大臣談話・大臣記者会見要旨

中川大臣記者会見録(平成30年9月4日(火)12:11~12:28 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 本日、第2回目の「パリ協定長期成長戦略懇談会」が開催されましたので、お知らせいたします。この会議は、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略の策定に向け、総理指示により設置されたものであります。第2回目となる本日の会合では、環境省、経済産業省及び外務省から、長期戦略に関するこれまでの検討状況などを御説明するとともに、「イノベーション」というテーマで、外部有識者として天野名古屋大学教授・五神東京大学総長からのヒアリングを行いまして、それらを踏まえ、有識者の皆様に御議論をいただきました。私からは、環境省が本年3月に取りまとめた「長期大幅削減に向けた基本的考え方」を基に、長期戦略の策定に当たっては、「技術のイノベーション」に加えて、今ある技術を加速度的に普及させる「経済社会システムのイノベーション」が重要であるということ、それから、2050年に80%削減を実現するためには、施策を「今」から講じることが重要であることなどについて御説明いたしました。これまでの常識にとらわれない新たなビジョンの策定に向けて、引き続き尽力してまいります。

2.質疑応答

(問)幹事社の共同通信の深谷です。今、大臣の御発言のありました、パリ協定の長期戦略の懇談会なのですけれども、本日の議論の内容について、もう少し教えていただきたいのと、あと今日の議論やプレゼンで大臣の印象に残ったようなお話があれば教えてください。
(答)正式には各委員の御確認をいただいた上で、本日の会議の内容は後日、議事要旨としてホームページに公開いたします。とりあえず、私から今日の会議の状況、概略を申し上げたいと思いますが、経済産業大臣からは、長期戦略の検討に当たっては野心的なビジョンの提示とともに、環境性能に優れた製品等の海外展開の促進による世界全体での排出削減への貢献やイノベーションの推進、グリーン分野への民間資金の重点化が重要である、こういった御説明がございました。外務省の中根副大臣からは、日本発のイノベーションや日本型の脱炭素化モデルを世界に展開し、パリ協定の掲げる2℃目標達成に向けて貢献することが外交政策としても重要である、こういう御説明がございました。外部有識者といたしまして天野教授でありますけれども、イノベーションの加速化のための大学、企業間の連携や、人材育成を進めることについての重要性についてお話がありました。また、東大の五神総長からは、長期ビジョンの下、経済好循環を創出していくことが重要であり、そのためのESG投資の活性化、経済メカニズムのトリガーとしての大学の役割、そういったお話がございました。国内外で分散型システムを推進していくべきだといったようなことについても言及がございました。そして、その後、委員間の討論になりまして、トヨタ自動車の内山田委員からは、ビジョン・ゴールと実現へのロードマップ・戦略、これは分けて議論する必要があるということや、国として脱炭素を明確に宣言することが重要であると。それに加えまして、イノベーション実現のスピードとコスト競争力が鍵であるという御発言がございました。枝廣先生からは、既存の技術を国内・海外で普及させるという意味での「社会イノベーション」を進めることの重要性について御発言がございました。 東京海上の隅委員からは、CO2削減イノベーションの舞台は世界であり、あらゆる選択肢を追求する必要がある、そういったことに加えて、政策制度や投資を呼び込むTCFD、気候関連財務情報開示タスクフォースの戦略的活用の重要性等について御発言がございました。高村先生からは、イノベーションを市場化・商業化する施策の重要性について、また野心的ビジョン、分野を超えたデジタル化の動きとともに、それぞれの分野について目標・ビジョンを明確化することが重要であるという御発言がございました。経団連の中西会長からは、脱炭素投資に対するインセンティブの仕組み構築が重要であるというお話がございました。政府と民間の適切な役割分担の重要性についても言及がございました。新日鐵の進藤委員からは、カーボンフリー水素の大量供給インフラの整備が重要になるということ、そういった御指摘がありました。GPIFの水野委員からは、若手の意欲、イノベーションのスピード感が重要だといったようなお話がございました。それで、その後、自由討議がございまして、中西経団連会長から、カーボンプライシングについて、現在のエネルギーコストが高いという前提に立つ必要があり、ペナルティーよりインセンティブの措置が必要であり、今後議論していきたいと、こういうお話がございました。私も、冒頭の発表でカーボンプライシングの重要性について触れたところでございまして、それに対する中西委員からの御指摘でございましたので、私からは、制度の仕組み方次第では、排出量取引により得た財源を再エネの補助金に回すとか、あるいは炭素税の税収を使って、いろいろなコスト削減、脱炭素化の支出に回すと、こういったことで負担やコスト低減を図るということも可能になるということで、制度の仕組み方だと、こういう御説明をさせていただきました。それに対して、新日鐵の進藤委員からは、既にFIT等があり、明示的でないカーボンプライシングの効果を持つ制度がある中で、鉄のように代替手段がない、そういう中で、このカーボンプライシングが課されるとコストが上がるだけだと、こういう御発言がありました。ただ、最後に、これは制度次第だということでありますので、今後議論をさせていただきたいと、こういうことでございました。高村委員からは、こういった発言を踏まえて、カーボンプライシングはイノベーションを社会に組み込む仕組みとして世界では採用されており、政策のオプションとして落とさない形で議論していくことが重要であると、こういう御発言をいただきました。

