「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」について、世界遺産委員会の諮問機関IUCNの評価がユネスコから通知され、延期の勧告を受けました。登録勧告を得られなかったことは残念でございますが、4島が世界遺産の可能性を有していることや、保護管理の状況については、一定の評価が得られたと考えております。今後も早期の世界遺産登録を目指すということに変わりはなく、専門家や関係機関・自治体とも協議の上、速やかに今後の対応を判断したいと思っております。

2.質疑応答

(問)幹事社の読売新聞です。今発表があった自然遺産の件なのですけれども、早期の遺産登録に変わりはないということなのですが、今後方針としては6月の委員会に諮るおつもりなのか、それとも推薦取り下げという形にするのか、そういった今後の対応を教えていただけますでしょうか。
(答)今回の勧告は、世界遺産委員会の諮問機関によるものでございます。世界遺産委員会では、諮問機関の勧告を踏まえて、21ヶ国の委員国によって、登録の可否が審議されるわけでございます。このIUCNの報告書を精査をして、事実誤認等があれば、報告書の修正を求める等の対応をしていきたいと考えておりますけれども、推薦内容については現段階で追加や変更を行って、それを審議してもらうことはできないものと承知しております。このため、現在の推薦内容で、「登録」の決定を得ることは極めて難しいものと考えておりますが、今後の具体的な対応につきましては、評価内容をしっかりと分析をして、専門家や関係機関、自治体とも協議の上、判断をしていきたいと考えております。
(問)話題替わりまして、もう1点なのですけれども、富山県で発生したイタイイタイ病が、全国初の公害病として国に認定されてから本日でちょうど50年になります。半世紀になりますけれど、患者さんはまだ苦しんでいる状態でいらっしゃいますけれども、今日を迎えるに当たって、大臣の受け止めをお願いします。
(答)昭和43年5月8日、当時の厚生省によりまして、イタイイタイ病はカドミウムの慢性中毒である旨の見解が発表されましてから、本日でちょうど50年になるわけでございます。富山県において、これまでに200名の患者さんがイタイイタイ病に認定されるなど、多くの患者さんが長い間苦しまれてきたという現実に向き合い、このような悲惨な公害が二度と繰り返されることのないように、今後とも環境行政の推進に全力で取り組んでまいりたいというように考えております。

(問)日本経済新聞の安倍でございます。石炭火力の関連で一つお尋ねいたします。先月27日になると思うのですが、J-POWERが兵庫県の高砂発電所の建て替えを断念したという発表をしました。この発電所は超々臨界圧ですかね、高効率のタイプのもので、これを断念するというのは、環境省にとっても意義深い事業者の判断だったのかなと思うのですが、今後について大臣のお考え、御所感を伺いたいと思います。
(答)電源開発の発表によれば、この事業計画の断念は、事業環境及び事業性の再評価を行った結果、というようにされています。私自身、もう既に何度も申し上げておりますけれども、石炭火力発電を取り巻く国内外の状況は非常に厳しいわけでございまして、特に、今世紀後半には排出、吸収がイコールになる、実質排出ゼロと、こういう社会を実現していかなければならないということを考えますと、今この段階で、超々臨界圧といえども石炭火力発電を新設、増設をしていくということは、その耐用年数等も考えますと、極めて事業リスクが高いように思います。そういったことで、事業者は、環境保全面からの事業リスクが極めて高いということを改めて自覚していただいて、事業実施の再検討を含むあらゆる選択肢を検討することが極めて重要であるというふうに考えております。今回の計画断念は、こうした事業リスクを勘案すれば適切な決断ではなかったかと考えておりまして、その決断を評価したいと思います。一方で、既設の古い石炭火力については、運転を継続するとのことでございますけれども、先月27日に示されました第5次エネルギー基本計画の骨子案では、超臨界以下のフェードアウトの方針が示されておりますので、早期のフェードアウトも含めて、CO2排出削減の確実な実行をお願いしたいというように考えております。

