大臣談話・大臣記者会見要旨

中川大臣記者会見録(平成30年4月10日(火)9:12~9:41 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

 私からは、平成28年度に環境省が発注いたしました福島県川俣町での解体工事におけるベトナム人技能実習生への特殊勤務手当の不適正支給事案について御報告いたします。本件につきまして、環境省が改めて調査を行い、当該工事に従事していた技能実習生3名に対する特殊勤務手当の不適正な支給を確認したことから、先週6日金曜日の午後に発表を行いました。環境省工事において特殊勤務手当が適正に支給されていなかったこと、ベトナムから技能実習のために来日された作業員の方に対してこのような対応がなされていたこと、さらには、それらを隠すために文書が偽造され虚偽の報告が行われていたことは、誠に遺憾であります。本件につきましては、3月27日の会見で、元請事業者が環境省に提出した賃金台帳等の書類によると特殊勤務手当は適正に支給されている旨の回答を申し上げたところでございますが、後日、関係者から新たな情報提供がございまして、それを基に再調査を行ったところ、6日午前の調査において特殊勤務手当の不適正な支給の確証を得たために、同日午後に公表したものでございます。事務方には、担当の方には、現在行っている詳細調査を可能な限り速やかに進め、結果に応じて厳正に対応するよう改めて指示いたしました。今後、発注者として元請事業者への指導を一層しっかり行っていくとともに、関係機関との連携を更に強化してまいりたいと考えております。

2.質疑応答

(問)日本テレビの中村と申します。第五次の環境基本計画の答申が大臣に提出されましたけれども、今回のポイントについてお聞かせください。
(答)昨日4月9日、中央環境審議会の会長から第五次環境基本計画についての答申をいただきました。環境省といたしましては、答申を尊重し、政府全体としての計画とすべく、早期の閣議決定を目指してまいります。この計画は、SDGs、パリ協定採択後に初めて策定される環境基本計画でございます。このような時代の転換点にあるとの認識の下、SDGsの考え方も活用しながら、環境政策による経済社会システム、ライフスタイル、技術などあらゆる観点からのイノベーションの創出や、経済・社会的課題の同時解決を実現し、将来にわたって質の高い生活をもたらす新たな成長につなげていくこととしております。その中で、地域の活力を最大限に発揮する「地域循環共生圏」の考え方を新たに提唱し、各地域が自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて資源を補完し支え合う取組を推進してまいります。そのため、予算など関連する施策を総動員し、六つの重点戦略と環境保全に係る施策を揺るぎなく着実に推進していきたいというふうに考えております。答申でいただきました環境基本計画は、SDGs、パリ協定採択後に初めて策定される環境基本計画でありまして、時代の転換点にふさわしいものだというふうに考えております。
(問)もう1点。パリ協定後初めての、ということなのですけれども、脱炭素化、一方でエネルギーの確保というのも必要で、隣の経産省では今日にも専門家の会議が、2050年に向けてのエネルギーの提言を出すような動きもあるようなのですけれども、担当外だとは思うのですけれども、大臣個人としては、脱炭素化の視点も踏まえて、原発というのは将来どのようにあるべきだとお考えですか。
(答)本日午後に、経産省のエネルギー情勢懇談会において、懇談会の提言の取りまとめに関する議論が行われると承知をしております。この懇談会の議論がどのように展開されていくのか注視をしていきたいと思っております。今お尋ねの、これからいわゆる長期戦略の検討を始めるわけでございますけれども、その長期戦略の中で、やはり再生可能エネルギーをどういうふうに位置付けていくのかという問題、原子力発電の位置付けを含めて議論になるというふうに考えております。そこは環境省の、既に審議会等で頂いた御意見、それを踏まえて環境省でまとめた考え方、それと経産省の方ではこのエネルギー情勢懇談会での御提言等々を、恐らく長期戦略の検討の場にそれぞれ持ち寄って、それらを活用しながら関係省庁で政府全体としての議論を進めていくというふうになると考えます。原子力発電の位置付けということに関しましては、省エネルギー、再生可能エネルギーの導入などによりまして、原発への依存度については可能な限り低減をさせるというのが政府の方針でございます。再稼働の話になりますと、これは独立性の高い三条委員会である原子力規制委員会で科学的、技術的に審査をしていただくということで、その判断を尊重するということになるわけでございますけれども、現在の考え方におきましても原発への依存度については省エネルギー、再生可能エネルギーの導入などにより、可能な限り低減をさせるというのが政府の考え方でございます。長期戦略、2050年80%削減、さらにはその先の世界を見通しての議論の中で、どのような議論が行われるかということは、現時点においては予断は持っておりません。いずれにしても、しっかりと国内の大幅削減、脱炭素化を実現し、そしてまた世界の中でリーダーシップを発揮できるような、そういう議論をして、それを取りまとめて長期戦略にしていくということを考えております。

