大臣談話・大臣記者会見要旨

COP23閣僚級セッション 中川環境大臣ステートメント

COP23閣僚級セッション 中川環境大臣ステートメント

 COP23の開催に尽力されたフィジー及び会合ホストのドイツに感謝申し上げます。今般、気候変動の影響に脆弱な小島嶼(しょうとうしょ)国を代表してフィジーが議長を行うことは、大変意義深いものと考えます。フィジーが提案する「Talanoa(タラノア[1])」の精神が、様々な異なる意見を集約していく上で重要と考えます。我が国は、来年のCOP24でのパリ協定の実施指針の採択に向け、COP23での交渉の進展に貢献するとともに同年に開催される促進的対話の基本設計に向けた議長国フィジーの取組を全力でサポートいたします。

 気候変動は近年ますます進行しています。気候変動の脅威に対処すべく、パリ協定の目的達成に向け、我々はともに前進しなくてはなりません。我が国は、大幅な排出削減を目指す中で、世界に先駆けた革新的なイノベーションに挑戦し、世界全体での温室効果ガスの排出削減にも最大限貢献します。これにより、更なる経済成長を実現し、こうした実績を世界と共有してまいります

 我が国は、2011年に東日本大震災を経験しながらも、2020年の目標に対して、野心的に取り組んできました。2015年のCOP21において、安倍総理が、途上国に対する資金支援をそれまでの1兆円から約1.3兆円に増額しました。今後、その支援の着実な実施に向けて取り組みます。

 我が国は緑の気候基金に15億ドルを拠出するとともに、「短期寿命気候汚染物質に関する国際パートナーシップ(CCAC)」へ毎年約250万ドル拠出しております。さらに今後、これまで17カ国で100件以上の実績を積み上げてきた二国間クレジット制度(JCM)等を活用し、途上国とのパートナーシップの下、優れた低炭素技術等の普及や対策実施により排出削減を進めます。フィジーについては、本年はアジア・太平洋地域におけるCOP23準備ワークショップの開催、草の根無償資金協力を通じた学校再建支援などの協力を行っています。

 また、健全な海洋を守る観点から、小島嶼国における気候変動への対処能力の向上のための技術的な支援を実施しています。2015年度より、フィジーなどの太平洋の島嶼国において、サンゴ礁・マングローブ林など地域の生態系を活用した海岸保全の適応等の支援を進めています。

 気候変動政策を策定する上で、科学的知見は非常に重要です。また、科学者はパリ協定にとって不可欠なプレーヤーであり、IPCCの長年の活動が果たした役割は大きいと言えます。2019年5月に開催されるIPCC第49回総会において、パリ協定の実施に不可欠である各国の温室効果ガス排出量を算定するための方法論報告書が承認される予定です。我が国はこのIPCC総会の日本開催誘致の意向を表明します。

 また、気候変動と脆弱性の問題を考察するにおいても、科学は非常に重要な役割を担っています。日本は科学者を中心とする専門家・研究機関や政府が一丸となって知見を集約し、気候変動に伴うアジア・太平洋地域における自然災害の分析と脆弱性への影響を報告書にまとめました。その成果はCOPを含む様々な外交分野でも活用しています。

 日本は、パリ協定の下、昨年5月に閣議決定した「地球温暖化対策計画」に基づき、2030年度26%削減目標に向けた対策を着実に実施するとともに、パリ協定を踏まえ、全ての主要国が参加する公平かつ実効性ある国際枠組みの下、主要排出国がその能力に応じた排出削減に取り組むよう国際社会を主導し、地球温暖化対策と経済成長を両立させながら、長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指します。この5年間でエコカーは2倍以上、太陽光発電は5倍以上に増えており、2年連続で温室効果ガス排出量が減少しています。

 我が国は科学技術のイノベーションを推進します。水素エネルギーキャリアの製造、輸送や、窒化ガリウムを用いた次世代パワーエレクトロニクス、二酸化炭素の回収・貯留(CCS)や有効利用(CCU)について研究開発やモデル事業を進めます。

 衛星データを活用してハリケーンの高波による浸水エリアを予想する新たなハザードマップを小島嶼国とともに開発します。マラリアで苦しむ国に対しては長期間にわたって蚊の進入を防ぐ蚊帳の普及を支援します。

 パリ協定の合意から2年が経過しましたが、世界における多くの企業、自治体、市民それぞれの価値観や行動が大きく変わりました。気候変動対策は「持続可能な開発目標」達成を導くものであるとの認識が広まりました。我が国は、自治体や企業などの意欲的な取組や、その発信を支援していきます。

 各国の気候変動対策などの情報の透明性向上は、パリ協定を実施するためのエンジンです。透明性の向上を通じ、政府、自治体、企業などすべてのプレーヤーの取組の状況、技術やノウハウのポテンシャル、それらのニーズが可視化(見える化)され、民間の参画・投資や更なる協力が促進されることによって、コ・イノベーションの創出が期待されます。

 このため、今般、我が国と途上国、国際機関が参画する「コ・イノベーションのための透明性パートナーシップ(見える化パートナーシップ)」を設立します。

 その一環として、「透明性のための能力開発イニシアティブ(CBIT)」に500万ドルの拠出を行います。また、2018年度に全世界の温室効果ガス排出量を観測するための人工衛星「いぶき2号」の打ち上げ、気候変動リスクや適応策に関する情報基盤である「アジア太平洋適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)」の構築などの取組をいっそう強化していきます。

 パリ協定は、COP21の合意から1年という短い期間で発効しました。今日、私は、このCOP23に参加して、世界各国と広範なステークホルダーがパリ協定の着実な実施に向けて取り組む姿勢を目の当たりにし、強く勇気づけられました。

 我が国は、国際社会と手を携えて、気候変動問題という、我々そして将来の世代への脅威に先頭に立って立ち向かうことを約束します。

 私としても、社会経済上の諸課題を同時並行で解決しながら、将来にわたって質の高い生活をもたらす持続可能な社会を実現できるよう、気候変動対策を新たな成長につなげていきたいと考えています。

(ボン時間2017年11月15日)

[1] タラノア:包摂的,参加型,透明な対話プロセス。