大臣談話・大臣記者会見要旨

中川大臣記者会見(平成30年9月14日(金)9:44~10:20 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 18日火曜日から、カナダのハリファクスで開催されるG7環境・海洋・エネルギー大臣会合に、私は出席いたします。私は、19日の環境大臣会合と、20日の環境・海洋・エネルギー大臣による共同会合、その前後に開催される関連のサイドイベントに出席いたします。また会場で、できるだけバイの会談もできればというように考えております。今回の一連の会合では、気候変動対策、海洋プラスチックごみ問題等の分野について、我が国の取組を紹介するとともに、地球規模の対策に向けた議論に積極的に貢献したいと考えております。
 次に、本年6月の「気候変動適応法」の成立を受け、現在、政府として法律に基づく「気候変動適応計画」の策定を進めているところであります。計画の案につきまして、幅広い皆様の御意見を伺うべく、来週よりパブリックコメントを行う予定でございます。これに併せて、環境省における気候変動適応に関する施策を「環境省気候変動適応施策パッケージ」として取りまとめました。お配りした資料を御覧いただければと思います。気候変動適応法及び今般作成中の気候変動適応計画の下で、地方公共団体、事業者などあらゆる主体の取組を後押ししつつ、適応策の一層の推進に向け取り組んでまいる所存でございます。

2.質疑応答

(問)幹事社の共同通信の深谷です。大臣、冒頭御発言のありましたG7の環境・海洋・エネルギー大臣会合なのですけれども、気候変動や海洋プラスチックの分野で大臣が期待する成果と、あと、大臣会合やサイドイベントで御発言する機会があるかと思うのですけれども、日本の取組など、どのようなアピールをしていきたいかというのを、もう少し詳しく教えてください。
(答)今回の会合では、カナダのハリファックスにG7各国の環境大臣が一堂に集い、気候変動、海洋プラスチックごみ問題など、幅広い地球環境問題について、議論が行われる予定であります。特に、近年、その対策の重要性が高まっている海洋プラスチックごみ問題につきましては、積極的な議論が行われることが予想されます。私からは、我が国が、プラスチック資源循環戦略の検討を進めていることなど、この問題にしっかり取り組んでいることを、まず紹介したいと思います。そして、来年我が国で開催されるG20における、途上国も巻き込んだ実効性のある対策の議論に繋げるため、G7の連携を確かなものにしていきたいというように考えております。G7の環境大臣会合で想定される成果の内容につきましては、関係各国と調整中でございますが、大臣会合での議論を取りまとめた議長声明というものが出される、そして、関連文書の採択が予定されているということでございます。来年のG20日本開催に向けて、G7各国の連携を確かなものとするよう、しっかりと議論してまいりたいと考えております。

(問)環境新聞の福原です。今の話に関してお伺いしたいのですけれども、来年のG20で途上国を巻き込んだ実効性のある議論にするために、G7との連携を確かなものにしたいということなのですけれども、一方で日本は、今回のG7サミットで海洋プラスチック憲章に参加をしなかったということですけれども、日本とアメリカということですけれども、その点において、既にG7との連携というところが、既にちょっと崩れているのではないかという考えもあると思うのですけれども、G20での連携に向けてG7の連携をするという意味において、海洋プラスチック憲章というところを改めてどう考えられるのか、この目標というところですね、例えば、プラスチック資源循環戦略の中でその目標に近いものを日本としても取り入れていくという考えを示されるのか、足並みが、今、そろっているとは言えないと思うのですけれども、そこをどのように考えていらっしゃるのか、お聞きできればと思います。
(答)現在、プラスチック資源循環戦略の検討を始めておりまして、中央環境審議会でも御議論をいただいているところでございます。環境省といたしましては、このプラスチック資源循環戦略の内容につきましては、海洋プラスチック憲章で掲げられた内容は取り込んで、数値目標とか期限をですね、そしてさらにそれを超えるものにしていきたいというように考えております。内容につきましても、より実効性のある内容のものにしていきたいと、こういう決意で、今この戦略の検討に入っているわけでございます。そして、今申し上げましたように、この海洋プラスチックごみの問題は、やはり途上国にもしっかりと問題意識を持っていただいて、協働した対策をとっていただくということが大事でございまして、G7の枠組みを超えて、G20という枠組みで途上国も巻き込んだ実効性のある対策をして、まとめていきたいと。でありますので、海洋プラスチック憲章につきましては、内容もそれを超えたものにしていく。そして、枠組みもそれを超えたものにしていくと。こういうことで、日本がリーダーシップをとって国際的な議論を深めていきたいというふうに考えております。