(問)朝日新聞の川村です。1点、先ほど冒頭でお聞かせいただいた世界遺産の関連でなのですけれども、世界遺産委員会での審議に進むのか、それとも取り下げるのかは今後判断するということなのですけれども、とはいいながら、世界遺産員会も6月下旬に迫っている中で、だいたいどれくらいの時期にそういう判断をなされるのかというような、そういう時期的なめどがあれば教えてください。
(答)一度申請をしますと、それを今のタイミングで修正をして、その修正に基づいた審議をしていただくことはできないと、こういうことでございますので、6月から7月にかけての世界遺産委員会での本審査で、改めて登録が認められるということは、事実上かなり厳しいというふうに思います。IUCNの勧告を踏まえて新たに申請をするということになりますと、通常は申請をして、また現地調査があって、そして1年後に本審査ということになりますので、2年遅れるということでございます。一方、今回は難しいとしても、既に出している申請を修正するという形で審査の期間を短縮していただけるのかどうか、ここのところもまだよく分かっておりませんので、これからIUCNの今回の勧告の内容について、更に詳細に御意向を伺うことができるのであれば、それも踏まえてどういった対応をしていけばどういうふうに期間が短縮できるのかということも含めて、当局と相談をさせていただきたいと思っております。その結果、どういった対応がとれるのか、ということは、これからのいろいろな関係者との接触の中で決まっていくと思いますので、今ここでいつまでに対応の結論を得られるのか申し上げる段階では今の時点ではないと考えております。

(問)熊本日日新聞の内田といいます。先日、チッソの後藤社長が、株売却に関連して救済は終了しているという発言をされました。環境省の見解と異なっていると思いますが、今後、環境省の考えを直接伝えるような協議を行うような考えはないのでしょうか。
(答)JNCの株式譲渡につきましては、水俣病特措法では救済の終了及び市況の好転まで暫時凍結するということになっております。しかしながら、多くの方が公健法の認定申請をされていること、訴訟が提起されていることから、「救済の終了」とは言い難いと考えております。したがって、現時点ではJNCの株式譲渡について、環境大臣として承認できる状況にはないと考えております。環境省としては、水俣病問題の解決に向け、関係県・市と密に連携しながら、公健法に基づく丁寧かつ迅速な審査に取り組んでまいります。 後藤社長の御発言がございますけれども、環境省としては、私が今申し上げた現状についての見解をもう既にチッソの方も当然承知しております。これからも、現在の状況に対しましては、今申し上げた環境省としての考え方を申し上げていきたいというふうに思ってます。
(問)関連してもう1点なのですが、もう一つの要件である市況の好転について、これについても後藤社長は株式市況を指すというような発言をされているのですけれども、大臣の市況の好転に対する認識についてお聞かせいただいてもいいでしょうか。
(答)市況の好転について、今、現状どうなっているのかということを議論する必要がないと思うのですね。一つは、事業会社の株式の譲渡は救済の終了及び市況の好転まで暫時凍結するという第十三条の規定がございまして、救済の終了とは言い難いということを申し上げております。しかも、この状況が解消されたとしても、第十二条の三項で、環境大臣は次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは株式の譲渡に係る承認をすることができるとございまして、一つは第十九条第一項の補償賦課金を株式の譲渡により確保できること、第二号に、公的支援に係る借入金債務の返済に支障が生じないと見込まれること、第三号に、第一項の株式の譲渡の後に債権者の一般の利益が害されることがないこと、という条件がございますので、今ここで市況の好転ということについて判断をする必要性というものはないのだろうというふうに考えております。
(問)今のチッソの経営状況でいくと、今おっしゃられた要件についてはまだ満たしている状況にはないということになりますか。
(答)そこも判断するまでに至っていないということで、その必要もないと思います。その前段階の救済の終了というところで、そういう状況ではないと、こう申し上げておりますので、そこでもう承認をする状況にはなっていないということでございます。

(問)鹿児島の南日本新聞の重吉といいます。まず世界遺産の件なのですけれども、先ほど、これから対応は関係機関と話し合うということだったのですけれども、バーレーン世界遺産委員会への推薦取り下げも含めて検討するということになるのですかね。
(答)今現在、推薦はしてますよね。これは取り下げる必要はないわけでしょ。
(事務方)そこのところは、過去の例では、例えば長崎では取り下げたといったようなことを外務省からも承知していますので、その辺を含めてどういった形で、最短で、最も有利な形で登録が迎えられるかという戦略を、過去の例も調べながら、今、関係省庁で練っているということですので、どのオプションというのは、いろいろな形があろうかと思いますけれども、そこは我々も全てのオプションを調べながら考えていきたいというふうに考えております。
(答)要するに、今の申請を、現時点で修正をして、それをもうこの6、7月の本委員会で審査をしていただくことは難しいということでありますけれども、今の申請はそのままにして、改めてIUCNの勧告の内容を踏まえた修正をすることができるのかどうか、そこもまだ分からないので、そういうことであれば申請を取り下げる必要はないわけですけれども、それは現実の手続きとして難しいので、新たにIUCNの勧告を踏まえて申請を出し直すべきだということになれば、またそういった対応をしていかなければなりませんので、その辺につきまして、これから、今課長が申し上げましたように、関係者とよく相談をしながら進めていきたいということでございます。

