大臣談話・大臣記者会見要旨

中川大臣記者会見録(平成30年9月28日(金)11:03~11:33 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 本日、丸紅株式会社と株式会社関電エネルギーソリューションによる特別目的会社が、事業を行う予定の秋田港石炭火力発電所建設計画について、環境影響評価準備書に係る環境大臣意見を経済産業大臣に提出しました。意見の概要は御手元の資料を御覧いただきたいと思います。昨今の脱炭素化に向かう世界の潮流の中、それに逆行するような石炭火力発電所は将来的には是認できなくなるおそれもあり、事業者におかれましては、事業リスクが極めて高いことを改めて強く自覚していただきたいと思います。とりわけ、2030年度のベンチマーク指標の目標達成に向けた具体的な道筋が明確化されなければ、容認されるべきものではありません。この特別目的会社単独ではベンチマーク指標の目標達成ができないため、本事業者によれば、現在高効率のガス火力等を有している本事業者のグループ会社である、関西電力との共同実施による目標達成を目指すとしています。共同実施による達成は制度上認められておりますが、石炭火力発電は地球温暖化対策の観点から大いに懸念があります。石炭火力発電所を建設・稼働するということであれば、共同実施者も含め、それ相応の覚悟を持って、ベンチマーク指標の目標達成に向けて不断の努力を実施していただくとともに、2030年以降に向けて更なるCO2排出削減を実施していただく必要があります。こうした状況を踏まえ、2030年度及びそれ以降に向けた本事業に係るCO2排出削減の取組への対応の道筋が描けない場合には、事業実施を再検討することを含め、あらゆる選択肢を勘案して検討することが重要であると申し上げました。環境省といたしましては、本意見を受けた事業者の計画的な取組について、今後継続的にフォローしてまいります。本事業者の丸紅株式会社ですが、先日、世界の気候変動対策への取組に貢献するとして、新規石炭火力発電事業に原則取り組まないと発表されていました。正に環境大臣意見でも指摘している事業リスクを認識していただいた結果かもしれませんが、大規模な石炭火力である本事業の秋田港火力発電所につきましても、同様に世界の潮流等を踏まえ、よく考えていただきたいと思います。
 次に平成29年度の家庭部門のCO2排出実態統計調査の速報値を取りまとめましたので、御報告いたします。この調査は、地球温暖化対策計画において、家庭部門では、約4割削減することが目安とされているところ、家庭部門の詳細なCO2排出実態等を把握し、地球温暖化対策の企画・立案に資する基礎資料を得ることを目的として、平成29年度から本格調査として実施しており、今回が初めての結果の取りまとめになります。本調査は、各世帯の世帯構成、住宅の建て方等、延べ496項目にわたって詳細に調査しております。例えば、二重サッシまたは複層ガラスを導入した御家庭では、エネルギー消費量について約24%の減少が見られ、断熱対策の有用性が確認できます。環境省としては、本調査を継続するとともに、対策強化の検討や他機関への情報の提供など、連携して調査結果の更なる活用を進めてまいります。

2.質疑応答

(問)共同通信の清水と申します。1問お願いします。来週には組閣があり、各大臣、代わられる可能性もあると思うので伺いたいのですが、中川大臣は就任以降、御自分の御実績と考えられていることと、あと積み残した課題について御所見をよろしくお願いします。
(答)私は、昨年の8月3日に就任をして約1年2ヶ月が経ったわけでございます。振り返りますと、福島の復興、地球温暖化問題、特に今申し上げましたが、石炭火力の問題、そして災害廃棄物の処理、そしてまた海洋プラスチックごみ問題、ヒアリの対策など、いろいろと取り組むべき課題がございました。これらの課題につきまして、私の在任中にそれなりに前進をしたものもあると思います。また、時々の状況に対して省を挙げて対応をした結果、それなりの成果を上げてきたというふうに認識をしております。ただ、これらの問題はいずれも、これからも引き続いて環境省がしっかりと対応していかなければならない大きな課題でございまして、これで一つの区切りがついたという問題はないわけでございます。また私自身、先日のG7環境大臣会合やCOP23、日中韓三カ国環境大臣会合、水銀条約のCOPなどでもいろいろ発信をさせていただきました。日本の取組というものを御紹介し、日本としてこれからもこういった諸課題にしっかりと貢献をしていくということを申し上げたところでございます。また、原子力防災担当の内閣府特命担当大臣といたしましては、原子力防災の総合防災訓練を2度実施させていただきました。環境省の様々な課題というのは、いずれも科学的な知見、科学的な情報、そしてまた様々なデータを基に、関係省庁やまた経済界、産業界、自治体、またNGOやNPOの皆さんを始め、国民の皆様方に広く正確な実情を知っていただいて、危機意識を持っていただいて、本当に多くのステークホルダーの方が連携をしながら対応していかなければ解決できない問題が非常に多いということを痛感しております。環境省はそういったデータをしっかりと集積をする、それを国民の皆様方に提示をして、こういった様々な環境問題の解決に向けて旗振り役となる、リーダーシップを振るう、そういった役割をこれからも続けなければならないというように思います。一層そういう役割が重要になってくるというふうに思います。また、環境問題、とりわけ地球環境問題、気候変動対策というものが、これからの日本にとって経済の成長としっかりと結び付くように、そういった社会を目指していくということが大事だということを痛感しておりまして、長期戦略の、今、検討を始めておりますけれども、こうした中で今後の経済社会の在り方にも関連してまいりますので、議論をしっかりと続けて、しっかりとしたビジョンを打ち立てていく必要があるというふうに思っております。

