大臣談話・大臣記者会見要旨

中川大臣記者会見録(平成30年6月15日(金)9:02~9:29 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 まず、本日の閣議では、いわゆる「平成29年度 国会事故調フォローアップ報告書」を決定いたしました。
 本日、閣議の後で行われましたSDGs推進本部の第5回会合に出席しました。今回の会合では、昨年12月に作成した「SDGsアクションプラン」を更に充実させた、「拡大版SDGsアクションプラン2018」を決定いたしました。「拡大版アクションプラン」には、グリーンボンド等の環境金融の推進、地域の低炭素化の促進やパートナーシップの強化、リサイクルシステムの統合強化、PM2.5等の大気環境汚染対策、環境インフラの国際展開など、数多くの環境省の重要施策が新たに盛り込まれました。私からは、今回のSDGs推進本部会合において、 引き続き、拡大版アクションプランに基づき、環境側面からSDGsの達成に貢献していくこと、環境・経済・社会の諸課題の同時解決と、次世代に質の高い生活と良好な環境をもたらす、「新たな成長」を目指すこと、を表明いたしました。
 次に、明日より17日日曜まで、内閣府の原子力防災担当大臣として、鳥取県及び島根県に出張する予定です。島根地域における現地の原子力防災対策の状況を視察するとともに、鳥取県知事、島根県知事等と面会し、意見交換を行う予定です。詳細は御手元の資料のとおりでございます。
 次に、本日、脱炭素社会に向けてあらゆる資源の戦略的な配分を促し、新たな経済成長につなげていくドライバーとしてのカーボンプライシングの可能性について調査審議いただくよう、本日付で中央環境審議会に諮問いたしますのでお知らせいたします。パリ協定やSDGsをきっかけに、世界は脱炭素で持続可能な経済・社会に向けて大きく舵を切っています。我が国でもこうした経済・社会に向けて、資金を始めあらゆる資源の配分を行っていくことが重要であります。今年3月に公表された有識者検討会の取りまとめにおいては、「様々なステークホルダーから意見を聞きながら、国民的な議論として、我が国にとって最適なカーボンプライシングの形について更に検討を深めていく」こと等を望むとされています。中央環境審議会において、有識者に加え、経済界、市民団体、投資家など、多様な主体に御参画いただき、大いに御議論いただきたいと考えております。

2.質疑応答

(問)NHKの松田です。今、大臣がおっしゃられたカーボンプライシングに関する中環審の諮問についてなのですけれども、これまでは検討会でやってこられて、今回は中環審で議論いただくということなのですけれど、一般的に見れば検討会と中環審でやれることってどういうふうに違うのかとかというところがちょっとよく見えなくて、今回、中環審で議論されるということの意味をもうちょっと詳しく教えてください。
(答)これまで、有識者による検討会で論点整理を行っていただき、検討を行ってまいりました。これは勉強会という位置付けであります。今回は法律に基づく審議会という、重要事項の審議の場に検討ステージを移すと、こういうことで、一つ環境省としてはステップを上げると、こういう意味がございます。カーボンプライシングに焦点を絞って、経済界を含む多様なステークホルダーにも参画いただいて御審議いただくということで、検討を更に深めていきたいというふうに考えております。私としては、導入に向け、前向きに検討を進めたいと考えておりますけれども、審議会におきましては、まずは予断を持たず、活発な御議論を交わしていただくということになると考えております。
(問)追加で。この審議会での議論なのですけれども、今大臣がおっしゃられたように、もしカーボンプライシングを入れるとなると、税制改正であったりとか法律の改正というのが必要になってくるかと思うのですけれども、大体いつごろをめどに議論をまとめて、そういった法律や税制改正に移していきたいか、大臣が目指すところがあれば教えてください。
(答)それは、この中央環境審議会の答申をいただいて、その次のステップでありますので、まだ時期はいつということは申し上げられません。丁寧に、しかしスピード感を持って審議会での検討をしていただきたいと思います。その次のステップですね、政府の中で調整をして、そして法律改正あるいは税制の問題等々、たくさん実務的にいろいろな問題がありますので、それはまず大きな方向性を政府の中で共有した上で次のステップに順次進んでいくと、こういうことになると思います。

