大臣談話・大臣記者会見要旨

中川大臣記者会見録(平成30年8月31日(金)10:45 ~11:13於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 遅くなりまして申し訳ございません。
本日、省議を開き、来年度概算要求等について決定する予定でございます。我が国はこの夏、未曾有の豪雨災害や、記録的な酷暑など、異常な気象現象に見舞われました。今後、気候変動が更に進めば、こうした状況が「異常」ではなくなるという危機感を持っているところであります。こうした中、G20日本開催を来年に控え、来年度重点施策では、脱炭素社会やSDGsの実現に向けた資源配分シフトにより、ビジネスや暮らしにイノベーションを引き起こすことで、環境・経済・社会の諸課題を同時解決するとともに、地域循環共生圏の実現により、「新たな成長」につなげていきたいと考えております。主な分野といたしましては、例えば、ESG金融の推進や、脱炭素化に意欲的に取り組む企業の支援等により、脱炭素化ビジネスが「稼げる」市場を創出する施策を進めること。次に、適応法の制定を受け、環境省が旗振り役となり、政府一丸となって適応策を強力に推進するとともに、情報基盤整備や、地域の取組の加速化などを進めること。また、海洋プラスチックごみ問題に関しましては、国内での発生抑制や回収・リサイクルを推進するとともに、技術やインフラの海外展開により、途上国の排出削減にも貢献すること。さらに、国立公園満喫プロジェクトや、環境で地方を元気にする地域循環共生圏づくりなどを推進することなどに取り組んでまいります。加えて、東日本大震災の被災地においては、これまでの環境再生に向けた取組を着実に進めつつ、復興の新たなステージに向けた取組として「福島再生・未来志向プロジェクト」も実施していきたいと考えております。詳しくは、午後のブリーフで、それぞれ担当者から説明をさせていただきます。いずれにいたしましても、環境省として必要な、十分な予算の確保に向け、しっかりと取り組んでまいる決意でございます。

2.質疑応答

(問)TBSの梶川です。今、来年度予算の概算要求の取組についてお伺いしましたが、大臣として今どういう項目に特に重点を置かれているのかというのを、今いろいろありましたが、その中でもあればお聞かせください。
(答)一つは、長期戦略を今、官邸で有識者懇談会を立ち上げて議論していただいております。そういう意味では、地球温暖化対策というものが経済成長にしっかり結び付いていく、そういうビジョンをしっかりと打ち立てていきたいと考えておりまして、そのためにESG金融の推進、それから正に脱炭素化ビジネスが稼げる市場を創出するような、そういった施策を進めるということが大きな課題だと思います。それから、適応法ができましたので、それについて環境省が旗振り役となれるような予算を確保していく。それから、海洋プラスチックごみ問題というのが今喫緊の世界的な課題になっておりますので、そのための必要な予算というものがあります。今日、官邸で観光関係の会議がございましたが、国立公園満喫プロジェクトというものをしっかりと進めていくということも、極めて今重要な国家的課題だというように考えておりますので、そのための必要な予算をしっかりと確保するということを目指して頑張っていきたいというように思います。

(問)共同通信の藤井です。福島第一原発で保管中の放射性物質トリチウムを含む処理水の処分方法について御見解を伺います。経産省は海洋放出を軸に検討していて、地元の漁業者とか住民の方は昨日の公聴会でも懸念を示されていました。海の環境という観点からも、あと福島の環境再生と風評被害外策も取り組む環境省として、海洋放出を容認するのか、大臣の御見解を伺います。
(答)福島第一原子力発電所からの放射性物質を含んだ処理水につきましては、3条委員会である原子力規制委員会において、独立した立場で対応しております。環境省の外局ではありますけれども、独立した立場で原子力規制委員会が専門的な立場からしっかりと対応をされるということで、私からコメントすることは差し控えたいというように思います。
(問)規制委員会の委員長は海洋放出が唯一の方法だということで、早期の東電の決断を求めていますけれども、復興大臣もかつては海洋放出が風評被害につながるということで否定的な意見を示されていますけれども、環境大臣としての意見を示される機会というのはないのでしょうか。
(答)ここはやはり、環境省と原子力規制委員会との関係というのは、組織的には外局という位置付けでありますけれども、原子力規制委員会は独立した立場で対応しておりますので、環境大臣が現段階で意見を申し上げるということは差し控えるというのが適当だと考えております。

