大臣談話・大臣記者会見要旨

関副大臣記者会見録(平成29年3月16日(木)15:04~15:24  於:合同庁舎5号館25階会見室)

1.発言要旨

(副大臣)私の方から3点ご報告します。1点目ですが、中央環境審議会地球環境部会 気候変動影響評価等小委員会の「気候変動適応策を推進するための科学的知見と気候リスク情報に関する取組の方針」の中間取りまとめを、3月14日(火)に公表いたしております。本中間取りまとめにおきまして、関係府省庁が連携して進めるべき調査研究や、各主体の適応策を促進させるための情報の整備や提供等につきまして、10項目の「取組の方向性」が示されております。例えば、将来の高齢化・人口減少社会に伴って生じる気候変動の脆弱性・暴露の評価を行うことや、気候変動が国際的なサプライチェーンに与える影響の調査研究を推進することなどが示されております。また、気候変動適応情報プラットフォームを始めとする国内外の気候リスク情報の基盤整備や、地域適応コンソーシアム事業による地域での適応の推進の必要性という内容も併せて示されているところでございまして、今後、環境省では、関係府省庁と連携して、この中間取りまとめを踏まえた取組を進めてまいりまして、2020年を目途に実施いたします第2次気候変動影響評価や、その後の適応計画の見直しに取り組んでいきますとともに、IPCC第6次評価報告書等に貢献をしてまいりたいということが1点目です。
 2点目でございますが、今月3日及び4日に、私が進めておりますビジターセンター情報発信強化プロジェクトの一環として、阿蘇くじゅう国立公園の3つのビジターセンターを視察してまいりました。国立公園満喫プログラムのステップアッププログラム実施予定箇所等も併せて視察してきたところです。今回、現地を見て、人の営みと共に受け継がれてきた雄大な草原景観や火山や温泉など非常に魅力的なところだなと再認識しました。また地元の大分県竹田市長や、熊本県阿蘇市長とも面談をさせていただきました。いずれも地元の振興に非常に熱心に取り組まれていると感じました。さらに3つのビジターセンターを回りまして、職員と話をしましたが、それぞれのアイディアで来館者にわかりやすくいろいろなことを伝えられるよう創意工夫をしていることを理解できました。さらに、阿蘇市長の御案内で、中岳火口周辺も視察してまいりました。昨年の噴火の被害の大きさ、一日も早い復旧が必要だと痛感して戻ってきたところです。今後、関係者の皆様の合意により策定しましたステップアッププログラムにより、阿蘇くじゅう国立公園の世界水準のナショナルパーク化と熊本地震からの復興、さらにはここで得たことを活かして、全国の国立公園のビジターセンターの情報発信強化にしっかり活かしてまいりたいと思っています。
 3点目ですが、諸般の事情が許しましたら、3月17日(金)から18日(土)にかけて、長崎県五島市へ出張いたしまして、福江島沖の浮体式洋上風力発電設備を視察してこようと思っております。洋上風力を始めとする海洋再生可能エネルギーの活用は、大幅なCO2削減の鍵を握る重要な課題であり、特に浮体式洋上風力発電は、日本は遠浅の海岸が少ないわけですから、有望だと思っております。昨日は、この設備の建設に携わっていただいております戸田建設の今井社長が大臣室に来られました。山本大臣からは、五島の洋上風力は希望の星だとお伝えされたところです。まさにその希望の星を、私自身、行かせてもらって、皆様のご苦労も見させていただきながら、今後の政策にしっかりと活かすように視察をしてきたいと思っております。私からは以上です。