(問)毎日新聞の五十嵐と申します。これまで話題になっていますが、G7のプラスチック憲章について1点お尋ねいたします。日本のプラスチックのリサイクル対策というのは、基本的に欧米に比べて決して遅れているとはいえないと思っております。というのは、海洋漂着物の推進法も、もう大分以前に制定しておりますし、そういう意味で全く無策だとは思わないのですけれども、今回のG7の中で米国とともに署名しなかったという事実は残るわけで、その件について1点確認したいのは、日本のこれまでの取組に鑑みて、米国がどんなスタンスだったというのは私存じ上げませんけれども、米国も含めたG7全体の枠組みで、この憲章を、今回のような文言ではなかったとしても、何らかの形でまとめるという落としどころというのは見いだせなかったのでしょうか。
(答)それはシェルパでいろいろなやり取りがあったというふうに聞いておりますが、これは外交交渉に関することで、相手国との関係もございますので、詳細を申し上げることは差し控えたいと思います。ただ、今、五十嵐さんからお話がありましたように、日本としては、この海洋プラスチックごみ対策というのは海洋環境保全のための喫緊の課題でありまして、プラスチックの3Rの推進というのは、資源循環、廃棄物対策や地球温暖化対策の観点から非常に重要な課題だというふうに認識しております。今回のプラスチック憲章に同意できなかったのは、まだ日本の国内の政府の中での調整、国民生活や国民経済への影響を慎重に調査検討する必要があることから、様々な方々の御理解をいただき、調整をしていくというプロセスが必要なわけなのですね。そのプロセスを踏んで、そして、この前も申し上げましたが、プラスチック資源循環戦略というものをしっかりと作成をして、その戦略の中でプラスチック憲章で掲げられた事項も含めて、目標値も含めて前向きに、積極的に取り込んで、立派な、世界をリードできる資源循環戦略を策定したいと。我が国はそういったきちっとしたプロセスを経て決めていく。その上でないと、なかなかこういった憲章に署名をするということは難しい。ですから、環境省としては極めて前向きに、積極的にこの憲章に書かれている内容を含めてプラスチック資源循環戦略を策定して、来るべきG20などの場で世界をリードしていきたいと、こういうふうに考えております。
(問)関連でもう1点なのですけれども、今回のプラスチック憲章の文言を読んでいる限りですと、確かに時限を定めた数値目標というのは出ておりますが、それは結局、各国が経済界と協力して行動を始めていくというか、まずは行動に移すというところに主眼があるように思うのですね。それを見ますと、結局のところ、数値目標も含めて経済界と関係省庁も含めて調整をしていくとなると、やはり結局時間がかかるところは分かるのですが、ちょっと乱暴な言い方をすれば、ひとまずコミットした上で、その後で具体的にどうしていくかという、いわば欧米流のようなやり方でコミットしていくということは今回はやはり難しかったのでしょうか。それはやはり、日本政府の考え方としては、それはなかなかあり得ないということになるのでしょうか。
(答)日本政府の代表団全体として意見がまとまらないと署名はできないということになりますと、環境省が強い思いを持っていても、政府全体としての調整がまだ済んでいない段階では、総理として署名をするということはできないということでございます。ですから、これからしっかりとしたプロセスを踏んで、憲章の内容に書かれているようなことを含めて、世界をリードできるプラスチック資源循環戦略を策定して、G20の場等でそれを御披露して世界をリードしていきたいと、こういうふうに考えております。

(問)共同通信の深谷です。カーボンプライシングに関してなのですけれども、これは、諮問はもうしたということでよろしいですか。
(事務方)もう内部の手続きは全部終わっていまして、あとはそれを施行するだけです。もう「した」と報道はしていただいて構いません。
(問)あと、その検討の場なのですけれども、中環審の下に置くということですが、これは小委員会とか、そういった形になっていくのでしょうか。
(答)どのような場で審議を進めていくかは、中央環境審議会において御検討いただくことでございますが、中央環境審議会の会長や関係の部会長は地球環境部会に新しい小委員会を設置することが適当だと考えておられると聞いております。
(問)あと大臣、先ほど導入に向け前向きに検討を進めたいとおっしゃられましたけれども、この小委員会では、できれば制度設計まで持っていきたいというようなお考えをお持ちでしょうか。
(答)どこまでのことを設計していただけるのかということも含めて、今、予断を持って申し上げるわけにはいきませんが、私としては中央環境審議会でしっかりと前向きの方向性が出る、そういうようなお答えをいただきたいなというふうに期待をしております。ただ、中央環境審議会で御審議を始めるときは予断を持たずにいろいろな御意見からスタートされると。最後の取りまとめは、私としてはそういうことを期待しておりますけれども、それは審議会がお決めになることだというふうに考えております。