(問)読売新聞の中根です。冒頭の発言についてなのですけれども、3月27の記者会見で、私が、このベトナム人男性らに適正に手当が支払われているかどうか調査の状況を伺ったところ、「支払いは行われているというふうに確認いたしました」と発言されていたにもかかわらず、4月6日には不適正な支給があったと発表されたのですけれども、環境省が調査されて、でも1回は問題ないとされていたにもかかわらず、やっぱりあった。これは環境省の調査に何が足りていないのかというのは、どのようにお感じになっていらっしゃいますか。
(答)環境省は事業の発注者という立場なのですね。ですから、契約の相手方であります元請け企業に対する調査といいましても、いわゆる法律に基づいた検査権限があるわけではなくて、あくまで契約上の相手方に対する調査といいますか、確認をするということであります。ですから、元請けを通じて下請け、元請けの更に下請けの状況を把握するということしかできないのが現状であります。法律に基づく調査権限があるわけではございません。そういう意味では、元請けが下請けから取り寄せた給与支払台帳等を環境省の方に提出をしてきて、それは虚偽だったわけですけれども、適正に支払われているという説明をしたと。従ってその時点においては、それ以上の確認は、いわゆる調査権限とか検査権限があるわけではないので、なかなか事実上難しかったと思います。その後で、岩手労働局が当該下請け企業に検査に入ったわけです。この検査というのは、労働基準法に違反している事実がないかどうかの検査ということで、これは法律に基づいた検査権限を持っているわけですね。岩手労働局の検査は、それを拒否すれば罰則があるという、そういった権限に基づいた検査で、検査権限を持って入るわけですから、そこでどうもきちんと支給していないのではないかという、そういったことを把握をしたわけであります。その情報を提供していただいたということであります。これは情報提供ということなので、こちらでもう一度、その頂いた情報を基に調査をして、環境省で確認をしなければならないというふうに思います。その場合は、そういう情報を頂いていますから、元請けに対してももう一度下請けに調査をしたいということで、これは6日の10時から、ちょうど私が6日の日の閣議後の会見をしたその後でありますが、10時に福島地方環境事務所の職員が、これは複数の職員が、元請け事業者とともに、元請け事業者にお願いをして一緒に下請け事業者のところに行っていただきまして、形はあくまで元請け事業者を通じた調査ということになるわけですけれども、地方環境事務所の職員が元請け事業者とともに下請け事業者に出向いて調査を行いまして、その調査の中で技能実習生への給与支払いに関する帳簿が二つあるということを実際に確認をしたわけであります。環境省に提出するために虚偽の記載がされたものと、実際に技能実習生に支払った金額を記載したものの二つがありまして、この存在の確認をもって速やかに公表をすることとしました。私の6日の閣議後会見の時点では、技能実習生への特殊勤務手当の不適正支給について、環境省で確認できた物証がなかったわけでありますが、今申し上げましたように、その日の10時からの下請け業者に出向いての調査で確証が得られたということで、私にその後すぐ報告がありまして、すぐ公表したいということで、私からもすぐ公表するようにと、こういう指示をいたした次第であります。ただ、まだ現在、この元請け事業者の言っていることと下請け事業者が元請けから聞いている話と一部食い違いがあるということでございまして、実際に支払われていた正確な支給額や未払い総額の確認等々、まだ情報を精査することに時間を要しているという状況でございまして、その状況がはっきり分かりましたらば厳正な対応をしなければならないので、その時点で速やかに公表をさせていただきたいと思っております。

(問)共同通信の藤井です。関連してなのですけれども、今のお話を聞いても、環境省としての調査がこれで十分なのかなというふうに思うのですけれども、法に基づく権限がないといえども、環境省が発注した事業ですので、今後、元請けを通じた調査のやり方、例えば直接下請けに調査するですとか、そういう調査の在り方を見直すお考えはありませんでしょうか。
(答)元請け事業者を通じた調査というのは、発注者としての立場で法的権限がないということもありまして、限界があるという状況だということは認識しております。そのような状況でありましても、個別のいろいろな情報があれば、関係行政機関とも連携してしっかり対応していかなければならないというふうに考えております。
(問)関係機関と連携するというのは、例えば労働局と連携して下請け業者に直接話を聞くとか、そういったことですか。
(答)一番は労働局かと思います。ただ、労働局も検査権限を持って検査に入って、そこで確証を得てしかるべき処分をすると、こういう流れになるのだと思いますが、一般の民間の事業者であれば、そういう情報は提供しないのが普通だと思いますが、環境省ということで行政機関で極めて公益性の高い事業を発注しておりますので、情報提供という形で頂いたものであります。ですから、細部にわたっての証拠書類とかそういったものを全て頂いてこちらで処分をするということではなくて、行政機関同士の協力ということで、頂いた情報を基に、今度はこちらが、その情報を基に確認作業をして、発注者としての処分を、例えば今後指名停止にするとかそういったことも含めて、発注者としての処分をするということであります。労働局は労働局で労働基準法に基づく検査をして、状況によっては労働局としての処分というものがあるのだろうと思いますが、それとは、環境省の処分とは別なのですね。ですから、情報提供をしていただいて連携をしながら、しっかりと発注者としての責務を果たしていきたいというふうに考えております。