(問)日本テレビの中村と申します。今、大臣がおっしゃった、正に正確なデータを集積して国民に示していく必要がますますあるというお話だったのですけれども、今日、CO2の排出実態統計調査、これまでも各部門ごとのCO2の確定値というのは毎年出されていたと思うのですけれども、今回もっと詳しく、家庭部門については特化してこういった取組を始められた理由と背景について教えてください。
(答)2030年度26%削減目標の達成に向けて、家庭部門におきましては、2013年度比約40%の削減という非常に高い目標を掲げているところでございます。そのために環境省では、LEDや省エネ家電、省エネ住宅などCO2削減につながる国民運動COOL CHOICEを推進しておりまして、財布にやさしく、健康で快適な暮らしにつながることのアピールを含め、取り組んでいるところでございます。そういった普及啓発や財政支援などの様々な政策を総動員するに当たりましては、やはりこの調査結果を活用して、具体的にどのようにすれば家庭部門においての削減ができるのか、効果的なのかということをお示しをするということが、家庭部門における中長期の脱炭素化の取組に有効だというように思います。そういう意味で今回こうした調査をいたしました。この調査を継続することによって、今行っております様々な運動等に活用していくということを考えているところでございます。
(問)あと1点。今の件なのですけれども、2030年までに40%という目標に対して、今の家庭部門の状況なのですけれども、確か今年の春に公表された最新の2016年の確報値だと、家庭部門は数少ない微増しているという状況があって、順調に排出が減っているという感じでもないのかと思うのですけれども、大臣は家庭部門の現状について、今どのように考えられていらっしゃいますか。
(答)家庭部門の取組と申しますのは、やはり国民一人一人の意識改革、また地球温暖化問題に対する理解を深めていただくということがベースになくてはならない問題だと思います。そういう意味では気候変動対策、今年は特に猛暑でありましたし、また、異常気象が続いて多く方が亡くなられ、熱中症にかかられた方も非常に多いというようなことがございまして、国民の皆様の中には、この異常気象や熱中症のベースに地球温暖化問題があるということを感じ取っていただいていると思います。そういった意識というものを、これからも更に深めていただいて、危機意識を全国民で共有し、一つ一つのきめ細かな対策を積み上げて、そして行動に移していただくということが大事だと思います。そのために、環境省が旗振り役となる。その役割が非常に大きくなっていると思います。そういった地道な努力を続けて、削減を実現していく。それ以外に道はないと考えております。

(問)テレビ朝日の吉野です。東海第二原発の広域避難計画についてお伺いしたいのですけれども。ここは東海村だけではなく、周辺の5市に関しても再稼働に当たっては事前了承権というものがありまして、六つの自治体で協議していくという形をとっております。それでテレビ朝日が六つの自治体にアンケートをしたところ、五つの自治体で実効性のある避難計画はまだできていないというふうに回答を得ました。この現状についての受け止めをお願いいたします。
(答)この東海第二地域におきましては、原子力災害対策重点区域内に約96万人の方が住んでおられます。そのうちPAZ内でも約8万人と、非常に人口が多いことが特徴でございます。そういう特徴を踏まえながら国としては県外避難先や移動手段の確保、要支援者への対応など地域防災計画・避難計画の具体化・充実化に向け、「東海第二地域原子力防災協議会」の枠組みの下で、地域の実情を熟知している関係自治体と一体となって検討を重ねているところです。ただ、実際に非常に人口が多いということもございまして、避難先の自治体は決まっても、具体的に避難先のどこに、どういう施設に、どれだけの方が避難をするのか、そこまで決まっていないケースが多いと考えております。したがいまして、移動手段についてもまだ十分に詰まっていないという状況があると考えておりまして、原子力防災の担当といたしましては、国がしっかり関与しながら、関係自治体とともに地域防災計画・避難計画の具体化・充実化に取り組んでまいりたいと考えております。
(問)もう1点だけお伺いしたいのですけれども、この六つの自治体の中の二つの自治体で、内閣府の原子力防災は役割を果たしていない、もしくは不十分と言ってまして、さらに三つの自治体は、もっと協力してくれないと計画が作れないと。そういう声を聞きました。受け止めをお願いいたします。
(答)それは今、地域防災計画や避難計画が具体的に避難先が個別に決まっていない、移動先も移動手段も、したがってしっかりとまだ詰まっていないという状況にあるという現実を踏まえての御指摘だと思います。原子力防災担当といたしましては、「東海第二地域原子力防災協議会」という枠組みがございますので、この枠組みの下で関係自治体と一体となって、さらに地域防災計画・避難計画の具体化・充実化に取り組んでいく、その努力を更に進めていかなくてはならないものと認識しております。