(問)朝日新聞の川村です。今のカーボンプライシングの関係で、常々大臣おっしゃっていたことかもしれませんけれども、導入に向け前向きなお考えだというのは理解しているのですけれども、いろいろな議論があるとおっしゃいましたけれども、例えば経済界の一部には、このカーボンプライシングの導入について消極的な意見があるとも聞いております。これに対して改めて、カーボンプライシングを導入することの意義だったりとか、経済界のそういう懸念に対するアンサーというか、答えというか、その辺を改めてお聞かせください。
(答)これは、もう今、パリ協定やSDGsをきっかけに、世界は脱炭素で持続可能な経済社会に大きくかじを切っているわけであります。そういう潮流の中で、やはり脱炭素化に向かうビジネスが稼げる価格体系を形成するということで、カーボンプライシングがそのドライバーとしての役割を果たし得るのではないかというふうに考えております。ですから、経済界の御認識も、いろいろな課題はありますけれども、今のこの世界の流れ、潮流というものを見据えて、環境問題を成長の原動力にしていこうと、こういうことで、これから長期戦略も検討されるわけでありますし、そういった流れを考えていけば、いろいろな考え方がそこに生まれてくると思います。それぞれいろいろな課題がありますが、諸外国の例を見ても、そういった課題を乗り越えるための様々な工夫がされているわけですね。そしてまた、炭素税といいますか環境税の税収をどういうふうに使っていくかというようなことも、いろいろな例がございます。それぞれの国がいろいろな課題を乗り越えて工夫している、そういったことも参考にしながら御議論いただいて、いろいろな課題を審議会の議論で乗り越えていただける、そういったことを期待しています。今のそういう潮流を考えれば、そういった御議論になるのではないかということを期待しておりますが、審議会での御議論は予断を持たずにやっていただくというところから始めていただきたいと、こう考えております。
(問)もう1点。今おっしゃいました長期戦略との関係のところでなのですけれども、これから審議を始めて、まだスケジュール的なことを具体的に、しかも審議されることなのでおっしゃいませんでしたけれども、こういうカーボンプライシングの導入について、長期戦略の議論が今後進んでいく中で、並行して審議会の議論も進むことになると思うのですけれども、どのタイミングでそれを、審議会の答申などを長期戦略の議論に入れ込めるかとか、そういった長期戦略との関係についてちょっと教えてください。
(答)もちろん長期戦略は2050年80%削減、そしてその先の脱炭素社会を見据えた、正に長期の戦略であります。そこでカーボンプライシングの問題も当然議論して、2050年の絵姿というところにどういう形で入っていくのかということを議論していただきたいと思います。ただ、カーボンプライシングの議論は、2050年という話ではないと思います。もっと喫緊の課題であるというふうに思っておりまして、審議会の結論がどうなるかということでございますが、それを踏まえて具体的に、もう政府の中で調整をして動きだしていかなければならない、そういう課題だと思いますので、長期戦略は長期戦略で、カーボンプライシングの議論はもっと直近の課題として、しっかりと議論をしていただきたいと、こういうふうに思っております。

(問)共同通信の藤井です。東京電力の社長が昨日、福島第2原発4基全てを廃炉とする方向で検討すると初めて明言されました。福島県内の10基全てが廃炉となることが決まった場合に、福島地域の緊急時対応の取りまとめなど、原子力防災の取組について影響がないのかその辺教えてください。
(答)原子力防災の仕事は、廃炉作業が完了するまでは地域住民の安全・安心の観点から原子力防災対策を講ずる必要があるということでやっております。したがいまして、原子力防災担当大臣としては、万が一の事故に備えて地域住民の生命・身体が守られるよう、「福島地域原子力防災協議会」の枠組みの下、引き続き、原子力防災体制の充実・強化に取り組んでいきたいと考えております。
(問)今の点に関連してなのですけれども、東電の社長が正式に廃炉を表明したということの地元の受け止めとしては、これまで東電がこういった形で態度を明らかにしてこなかったということが、結果として住民の帰還も含めて福島の復興の足かせになっていたのではないかという意見が多数出ておりますけれども、除染ですとか中間貯蔵を始めとする福島の再生ということを所管する環境大臣の立場として、今回の東電の決断というのをどのように受け止めてらっしゃいますか。
(答)そこのところについては、コメントは差し控えたいと思います。ただ、官房長官もおっしゃっているわけですが、東京電力には福島復興への貢献という視点に立って、関係者とよくコミュニケーションを重ねながら、廃炉に向けた具体的な検討を進めていくことを期待したいと、こういうふうに考えます。

(問)朝日新聞の川村です。大臣が冒頭おっしゃっていましたSDGs推進本部のことでちょっとお伺いします。本日、拡大版アクションプランが決まったということもあるのですけれども、一方でSDGs未来都市、自治体においてSDGsを推進していくような、そういう先進的な取組をしている自治体を選んだということなのですけれど、政府として今後、地方にこういうSDGsを広げていく中で、環境省としてはどういった支援を、先ほどいくつかおっしゃいましたけれども、どういった支援ができるかとか、どういった支援をしていきたいとか、そういう思いがありましたら教えてください。
(答)民間企業や自治体等からは、他のゴールにも関連する持続可能な消費と生産と、それから企業による本業を通じたSDGs達成への貢献に焦点を当て、先行事例を紹介しております。環境省といたしましては、こうした取組を進め、またステークホルダーズ・ミーティングを2016年度に3回東京で開催をし、2017年度も3回実施しておりまして、いろいろな方、合計1000名以上が参加をしております。こうしたミーティングの後、参加者のネットワーキング、意見交換のための懇談会を開催しております。こうした取組をしながら、各界から先行する取組を共有し、更なる取組に弾みをつける場、多様なセクターの協働を促していく場の提供をしていきたいというように考えております。

(以上)