(問)毎日新聞の五十嵐です。1点だけお願いします。先日、専門委員会での議論が終わりましたゲノム編集のカルタヘナ法における整理について、1点だけお尋ねします。既存のカルタヘナ法から、一部のゲノム編集技術に基づく生物について除外するという方向性とともに、屋外での開放系で育てる際には国への情報提供を求めるというふうな形になっていると思いますが、一方で、ゲノム編集技術そのものは、かなり日進月歩で、既存の研究機関ですとか企業だけでなくて、今後、幅広い民間による研究というのが進む可能性も一部で指摘されておりまして、この制度をどのように進めていくかという実効性の部分で、今後、環境省としてはどのように取り組んでいかれるか御発言いただければと思います。
(答)このゲノム編集技術につきましては、最先端のバイオテクノロジーを技術的な簡素化やコスト削減によって、一般市民の方も行えるようになってきたということでございます。いわゆるDIYバイオというようなゲノム編集技術も出てきているところでございます。 この多くは、カルタヘナ法による規制の対象になると考えております。したがいまして、個人が実施する場合であっても、しっかりとした拡散防止措置のとられた施設等で取り扱う、あるいは法に基づいた事前承認を受ける必要がございまして、これに違反すると罰則もあるわけであります。こういったことをどのように周知徹底していくかということが課題になると思いますが、こういったことにつきましては、従来からのパンフレットやホームページへの掲載に加えまして、ゲノム編集キットの販売事業者等への協力要請なども含めて、周知徹底を図っていきたいというように考えております。このような形で、例えば、今申し上げたDIYバイオで作成されたものを食品として販売等しようとする場合には、食品衛生法によってその食品としての安全性が審査されることになります。そういった形で、事業者だけではなく個人にも周知を図っていくということが大事だと思っておりまして、いろいろ工夫をこれからもしていきたいと思っております。

(問)朝日新聞社・川村と申します。ちょうど今、JCIの気候変動イニシアチブの方が環境省に来られていらっしゃると思うのですけれども、近年、最近になって、こういう国家ではない自治体だったり、企業だったり、あとNPO、NGOなどの気候変動に対する活動が活発化していまして、近々アメリカでは、グローバル気候行動サミットというような、そういう催しも開かれると思いますが、こういう国家以外の、そういう非国家アクターの活動が、取組が盛んになることについて、もし大臣、御所感があればお伺いしたいのと、こういう活動が今後、COPなどのパリ協定に与える影響など、お考えがあれば教えてください。
(答)この後、今お話がございましたJCIの代表の方とお目にかかる予定になっております。本日お会いするJCIは、その設立に当たって、非国家アクターの一員として、パリ協定が求める脱炭素社会の実現に向けて世界とともに挑戦の最前線に立つと宣言されたわけでございます。パリ協定やSDGsを受けまして、世界全体、特に民間企業等による脱炭素化への動きが大きく加速しました。世界が早いスピードで変化する中で、このような新しい動きが日本の中でも生まれたことは非常に重要であると思います。政府といたしましても、しっかり連携していかなければならないと考えております。このため本日も、本年9月の世界気候アクションサミットや12月のCOP24などを前にしたこの機会に、JCIの方々との間で取組強化に向けた意見交換を行うことにより、我が国の脱炭素化に向けた潮流の加速化が図られればというように思っております。今後とも、非政府主体の方々としっかりと連携をしてまいりたいというように考えております。

(以上)