2.質疑応答

(問)幹事の時事通信の今泉と申します。今日午前中の中環審長期ビジョン小委員会に、アメリカのノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ教授が出席されて、カーボンプライシングについてプレゼンテーションなさいました。その中で日本に、例えば経済成長や歳入確保、あるいは温室効果ガスの削減、この3つを全て同時解決するために、炭素税というのは非常に適した手段だというふうにおっしゃいました。4月から環境省はカーボンプライシングについて検討会を始めると聞いています。一方で、経産省や経済界から反対意見もありますが、今回のスティグリッツ教授の提言について、副大臣はどのように受け止めていらっしゃいますか。
(副大臣)スティグリッツ教授からは、グリーン経済は、総需要の創出を通じて経済成長を促進させることが可能であるという御意見があったわけですが、環境省におきましても、国内での大幅削減と経済成長や地方創生等を同時に実現する将来ビジョンを示す長期低炭素ビジョンを取りまとめたところでございまして、スティグリッツ教授が今日、お話されたグリーン経済による経済成長はこれと軌を一にしていると感じたところです。炭素税のところにつきましては、いろいろな考え方があると思います。スティグリッツ教授がおっしゃった経済的な炭素税を含むカーボンプライシングについては、経済的インセンティブによって企業や消費者など、あらゆる主体に効率的なCO2排出削減を促す、有効な手段というところについては我々も認識をしておりますし、G7などでも意見が出たところです。この長期低炭素ビジョンにおいては、気候変動問題をきっかけとした経済・社会的諸課題の同時解決に向けた施策だということは我々も同じ考え方なのですが、我々が今、取り組んでいこうとしていることは、炭素税に限らず、まずはカーボンプライシングについて、長期低炭素ビジョン小委員会の議論も踏まえ、しっかりとした幅広い考え方で、骨太の議論をしてまいりたいと考えております。重要な手段だということは非常によくわかっておりますが、まずは幅広い議論の中での一つとして捉えてまいりたいと思っているところです。
(問)あくまで具体的に炭素税に絞って制度設計の議論をするわけではなく、カーボンプライシングという広い枠組みについて議論するということでしょうか。
(副大臣)まずそこからだということだと思います。今は石油石炭税など、いろいろな税があるわけでして、各国それぞれ税体系は違いますし、日本は非常に独特な税体系をとっていますので、炭素税というのも考え方の一つとして、それが今後、どのような展開になっていくかというところも踏まえ、その前提となるカーボンプライシングの議論を深めてまいりたい、そのような段階であると今、捉えております。

(問)環境新聞の小峰です。つい先ほど大臣室で、損保ジャパンの会長がお見えになりまして、ちょうど副大臣から今御説明のあった、気候変動影響への適応計画の一環として、今後損保会社が大きく関与してくるのではないかと思っております。確かに損保ジャパンは1990年ごろ、安田火災の時代から地球環境問題に商売とうまく結びつけて、気候変動インデックスを作って、それがさっき損保会社の会長がおっしゃっておりましたけれども、最近は東南アジアで力を入れていると言っておりました。ちょうど適応計画をまとめたらさすがに損保ジャパンも慈善事業ではありませんので、商売事業ですから、すぐ大臣室に飛んできて、早速ビジネスとして展開してきたと捉えたのですけれども、副大臣としてビジネス、こういった損保関係、金融関係のビジネスと適応計画との御所見があったらお伺いしたいと思います。
(副大臣)私も金融出身でございますので、ESG投資という項目がございますので、その中において一番大事な考え方というのは、このまま地球温暖化を抑制するような動きをしなければ、将来的に世界全体でものすごい大きなコストを払わなければならないという考え方を、世界共通の考え方として持たなければいけないと思います。今の段階で手を打っておけば少しのコストで済みます。しかしながら手を打たなければその何倍ものコストがかかるというふうに、そういうリスクを負った地球全体の今の状況だというふうに考えていかなければいけません。その中において、その価値観が世界共通になったときに初めて保険という概念が出てくるかと思いますので、今後そういうふうな地球温暖化のリスクに対してどのような保険のあり方があるのかということは、広い意味で議論されていくのだと思いますけれども、これからの議論、深まり方を我々もしっかりとウォッチしていかないといけないと思っております。
(問)損保保険はいいビジネスチャンスというふうに捉えていいのでしょうね。
(副大臣)それはどうでしょうか。それはその経済主体がどう捉えるかはその経済主体の御判断でしょうけれども、やはり適応の問題というのは、私も先般は生物多様性COP13でメキシコの方に行かせていただきまして、いろいろ生物多様性のことが地球変動とかいろいろなことが関わって、いろいろな影響が出てくるということがあって、これが農林水産省だけでなく、国土交通省にしろ、また高齢社会がこれから進んでいくことに対し、社会のあり方をどういう地域に目を向けるか、あの中でもエリア的にどういうことをするのか、いろいろな項目が変わってくると思います。そういう中において、いろいろ保険しておかなければいけない項目というのが、適応計画でこれは該当するなという発想が、その経済主体である損保ジャパンが持たれており、それに納得する商社がいればそこに商社自ら保険をかけに来ると思うでしょうし、そこら辺のところはまず世界共通の理念として、本当に地球温暖化が危険な社会を作りつつあるのだという認識の共有が大事だと思います。
(問)すみません。これが最後の質問ですけれども、副大臣は環境省の所管の独立行政法人でありまして、川崎市内にある環境再生保全機構というのがあるのですけれども、御存じだと思いますけれども、そこの理事長が福井光彦氏という方でして、1990年の時に最初に安田火災を立ち上げた人なのです。今、文部科学省の方で天下りが問題になっておりますけれども、逆に天上がりですから、環境再生保全機構の理事長が損保ジャパン出身の方、最後の職務は常務で終えておりますけれども、御存じでしたか。
(副大臣)それは私は知りませんでしたけれども、今まず公務員という立場の者がどういうふうな立場で身を処していかないといけないかという問題が一つと、もう一つは、本当にその分野で精通した人が、能力を発揮して国のために能力を発揮していただくという異なる問題と二つありまして、それぞれやっぱり適切に作用しないといけないと思います。

