大臣談話・大臣記者会見要旨

中川大臣記者会見録(平成30年3月27日(火)9:48 ~10:11 於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

私から、IPBESという生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォームの評価報告書について、御報告をいたします。3月17日から24日にコロンビアで開催されましたIPBES第6回総会において、生物多様性や生態系サービスに関する最新の科学的知見をまとめた2種類の報告書の要約部分が承認されました。一つは、世界を4地域に分けて行った地域別の生物多様性の評価報告書でございまして、そのうち日本が事務局の一部である技術支援機関を誘致してこれまで作成を支援してきましたアジア・オセアニア地域の報告書では、気候変動や外来生物による生物多様性の消失や、海洋環境への脅威が強調されました。もう一つは、地球規模の土地劣化に関する評価報告書でございまして、これは先進国の大量消費と発展途上国等での消費の増大が土地劣化の大きな要因であることなどが報告されています。これらの報告書は、生物多様性に関する愛知目標の次の世界目標を検討するための基礎資料の一つとして用いられる予定でございます。環境省としても、本報告書を踏まえて、新たな世界目標の策定に貢献してまいりたいと考えております。

2.質疑応答

(問)日本テレビの中村と申します。まず、非常に難しい廃棄物の問題だった、高濃度のPCB廃棄物の処分について、いよいよ北九州の事業エリアで今週の土曜日が期限となると思いますけれども、対応の状況についてお聞かせください。
(答)PCB廃棄物につきましては、法令等で定められた期間内の確実な処分に向けて、自治体、経済産業省と連携をして、各事業者の手元に残るPCB廃棄物を処分するように指導してまいりました。保管の可能性のある事業者に対して、個別に最終的な確認を行うための掘り起こし調査も行ってまいりました。その結果、中国・四国・九州・沖縄各県での変圧器・コンデンサー等について、今年1月に掘り起こし調査を完了させました。そして、処理を促したわけでありますが、2月時点で約97%の処理を完了したところでございます。残る事業者に対しましては、今年度中の処分委託契約を強く促すとともに、立地自治体と約束した計画的処理期限を迎える来年度末までには、改善命令等の行政処分を行って確実に処分委託できるように努めてまいりたいというふうに考えています。
(問)もう1点、全然別の質問なのですけれども、花粉について。特にスギの花粉が、東京ではピークを迎えたけれども、東北ではこれからピークという状況で、都の調査などでは花粉症の人が各年齢層で全て増加しているというような状況がありまして、これも一つの環境問題ではないかと思うのですけれども、国として若しくは環境省としての対応は、今どのようになっているのでしょうか。
(答)花粉症は、日常生活に与える影響が大きく国民的関心の高い問題であります。環境省がやっておりますことは、主に花粉の飛散に関する国民への情報提供等を進めるという観点から、花粉症問題に取り組んでおります。具体的に申し上げますと、一つは、スギ林において生産されるスギ雄花、雄花に花粉がついているということで、スギ雄花の数を算出する「スギ雄花花芽調査」、花の芽ですね。「スギ雄花花芽調査」これをやっております。ですから、地域ごとにスギの雄花の数を算出して、それを情報提供しております。それから、花粉観測システム「はなこさん」というのがあるのですが、これを用いたリアルタイムでの飛散状況の提供をしております。それと、花粉症への対処などを分かりやすく解説する「花粉症環境保健マニュアル」の発行。「花粉症環境保健マニュアル」と呼ばれていますけれども、こういうマニュアルを発行して取組を進めています。環境省としては、今後とも関係府省との連携の下、花粉症に関する取組を進めてまいりたいと考えております。
(問)最後にしますけれども、環境汚染というのは、そのほかの分野ではやはり汚染者負担の原則というのがあると思う割には、花粉症はそれでなくなることもなかろうとかそういうこともあって、国民の方も甘受している部分もあるかと思うのですけれども、一方で、無花粉スギへの植え替えとか、そういう施策もないことはないけれどもあまり進んでいないというのが実態で、拡大する花粉症に対して今後も国民はこれを甘受せざるを得ないのかなという、根本的な解決があまり手をつけられていないような状況かとも思うのですけれども、林野庁の問題というわけではなくて、環境問題と捉えて環境省として更に、観測のみならず何かできることというのはございますでしょうか。
(答)環境省としてできることはなかなか限られるわけでありますが、今おっしゃったスギを伐採した後にまたスギを植えるのではなく、違う、花粉のつかない樹木を植えていくという、そういったことも当然、農水省、林野庁の方では考えていると思います。それから、私が聞いた話では、花粉がなるべく発生しないような品種改良をしているというようなことを聞いておりますけれども、これは環境省でやっているわけではなくて、それぞれの省庁なり関係者がいろいろ研究はしていると思います。環境省は、今申し上げました情報提供をして、それで花粉が今日は飛ぶというようなときには、それに対してどういう対応をしていただくのかというマニュアルを発行して、PRに努めております。マスクや眼鏡、出かけるときの服装とか、手洗い、洗顔、それから室内の換気と掃除の徹底ですね、そういったこと。それからあといろいろな療法ですね、これについても環境省として御紹介はしておりますが、保健指導といいますか、そういったようなことも含めて御紹介はしておりますが、抜本的な改革というのは、今のところなかなか難しい状況だというふうに認識しています。

(問)新潟日報の中島と申します。23日に、国などを相手取った新潟水俣病の第三次訴訟の控訴審判決がありまして、結果的には、原告側の全面的な敗訴という結果だったのですけれども、まずその受け止めと、まだ新潟を始め全国で係争中の裁判が多くあると思うのですが、その現状に対する見解、その2点についてお願いいたします。
(答)23日に東京高裁において、新潟水俣病第三次訴訟の判決が言い渡され、結論として、国の賠償責任は認められなかったものと承知しております。環境省としましては、今後も、公害健康被害補償法の丁寧な運用を積み重ねていくとともに、地域の医療・福祉の充実、地域の再生・融和などにも取り組んでまいりたいというふうに考えております。