(問)NHK金澤と申します。今の質問に付随してなのですけれども、冒頭の大臣の発言にもありましたけれど、この場で、前回の、調査権限がないとはいえ、問題がなかったということが報道発表されますと、それが視聴者、読者に伝わるわけで、もちろん現場で働いている作業員の方にも伝わるわけでして、もう少しそこの、調査の在り方は今質問ありましたけれど、ここでそういうことを大臣がおっしゃってしまうということ自体が、それが結果的にいろいろな人たちに伝わったときに、それをまた撤回しなければいけないという、この現状はちょっとどうなのかなというところが正直なところなのですけれど、そこについてもう一度お考えを頂けますか。
(答)これは両方考え方があると思います。その時点、時点での環境省の調査の、限界はあるものの、調査をした状況を、適時発表させていただく。それと、たまたま今回は情報提供を頂きましたので、これが虚偽だということで不適正支給の実態の把握まで至ったわけですけれども、そういった状況がなければ、なかなか環境省としての調査の限界があって、結論がいつまでも出せないと、こういう状況にもなりかねない。ですから、そのときそのときの環境省での調査の状況を御報告をしていくのがいいのか、結論が出るまで公表しないでいくのがいいのかということの、その辺のバランスといいますか、そこは悩むところだと思いますが、私としては、元請けが下請けからもらった、提示をしてもらった書類を基に、その時点においては不適正な支給が確認できないということで、支払いをしているという、その書類の範囲においてはということで申し上げたわけでありまして、そういった中間的な発表になって、結果としては、それが事実と違ったということで誠に遺憾だと思っております。元請けが下請けから虚偽の書類を提出してもらって、それを環境省に提出してくるということは極めて遺憾だと思いますが、その後、こういった形で情報提供をいただいて、それを基にしっかりと、元請けを伴って下請けに調査に行ったと。これは普通しないことでありますが、そういう情報提供があったので、下請けに一緒に行って確認をしたと。こういうことで、今回の不正受給の確認に至ったと。こういうことを、改めて公表させていただいたという次第であります。

(問)毎日新聞の五十嵐です。今の件に絡んでなのですが、今回ベトナム人の技能実習生という話ではありましたけれども、これは別にベトナム人に限らずとも特殊勤務手当は支払われることになっているわけですが、今回の件は環境省に法的な調査権限がないという中で、偽造というか二重帳簿を提出していたというところが非常に問題の本質として大きいと思うのですが、他の件ですね、作業員が外国人であろうが日本人であろうが、こういった形で特殊勤務手当がきちんと支払われているかどうか、環境省に調査権限がないとはおっしゃいますが、実際、事業者に対して何らかの形で調査をしたり、状況の把握をするというお考えはございますか。
(答)ここは、具体的な情報がない状況で全ての事案について、特殊勤務手当を支払う、これは避難指示区域に限っているわけですけれども、そこでの除染、これについて特殊勤務手当を、実際に下請けの作業員にまでちゃんと6,600円という金額を払ったかどうかの確認を全て求めるということはなかなか難しいなと。物理的にも難しいし、契約をきちっと結んでいるわけですので、そういう支払いをするということを含めた契約を結んでおりますので、環境省の方で、元請けを通じてそれを全て疑うような調査を網羅的にするというのはなかなか難しいし、そこまでするという考えは現時点にはございません。ただ、いろいろな情報が入れば、今回の件もありますので、そのときはしっかりと対応して徹底的に調査をさせていただきたいというふうに考えております。
(問)関連でもう一つなのですが、特殊勤務手当が適切に支給されていなかったというのを、どういう作業員であろうが、環境省として確認したのは今回が初めてなのですか。以前にもあるようなことであれば、その辺も含めてちょっと整理して伺いたいなと思うのですけれども。
(事務方)これまでも個別の事案で関係行政機関から情報提供があった場合には、環境省としても調査を行ったり、そういったことをしたことはございます。

(以上)