(問)毎日新聞の五十嵐です。今の関連でお尋ねしますが、今回のトリチウム水の件もそうなのですけれども、原子力規制委員会の絡む案件について、大臣もこの会見の場でも度々、独立した立場で検討しているのでコメントは差し控えるというような御発言が多いかと思うのですが、まず1点目としては、このトリチウム水の問題については、原子力規制委員会の委員長が既に見解を示している部分があって、それでもなおかつ大臣としてはコメントを差し控えるというのは、基本的に規制委員会の考え方と同一だというふうなことなのか、それとも考え方は違うのだけれども基本的には言わないという御立場なのか、その辺についてもう少し詳しくお聞かせいただけますか。
(答)まだ、原子力規制委員会において、このトリチウム水の処分についての方針が決まったわけではないわけですね。今その過程でいろいろな議論をしている、そういったところだと。公聴会という手続きもその一連の流れの中にあると思います。この処理水の問題につきましては、原子炉等規制法に基づき規制が行われているわけでありまして、それは独立性の高い原子力規制委員会、3条委員会であります原子力規制委員会が対応する、そういう課題だというふうに思います。もちろん原子力規制委員会の方でしっかりとした対応が決まれば、環境大臣として、その段階で、それを支持する等々の判断を示すということになると思いますが、あくまで原子力規制委員会が原子炉等規制法に基づいて判断をされるということについて、その過程で環境大臣がコメントをするということは差し控えておりますし、今までもそういった対応をしてきております。
(問)関連してもう一つだけなのですけども、原子力規制委員会の、3条委員会として独立性が高いという話は承知していますけれども、それは裏返せば、独立性が高いゆえに、仮に環境大臣が意見を申し述べたとしても原子力規制委員会の判断というのは基本的に独立して行われるべきものだというふうに、私は理解しているのですけれども、原子力規制委員会が何らかの決断を示すまで言わないというのは、大臣の御発言が、独立性が高いとはいえ、規制委員会の判断に何らかの影響を与えるというお考えだからなのでしょうか。
(答)原子力規制委員会というのは環境省の外局だという組織的な立場がございますし、独立性の高い、正に技術的・専門的・科学的な知識に基づいて、原子炉等規制法という法律に基づいて判断をされるという事柄でありますので、その過程において、原子力規制委員会が環境省の外局だという立場も考えますと、なおさら環境大臣として意見を申し上げるのは差し控えるべきだというように考えております。

(問)日本テレビの中村と申します。関連してなのですけれども、今の話で、独立性の高い規制委員会の判断に影響しないようにという配慮という話とはまた別に、まずトリチウム水に関してはどうするかというのを今責任を持って判断するミッションを負っているのは規制委員会ではなくて資源エネルギー庁、その下に専門委員会が設置されてずっと議論してきていて、これをどうするかの判断を下すのは、今の段階で私の認識では経済産業省と東京電力という状況だと思います。ちょっと先ほど大臣のお話で、炉規法に基づいて規制庁が判断するというお話だったのですけれども、そこはそうではないのではないかと思います。それでそういうふうな状況であれば、経産省に対して環境省の意見ということを述べることも、今も可能なのではないかと思います。これまで規制委員長が度々発言してきたのは、むしろ今の意思決定の外側から専門家としての意見を述べてきたということではないかと思っておりまして、そういう意味で環境大臣の御意見を改めて述べることはできないのかということを伺いたいと思います。
(答)放射性物質を含んだ処理水につきましては原子炉等規制法に基づく規制が行われているわけでありまして、それは原子力規制委員会の下でそういった規制が行われていると、規制自体ですね。それをどうするかということについて、まず事業者がどう判断するのか。原子力規制委員会がこういうふうにしてくださいとかいうことではなくて、あくまでも規制をしているわけですね。ですからそういった規制の下で事業者が考えて、そしてそれを原子力規制委員会の方が原子力規制法に基づく規制の中でどう判断されるのかということになると思います。事業者を所管しているのは経済産業省ということになるかと思うのですね。環境省はそういった一連の手続きの外にあるというふうに考えております。したがいまして、原子力規制委員会が環境省の外局だという、そういう組織上の位置付けがありますけれども、そこは先ほど来申し上げておりますように、環境大臣としてコメントすることは差し控えるべきだというふうに考えております。

