大臣談話・大臣記者会見要旨

中川大臣記者会見録(平成30年5月25日(金)9:04 ~9:26 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 私からは世界温泉地サミット開会式への出席について御報告いたします。明日26日土曜日、世界温泉地サミットに出席するため、大分県別府市を訪問いたします。本サミットは、大分県を中心とする実行委員会主催により、初めて世界16カ国の温泉地の首長や温泉関係者の代表が一堂に会し、将来に向けて温泉資源の更なる活用と温泉地域の発展の可能性について議論するものです。環境省としても、温泉資源の持続的な利用や温泉地の活性化に取り組んでおり、本サミットに参加し、我が国の温泉地につき発信するとともに、各国の取組を学んできたいと思います。

2.質疑応答

(問)読売新聞の中根と申します。まず、水俣病の原因企業のチッソについてなのですけれども、後藤社長が今年の水俣病慰霊式後に述べた「救済は終わっている」との発言について、チッソが文書で謝罪し、発言を撤回しました。このことについての受け止めをお願いします。
(答)環境省といたしましては、総合環境政策統括官から、チッソ側に環境省の認識・考え方をしっかりと伝えた上で、チッソ株式会社として責任を持って、今回の事態に対処するよう要請を行っておりました。これを受けて、チッソ株式会社からは、「継続補償はもとより、公健法の認定や訴訟に基づく新たな補償責任発生の可能性も十分承知し、これらの責任も真摯に対応して参る方針である。」等の発言とともに、社長の発言についてのお詫びと撤回をするとの意向が環境省に対して示され、こうした見解について、先週18日にチッソ株式会社のホームページに「本年5月1日の発言に対するお詫びと撤回」という表題で掲載したものと承知しております。チッソ株式会社においては、同じような発言を繰り返さないよう深く反省し、水俣病問題に対する責任に真摯に対応いただくとともに、引き続き、環境省としても適切に対処してまいりたいと思います。
(問)別の質問なのですけれども、世界自然遺産への登録延期を勧告された沖縄、奄美についてなのですけれども、政府としては今後どのような対応をとっていくのか教えていただけますでしょうか。つまり、推薦を一旦取り下げて今年中の登録を断念するのも選択肢の一つであると、以前会見でお話しされてましたけれども、その辺りのところも含めてお願いします。
(答)「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」について、確実かつ可能な限り早期の世界遺産登録を実現するにはどのような対応が最善なのか、現時点で方針を決定しているわけではございません。環境省としては、今後も早期の世界遺産登録を目指すということに変わりはなく、現在、地元自治体の意見を十分お聴きしているところでございまして、その意見も踏まえて最終決定を行う予定でございます。現状はそういうことでございます。
(問)もう1点なのですけれども、非化石価値取引市場が開設されまして、今月18日には初入札が行われました。再生可能エネルギーでつくる電力を手軽に調達するための制度だと思うのですけれども、この制度が開設されたことについて大臣の受け止めをお願いします。
(答)非化石価値取引市場は、小売電気事業者の非化石電源比率44%基準の達成を後押しし、ひいては電力部門CO2排出係数0.37の達成の実効性を高めるとともに、FIT制度による国民負担の軽減を図るために創設されたものでございます。確かに、今回の入札での約定量は少ない量となりましたが、第1回目ということもあって、今後の対応につきましては、経済産業省の方で検討されることになるというふうに思います。環境省としては、非化石証書付電力の購入も含めて、需要サイドにおける再生可能エネルギーの利活用を積極的に促進をしてまいりたいというように考えております。

(問)朝日新聞社、川村です。今の非化石価値取引市場に関連してなのですけれども、先般もおっしゃっていたように、政府は原発への依存度を再エネの導入などにより可能な限り低減させるというのが方針で、環境省もその方針どおり再エネの最大限の導入を進めていくというお考えだと思うのですけれども、一部報道の方で、経産省はこの市場について、来年度以降は原発の電気も対象に含める方針というふうな報道がありましたけれども、これが本当に対象に含まれると、逆に原発の依存度を高めたり、再エネの導入を阻害するような要素にもなりかねないと考えるのですけれども、その辺、大臣のお考えをお聞かせください。
(答)その辺の検討の状況がどうなるかということにつきましては、まだ環境省も経産省から十分に話を聞いていない状況でございます。現状はFIT制度にのっている非化石の価値取引市場ということになっているわけでございまして、一方でグリーン証書とかJ-クレジットといったような制度もありまして、この再生可能エネルギーを促進をしていくというのが、環境省の正に掲げている政策、目的、目標でありますので、それに沿った形になるものであれば環境省としても歓迎していきたいと思います。今後の非化石価値取引市場がどうなるのかということについては、環境省としてもしっかり注視をして、注文すべき場面になれば発言をしていきたいというふうにも考えております。

(問)環境新聞の小峰でございます。一方で環境省は、大臣も随分力を入れているCO2排出量取引制度を検討していますけれども、このCO2排出量取引制度は、省エネを進める一方で再生エネの促進にも効果が非常にあると思うのですけれども、そういう観点から、経産省の今回開設された非化石市場との関係についてどう捉えていますでしょうか。
(答)排出量取引制度というのは、現在の、今始まった非化石価値取引市場とは別の制度だというふうに考えます。排出量取引制度は、炭素税、環境税と言われている制度と、言わば一体のものとしてカーボンプライシングと呼ばれておりまして、CO2をより多く排出する形でいろいろな生産活動を行っているようなところが、この排出量取引制度あるいは環境税といったカーボンプライシングを導入しますと、少しでもCO2の排出量を減らそうと、こういうインセンティブが働いて技術開発を促進する、そういうインセンティブになっていくと、で、社会全体が脱炭素化に向かっていくと、こういう極めて有用な経済的手法ということでございます。もちろん、この非化石価値取引市場が現在のようにFIT制度、あるいは再生可能エネルギーということに限定されていけば、これは関連性はあると思いますけれども、制度は別のものだということでありまして、カーボンプライシングについては長期戦略の中で2050年80%削減、さらにはその先の脱炭素社会を見通して、しっかりと議論をして導入に向けて、環境省としては前向きに取り組んでまいりたいというように考えております。