(問)共同通信の井口です。気候変動適応策なのですが、アメリカで報道が出始めているのですが、トランプ政権で気候変動関連の研究費、研究に関連する費用を大幅に削減しようとするような動きがあるという報道が出てまして、適応に必要なデータというのは国際協力でとっていると思うのですが、海にしても、陸地にしても、その大きな一角が欠けるかもしれないということに何か御懸念があれば教えてください。
(副大臣)そのような報道が出つつあるというのは聞いたりはしているのですけれども、まだまだアメリカ自身の正式な発表というのは出ていないということでございますので、あらかじめそれを想像して発言するのは良くないかもしれませんが、やはりCOP21でパリ協定が結ばれたようなその精神が、世界のすべての国で共通認識でいけたらと私は思います。
(問)取組の方針について発表いただいたのですけれども、地球局のマターだけでなくて生物多様性とか他の視点とどういうふうに絡んでくるのか、何か示唆することがあれば伺いたいのですが。気候変動と生物多様性は非常に密接な関係あると思います。
(副大臣)今の御意見のとおりだと思います。生物多様性も気候変動も深く関わりのある部分だと思いますし、それぞれの項目で世界全体の国々が目指す方向性というのは、国連の会議等で明らかにされているところでございます。すべての国が関連性もしっかり意識しつつ、地球温暖化については抑制をしていかなければならない、生物多様性についてはしっかりと多様性を守っていかなければならないというところに、あらゆる国の施策を導入しながらみんなで守っていかなければならないと思います。
(問)今回の取組方針の中に、特にそういう視点が盛り込まれているわけではないのでしょうか。
(事務方)今回の方針でございますが、個別の分野ではなくてもちろん適応の話は農業から災害から生物多様性までいろいろな分野に影響を及ぶものでございますけれども、個別の分野に注目したものではなくて、それぞれの分野について適応を進めるためにどんな科学的知見を集めていくのか、情報整理をしていくのか、全体の方針を整理したものでございますので、個別の分野をフォーカスするためのものではありませんでした。

(問)時事通信の松野です。冒頭のビジターセンターの件についてですが、前向きな御感想を先ほどお聞かせいただいたのですけれども、プロジェクトチームを組んで情報発信の強化という形なのですけれども、改めて現地に足を運んで課題として見えてきたことがあれば教えてください。
(副大臣)ビジターセンターもいろいろな今までの設立経営が、それぞれ統一でなかったようなところもあります。名前も例えばビジターセンターで統一できていなかったり、そういうようなところを踏まえて満喫プロジェクトを始め、この国立公園に海外の方から来ていただく人を毎年がんばって増やしていこうという中におきまして、それぞれのいい点がみんなが共有できるような考え方にとっていきたいと思っております。例えば、阿蘇くじゅうのほうに行かせていただいた時に、そのビジターセンターではしっかり運営していただいている女性の方に応対してもらったのですが、その地域で住んでいるめずらしいゲンゴロウを「この近くで捕れるんです。」ということで自分で飼っていらっしゃって、ビジターセンターで来ていただいている人たちに見せたりして、そういうふうに工夫して、この地域の国立公園の良さというのはこういうところがあるのだなと、実感できるような、非常に私も感動したのですが。また、阿蘇山がカルデラになる時の成り方というものを小麦粉を使いながら、中に風船を膨らまして入れて、風船の空気を抜いて穴があいて、こういうような形でカルデラができたのですよ、とみんなに見せるのを手作りの独自の良さで体験させてくれたり、非常に苦労されているなと思いました。それぞれの国立公園の特色があって良さがあって、そこら辺のところを本当にうまく発信するやり方はいろいろあるのだろうと思うのですが、好事例のところをこういうところではこんなことをしていますよ、と情報も共有しながら、自分のところだったらこういう工夫ができるのだろうな、というように生かしてもらいたいとか、またみんなで共通して使えるような良い例のところ、世界標準のところにしっかり合わせていくような感じのところはそれぞれ共有できるような項目があるねとか、そういうようなところをしっかり生かしていって、本当に創意工夫と、共通的な長所のところは共有するだとか、そういうところをしっかりと具体的にみんなで意識をする、みんなバラバラのところがあるのでみんなで意識をしよう認識をしようというふうに生かしていきたいと思います。