(問)環境新聞の小峰です。最初の幹事会社のお聞きしたことに関連しますけれども、まだ来週2日の内閣改造がどうなるか全く分からないところで、これまでの実績と課題を聞くのは失礼かもしれませんが、あえて聞かせていただきます。環境省には、行政ツールの三種の神器といわれる財政・税制・金融のうち、金融措置はほぼなかったのですよね。しかし大臣は、大臣主導のESG金融懇談会を今年初めに立ち上げて、7月には提言を取りまとめております。なお、大臣は2002年、環境事務次官のときに石炭に課税したことを契機にエネルギー特会を環境省が使えるようにして、地球温暖化対策税の礎を作った方でもあります。財政と税制、三種の神器のうち二つか1.5ぐらいを獲得して、そして今度は新たに金融措置を提言で発表なされた。この三種の神器全てをそろえる足掛かりをつけた感慨、感想についてお聞かせいただけたらと思います。
(答)関係省庁との連携というものが環境問題を前進させる上で非常に重要だと思います。今申し上げましたが環境省は、その旗振り役となって、リーダーシップを振るって政府部内の連携を強化し、また、経済界・産業界の御理解を深める。国民全ての方の危機意識の下にそういった取組に対する御理解をいただくという役割になると認識しております。そういう意味におきまして、税制、また歳出はもちろんでありますが、金融というものが大きな政策ツールになるわけであります。この税制あるいは、もう少し広い政策的なツールとしてカーボンプライシングというものがございまして、先般のG7の環境大臣会合で各国の環境大臣・副大臣の方とバイの会談をする中で、カーボンプライシングの実情についても触れていただきまして、私も理解を一層深めさせていただいたところでございます。この問題もかなり理解が浸透してきているというふうに思います。また、今、御指摘の金融も、ESG金融・ESG投資というのは世界の中で大きく拡大をしている分野でございまして、こういった金融資金の流れというものが気候変動対策の方に向いていく。そしてまた、そういったことに熱心に取り組んでいる企業に対して金融が向けられていく、そういう流れができていると痛感しております。環境省発のESG金融懇談会は、一つの、環境省の旗振り役としてのいろいろな糧を頂いたと思っておりまして、現実に政府部内におきましても、ESG投資、ESG金融、環境金融、グリーンボンドといったものに対する関心が非常に深まってきております。また、経済界・金融界もそういう方向に向かって動いているということで、一つの大きな役割を果たしていると。これからもESG金融懇談会を踏まえた議論を続けていくわけでございますので、環境省がそういう旗振り役としての役割を、これからも果たしていく、そのための糧を引き続き頂いていきたいと思っております。
(問)違う話題なのですけれども、自民党の中でサマータイムの議論が随分されていて、昨日、大方の方向付けがあったみたいなのですが、環境も昔は経済産業省と一緒になってその導入に向けて検討をして、法案まで作った経緯があると思いますが、このサマータイムに関してどのようにお考えでしょうか。
(答)サマータイムにつきましては、社会や時代の大きな変化がございました。そういう意味で現時点で、サマータイムについて環境省としてどう考えるかというところはまだまとまっているわけではございません。昨日、自民党においてサマータイム導入に関する研究会が開催をされまして、環境省を含む関係省庁出席の下で中曽根弘文議員からサマータイム導入に関するこれまでの議論について講演があったと承知をしております。サマータイムの導入に関しましては、まずはこの研究会の下で自民党において検討がなされるものと承知しておりまして、環境省といたしましては、今後研究会からの要請があれば、関係省庁と連携をして必要な対応をしてまいりたいと考えております。

(以上)