(問)日本テレビの中村と申します。今の質問に関連するのですけれども、何度かお聞きして大変申し訳ないのですけれども、長期戦略をどういうふうにいつ決めるのかについて、まだちょっと自分はよく分からないところがあるので改めてお聞きしたいのですけれども、先般出された経済産業省でのエネルギー基本計画は近く閣議決定されることになると思うのですけれども、国を挙げての今後の長期戦略の議論は、それとの時間的関係とかいう意味で、どこで議論、いつされるのかというところをお聞かせください。
(答)長期戦略は早急に政府全体としての検討を開始しなければならないということで、環境省としては、経済産業省、そして内閣官房と調整を進めております。そう遠くない時期に、しっかりと検討の場が立ち上がって、検討が開始されると考えております。
(問)形としては、環境省ももちろん含めて、国の戦略として閣議決定されたエネルギー基本計画を踏まえて新たな議論が始まるということなのか、あるいは、先般の閣議後会見で大臣はエネルギー基本計画は国の計画ではないと、環境省の主張をしっかりして伝えていくというふうに言われておりますけれども、別の方法があり得るのかということをお聞かせください。
(答)長期戦略は2050年80%削減、さらにはその先の脱炭素社会を目指して立てる長期戦略、長期の戦略ということでございます。エネルギー基本計画はもちろんそういった先の世代もにらんではいますけれども、2030年の26%削減というところと整合性のとれたものになっているということでありまして、そのエネルギー基本計画を閣議決定するに際して、もちろん環境省として言うべきことは申し上げますけれども、長期戦略はもっとその先の社会を目指して議論をするということで、現在の政策の延長戦上で議論するものではないというふうに考えております。

(問)毎日新聞の五十嵐です。先ほどの大臣の御発言についてなのですけれども、世界温泉地サミットですが、なかなか限られた時間で訪問して現地を見ていくというのは難しいのかもしれませんけれども、大臣のこれまでの御経験を踏まえて、日本という国は温泉を使って、それを観光資源として、今ですとインバウンドだったりとか、いろいろな所で海外から観光客を誘致したりとか、いろいろな発想で考えていかなければいけない部分だと思いますが、大臣のこれまでの御経験ですとか、大臣としての今の所感を踏まえて、温泉地をどのように活用していくのが今の日本にとってふさわしいものなのか、少し考えがあれば聞かせてください。
(答)温泉地は国立公園の中にあるケースが多々あると思います。したがいまして、今進めております国立公園満喫プロジェクト、またインバウンドを国立公園に積極的に誘致をしていくと。外国人の訪問客を増やして、日本の良さ、自然の素晴らしさというものを世界に知っていただく、そういった取組の中で、この温泉の活用というものも非常に重要なテーマだというように考えております。そういう意味で、それぞれの国立公園の中にある特色ある温泉地をいかして、こうした目的のために活用していくということは極めて大事だというふうに思います。もう一つは地熱発電があるのですね。この地熱発電というのは、日本はアメリカ、インドネシアに次いで地熱発電の資源が豊富な国でありますけれども、温泉地と地熱発電の適地が重なるケースがありまして、そことの調整という問題がございます。こういったことも、これからの非常に大きな検討課題だと認識いたしております。そういった意味で、この世界温泉地サミットで世界各国の様々な取組を学んで、参考にしていきたいというふうに考えております。
(問)関連で、あえてお尋ねしますけれども、大臣も多分これまでいろいろな温泉地を回ったり、公務もそうでしょうし、私的にプライベートで訪れたりというのもあったと思いますけれども、特に日本の温泉地で、ここにとても感銘を覚えたとか、この温泉地が非常に気に入っているとか、あえてちょっと言及できることがあればおっしゃっていただけるとありがたいのですが。
(答)今、環境大臣の立場で特定の温泉地についてコメントすることは差し控えたいと思います。

(問)環境新聞の小峰でございます。今、世界温泉地サミットに関連して、地熱発電のことに大臣の方から言及がありましたけれども、一方で、温泉水を使ったバイナリー発電というのを、環境省は普及を進めておりますけれども、大臣、御存じだと思うのですけれども、その辺のところと、この温泉のサミットで環境省は何か発言をされるのでしょうか。
(答)担当の方から。
(事務方)バイナリー発電という形では直接の発言はございませんけれども、この温泉サミットの中では地熱発電というものもテーマになってセッションが行われると。大臣はそちらには出席いたしませんけれども、そういう予定になっております。
(問)地熱発電ではなくて、確か環境省は予算をつけて温泉バイナリー発電、温泉水を使った、CO2削減の観点から、そういうのをやっているはずなのですけれども。
(事務方)技術開発のところから支援を始めさせていただきまして、やはり温泉と、それから温泉資源を再エネにも使うということで、小峰さんがおっしゃっているとおり、FIT以外の場合ということになりますけれども、温泉のバイナリーについても私ども、導入支援というのをさせていただいております。引き続き、温泉地の振興ということにもなると思いますので、これも一つの手段として講じていくということになると思っています。

( 以  上 )