(問)朝日新聞の小坪です。IPBESの関係で1点お伺いいたします。アジア太平洋地域の報告書では、このままの漁業を続けると2048年までには漁獲可能な魚がいなくなるというような、かなり深刻な評価も出ております。先日、オバマ前大統領がいらっしゃった際には、安倍総理がすしでもてなすなど、日本でも魚というのは非常に重要な資源、文化的な存在であると思いますが、これの受け止めについて大臣からお聞かせいただけないでしょうか。
(答)IPBESの評価報告書というのは、正に最新の科学的知見をまとめたものでありまして、気候変動や外来生物による生物多様性の消失や、海洋環境への脅威が強調されております。この報告書をしっかりと、これからの世界目標を検討するための基礎資料の一つとして用いて、今お話にありましたような、大変危機的な状況が強調されておりますので、新たな世界目標の策定に向かって、環境省としても貢献をしていきたいというふうに考えています。

(問)共同通信の藤井です。2点お伺いします。1点目は、福島の指定廃棄物の処分場の関連なのですけれども、楢葉町の一部行政区と安全協定がないまま、昨年11月に搬入が進められていましたが、先日、この一部行政区と安全協定が締結されました。地元の行政区では、既に搬入が始まっている状況を踏まえて、やむを得ない協定締結だというふうに聞いていますけれども、この受け止めについてまずお伺いします。
(答)特定廃棄物の埋立処分事業につきまして、3月23日付けで、楢葉町の地元行政区の一つであります繁岡行政区と環境省の間で、安全協定を締結させていただきました。今言われましたように、今般、廃棄物の搬入を開始している中で、環境省と安全協定を締結いただくとの御判断をいただきました繁岡行政区の住民の皆様に対し、感謝を申し上げたいと思います。今後も、安全協定に基づき地元の方々の安全を確保しながら、着実に事業を進めてまいりたいというように考えております。地元の方々の参加によるモニタリングの実施や、廃棄物の搬入の時間帯、地元の方々による敷地内の立ち入り調査の実施などの規定が安全協定の中に盛り込まれております。この安全協定に基づいて、地元の方々の安全をしっかりと確保しながら、事業も着実に進めてまいる所存でございます。
(問)もう1点は原子力防災の関連なのですけれども、昨日、川内地域の緊急時対応が改定になりまして、台風のときに無理に避難せず屋内退避するなどの改定がありましたけれども、今回の改定を受けて、この緊急時対応が十分なものなのか、大臣の御評価と、今後、避難計画の実効性を高めるための取組についてもお伺いします。
(答)川内地域につきましては、平成26年9月の緊急時対応の策定以降、これまでに実施した鹿児島県原子力防災訓練の教訓事項等を踏まえまして、緊急時対応のより一層の具体化・充実化を図るための検討を重ねてまいりました。これまでの検討を受け、この程開催されました「川内地域原子力防災協議会」において、例えば地震による家屋の倒壊等により、屋内退避が困難な場合の対応策の具体化、また高速道路を新たに避難道として追加するなどの避難経路の複数化など、合計13の改定項目を盛り込んだ緊急時対応の改定について、より一層の具体化・充実化を図るものとして確認されたところでございます。そういう意味では今回の改定によって、緊急時対応が更に具体化・充実化されたというように考えておりますが、他方、避難計画の整備に「終わり」や「完璧」はないわけであります。今後も、「川内地域の緊急時対応」に基づく訓練等を通じ、鹿児島県等とも連携しながら、避難計画の更なる充実・強化に、継続的に取り組んでまいりたいと考えております。

(問)読売新聞の中根です。先日、明らかになった外国人技能実習生の制度を活用した、除染作業に従事していた問題について、環境省では元請業者等に調査を始められたということだと思うのですけれども、その後、調査というのはどの程度進んでいらっしゃるのか教えてもらえますか。
(答)環境省が直接発注しております解体工事にベトナムからの実習生が参加をしていたということでございますが、この点につきまして、いくつか指摘がございました。手当を払っていないのではないかというような御指摘がございましたが、この点につきましては、環境省の福島地方環境事務所の方から元請事業者に聞きまして、元請事業者が環境省に提示した賃金台帳、それから当該作業員に渡したとされる給与支払明細書の控えなどを確認したわけですけれども、支払いは行われているというふうに確認いたしました。それから当該作業員への特別教育ですね、解体工事に従事するに際しての特別教育、研修について、十分でなかったのではないかという御指摘もございましたが、元請事業者が環境省に提示した特別教育受講証によりますと、実施されているということを確認しております。環境省の方は元請けを通じて確認をするということになりますが、その限りにおいては、確認はできたということであります。それで、そもそもこの実習生が、環境省の発注工事としてはこの解体作業なのですが、あと、いわゆる市町村除染ですね、そちらの方にも従事をしていたということでございますが、これが関係法令上適切であったか否かにつきましては、技能実習制度を所管する法務省において、引き続き確認中であるというように聞いております。一方、環境省といたしましては、法務省等において、技能実習制度における除染等業務の取扱いが公表されましたので、3月15日付で業界団体に対してその旨を周知いたしました。また、技能実習制度を所管する省が行う調査に、必要な情報提供を行ってまいりました。引き続き環境省としては関係省と連携しつつ、除染・解体事業者に対して、法令遵守の徹底やガバナンスの強化を指導してまいります。