(問)フジテレビの加藤です。やはり、今の日本テレビさんからの質問からあまり答えが、ちょっと理解ができないのですけれど、一番始めの質問に戻らせていただきたいのですけれど、規制委員会は判断する立場に全くありません。判断するという立場になく、始めにおっしゃったとおり更田委員長も前の田中委員長も海洋放出すべきだと言って、東京電力にその判断を早くすべきだと、もう判断しています。判断する事業者、東京電力に対してもそういうふうに面談というか歓談で言っています。社長、会長に対して言っている。それまで経産省がやっている、その上で一番始めの方の質問に戻りますけれども、環境大臣として、環境への影響、そういうことに関して、トリチウム水を海洋に流すことに反対なのか、賛成なのか、どういう意見なのか、風評被害のこともあります。前、吉野復興大臣は以前、反対の立場を表明されています。その中で、規制委員会の関係からして言えないという理由というのは、やはり、今までずっと記者が質問している中であまり理由にならないと思うのですけれども、改めてもう一度お願いします。
(答)繰り返しになりますが、放射性物質を含んだ処理水につきましては、独立性の高い3条委員会である原子力規制委員会の下で、原子炉等規制法に基づき規制が行われているわけであります。その規制の判断というのは、正に原子力規制委員会がされるわけでありまして、環境大臣としては原子力規制委員会は外局だという位置付けはありますけれども、あくまで独立性の高い委員会でありますので、そこの判断を尊重していくと、そういう立場にあります。したがって、現段階で環境大臣としてコメントをすることは差し控えたいというように考えております。
(問)規制委員会が下した判断を尊重するということであれば、トリチウム水を容認するということ、海洋放出を容認するということ、ということですね。判断を尊重するというのは。
(答)これは結局最後は事業者が判断をして、そしてそれに基づいて原子力規制委員会が汚染水の規制についてどうするのかということを決められるというふうに思います。ですから、まだ今は過程だというふうに考えておりまして、公聴会も行われているわけでありまして、そういう過程で、経過の段階でコメントをするのは差し控えるべきだというふうに思います。
(問)判断を尊重するとおっしゃったので、その部分だけを聞いているのですけれども。同じことを言われるのは分かっているのですが、規制委員会の判断を尊重すると先ほどおっしゃっていたので。
(答)原子力規制委員会が最終的に、事業者の対応をもって、原子力規制委員会の方が最終的に判断されるわけですよね。その判断はもちろん尊重いたしますが、現在はまだ最終判断をされているというわけではないと思います。これは正に公聴会などをして、どういうふうにするのかを決めていく過程にあるというふうに思いますので、途中段階でコメントをすることは差し控えます。
(問)それは規制委員会では委員会の中で、トリチウム水の海洋放出について、海洋放出はしたほうがいいということを委員会で決定しているので、規制委員会としては決定しているので、その判断を尊重するという考えでよろしいのですか。規制委員会としては決めているのですよ、対応を。
(事務方)補足説明いたします。今、記者の方がお話された件については、規制を満たす形で海洋放出することについて、委員長の方から、海洋放出というのは規制を満たす限り、それは問題ないという、そういう趣旨だと思うのですが、一方で現時点では、公聴会という形で複数の選択肢を示した上で海洋放出をするということについて、今御意見を聞いているということだと思います。
(問)今おっしゃられたのは規制委委員会だけの話なので、公聴会は経産省、エネ庁ですよね。規制委委員会としての判断をまだ最終決定していないとおっしゃっていたので大臣が、規制委委員会としてはもう決めていますよ、ということをお伝えしただけで、それは正しいですよね。規制委員会としてです。もちろん最終的な判断の決定ではないですけれど、規制委委員会としてどういう対応をすべきかというのは、規制委員会としては決めていますよね。