(問)フジテレビの加藤です。今の関連で確認だけなのですけれども、世界遺産委員会の本審査の登録を決めることは難しいと大臣おっしゃっていて、その後の対応を考えているというふうに聞こえるのですけれど、だから本審査、今年の6月にバーレーンで行われる審査にはかけないということは、もう大臣の中では決まっていることなのですか。
(答)審査は、今の申請を元にIUCNの勧告を踏まえて委員会で審査があるわけですよね。ですからそこを考えますと、登録が認められるということは、現実の問題として難しいだろうということを申し上げました。
(問)難しいけど、審査していただくことはあり得るというふうに思っているのですか。
(答)それは、この申請を取り下げるのか、それとも修正という形で、来年以降、対応していただけるのかどうかというところにもかかってきますから、今この段階で、申請を取り下げるという判断をしているわけではございません。申請を取り下げないということであれば、本委員会の方で、IUCNの勧告に沿った御判断になるものというふうに考えられますが、現実にはそういう状況だろうというふうに思います。

(問)毎日新聞の五十嵐です。今の関連でもう1点なのですけれども、現状、今の申請内容で本審査を受ける上で登録という成果を勝ち取るのは難しいだろうというお考えだと思うのですけれども、それでもなお今の申請内容で本審査を受けるという、その意義というか、どういった判断を仰ぎたいのかというところに対して、もしお考えがあればお聞かせください。
(答)恐らく本審査におきましては、このIUCNの勧告を受けた、そういう審査になるのだろうと思うのですね。世界遺産委員会の諮問機関でありますIUCNの勧告でございますから、その勧告の内容が北部訓練場の跡地を、環境省としてはこの7月末ぐらいまでに国立公園に編入して、そしてそこの部分を追加申請をして、追加的に登録をしていただけるという考えでございましたけれども、IUCNの方は、それはもう申請の段階から北部訓練場の跡地も、申請の前に国立公園に編入する手続きを済ませて、それでそこも含めて一括世界遺産の登録申請をすべきだと、こういう勧告になっておりますので、もしそういうことであれば、現状、本委員会が開かれる段階においては、国立公園の編入手続きを済ますことはできない状況ですから、なかなか現実問題として、IUCNの勧告を踏まえた本委員会での審査が行われるとしますと、登録というのは難しいと思います。その後、早急に国立公園の編入手続きを済ませて、それで先ほど来申し上げておりますが、現在の申請を修正するという形で取り扱っていただくことができるのか、それとも新たにもう一度、今の申請は取り下げてその後、新規のもう一度改めた申請をしなければならないのかというようなことについて、これから関係当局の意向や、関係者、自治体等との協議をしながら判断をしていきたいということでございます。
(問)確認ですけれども、現在の申請を修正することで取り扱っていただくというのは、これは要するに、本申請で今回のIUCNの勧告のような登録延期ではなく、一段階上の情報照会というふうな結論が得られる可能性があるかどうかというのを見極めるという意味でよろしいのですか。
(事務方)基本的に手続き上、その辺もどういった例があるかと今調べているところでございます。考え方としては、今おっしゃったような情報照会という形での取り扱いになった場合に、今大臣が申し上げたような形で、取り下げないままそれを差し替えるような形でできるのかというところも、手続き上いろいろユネスコですとか、IUCNですとかとも確認しながら慎重に見極めていきたいということでございます。

(問)南日本新聞の重吉です。2点確認だったのですけれども、文化遺産の方で2007年に石見銀山が登録延期勧告から逆転で登録されたというケースがあったと思うのですけれども、今回はそのケースも含めて対応していくという理解でいいのか、その可能性はあまりないと考えてらっしゃるのか、お願いします。
(答)石見銀山の場合は、我が国と諮問機関の評価との間で、世界遺産の価値の考え方に相違があったということで、その考え方を修正していただいて、登録勧告を得られたものと承知しております。今回のIUCNの評価におきましては、北部訓練場の返還地を推薦地に含めるべきだと。こういう指摘がございますので、それですともう申請自体を、先ほどから申し上げているように修正するなり、出し直すという形をとらないと、本委員会で判断が変わるということは難しいと思うのですね。ですから、前の石見銀山の場合には、申請はもう変えないと。その評価において意見の相違があった。そこが本委員会で変わった。今回は申請自体を変えなければならないということでありますので、なかなか覆したお答えをいただける可能性は難しいのではないかなというふうに考えております。

( 以  上 )