(問)朝日新聞の神田です。今の話の続きなのですけれども、そうしますと、G7の枠組みを超えたところでというふうにはおっしゃっていますけれども、G7海洋プラスチック憲章を超えたものを日本が目指すということであれば、今度の大臣会合の中で、このプラスチック憲章に署名してもいいのではないかというふうに思うのですけれども、そこら辺はどのように考えていますでしょうか。
(答)今回のG7の大臣会合では、この海洋プラスチック憲章は議論のベースにはならないのではないかというふうに認識しております。もう既に我が国としては、今申し上げましたように、その内容も枠組みも超えて、この海洋プラスチック問題についてしっかりとリードしていきたいという思いでございますので、このG7の会合にも、いわゆるメンバーではありませんけれども、G20のメンバーの方も来られているわけでありますし、G7の環境大臣の方も、皆さんG7の枠組みではなくて、やはりG20の枠組みで議論をしなければ実効性のあるものにはならないと、こういう認識を持っていると思いますので、我が国としては、しっかりとそういった議論をリードしていきたいというように思っております。

(問)読売新聞の蒔田です。今までの質問の関連なのですけど、G7のプラ憲章は日本とアメリカが署名をしなかったわけですけど、G20に向けてリーダーシップをとっていくという意味では、アメリカも巻き込まないと、G7であれG20であれ連携が進まないと思うのですが、それはどのように進めようというお考えなのでしょうか。
(答)アメリカにもこの問題をしっかりと理解をしていただいて、G20の枠組みで、これは来年のG20を目指していくわけですけれども、今回のG7の環境大臣会合、アメリカの代表ももちろん来られているわけですから、そこはしっかりと訴えて、来年のG20に向けての重要なステップというふうにしていきたいと思っております。

(問)化学工業日報の吉水です。今の関連なのですが、内容も憲章を超えてというお話があったのですが、具体的にどのような点を超えているイメージでいらっしゃるのでしょうか。
(答)そこはまだ今、中央環境審議会でも関係者の方も入っていただいて議論をしておりますし、これから調整する過程が始まるわけでありますので、今の段階で具体的なことは申し上げられませんが、いずれにしても、このプラスチック憲章の数値目標や期限やそういったことは取り込んで、それを超えるものにしていきたいというふうに考えております。

(問)エネルギーと環境の大村です。プラスチックの話ではなくて、気候変動適応の方なのですが、気候変動の適応の話というのは、基本的に環境省だけが頑張ってもどうなる話ではなくて、国交省や農水省、そういった公共事業を持っているような官庁を含めて取り組んで初めて適応は実現できるのではないかと思うのですが、そういった政府一体としての取組というのは、これからどのようにつくっていかれる考えなのでしょうか。
(答)今おっしゃったとおりでございまして、既に平成27年に閣議決定した現行の適応計画、これも関係省庁の取組を示しているわけでありますが、この計画は、主として関係省庁の取組をまとめた計画になっていたということでございます。新たに策定する適応計画におきましては、今般成立した気候変動適応法に基づき、関係省庁の取組について充実・強化を図るとともに、国立環境研究所を中核とした情報基盤の整備や、地方公共団体、事業者、国民等の幅広い主体の連携・協力による取組を幅広く盛り込んでいきたいというように考えております。この計画の策定に向け着実に準備を進めていくとともに、気候変動適応法、そしてまたこの計画の下で、適応策が、関係省庁と連携して、更なる推進につながるように取り組んでいきたいというふうに考えております。
(問)そうすると今度、来週にでも発表されるという計画案というものは、そういうものになっているということと受け止めていいわけですね。
(答)はい。

(問)朝日新聞社・川村です。今の関連でなのですけれども、今回、適応計画、来週にパブリック・コメントを募るということなのですけれども、適応法では地方自治体に関しても地域計画を作るように求めているというところがあると思うのですが、今後、環境省として、地域でのそういう計画作りに対して、どのような後押しだったり、支援だったりを検討しているか、その辺りのお考えをお聞かせください。
(答)今回の気候変動適応施策パッケージも今お示しいたしましたが、その中でも、環境省の適応施策を「適応の総合的推進」、「熱中症分野」、「生態系分野」、「水・大気環境、自然災害分野」の大きく四つのカテゴリーに分けておりまして、それぞれ概算要求を、今しておりまして、しっかりと予算を確保していきたいと考えております。適応策のPDCA手法の開発や適応ビジネスの促進等の基盤的施策の新設、それから、国立環境研究所の体制の強化や適応に関する研究の一層の推進、この夏の猛暑を受けた熱中症対策の強化、こういったことを予算要求も増額して行っております。こういったことが、もちろんそれぞれの自治体が計画を立てていく上での後押しになると考えておりますし、環境省としても実際に環境省の職員を出向かせて、それぞれ自治体のいろいろな御要望、そしてまた問題意識がいろいろあると思いますので、それに対応した取組がなされるようにアドバイスをしていきたいというように考えております。