(事務方)規制を満たす形での海洋放出については、原子力規制委員会の方でそれは選択肢として問題ないということは。
(問)ごめんなさい。それしかないと言っていますよね、前から。他の選択肢はないというふうに、前の田中委員長のときから言っていますよね。選択肢の一つではない、その選択肢しかないという話で前回は言っていますよね。
(事務方)そういうお話をされているということは承知しておりますが、ただ一方で、まだ現時点で事業者あるいは経済産業省において地元に御説明をされているという状況にございます。ですので、事業者においては今正にその対応をされているとう過程にあるとういうことだというふうに承知しておりまして、今、大臣の方からも、まだその検討の過程にあるということをおっしゃっているというふうに理解しております。
(答)こういうことですね。環境省というよりは、環境省は政府の一員でありますので、原子力規制委員会の考え方、そして今、経済産業省で公聴会等を開催して、最終的に取扱いが政府として決まるわけです。環境省は、そういった形で政府として決まったことを尊重すると、こういう立場にあると思います。ですから、原子力規制委員会がまだ最終的な段階でない状況で、特に8月22日の更田委員長の記者会見での御発言だと思いますが、「規制を満たす形での放出である限り、環境への影響や、ひいては健康への影響等は考えられないというのが規制委員会の立場です。」と、こうおっしゃっていますけれども、それに対しまして、一方で、経済産業省の小委員会において説明をしたり、公聴会を行っているという段階で、まだ政府としての対応が決まっておりませんので、その段階で環境大臣としてコメントをするのは差し控えたいと、こういうことだと思います。
(問)今の御発言を踏まえて疑問点を一つだけ。規制委員会としては一定の判断を示しているけれども、それは今まで大臣がおっしゃっている言葉でいえば、独立性の高い3条委員会が決めていることであって、それは環境省の外局であるかどうかということは抜きにしても、独立性の高い3条委員会のトップが発言していることはあるけれども、それとは別に政府の判断があるということなのですか。それは、規制委員会の判断は判断としてあるけれども、政府としての考え方はまた別ですということなのでしょうか。
(答)まだ決まっていないということですよね、政府の考え方が。公聴会などをやって、原子力規制委員会の考え方はありますが、一方で、経済産業省の方がそういった最終的に決める手続きをとっているわけですから、まだ政府としての考え方が決まっていないという段階で、環境大臣がコメントをするのは差し控えたいということであります。
(問)規制委員会の判断と政府の判断というのはそもそも別なのですか。そこにタイムラグが生じることはあるのですか。
(答)原子力規制委員会の判断がそのまま政府の判断になると、こういうふうにおっしゃっているわけですか。
(問)私の意見が正しいかどうか分かりませんが、私はそう思っていたのですけれども。
(答)再稼働については、原子力規制委員会の判断を政府として尊重するということでやっておりますが、今の海洋放出の話については、原子力規制委員会の考え方があって、そして一方で、事業者を所管する経済産業省が公聴会を開催するなどしていろいろな方の御意見を聞いているという段階ですよね。ですから、原子力規制委員会の考え方がそのまま即、政府の考え方になるというふうには、この問題についてはそうではないのではないかと。そこは調整過程が、事業者の立場、それからいろいろな住民の皆さんのお考え等々を調整して、そして最終的な対応が決まるのではないかというように考えております。

(以上)