(問)環境新聞の福原ですけれども、先ほどの海洋プラスチック問題に関してなのですけれども、まず1点が、プラスチック資源循環戦略の方で数値目標や期限ということも含めて、プラスチック憲章の内容を取り込んでいくということだったのですけれども、今回その憲章に参加できなかった理由として、産業界や関係各省の理解を得る時間がなかったということもおっしゃっていたと記憶しているのですけれども、今年度中の計画策定に向けて、そういった理解というのを得られる見通しがあるということなのでしょうか。
 もう1点が、G20に向けてG7で協力していくということに向けてですけれども、海洋プラスチック憲章にも参加しなかったと、その理由というところで、今後G20で実効性のある取組にしていきたいというときに、日本は自国で開催するG20で新たにそういった流れをつくっていくために、G7では7カ国の合意に参加しなかったのに、G20でその成果を得るために議論をリードしていくというのは、その姿勢はどうなのかということが、その他の国から疑問を抱かれないかなと思うのですけれども。また、昨日もブリーフィングで今回の大臣会合についてお話しいただいたのですけれども、G7のプラスチックの流出割合というのが全体の2%に過ぎないと。G20はその内46%を占めると。ということで、G7だけが取り組んでも、全体を巻き込んでいかなければという議論につながるのだと思うのですけれども、一方で、最初の段階でG7の合意には参加していないけれどもG20でというところで、自分たちはそこのところに参加していないというところでも説得力に欠けてしまうのではないかという見方もあると思うのですけれども、どのように考えられるでしょうか。
(答)先般のG7首脳会議では、プラスチック憲章に日本として参加しなかったということにつきましては、これは今おっしゃったように、関係各省、政府の中での調整、そして経済界、産業界との調整が十分に済んでいなかったということも、その理由の一つだというように思います。今、現実に中央環境審議会で関係者の方にも御参加いただいて、そういう調整過程を丁寧に進めているところでございます。もちろん、審議会の場だけではなくて、いろいろなチャンネルを通じて関係各省や産業界、経済界、関係者との調整を進めなければなりませんし、そのような段階を一つ一つ踏んで、そして、G20までにはプラスチック資源循環戦略をまとめると、こういう段取りを考えております。そのプラスチック資源循環戦略は、関係者の調整を踏まえて、プラスチック憲章の内容を超えるものにしていきたいということを、今回のG7の環境大臣会合で、私からも御説明するつもりでございます。したがいまして、日本が首脳会議でプラスチック憲章に参加しなかったということが、G7の他の国に対して日本が後ろ向きだというようなことには全くならない。むしろ、日本はきちっと調整をして、そしてそれを超えるものをつくっていくという、そういう日本の正に行政の進め方であります調整過程を一つ一つ踏んで、それで、それを超えるものにしていくんだという意気込み、そしてその日本の強い姿勢というものをG7の環境大臣会合でしっかりとお示しをしていきたいと思います。その上で、G7の各国もそのように思っているわけですが、やはりこの問題はG20でしっかりと議論をして、合意をつくっていくべきものだというように、皆さん思っておられると思います。そういった状況を踏まえて、我が国が来年G20の開催国ですから、リーダーシップをとって、しっかりと関係国に働き掛けをしていきたいというように考えております。

(問)環境新聞の小峰です。先ほどの朝日新聞の神田記者からも出まして、今、当社の福原の方からも出ましたけれども、朝日新聞の神田記者は、ならばG7で署名しなかったやつを今回のハリファクスで改めて署名したらいいじゃないかと。これは非常に素直な、国民の、何でだろうというふうな疑問で、いい質問だと思うのですけれども、大臣はこれを否定されましたけれども、今回だけではなくて、前回のG7でも署名しなかった理由は、大臣が言う産業界との調整ではなくて、実は大臣のお気持ちはどうか別にして、官邸の方からトランプ政権を忖度して署名するなと、こういう御指示があったのではないでしょうか。いかがでしょうか。
(答)そのようなことは承知しておりません。いずれにしても、産業界との調整、政府部内の調整は現在、今始めているところです。ですから、プラスチック憲章そのものが今回議題になることはないと認識しておりますが、仮にそういう話が出ましても、我が国としては、今その調整をしている最中ですから、プラスチック憲章そのものに参加をすると、署名をするということは、現時点では難しいと思います。ただ、今そういった調整過程をして、そして、その上でそれを超えるものに、プラスチック資源循環戦略をしていきたいということはしっかりと表明をいたしますので、我が国の立場というものは、しっかりと理解をしていただけるというように思っております。

(問)毎日新聞の五十嵐です。今の関連で1点だけなのですけれども、プラスチック憲章が今回の環境大臣会合の議題にならないという上で、その上で、中川大臣としては、それ以上の取組をするというふうな御発言をされるということなのですけど、そう考えますと、実態はともかくとして、G7の中でアメリカを除く6カ国は、実質的にはプラスチック憲章にコミットしているような状況になるということだと思うのですけれど、これは逆に言うと、アメリカが今現状どう考えているか分かりませんが、アメリカ1国だけがこのプラスチック問題について孤立してしまうような状況を招くのではないかと思うのですけれども、その上で、アメリカとのバイ会談があるかどうか分かりませんが、アメリカとの間ではこのプラスチックの問題について、大臣としてはどのように意見交換をされるお考えなのでしょうか。
(答)このプラスチック憲章はG7の首脳会議で出てきた議題でありまして、我が国としては参加をしていないということですね。アメリカも参加をしていないということでございますので、首脳会議の、いわばその下にある環境大臣会合で議題になるというようには考えておりません。ただ、アメリカも海洋プラスチックごみ問題については大変深刻に考えておりまして、いろいろな取組も民間ベース、自治体ベース、州ベースではいろいろ進んでいるというように聞いております。アメリカもこの問題はG7の枠組みより、やはり途上国を巻き込んだG20の枠組みで議論していくべきだというように考えているのではないかと、現段階ではそういうふうに推察をしているわけでありまして、実際にG7の会合に行きまして、そこでアメリカの考え方をしっかりとただして、そして恐らくそういう考えだと思いますので、日本の考え方を理解していただけるように、また理解していただけるものというように考えております。
(問)ちょっとそれに関連なのですけれど、アメリカと日本だけがG7よりもG20の枠組みで考えていくということは、それは逆にいうと、こう言っては何ですけれども、G7の枠組み自体を軽視しているかのようにもとられかねないのではないかと思うのですが、海洋プラスチック憲章が首脳会談で出てきた話で、環境大臣会合ではまたそれは違うと言っていいか分かりませんが、そこでは議題にならないということだけをおっしゃっていると、やはり、じゃあG7の枠組みってどうなんだということが、やはり他国から出てきかねないのではないかと思うのですけれども、その辺の危惧というのは、大臣はどうですか。
(答)そういった危惧はしておりません。やはり先進国のG7の枠組みというのは極めて大事でありまして、G7で合意をして、そしてさらにG20の枠組みは他の国々にまで、いろいろなそういった合意事項を広げていく、波及させていくという、そういう意味で、G7の枠組みは大変大きな意味があると思いますし、大事にしていかなければならないと思っております。現実に、この問題はG20の枠組みで議論すべきだと申し上げましたが、それをG7の枠組みでしっかり確認をする。G7の枠組みで、G20の枠組みでこれは議論すべきだということを確認をして、そしてG7の国々が連携をしてG20でしっかりとした成果を出していくと、こういうふうに持っていきたいと思っております。

(問)NHK・金澤と申します。1点だけお伺いしたいのですけれど、先ほど大臣おっしゃったように、G20ではプラスチック憲章を超えるものを示していきたいということですけれども、経済界、産業界との調整という意味で、これは小委員会の方でも具体的に進めていくとは思いますけれど、大臣個人のお考えとしては、具体的にどういう調整が今必要だとお考えですか。
(答)産業界も、このプラスチックごみ問題につきましては、ここのところの国際的な動き、また世論の高まり等に対しまして、大変これは深刻に受け止めていただいております。ですから、これからの調整過程でしっかりと理解をいただき、合意をしていただける、合意というか、いわばプラスチック資源循環戦略をつくっていくということについての御理解をいただけるものというように考えております。ただ、このステップはきちんと踏んで、いろいろな問題点があるでしょうから、それをどういうふうに乗り越えていったらいいのかといったことを丁寧に議論しながら、幅広い合意をつくる必要がありますので、いろいろな場を通じて、これは丁寧に議論して、丁寧にステップを踏んでいく必要があると。そうすれば、必ず理解をしていただけるというように考えております。

(問)化学工業日報の吉水です。今、産業界の理解が、丁寧にやっていけば得られるということなのですが、内容を超えるものと先ほどおっしゃっていますけれども、そうすると、G7での海洋プラ憲章よりも、結構なかなか理解を得るのが大変だと思うのですが、それは時間をかければ理解を得られるというお考えなのでしょうか。
(答)時間をかければというか、今、産業界の方も大変強い問題意識を持っておられます。そして、現実に、では代替の製品をどのようにしたら開発できるのか、調達できるのか、そしてまた、リサイクルの体制が十分にできているのか、そういったいろいろなことを技術面からもコスト面からもしっかりと検証して、見通しを立てていく、そういう時間というものは必要だと思います。ただ、ここのところの、今申し上げましたように、国際的な動きや国民世論の動向等に鑑みて、経済界の方、関係者の方も相当真剣にこの問題に取り組んできておられますので、そういったステップを踏んでいけば、御理解をしっかりといただけるというように考えております。

(以上)